ピクト図解で電子書籍のビジネスモデルを考えたら結構面白かったので公開してみる

ビジネスモデルを把握できる手段を学べると思い、ピクト図解の本を購入。で、それとほぼ同時期に、GIEフォーラムで電子書籍がトピックに扱われたり、iPadとかKindleが欲しいなーとか考えていたので、電子書籍のビジネスモデルを考えるようになった。
 
というわけで、試しに電子書籍がもっとメジャーになると、ビジネスモデルがどう変わるか、ピクト図解で考えてみた。

これが、一般的な書籍の流通形態。作者から、出版社、取次、書店を経由して、客が手にとる。

ネット書店は、恐らくこういう形。Amazonは取次を経由せずに、直接出版社から仕入れているらしい。(返品率の低さに驚き。)電子書籍も中抜きになるとか言われているけど、ネット書店ですら、書店のみならず取次も中抜きにしている。
 

電子書籍の予想されるひとつの形。出版社はコンテンツのマネジメント機能(編集やマーケティング、宣伝など)で残ると勝手に予想。そこからプラットフォームを経由して、読者へ。ビジネスモデル的には、余りネット書店の場合と変わらないね。あと、Discover21みたいに、出版社とプラットフォームを兼ねる場合もある。
 

電子書籍の派生というか発展版。紙媒体を電子にするだけじゃなくて、音声や動画を組み合わせたり、インタラクティブな動きを行う仕組みを盛り込んだり、電子コンテンツでしか実現できないことを作成する企業が出てきそう。

で、電子書籍が主流になると、こうなる、と思われているモデル。作者と客がほぼダイレクトにつながるようになる。出版社の機能などが必要ない場合は、こういう形も増えるかも。(個人的には、あまりメジャーにはならないと思うけど。)
 

あと、電子書籍だとコンテンツを編集するのが容易になるので、一度購入した本の更新版を、安い料金で配信したりできそう。というか、Twitter社会論ではそういう計画らしい。これまでの、一度売ったら終わり、というような流れではなくて、コンテンツを二次利用したり、アップデートすることで、課金するタイミングを増やすのは重要だろう。
 
 
電子書籍は、これまでの出版業界を壊すなんて話しも耳にするけど、こうやって考えてみると、収益モデルはいくつも描けそう。あと、FREEでも書かれているように、コンテンツは限界費用まで下がる(ほぼゼロ)代わりに、講演やセミナー、コンサルティングの機会を増やしてお金を稼ぐ、というような、「書籍そのもので稼ぐ」みたいな考えを改めることも必要なんだろうなあ。
 
iPadが発売されたら、ここらへんももっと面白くなりそう。

ビジネスモデルを見える化する ピクト図解
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【書評】異業種競争戦略

異業種競争戦略
異業種競争戦略

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内田 和成
日本経済新聞出版社
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元BCG代表の内田和成氏の最新刊。最近いろんな業界で見られる、異業種での競争について、戦略構築を体系的にまとめた一冊。結構話題になってるみたいなので、読んでみた。

企業の競争戦略などの前提知識があまり十分でない、と思われる人は、タイムリーかつ基本的な企業の競争戦略もおさらいできそうなので、良い本だと思う。ただ正直言えば、目新しいことは少ない。

いろんな業種が時間や場所や金銭などの誓約を奪い合っていることは以前から言われていることであり、より一層それが激しくなっていくことは確かだろう。それはこの本で書いてある通りだと思う。

そして、この本で提起されている、バリューチェーンを発展させた「事業連鎖」は興味深い。しかも、業界構造を中心とするのではなく、顧客を起点として描くことが、今後はより一層重要になっていくだろう。

また、自分が攻める人になる場合と、守りに回る場合があることを、常に意識しなければいけない、という姿勢が強く求められるんだろうな。

この本を読んで、自分の会社や業界の「事業連鎖」を書いてみたくなった。自分の仕事が、いきなり違うルールで奪われる可能性があるのだろうか。そういう意味で、考えさせられる一冊だった。

出版業界はこれからパラダイム・シフトを迎えるのかもしれない

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出版業界が熱い。今がまさしくパラダイム・シフトの始まりなのかもしれない。いろいろ気になるトピックがあるが、少しずつ整理してみる。
 
 
デジタルのコンテンツ台頭
 
変革の中心にいるのは、Googleである。Googleは、著作権が切れた(パブリック・ドメイン)出版物を無償公開するプロジェクトや、電子書籍の課金システムを構築するなど、広告に次ぐビジネスモデルとして、出版業界に目を向けている動きがある。

Google、100万冊以上のパブリックドメイン書籍をEPUB形式で公開
Google、電子書籍の販売に乗り出す オンライン書店立ち上げへ – ITmedia News

著作権の整備が各国で問題になっているが、技術的に可能であり、ユーザに利便性をもたらすものであれば、それは法整備が追いついていないわけであり、今後揉めることはあっても、大きな流れとしてデジタルコンテンツがもっと売上を伸ばすのは間違いないだろう。デジタルコンテンツであれば、コピーが用意でコストが低く、ユーザは自分が興味あるものを検索できたり、遠隔地であってもリアルタイムで情報を取得できるようになる。
 
日本では、エニグモ社が雑誌の通販とデジタルコンテンツのセット販売を行う「Corseka(コルシカ)」を10/7に公開した。現在は、日本雑誌協会からの意見申し出を踏まえて、サービスを中断しているが、今後もこのようにデジタルコンテンツを取り扱う企業が出てくるだろう。
 
 
紙としての出版物はどうなる?
 
可読性という意味では、やはり実物である紙媒体には適わないと思う。また、人間は実体があるものに愛着がわく、という面もあるので、そういう意味からも紙媒体の出版物が完全に淘汰されることはなく、激減することもないと思っている。
 
ただ、流通形態が変わることは大いに考えられる。またしてもGoogleだが、オンデマンド製本サービスを始めようとしている。
 
出版界の破壊神か創造主か?グーグルが 目をつけたオンデマンド製本の正体 | ビジネスモデルの破壊者たち | ダイヤモンド・オンライン

デジタルデータから、およそ5分で1冊製本まで行ってしまう機械だそうだ。Googleは当面パブリック・ドメインの出版物を対象に導入を試みるようだが、こんな技術が可能になると、出版業界は劇的なビジネスモデルの変更が行われる可能性を秘めている。
 
注文から製本までの時間を短縮できるとなれば、必要な在庫量を減らせることにつながる。現在の日本の出版形態でいくと、出版数はある程度は予測で決めており、その配分の権限は、取次ぎに大きく与えられている。売れ行きが好調な出版物は再度印刷されることになるが、出版数とタイミングは必ずしも現場とうまく噛み合っておらず、書店としては欲しい分の量を確保できずに、売上機会をロスしている場合も多いと考えられる。
 
最近は、POSの導入により売上実績は正確かつリアルタイムで把握されているが、それでも流通におけるロスは、小売業や製造業ほど進化しているとは言いがたい。今までネックだった、製本までのタイムラグ、及び在庫ロスのリスクを、こういった機械が減らすことで、効率的・効果的な配本が可能になる。
 
 
書店は売上に更なるコミットメントを求められる
 
出版業界は、出版社が書店に対して販売を委託している。書店は返品がきくので、返品期限させ守れば在庫リスクはない。これが、書店の乱雑な発注状態を生んでいることは否めない。在庫リスクがないから、売上機会ロスに注力することにより、多めの発注傾向があるように思われる。それがあるから、取次ぎが配本で「適正」とみなされる数にカットする、という役割を担っているともいえる。(ただし、返品率はチェックされており、これが高いともちろんどんどん配本は削られていくが。)
 
このような委託販売制を見直す動きとして、責任販売制が一部導入されている。書店の売上マージンを22~23%から35%に引き上げる代わりに、返品するにつき代金の一部を書店が負担する、というものだ。不用意な発注により売れ残りが出ると、書店にも損が生じるという、売れ残りを回避するインセンティブを働かせる仕組みである。
 
責任販売制度の「35(さんご)ブックス」 – Media & Communication 編集長ブログ

こういう制度が導入されると、書店はより「ちゃんと売り上げる」ことにインセンティブを働かせるようになる。自分の書店の客の傾向を把握し、どの程度売れるかを予測し注文する。注文数が叶えられる代わりに、返品にもペナルティが課されることになる。
 
 
新しいビジネスモデル、特色ある書店
 
デジタルコンテンツの台頭、製本までのタイムラグの短縮、再販制度の見直しが今後も進むと、大型書店に一層集約される傾向が高まるのではないかと思っている。
出版物を購入する手段は、主に3つだ。
 
①書店で実物を買う
②通販で実物を買う
③インターネットでデジタルコンテンツを買う
 
一昔前はほとんど①のみだったのに、②や③の手段が広まるにつれて、業界自体の大幅の売上規模拡大がない限りは、①の減少を招く。責任販売制のような、売上にコミットメントできる書店は、ある程度体力がないと持たないのではないかと思う。そして今後は、ひょっとしたら「書店」という枠じゃなくても良いのかもしれない。オフィスグリコのように、お菓子がオフィス内に進出したことで売上を増やしたように、本も「書店」を出ても良いはずだ。特定分野の客を引き寄せる場所に、それに見合った本を置けば、売れる確率は高まるだろうし。あるいは、著作権の整理が進み、デジタルコンテンツを利用した新しいビジネスモデルも出てくるだろう。新刊洪水に埋もれない、特定のカラーを出した書店だってもって増えてもいいはずだ。
 
出版業界は、パラダイム・シフトの胎動が始まっているように感じる。新しいビジネスチャンスも、ここで得られるかもしれない。

都心のヤクルトレディは儲かるのか

都心のオフィスビル街では、ヤクルトレディがカートを押して歩き回っている。ヤクルトは1本の単価は安いし、歩き回ったところで、ビジネスが成立するのか?勝手に考えてみる。

以下は、勝手な想像による仮定。

1本単価=80円
1件のオフィスでの売上=10本
→1件当たりの売上合計=80円×10本=800円

1時間で訪問するオフィス=5件
→1時間の売上合計=800円×5件=4000円

1日(8時間)の売上=4000円×8時間=32000円

適当な仮定を積み上げて計算した結果は、32000円。

売上高人件費率をざっくり20%とすると、1日の人件費は6400円。時給800円。

なんか、ぎりぎりな感じ。どこかで仮定を誤ってるんだろうか。ちなみに、人件費率は、ここを参考にしました。
http://blog.sr-inada.jp/keiei/jinkenhiritsu.html

さて、ヤクルトレディの販売方法は、他にもメリットが考えられる。

・店舗を構える固定費が不要
・直接訪問するので、顧客の労力を減らすことで、購入へのステップを減らせる→購入に結びつきやすい
・ヤクルト商品しかないので、商品選択する場合に他社製品と比較されない

乳製品は、健康によく、毎日飲むことに意味がある、というイメージもあるので、実はよく考えられたビジネスモデルではないか、とも思う。

あと、上の計算だけど、固定費がかからない分、実は売上高人件費率はもうちょっと高いのかな、とも思い直したり。

どうでしょう。

株式会社が経営する農業

株式会社が経営する農業について、調査してみる。

株式会社が参入する仕組み

規制緩和が引き金になったカゴメの農地不要トマト栽培

カゴメが和歌山に建設した大規模農地の話。 区域が農地じゃなくても、農地にできるらしい。

 

 

農業ビジネスのIT戦略

AGICという農業情報コンサルティング会社のHPに書いてある、IT技術への活用法。標題とちょっと話が逸れるが、内容が面白い。