日本の地方都市は、観光で稼ぐことはできるだろうか。
この本は仮説思考をベースにした本なのだけれど、地方や中小企業に向けた内容が多く、特に観光戦略について考えさせられた。
長谷部 光重¥ 1,575 |
観光産業を推進する目的は、外貨を稼ぐことに集約される。これを考えたときに、どうやって地方は観光戦略を立てるべきなのだろうか。今、日本の観光戦略に不足しているものは何だろうか。
観光に関する統計データを整備する
スペインでは、観光統計データも州、主要都市ごとに観光客数、国籍、宿泊日数などを把握して毎月公表。法令によりホテルや主要観光施設には詳細な報告を義務付けられていることで実現しています。そして、このデータに基づき観光状況を検討し、政策に反映させています。P.97
統計データを集め、提供することはひとつ重要な要素だろう。データがあって初めてわかることがあるし、データが公表されることで、いろんな人がそれを判断材料にできる。データに頼りすぎるのもよくないが、データは思い込みや誤解を排除し、新しい発見を与えてくれることがある。公共機関として重要な役割だ。
観光ルートを把握する
中国人観光客の観光ルートの定番は、関西空港から入国し空港近くのホテルに1泊。2日目は大阪、京都を観光し、滋賀県大津や岐阜県大垣などの比較的安価な宿泊地に宿を求めます。宿泊費の節約でしょう。P.162
東京で外国人を見かけたときは、みんな成田に到着して東京で宿泊するもんだと勝手に思っていたけど、こうやって具体的に示されると、なるほどと思うと同時に、言われてみないと気づかないもんだなと思う。
具体的なルートを知ることで集客の仕方も変わるし、意外なところで収益チャンスが生まれるもんだなあと感心。
観光者に受ける製品を考える
この本を読むまで全く知らなかった、海外で売れる商品をつくる地方企業というのがたくさんある。そのうちのひとつとして挙げられているのが以下。
古くから刃物の町として知られている岐阜県関市の刃物雑貨メーカー、グリーンベル。P.165
ここ。「ガイアの夜明け」でも取り上げられたそうな。
グリーンベル 匠の技
ルーペ付き爪切りなどが、中国人観光客に売れているのだそう。普通に自分の生活とか価値観を起点に考えていると、どういうものが売れているのかわからないものだなあ。
この本は地方企業の生き残りに関して、事例が豊富でかつ読みやすい。海士町のストーリーなどは読み物として楽しい。日本が観光によって外貨を稼ぐことができれば、閉塞感ある地方経済も新しい道が出てくるんじゃなかろうか。