先を読む、という行為はいつの時代でも重要なことだ。戦争でも相手の戦略を先読みして対応することが重要だし、企業でも、今後の市場の行く末などを予測して先行優位性を築くことは昔から行われてきた。
ただ、情報化社会で事業のスピードも世界中で早くなっていることから、先を読むことはどんどん難しくなっている。しかし、ほんの少し先を予測できるだけで優位に立てる機会でもある、とこの本では述べている。
本全体として何が言いたいのか、というのがいまいちわかりづらいのは僕の読解力のせいだと思うが、予測とは何か、予測にまつわる科学的見地や、ビジネスにおける活用シーンなど、いろんな予測にまつわる事柄を知れるという意味では良い本だと思う。
予測力を養うには、未知への挑戦と既知のくり返しの両方が必要
石橋を叩いて渡るような人は、未知の経験をあまりしないから予測モデルを磨けず、複雑な予測を正確に行うことができないかもしれない。能力を伸ばすには、心地よいものと決別したいという欲求と、「同じ経験を何度となく重ねて、チャンクを形成する神経細胞どうしの結びつきを強めよう」という意欲の両方を、うまく調和させる必要がある。P.56
予測力というのは、様々な複合要因を処理して「予測モデル」を磨くことにあるのだが、そもそも未知の体験をしないと予測モデルが作れない。一方で、予測の精度を高めていくためには、反復した経験も必要なのだ。だから、両方をバランス良く考えていかないといけない。
個人で考えれば、恐らくどちらを自分が得意として、どちらが苦手かを考えた方が良いかもしれない。組織であれば、全体としてどの組織がどういう役割を持つか、考えてみると良いだろう。
ビッグデータはいろんな事柄を予測できるようになるか
今ビッグデータが騒がれているけど、そんな簡単に未来を予測することはできない。大事なのは分析する観点であり、それを行動に活かすプロセスであって、今はその前段である大容量データの格納、非構造データの取扱い、短時間での分析処理が技術的に可能になったにすぎない。
ただ、膨大なデータを利用することで予測モデルを作り、精度を上げていく取組がいろんな方面で行われている。ビッグデータ市場は今後、1兆円を超える市場規模へ拡大していく。大きくなる要因としては、分析そのもののニーズではなく、スマートシティなどインフラ部分にビッグデータの機能が組み込まれていくからのようだけど。
ビッグデータ市場に関する調査結果 2012 – 市場調査とマーケティングの矢野経済研究所 |
(市場規模のイメージが想像しづらい人は、これを参考にしてみてください。)
あの業界の市場規模っていくら? – NAVER まとめ
市場規模一覧(多分、永遠に未完成) – Chikirinの日記
結局、コンピュータが未だに人間の脳に変わることができないように、予測モデル自体は人間が考える必要がまだしばらくはありそうだ。今後は、予測できる人が最も市場ニーズが高くなるのかもしれない。個人でも、組織でも、技術でも、いろんな分野は未来を志向しているし、その流れは今後も強くなっていくんだろうなーと思った。
スティーブジョブズも予測が重要なんだと言っているよ。
私が目指すのは球が向かう先であって、それがあった場所ではない(ウェイン・グレツキーの言葉を引用して)
— スティーブジョブズBOTさん (@SteveJobs_BOT) 4月 27, 2012