昨年度末で自治体クラウドの実証実験が終わり、先日その結果報告が総務省から発表された。そして、タイムリーにこういう本が発売されている。総務省は自治体クラウドの導入に積極的だし、今後導入が本格化するのではないか。
全体としては自治体クラウドの基本的なおさらいと、実証実験の内容を整理している。第4章「自治体クラウドの疑問に答える」は、真剣に導入する自治体にとっては良い理解のネタになるだろう。
(以下、第4章の目次のみ抜粋)
自治体クラウドの疑問と不安
情報セキュリティに不安はないのか
住民情報をデータセンターで管理することへの抵抗感をいかに解消するか
自治体クラウドは災害に耐えうるか
万が一の災害でもデータ消失を回避するバックアップ運用は可能か
LGWANを利用したバックアップは実現できるのか
リストア・リカバリは実用に耐えうるのか
技術的な問題の解決だけで本当に復旧できるか
即時にシステム復旧するためにどうすればよいか
業務停止の恐れがある障害に対してはどのような対策を講じればよいか
コスト削減はどこまで可能か
パッケージソフトウェアの適応は可能か
基幹系業務を自治体クラウドで利用できるか
自治体クラウドにおいてLGWANの利用は可能か
第三次LGWAN整備計画とは何か
あと、自治体パッケージがどこまでカスタマイズしなければいけないか、という点もよく話題にのぼるが、これはほとんど業者の提供するパッケージが適用可能である、という結果が出ている。
自治体に対してパッケージソフトウェアを提供している11事業者54パッケージソフトウェアの約1万8千項目において、追加が必要であるとされた項目はわずか16項目(0.09%)であった。P.92
住民情報を外に持ちだしたり、現場業務とクラウド(パッケージ)が合致するのか?という疑問というか心理的不安があるけれど、実証実験で少しずつ証明されている通り、これらのハードルは技術的には解決の目処が立っている。どちらかといえば、現場の心理的不安をどう解消するか、とか現場業務にシステムを合わせるのではなく、システムに業務を合わせるようマインドを変えるところが最も大きなハードルだろう。
あと、自治体クラウドの推進には「旗振り役」が必要だ。それは、県か中核市のいずれか、というのが現実的なところか。京都府の事例として、詳細な自治体の参画手順や作業担務の切り分けが掲載されている。これは参考になるだろう。
地方自治体も財政に余裕がなくなってきている。情報コストを下げるという使命は今後一層高まるだろうし、クラウドはそれに応えようとしている。ここからが正念場かな。