水ビジネスと国内の上下水道事業の運営状況に興味を持ったので2冊読了。1冊目は水ビジネス全般、2冊目は自治体関係者向けかな。
水ビジネス 110兆円水市場の攻防 (角川oneテーマ21) 吉村 和就 角川書店(角川グループパブリッシング) 2009-11-10 |
水ビジネスの教科書 ~水サービスを発展させる官民協働と業務改善の進め方~ 玉真 俊彦 技術評論社 2010-08-05 |
水資源の希少性
最近、中国から日本の山林を買う動きが出ているとニュースになった。
なぜ人気? 中国人、日本の森林を相次いで買収 (MONEYzine) – Yahoo!ニュース
表面上は材木資源の確保になっているが、本当は水資源が狙いなのでは、と言われている。
「バーチャル・ウォーター」という考え方で捉えられているが、飲料水のみならず、食品や機械などあらゆるモノに水が関連し、必要になる。日本は水資源が豊富で、比較的高品質な水が提供されているが、世界では水資源が貴重な国がたくさんある。資源だけでなく、その汲み上げ、管などの運営管理の技術も大切な要素だ。つまり、水ビジネスは特に国外でニーズがとてもあるのだ。
国内では水事業の育成が遅れている
日本の漏水率は諸外国に比べて低く優秀だ。国内平均で7%、東京都では3.6%に及ぶ。(諸外国は20%超。)また、水処理に必要な膜技術なども高く、一部メーカーや商社が海外進出している。しかし、世界の水メジャーのような上下水道の運営管理を一体に引き受けるような事業ではない。
理由は単純で、国内で民間が上下水道を引き受けて運営するような民間委託の事例が少ないからだ。その要因は、行政の縦割りにある。
水に関係している省庁の数は13にも及ぶ。例えば、下水道は国土交通省、上水道は厚生労働省、工業用水は経済産業省、農業用水は農林水産省、環境規制や浄化槽は環境省などが管轄している、といった具合だ。(水ビジネス)
こうなると、事業は管轄単位に分割され、市場規模が小さく非効率になりやすいのではないか。これでは企業側としてメリットが生じない。
国内も今後は民間委託・広域化が進む
今後の予想として、上下水道事業は次の問題点が指摘されている。
・水道管の更新タイミング
水道が普及した昭和30年代後半から整備された施設が、今後一斉に更新時期を迎える。それは2020年~25年がピークらしい。
・自治体の水道事業体が小規模かつ技術者不足
小規模自治体は、今後は財源と人材不足に悩まされることになる。
全国1800自治体の内、給水人口5万人以下の自治体は約7割を占めている。それに加え、中小水道事業では、もともと職員が少ない。給水人口10万人未満の平均技術職員は約5人であり、少ない職員で料金徴収から修理まで手がけている。(水ビジネス)
戦力となる技術者(計画、建設、維持管理までトータルに管理できる技術者)たちは、現在50歳以上のベテランが45パーセントを占めている。(水ビジネス)
このような状況から考えると、自治体としては民間委託が有力オプションになる。このような状況を考えれば、民間であれば人的資源を投入しつつ規模を拡大してスケールメリットを出すと思うが、自治体では地理的・法的・財政的制約によって、身動きが取りづらい。そこで民間委託をして、民間が自力でスケールメリットを追求するか、自治体自身が広域化することが予想される。
ITシステムも、地方では一人のSEが近接する複数の自治体を担当することで、スケールメリットを活かしている。指定管理者制度も整ってきているので、民間委託を進めることが、自治体・民間・住民にとってメリットが出るのではないだろうか。