日本の基幹産業である自動車ですが、ここ最近は大変革が起こっていきそうな予感しかありません。いろんなところから入ってくる情報でも、確信に変わってきています。
とはいっても、以前からその予兆というか大きなうねりがあり、それがどんどん表層化していると捉えた方が良いとも思いますが。
最近こちらの本を読んだので、それを参照しながらその大きなトレンドを整理しておこうと思います。
EV化へのシフト(アメリカ、中国)
まず最初は、世界中で始まっているEV化へのシフトです。テスラの躍進も注目されていますし、ヨーロッパや中国も政策としてEV化を推進しています。
ヨーロッパはこんな感じですし、
ドイツ自動車メーカーは2020年までに400億ユーロを次世代自動車に投資し、今後2~3年のあいだに100車種のEVを市場に投入するとしています。またフランスと英国は、ディーゼル車とガソリン車の販売を2040年までに禁止すると発表しました。
中国も積極的です。
現在進められている「国家戦略性新興産業発展計画」においても、新エネルギー車(NEV)が推進事業として定められています。さらには「NEV法(乗用車企業平均燃費・新エネルギー車クレジット同時管理実施法)」の制定によって、2019年以降、販売台数の 10%以上を新エネルギー車とすることを義務付け、EV化を推進しています。
自動車市場は、中国とアメリカが非常に大きな規模を占めており、これらの市場がEV化へシフトすると言っているのであれば、各メーカーや関連企業はその流れに乗る必要が出てきている、ということですね。
EV化によって影響を受けるのは内燃機関の部分だと言われてます。
EV化に伴う自動車メーカーの優位性低下
EV車は、ガソリン車に比べると非常に部品点数が少なく、製造ハードルが低いと言われています。
それによって、自動車産業へ参入するプレーヤーが増えてきています。中国では、多くのEVメーカーが誕生しているようです。
中国では、すでにEVメーカーが 60 社以上も存在すると言われています。まさに、群雄割拠の状況です。 従来のガソリン車と比較すると、EVでは吸気系・排気系が不要となり、エンジン系統での技術力や実績の価値が低下していきます。モジュール化・電子化・水平分業化が進み、多くの完成車メーカーが乱立していること自体、自動車産業への参入障壁が崩れ、業界構造がすでに崩壊していることの証左でしょう。
とはいえ、テスラの苦戦に代表されるように、まだ自動車メーカーが培ってきた生産技術の優位性がすぐに下がっているわけでもなく、これから少しずつ変わってくるという感じなのでしょう。
新車発売に予想外のトラブルはつきものだ。とはいえ、既存車種の「モデルS」や「モデルX」につきまとう欠陥は、テスラがいまだ基本的な製造技術の獲得に苦労していることを示している、と現旧従業員は話す。
焦点:EV大手テスラ、ささやかれる「拙速な製造」のツケ | ロイターから引用
AI・IoTによるICTの重要性向上
自動運転に代表されるように、自動車に関する技術は、IoTやAIの技術が重要度を増しており、まさにこの領域はIT系企業の優位性が光っています。
Googleは自動運転車の試験走行を続けていますし、AppleもiCarの構想があると言われています。テスラ・モーターズはネットワークを経由してソフトウェアアップデートを行います。
自動車の中に、どんどんIT技術が入り込んでいるわけです。これまでの自動車メーカーにとっては、新しい脅威の出現でしょう。
所有からシェアリングへのシフト
最後のトレンドは所有からシェアへのシフトです。シェアリングエコノミーと言われる、Uber
に代表される配車サービスが、自動車の共有を促進させています。
また自動車を「オーナーカー」(消費者が所有するクルマ)と「サービスカー」(消費者は所有せずサービスとして利用するクルマ)に分類すると、近い将来には、サービスカーの世界においては、完成車メーカーとシェアリングサービスは現在の「航空機メーカーと航空会社」の関係性に近いものになる、というのが私の予想です。
シェアリングが進むことで、自動車の消費が増えるのかどうかは議論が分かれるところですが、個人的にはニーズとともに消費も増えていくと思います。
シェアリングプラットフォームができて今後も強力な存在になっていったとき、自動車メーカーはどういう付き合い方をするのでしょうか。
最近になって、トヨタとUbeは提携を発表しました。
トヨタ自動車とUber社、自動運転車に関する技術での協業を拡大 | CORPORATE | トヨタグローバルニュースルーム
お互いの自動運転技術を搭載、連携した自動車の製造を行うようです。
以上、ざっくりと大きなトレンドを見ました。細かいところを知りたい方は、本書に詳しい事例などが書いてありますので、どうぞ。
とはいえ、急激に変わって旧来の自動車メーカーがダメになるかといえば、そうとも言えず、自動車メーカーの製造技術などの優位性はまだ強固でもあります。
各プレイヤーの思惑や政治的な動きもあって、いろんな変動が起こってきているのが今の自動車業界です。そして自動車製造は複数年かけて計画的に行うので、今のうちから水面下で計画見直しなどの動きが出ているとも聞いています。
自動車関連ビジネスは、見直しも含めて今のうちから対応が必至のようです。
これらの記事も参考になりました。
EV移行にワナ、エンジン軽視は危険 未来カーの行方 :日本経済新聞
「EVシフトが世界中で加速」説の虚構、出遅れ日本にもチャンスあり? | CAR and DRIVER特選! ドライバーズ・インフォメーション | ダイヤモンド・オンライン
自動車業界の近未来 — Singularity Society
テスラ・モーターズについて、以前書いた記事はこちら。