スティーブ・ジョブズ 驚異のイノベーション

 

イノベーションを生み出すのに必要な要素はなんだろうか。

価値の源泉は、規模や高度教育ではなく、創造性にどんどん移行している。「イノベーションが重要だ」なんて耳にタコができるくらい聞いたけど、簡単にできれば苦労はしない。だけど、この本を読むと、ちょっとイノベーティブになれるんじゃないかと錯覚するから不思議だ。

一握りのイノベーターを発掘し支えたり、認める文化が十分じゃない気がする。というか、イノベーターが社会には必要であり、そしてどういう要素を認め合うことで、イノベーターが活躍しやすくなるのだろうか、ということがよくわからない。

 

好きなことを追求する姿勢を認める

ーどうすれば、自らの情熱がみつかったとわかるのでしょうか。「大好きなこと、どうしてもやりたいと思うことがみつかれば、ああもう1日、それができると太陽が昇るのが待ち遠しくなりますよ」P.72

自分がやりたいと思うことは、こういう状態になることを指す。だから、いわれもしないことをコツコツやっている人は、その人が楽しいと思うことをやっているのだ。

日本の学生なんかは特に、一斉新卒採用とか大手企業志向に囚われているかもしれないけど、大手企業だって有名大学だって、ジレンマを抱えちゃっているし、本当に社会に必要な人材は、こういう特定分野でクリエイティビティを発揮できる人材だ。だから、自分が何となくやりたいと思うことがあれば、その気持ちを大切にした方が良い。

 

スティーブ・ジョブズは、毎朝、鏡の前で自問自答するそうだ。「今日が人生最後の日だとしても、今日、する予定のことをしたいと思うか。」と。「ノー」と答える日が続くなら、軌道修正しなければならないということだ。P.358

結局こういうことなんだよね。本当に好きなことであれば、勉強もできるし、たくさん考えるようになる。ちょっと前までの日本社会は、年功序列、終身雇用で長い期間に及ぶ忍耐が必要だったのかもしれないけど、そういう価値観はもうそぐわなくなっている気がするよね。

 

ガンジーも言ってるよ。Live as if you were to die tomorrow.Learn as if you were to live forever.ですよ。

 

イノベーションに必要なビジョンを持つ

貧弱なビジョンからは貧弱な努力しか生まれない。P.124

ビジョンというのは、今はないけどやがて訪れる未来を具体的にイメージし、それを共有する力を指しているのだと思われる。そして、それが集団的イノベーションを生み出す力強いトリガーになる。こういうことを語れる人がイノベーターになりうる。ではどうやったらビジョンを生み出せるようになるのだろうか。

 

「大好きなアイスホッケー選手、ウェイン・グレツキーの言葉があるんだ。『パックがあった場所ではなく、パックが行く先へ滑るようにしている』、だ。アップルでは、みんながそうしようと心がけている。始まりの瞬間からそうだったし、今後もずっとだ。」P.112

いわゆる未来志向になる、ということだ。現状ではなく未来を基準に考えていく。何となく日本では「夢想家」は毛嫌いされる感があるけれど、変革は遠いところから起こる。馬鹿げた夢想の可能性をできるだけ拾える社会が望ましい。

 

問題を目の前にして、とても簡単な問題で簡単に解決できると思ったら、それは、問題の複雑さをまったく理解していないということだ。そのとき思いついた解決策など、シンプルすぎてうまくゆかない。今度は、問題がとても複雑に見えてしまう。そして、ややこしい方法で解決しようとする。この方法でもそれなりに問題が解消できるので、ほとんどの人はここでやめてしまう。でも、これは途中なんだ。優れた人はさらに進み、問題の根本的な原理ともいうべきものをみつける。そして、美しくエレガントな解決策を実現するんだ。P.242

ああ、最後はこれだな。とても良い表現だと思う。どこまで考えるか。思考の深さを表現している。問題は簡単なようで簡単じゃないけど、それでもシンプルに解決することがベストだ。イノベーションとは、その「シンプル」にたどり着いたことを指すんだろうな。

 

アップルやスティーブ・ジョブズがこんなに注目され、分析されているのは、単に業績が良いからとかじゃない。実際これからの先進国が産業として発展するためのひとつのモデルを体現しているからだろう。日本からも、そして日本の「地方」からももっとイノベーションが誕生する空気を味わいたい。

「スティーブ・ジョブズ 驚異のイノベーション」への1件のフィードバック

コメントは停止中です。