NRI セグメント別売上高

野村総合研究所(NRI)の業績を10年以上分析した

昔分析した野村総研の記事が、今でも結構アクセスされるんですよね。ただ最後に書いたのが2015年と古くなってきたので、久々に情報アップデートしようと思います。

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各セグメントごとの業績推移

2001年から2017年までのセグメント別売上高を確認しました。

NRI セグメント別売上高

まず全体として。多少の波はあるものの、順調に成長していますね。売上の伸びが一度止まっているのが2008年です。リーマンショックがあった年ですね。後述しますが、野村総研は金融と製造に対して強い企業なので、特に金融などの影響を受けたと思われます。

次に、セグメントごとの傾向も見ていきます。もう一度グラフを見てください。

NRI セグメント別売上高

注意していただきたいのは2009年と2010年でセグメントの分類が変わってきていることです。2009年以前に関しては、最新のセグメントに合わせてプロットし直しているので、分類が異なるかもしれません。参考程度に見てください。

これを俯瞰して見えるのは、売上高として1番稼いでるのは金融ITソリューションであると言うことです。野村総研は金融系に強いというのがよくわかります。もともとは野村証券のITシステムを対象にビジネスとして始まったので、成り立ちから考えると、当然とも思います。

それ以外でも、全体からの比率では小さいですが、コンサルティングが着実に増えていますね。IR資料でもコンサルティングが先頭に書いてありますので、このあたりを注力分野と位置付けて、投資家にもアピールしてる意図かもしれません。

こうやって見ると、セグメントごとには大きなトレンドや変化があると言う感じではなく、それぞれのセグメントで少しずつ成長を積み重ねて今があるという状況でしょうか。

ITビジネスは、一件あたりの規模が比較的大きく、期間も長いです。なので獲得できれば安定的にビジネスを回ることができますが、失注するとダメージも大きくなります。最新の決算説明会も動画で確認しましたが、大型の失注なども発生しているようです。

他のSIerとの比較

比較しやすいSIerの業績数字を見てみます。こちらが売上高の比較です。

SIer売上高

NTTデータの数字が突出しており、野村総研はNTTデータ以外では上のあたりです。

続いて営業利益率。

SIer営業利益率

こちらだと、野村総研は高い営業利益率を確保しています。

他社との比較や、野村総研自体の堅調な成長を考えると、参入障壁が築けており、コンペティターに行けない独自性を確立していると言えるのではないでしょうか。

最近のITを取り巻くトレンドがよくわかるIR資料

ということで、数字だけを見てもあまり今後の状況は予測しづらかったのでIR資料も少し読んでみました。そのIR資料が、今後のITトレンドを把握するのにとても理解しやすかったので、いくつかポイントをピックアップしたいと思います。

コーポレートITからビジネスITへ

既存の業務をIT化して生産性を上げると時代は既に終わっており、あまり広がらないビジネスになっています。野村総研ではそれをコーポレートITと呼んでおり、ビジネスを拡大するITをビジネスITと呼んでいました。

2017年3月期決算および2018年3月期業績見通し
(IR資料より)

コーポレートITはいわゆるコストセンターとして捉えられ、いかにコストを削減し投資対効果を高めるかが重要になります。一方のビジネスITはプロフィットセンターになります。今後はビジネスITへのシフトが重要と認識されているのです。

これとCIOとCTOの機能分化が説明されており、個人的にはこの関係図が非常に頭をスッキリさせてくれました。


(IR資料より)

システムを最適化させるCIOではなく、ビジネス変革を行うCTOという役割の方が注目されている、というわけですね。

コーポレートITはアウトソーシング拡大

じゃあコーポレートITの部分については今後は見込めないかというとちょっと違っていて、ここについては企業としてもあまり抱えていても仕方がないので、積極的にアウトソースする領域になっています。そのためアウトソースの範囲が拡大しているんですね。

野村総研の場合は、包括的なITパートナーとしてグループまるごとのITインフラを共通化したり様々な取り組みを一緒に行っていく関係を築くことでビジネス領域を広げる期待があるようです。


(IR資料より)

ということで、経営環境としては追い風のようです。移り変わりが早いのはITビジネスであり、気づくとすぐに既存のビジネスモデルは陳腐化しています。「自社の競争優位性を高めて、参入障壁を確保する」というこれまでの路線を踏襲しつつ、トレンドを読み、新しい領域に投資しながら、売り上げを拡大させていくという方向性はしっかり持っているのだと確認できました。