ネーミングライツの適正価格について考える

完全にタイミングを逸した感があるけれど、京都会館のネーミングライツが、ロームという半導体企業によって50年50億円で落札された。その長い期間と金額の大きさに驚いたんだが。

異例の命名権50年間52億円 京都会館に半導体「ローム」 – MSN産経ニュース

一方で、「日産スタジアム」のネーミングライツは、最初の5年間の契約が満了し、契約更改されたが、年間4億7000万円から1億5000万円に、金額が大きく減った。このあたりにネーミングライツの値付けの難しさがあるように思える。

[N] 「日産スタジアム」ネーミングライツ継続へ

命名権は、1990年後半にアメリカで広がり、日本では2000年代から注目を集め、自治体等の公共施設の赤字補填の手段として注目を集めた。自治体側としても、こういう手続上の理由もあり、事例が増えていったものと思われる。

命名権 – Wikipedia

ちなみに地方自治法において命名権売却は「公有財産の処分」にあたらないため、各自治体の議会での議決は必要ない

「適正な価格」をどう測るか

わかりやすいのは、何か定量的な指標を見つけることだ。過去、フルキャストが宮城スタジアムのネーミングライツを獲得したの効果について、算出している。年間2億円の費用に対し、メディア露出量として4.4億円、2倍以上の効果があると試算されている。

スタジアム命名権のお値段と効果 – Spooky Data Spooks – Yahoo!ブログ

検索キーワードに対するヒット件数、というのもひとつの指標なのかもしれない。

ネーミングライツの費用対効果

AEDを製造するフグタ電子が、「千葉市蘇我球技場」の命名権を獲得したのは、施設内にAEDを配備して商品アピールをするため。こういう具体的なアピール方法もある。

 

定性効果をどう捉えるか

一方で、必ずしも定量的には測れない効果もある。「東京スタジアム」の命名権を購入した味の素は、若年層など普段は味の素と接点が少ない人たちに名前が触れることで、「親近感」が得られたという。

冒頭のロームについても、具体的な費用対効果というよりは、京都会館という地元に根付いた文化施設と企業イメージをリンクさせ、企業名や企業イメージを向上させることが狙いだろう。

そういう意味では、命名権を獲得したい企業と、施設のイメージとの親和性が重要なファクターになる。施設そのものがどういうファクターを持っているか、ということ。そして、そのファクターに魅力を感じる企業がどれぐらいいるのか、というのも価格を考える上で重要だろう。

 

期間はどう設定するか

これまでの日本の事例では、3~6年での設定が多いようだ。3年で変わる名称というのはどうか、という疑問もあるが、一方で契約期間を長くすることは、企業が経営リスクの面から嫌がったり、自治体側としても企業の倒産リスクから嫌がったりするので、これぐらいが落とし所なのだろう。

ただ、名称というのは長く続くからこそ愛着が生まれる、という気もするけどね。

 

考えてわかったこと

命名権というのは、ひとつの広告形態であり、広告効果を定量的に測ることは限界がある、ということ。しかし、そこに魅力を感じる企業はいるし、地方で小さくても、地元にイメージが定着している施設などでは、命名権を獲得したいと思う地元企業もいる、ということ。

自治体にとってひとつの収入獲得手段であることは変わらないけれど、ひとつのブームは既に去り、施設のイメージファクターを見極めるとともに、企業とマッチすることが求められてるんだろうなあ。