自治体の電力調達として、PPSが注目されているらしい。
PPSからの電力購入と自治体のコストマネジメント | 社会 | PHPビジネスオンライン 衆知|PHP研究所 |
PPSとは「特定規模電気事業者」のことで、地域独占の電力会社ではなく、1995年から始まった電力自由化によって参入した企業のことを指す。下記経産省のページに事業者一覧があり、53社が掲載されているが、実際に電力の小売を手がけているのはその半分程度だそうだ。PPSの電力供給量は、全体の4%程度と言われている。
資源エネルギー庁 施策情報 電力・ガス・熱供給事業政策について 電気事業制度改革 我が国の電気事業制度について 特定規模電気事業者連絡先一覧
知りたい!:新電力人気に落とし穴 供給量わずか3% 希望殺到、価格急騰 PPS模索、東海でも – 毎日jp(毎日新聞)
世田谷区がPPS導入で話題になったけれど、PPSはまだ全体からみると供給量が少ない。供給能力が過小のため、安いはずのPPSも値段が向上していたり、供給力そのものが不足していて応札できない、という事例も発生しているんだとか。買い手市場であれば、競争性を導入することでコストを下げることが期待できるのだが、供給量の問題からまだ十分な買い手市場とは言いづらいのだろう。
売り手市場であれば、今後それを機会と捉えて参入する新規事業者が増えて、市場経済のメリットを享受できるようになると思うんだけどね。
岐阜県の市町村でも一部導入を検討している。自治体の検討状況の中で、「災害時の復旧に不安」ていくつか書いてあるけど、どういう意味なんだろう。
電力購入先、変化の兆し 県内20市町村PPS予定・検討 - 岐阜新聞 Web
今回世田谷区の電力契約を落札したエネットのHPを見ると、電力会社を変えるにあたって特別な設備投資などは不要とのこと。また、万一PPSで電力供給が困難になった場合は、電力会社との補填契約によって契約者には停電などはない状態で電力供給されると書いてある。
弊社の発電設備等に万一のトラブルがあり発電が行えない場合、弊社と電力会社間で事故時補填契約のようなものを締結しており、お客様が停電するなどの影響は一切ない、安定した電力供給がお約束できます。ただし、送電網は電力会社の設備をお借りしていますので、万一、送電網にトラブルがあった際には仮に弊社発電所が正常でもお客様に影響を与える恐れがあります。
電力供給設備|新たなエネルギーの電力会社エネット:ENNET
これを読む限りは、災害によってPPSが電力を供給できなくなった場合は、電力会社が電力供給を行うことが契約で担保できるようにみえる。なので、災害時の復旧リスクもヘッジできるんじゃないのかな。違うのかな。
今は契約電力50kW以下の小規模施設にはPPSは導入が認められていないので(これはコンビニ1店舗ぐらいが目安らしい)、PPSが大きく普及するような兆しはまだ小さい。個人がPPSから電力を買ったり、個人が集まってある程度の消費規模を見込んでPPSから買う、ということもできない。(例えばマンション構築時にPPSを想定した送電線の設置をしていればPPS導入は可能。)また、一般家庭は大口契約より相対的に電力料金が高く設定されていると言われている。
今ある制度の参入障壁を減らして、PPSの供給力を高めていくことがまず必要だと思われる。自治体からみれば、PPS導入にあたっては、競争相手が常にいるような競争性が確保されること、安定供給や災害時のリスクヘッジを契約面などで確保することが必要条件になるだろう。今の電力市場では、これらが十分に満たされている状況とは言えないようだ。
それにしても、今回でエネットってすごい知名度上げたんじゃないかな。