【書評】決定版 インダストリー4.0―第4次産業革命の全貌

この間、日本のIT業界が稼げない業界になってしまっていることを書きました。

なぜIT業界が「稼げない業界」になってしまっているのか

 

この記事の最後に、ICTがメインビジネスに組み込まれることで、IT業界は再度見直されるという希望を書いています。

そして、そのひとつが製造業に登場した「インダストリー4.0」だと思っています。というわけで、最近話題のインダストリー4.0を読んでみました。

 

ICTが製造業に入り込む「インダストリー4.0」

ドイツ発祥のインダストリー4.0は製造業を新しい領域に進展させようとしています。

平たく言ってしまえば、最近のITトレンドであるIoT、ビックデータ、データアナリティクス、人工知能を活用し工場生産をさらに向上させようとしていることになります。これによって、多様化するニーズに柔軟に応えつつ、大量生産と同じ効率性を維持することが可能になります。

さらに、工事生産をサービス化しそのスキーム自体を売ろうとしています。

製造業は、製品を売ったら終わりの従来のビジネスモデルから、センサーやビッグデータ分析を駆使したアフターサービスで付加価値を高める新しいビジネスモデルにシフトしていくと考えられています。ちなみに、GEは、IT企業と連携してビッグデータ分析をしてきた従来の方針を転換し、ソフトウェア会社を設立して、ビッグデータ分析ソフトを自社開発しました。他の企業に、IT企業としてこのソフトウェアを提供し、クラウドサービスを販売するというビジネスも始めているのです。

 

これって農業や物流でも似たような流れになっていて、IoTやビックデータ、データアナリティクスなどの活用によって、生産性の向上、付加価値の向上、サービス日が注目されています。

例えば、農業だとこんな事例があります。

「農業IoT」が日本の農業を変革。栽培状況をクラウド管理は常識に:次世代農業EXPO – Engadget Japanese

 

物流はこんな感じ。

「IoT」は今後、サプライチェーンや物流業界に約226兆円規模の利益をもたらす|DHLジャパン株式会社のプレスリリース

こうやってどんどんICTがビジネスに直接関わっていく比率が、全体のトレンドとして増えています。

 

国家戦略として取り組むドイツとアメリカ

ではなぜ、インダストリー4.0と言う言葉が注目されているのかといえば、ドイツやアメリカなど国家が率先して製造業をレベルアップさせようとしているからです。

日本も製造業の比率は非常に高いのですが、どうやら国家戦略と言う意味では遅れをとっているようです。本書の中でもグローバルスタンダードができつつあり、日本は高い技術力を生かし、グローバル標準に乗って行こうと述べられています。

これからグーグルをすぐに日本独自で作ることができるでしょうか。かなり難しいです。同じように、「日本が独自にやるぞ」と始めても、質量とも大きくなっている世界のテクノロジーは待っていてはくれません。中央図書館だけでやろうとしてもうまくいかないのです。  それならば、日本の得意とするものづくりの技術をもって、世界ネットワークができつつあるプラットフォームに謙虚な気持ちで乗っていく。これが得策じゃないでしょうか。

 

ドイツの戦略で感心したのは、中小企業の底上げをインダストリー4.0で狙っていることです。ドイツも中小企業の比率が多くなっており、全体の底上げによって生産性を向上させることが必要になっています。そういう意味で、国家が主導して製造業をレベルアップさせていくのは非常に効果的な気がします。

「ドイツの企業は、ほとんどが中小企業です」と聞くと意外に思われるかもしれません。  自動車メーカーのダイムラー、BMW、アウディ、フォルクスワーゲン、自動車部品のボッシュ、発電、医療、ファクトリー・オートメーション(FA)で有名なシーメンス、ERPで世界トップのIT企業SAPなど、ドイツの大企業は、世界的に活躍し、日本でもよく知られています。  ところが中小企業数の全企業数に占める比率は99%。実は、ドイツは日本とよく似ていて、企業のほとんどが中小企業なのです。

 

いろいろ調べてみると、日本の製造業は海外投資の比率がドイツに比べて低かったり、利益率も低い状況にあるようです。

中小企業のうち輸出を行っている中小企業の比率は、ドイツが20%なのに対して、日本は3%です。次に、中小企業の中で対外直接投資を行う割合を確認します。ドイツの17%に対して、日本は0・3%にとどまっています。これは、製造業のグローバル化を受けてドイツの中小企業が海外との貿易取引や企業進出に積極的に取り組んできたことを表しています。

 

こうやって見ると、製造業は今後とても大きく変わっていくような予感しかありません。また、冒頭で述べたように様々な業種・業界が、今後ICTの活用によってこれまでのビジネスを大きく変えていくのでしょう。それはすでにグローバルレベルで変化しています。これを読まれている皆さんも、自分がいる業界がICTによってこれから大きく変わっていくことになるはずです。

と言うわけで、インダストリー4.0の概況を知りたい方はぜひこの本を読んでみてください。

 

 

参考;政府は製造業に興味無し!?インダストリー4.0予算ゼロの実態 | 山田太郎