マジでおすすめ。「サピエンス全史」は人間の本質や今の社会の仕組みを新しい視点で理解できる

最近話題になってるビジネス書、「サピエンス全史」を読みました。面白すぎて、最後まで退屈せずに読み切ることができました。

 

長い本で、様々な示唆に富んでいたので、いろいろ感想はあるのですが、この本を表す端的な表現があとがきにあったので、まずはそこを引用したいと思います。

読書の醍醐味の一つは、自分の先入観や固定観念、常識を覆され、視野が拡がり、新しい目で物事を眺められるようになること、いわゆる「目から鱗が落ちる」体験をすることだろう。読んでいる本が、難しい言葉で書かれた抽象論だらけではなく、一般人でも隔たりを感じずに、すっと入っていける内容がわかりやすい言葉で綴られているものだと、なおありがたい。まさにそのような醍醐味を満喫させてくれるのが本書『サピエンス全史』だ。

銃・病原菌・鉄」を読んだ時も同じような感想を抱きましたが、普段捉えることのない時間軸で物事を捉えると言うのは、全く新しい示唆を与えてくれるものだなと思います。

文明の発達の違いはなぜ起こるのか

 

人は想像を共有することによって強くなる

本を読む前に、著者のTEDにあるスピーチをみると、概要がつかめると思います。

著者の素朴な疑問のスタートは、なぜホモ・サピエンスという種別がこれほど地球上で繁栄をし、様々な生き物の頂点に立ったのかところにあります。

そして繁栄の要因として挙げられるのが、人間が大多数で集まって共通の行動を取れることにあると述べています。またその集団行動には、柔軟性があることも重要なポイントです。つまり、とても大きな集団で、かつ柔軟性のある複雑な行動を規律を持って行えるのが人間だけだということです。

そのような大多数で柔軟性かつ規律ある行動取れるのは、実態がない虚構なものを「概念」として捉える想像力だと著者は説きます。

だが虚構のおかげで、私たちはたんに物事を想像するだけではなく、集団でそうできるようになった。聖書の天地創造の物語や、オーストラリア先住民の「夢の時代(天地創造の時代)」の神話、近代国家の国民主義の神話のような、共通の神話を私たちは紡ぎ出すことができる。そのような神話は、大勢で柔軟に協力するという空前の能力をサピエンスに与える。アリやミツバチも大勢でいっしょに働けるが、彼らのやり方は融通が利かず、近親者としかうまくいかない。オオカミやチンパンジーはアリよりもはるかに柔軟な形で力を合わせるが、少数のごく親密な個体とでなければ駄目だ。ところがサピエンスは、無数の赤の他人と著しく柔軟な形で協力できる。

 

こういう視点で物事を捉えたことがありませんでしたが、実際に考えてみるとたしかにそうで、人間の強さの本質を表しています。

 

社会の仕組みは信用の上で成り立っている

虚構を作り出すことで、人間同士が協力できるようになっています。そして、さらにある虚構を世界に広がることで、遠い他人も信用し、同一のルールで様々な交流や取引ができるようになっていきます。

その代表的なものが宗教やイデオロギーで、これらの言うなれば「虚構」として著者はとらえています。さらに、現在僕らが信じている「個人の平等や権利」なども、同じ「虚構」ということになります。

そして、最も強固な「虚構」が貨幣制度です。

したがって、貨幣は相互信頼の制度であり、しかも、ただの相互信頼の制度ではない。これまで考案されたもののうちで、貨幣は最も普遍的で、最も効率的な相互信頼の制度なのだ。  この信頼を生み出したのは、非常に複雑で、非常に長期的な、政治的、社会的、経済的関係のネットワークだった。なぜ私はタカラガイの貝殻や金貨やドル紙幣を信頼するのか? なぜなら、隣人たちがみな、それを信頼しているから。そして、隣人たちが信頼しているのは、私がそれを信頼しているからだ。

 

昔、竹中平蔵さんが小泉政権に時にテレビでに出演していて、そのときに「貨幣というのは信用である」と語っていたのを今でも覚えてます。そのときにはあまりピンときませんでしたが、この本を読むとまさに「貨幣は信用でできている」と納得できます。

こういう、全体が信用できる仕組みができたので、世界各地で貨幣経済を行うことができるわけですね。つまり、いろんな人が相互に信用し、協力関係を築ける概念や考え方を生み出すと、強力な組織を作り出せるんだな、と思います。

 

文化はひとつに収れんされていく

本書の衝撃的なことは、ホモ・サピエンスを神聖視するのとは逆で、人間がいかに残虐なことをしてきたか、生物をどのように絶滅させてきたか、家畜をどのように制御してきたかという、ネガティブな側面にも光を当てていることです。

人間はアフリカを出て、世界中に広がり、そこで生物や原住民を絶滅に追い込んできました。そのようにして、どんどん人間がとらえる世界が広がっていき、結果として文化がどんどん収れんしています。

グローバル社会、フラットな世界などの表現はありますが、長期的な人間の歴史でとらえれば、それは間違いないことのようです。であれば、それを前提に、個人単位でも世界を意識する必要があるのかもしれません。そして、グローバルスタンダードと呼ばれるような世界基準に合わせて、制度を理解していかないといけないんだな、とやや漠然とではありますが考えました。

 

上記以外にも、宗教の重要性、なぜ投資が世界を発展させたか、今の平和な時代はどういうロジックで形作られていて、これからの未来はどういう方向に向かっていくのか。興味深い分析が満載です。すごいおすすめ。

同じ著者が、今後の未来にフォーカスした作品も話題のようですね。日本語訳も出るようです。