ソフトピアジャパンという「日本版シリコンバレー」

岐阜県大垣市にソフトピアジャパンという施設がある。1990年代に設立されたIT産業育成拠点施設で、岐阜県がIT先進立県として取り組んだ施策のひとつの象徴。「日本版シリコンバレー」を目指して設立された、という表現もある。

 

ITバブルが崩壊してからは賛否両論が今に至るまで渦巻いているものの、現在はスマートフォン開発で改めて注目を集めている。

 

ベンチャーを輩出するためには何が必要か

最近ソフトピアジャパンについて考えることが多いのだけれど、一般的に産業集積としてベンチャーの輩出などが行われるようになるためには、さっくり簡単にいえばヒト・モノ・カネが必要なんだと考えられる。

 

ヒト

これは、大学などの教育機関の存在。そこで育成される人材が起業を目指したり、特定分野に関する高い知識を身につけ、そして人材ネットワークの「ハブ」になることで、起業家や起業を支える人材を育成していくことになる。

ソフトピアジャパンでは情報科学芸術大学院大学(IAMAS)という大学院のみの公立大学が存在する。大学がカバーしている範囲や人数という点では、十分とは言えないのかもしれない。

 

情報科学芸術大学院大学 – Wikipedia

情報科学芸術大学院大学(じょうほうかがくげいじゅつだいがくいんだいがく、英語: Institute of Advanced Media Arts and Sciences)は、岐阜県大垣市領家町3丁目95番地に本部を置く日本の公立大学である。2001年に設置された。大学の略称

 

 

モノ

これは、インキュベーション施設などが挙げられる。ソフトピアジャパンでは、ベンチャー企業に低賃料で貸し出す「ドリームコア」と「ワークショッピ24」がある。実状はこんな感じらしい。

事業を始動したばかりのベンチャー企業を低賃料で後押しする「ドリームコア」の入居率は82%だが、規模を拡大した企業が対象の「ワークショップ24」の入居率は28%にとどまる。

(ネタ元のニュース記事が消えてた。。。)

 

カネ

これは、行政からの支援金やベンチャーキャピタルの存在が挙げられる。調べた感じだと、人材育成に関する助成金などは存在するようだ。だけど、実際の事業そのものに対するサポートやベンチャーキャピタルによるハンズオンなどは、見当たらない。

 

ソフトピアジャパンの現状

県議会議事録などもみてみたが、年間5億円という施設管理費について議論されることはあるが、どういう戦略でこの拠点を育成してくか、というところについてはよくわからない。平成20年に議会で質問された下記の状況から、今もあまり変わっていないのではないか、というのが正直な感想。

このときの知事の答弁は笠原先生の質問に対するものであったのですが、御紹介しますと、以下の五点を上げられています。第一に、ソフトピアジャパンを中核としてベンチャー企業群から成る日本版シリコンバレーの創出というかけ声でスタートしたが、現時点では到底その域には達していない。第二に、最先端の研究開発を目指すということについては、それにふさわしい研究員の配置等体制づくりができてこなかった。結果、最先端の研究開発はもとより、その実用化あるいは企業への技術移転ということにもまだ至っていない。第三に、海外の学術機関との提携、海外人材を招いたイベントといったことも数多く開催したが、その多くが一過性のものに終わっており、持続的なネットワークの構築には至っていない。四番目に、多くのベンチャー企業の輩出を目指したが、その育成は甚だ不十分であった。五番目に、中にはベンチャー企業が成功したケースもあったが、マーケットの不足ということで、マーケットの大きい東京などに行ってしまうことが多く、これを埋め合わせるべく、県内市場をどう拡大するかという観点からの県内産業の情報化についてもまだまだ十分推進できていない。

平成20年  6月 定例会(第3回)-07月02日-02号

 

設立の目的は、ITを県内で産業化し、人と企業を集めることで税金を稼ぐことだったはずなのに、成長してもマーケットが岐阜にないから出ていってしまう、というやや皮肉な事例も生まれている。十分な地域戦略が描けていないんじゃないか。ここらへんの記事を読みながら、いろいろ考える今日この頃。誰かもっと実状に詳しい人がいたら、教えてくれないかな。

 

ポール・グレアム「ベンチャーがアメリカに集中する理由」 – らいおんの隠れ家
日本や欧州にシリコンバレーが出来ない理由とその対策 (1/2) – My Life After MIT Sloan
Togetter – 「@isologueさんのSFC訪問から発展した起業・ベンチャー・大企業論」