AIが普及するこの世の中で、ビジネスはどう変わるのか

IGPIの富山さんの本は昔から読んでいるのですか、読むたびに新しい発見があり、目からうろこの連続です。

IGPI流経営分析のリアル・ノウハウ

2012.06.21

プロフェッショナル・コンサルティング

2011.07.14

今回の本は経営の目線から、現在のビジネス環境や構造を多角的に分析しており、新しい発想がてんこ盛りという感じです。

AIやIoTが自分の会社にどういう影響を与えるのか考える上で、非常に良い一冊となっております。

 

AIはビジネスをどう変化させていくのか

AIに関する本や記事がたくさん登場しており、これからの未来がどう変化していくのか、様々な角度から考察されています。

AIの技術がどう進化していくのかは、ある程度予測が立てられていますが、それがビジネスにどのようにインパクトを与えるのかは、実際のビジネス構造を踏まえる必要があります。

その点でこの本はうってつけです。例えば、士業はAIにとって代わられるとよく言われていますが、税理士に関してこのような記述があります。

意外となくならないのは、税理士。なぜかというと、税務署の判断はかなり曖昧で、自由裁量に委ねられているので、交渉の余地があるからだ。昔は会計士も交渉の余地がたくさんあったのだが、それをやりすぎて数々の問題を起こしてきたから、最近は交渉の余地を残さない方向になってきた。なるべく恣意的な判断が入り込まないように、機械的に割り振るようになり、粉飾事件が起きれば起きるほど、人間ではなく機械に任せたほうがよくなってしまう。税理士は税務調査が入ると、必ず交渉が発生して、それによっておみやげがあったりするから、人間でなければいけないのだ。人間と人間の交渉の余地、人間の裁量の範囲が広い部分は、人間の仕事として残っていく。同じ意味で、弁護士の仕事も意外となくならない。交渉事がとても多い仕事なのと、法律は、じつはかなりファジーに出来ているからだ。

 

機械でできる手続き処理などは、どんどんコストが低下して競争性がなくなっていきますが、一方でファジーでコミュニケーションが求められる領域は、人間にとって競争優位性を発揮できる部分になります。税理士や弁護士なども、職業はなくならず、競争優位性のポイントがコミュニケーション部分によりシフトしていくということでしょう。

これが真実であるかどうかはさておき、実際のビジネスがどういうゴジック出回っており、それをAIや雪がどういう風に変化させていくのかを考える必要があると言う意味で非常に重要な示唆を含んでいます。

 

また、これまでのIT革命で遅れた日本に対しても、これからのAIの進歩については日本はアドバンテージがあると説いています。

それもあって、日本では誰に遠慮することもなく、AIやIoTやロボティクスのテクノロジーをガンガン入れて、ガンガン生産性を上げていける土壌ができつつある。ローカル経済圏から政治的な突き上げを食らっている欧米先進国では考えられない状況で、ほとんど唯一の存在ではないか。発展途上国では人を使ったほうが安いし、新興国でもまだ自動化に対するニーズはそこまで高くない。世界で唯一、日本だけが国の総意としてAIやIoTに積極的にチャレンジできる。

 

人口減少・少子高齢化・ガラパゴス化など、様々なディスアドバンテージがあるように思える日本の状況ですが、世界を見渡すと、日本の市場は人手不足が生産性向上を促進させるという点で、ディスアドバンテージが逆に有利に働くという視点は、とても新鮮でした。

 

これからは『ローカル』で『シリアス』な世界が訪れる

富山さん独自の用語として、「Sの世界」や「Lの世界」、「Cの世界」、「Gの世界」というキーワードが出てきます。

これまでは「Gの世界」と「Cの世界」が強く支配していました。

「Gの世界」とは、グローバルのことです。世界の情報や物流がひとつにつながり、世界全体でフラット化していきました。その結果として、ビジネスモデルがダイナミックに変化していき、スマイルカーブに従ってコモディティ領域はどんどん先進国から抜け出していきました。

また「Cの世界」とはカジュアルのことを指しており、インターネットやアプリケーションなど、バーチャル領域だけで完結しており、実世界への影響が非常に限定的であるという意味です。そのため、人命等にリアルに直結することは少なく、トライ&エラーによってビジネスを発展させるスタイルが進化していきました。

 

しかし、これからは「Lの世界」と「Sの世界」が訪れると著者は分析しています。

「Lの世界」とは、グローバルの対義としての「ローカル」を指します。これからはローカル経済が到来するというのです。唐突に言ってもよくわからないかもしれないので、一説を引用しましょう。

その意味で、これまたG型産業であるグローバル製造業から見ても、Lの領域は、今後より重要な価値を持ってくる。ここでもスマイルカーブ化の圧力、ビジネスのサービス化のプレッシャーが強まる中で、地域や顧客との関係で密着度と密度を高めること、すなわち「密度の経済性」を効かせることが、特にディフェンスを固める上でより重要になってくるからだ。L型産業は今や、Gの世界の人たちから羨ましがられる産業に脱皮変身する潜在力を持っている

 

詳しくは本書をぜひ読んで欲しいのですが、簡単にいえばスマイルカーブがいろんな産業で進展し、最終的には顧客との接点が重要な上流と下流が差別化の要因になる。それらの顧客との接点こそ、地域に密着した企業が持っているということです。

 

また、ローカルと関連する「Sの世界」は、カジュアルの対義となる「シリアス」を指しています。これは、バーチャル領域だけでなくリアルな世界にITが進出してきており、これまでと違う要因がビジネスに求められてきていることを指しています。

わかりやすい例として出されるのは、「パソコンはコモディティ化したのに、自動車はなぜまだ大手メーカーが支配しているのか」というものです。

そう、自動車の世界、リアルモビリティーの世界は、「Sの風」がかなり強く吹いている事業領域だ。アップルのような「Cの風」をつかむのが得意な遺伝子を持っている企業とは相性が悪いのである。少なくとも「IT系ベンチャー」との比較においては、ホンダ自身の方が電気自動車版のCVCCエンジンを開発できる確率は高い

 

人命に直結する自動車産業などは、シビアな製造品質が求められるため、トライ&エラーとはあまり相性がよくありません。また、様々な企業群が一体となって事業を形成しており、ビジネスを作り出すためのハードルが何重にも高くなっているのです。

こうみると、AIによる革命は新しい段階を迎えていることがわかるでしょう。

 

 

AIで人間の仕事を奪われるとよく言われていますが、今の仕事がなくなるかもしれませんが新しい仕事がたくさん生まれるでしょう。それはこの動画を見れば分かります。

今は新しい時代が到来しつつあり、これまでの価値観やビジネスルール、個人のレベルで言えばキャリアパスなどは考え方が大きく変わってきているのかもしれません。(本書の中では、キャリアの考え方、それを踏まえた企業の組織モデルについても言及されています。)

「AI」というバズワードに惑わされないように、ちゃんと理解をして、自分の企業ビジネスの変革やキャリアパス形成に取り組んでいきたいもんですね。

というわけで、めっちゃおすすめです。

 

ちなみに、5月のKindle月替わりセールに、「人を操る禁断の文章術」がありますね。こちら、セールス文章をどう書くかという点で、非常によく書かれているので、興味がある方はどうぞ。

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