Microsoftが「Build 2015」という開発者向けカンファレンスで新しい戦略をいろいろ発表しました。たくさんのネタが発表されたのですが、Microsoftの戦略として面白い動きがあったので書いておきます。
「Build 2015」の概要をつかむなら以下の記事がわかりやすいです。
ついに目覚めた巨人 Microsoftの逆襲 – WirelessWire News(ワイヤレスワイヤーニュース)
特に面白かったのは、
Windows 10上でiOSやAndroidなどのアプリを実行できるようにした
ことです。この意図を読み解くには、これまでのMicrosoftや競合企業の動きを理解する必要があります。順を追ってみてみましょう。
モバイル戦略に乗り遅れたMicrosoft
スマートフォンの普及によって、デバイスの数でみるとPCは相対的にシェアが下がりました。
モバイルデバイス出荷台数、19.9%の大幅減 PC・Android・iPhoneすべて不調 |ビジネス+IT
このモバイルの普及に対して、モバイル市場はAndroidとiOSに占拠されて、Windows Phoneは出遅れた状況です。
(出所:調査リポート:OS別世界スマートフォン市場シェア、AndroidとiOSが96.3%に──IDC調べ – ITmedia Mobile)
これを挽回するひとつの戦略として、タブレットやモバイルでWindowsを無料開放したり、OfficeをiOSに提供しました。詳細は、以前書いたブログの記事を参照していただけると。
https://synapse-diary.com/?p=2607
これによって、モバイルにおけるシェアを少しでも高めようとしているわけですね。無料開放すると、どこで儲けるのさ?って思いますが、Microsoftはビジネスモデルを大幅に転換しているようです。その詳細は後ほど書きます。
PC・タブレット・モバイルはシームレスに統合する必要がある
デバイスの普及はどんどん進んでいて、一人でPC・タブレット・モバイルなど複数のデバイスを保有し、場面に応じて使いこなすようになっています。
Appleは、MacとiPadとiPhoneで、統一的なUIやアプリケーションを提供し始めていて、どんどん統合を進めています。これらの製品間で、シームレスに情報のやり取りができるようになっています。それは、まさにこういう背景を反映した戦略です。
Microsoftも、モバイル戦略で出遅れましたが、まさにここを狙ってきています。最近発表されたWindows 10では、7つのエディションが全て「Windows 10」の名前がついていて、その中でモバイル向けも存在します。重要なポイントを、解説記事のひとつから引用します。
Windows 10の世代から、スマートフォン向けのOSも Windows Phone ではなくPCと同じ「Windows 10」のモバイルエディションという位置付けになりました。スマートフォンのほか、タッチ中心の小型タブレットでも Mobile を採用します。 アプリは Windows 10デバイス汎用で動くユニバーサルアプリに対応。Windows Store でユニバーサルアプリを入手すれば、PCでもモバイルでも、UI画面の大きさや入力方法にあわせて最適化しつつ実体は同じアプリが動きます。
速報:Windows 10のエディション構成発表。Home / Pro / スマホ版Mobileは無料アップグレード(期間限定) – Engadget Japanese
つまり、PCもモバイルも「同じOS」として捉え、アプリケーションも両方で同じように使えるようになるそうです。
ここから、今回iOSやAndroidのアプリケーションもWindows上で動かせるようにした理由が見えてきます。(厳密には、「比較的」簡単にiOSやAndroidのアプリを移植しやすくした、というわけで、ソースコードの多少の書き換えは必要なようですが。)
モバイルで大きくシェアを握っているiOSやAndroidからアプリを展開できるようになれば、Windows Storeの魅力も向上するのでは、と期待されます。つまり、Windowsというプラットフォームを開放させることで、プラットフォーム自体の魅力を向上させよう、というわけですね。
今、Microsoftはビジネスモデルを大きく転換させている
Windows 10の発表からいろんな情報が出てきましたが、これらを読み解くと、これまでのMicrosoftのビジネスモデルを転換させようとしていることがわかります。
例えば、Windows 10は無償でバージョンアップされて、さらに機能追加も無償で行われます。
Windows 10は、Windows 7以降の環境に無償で提供され、さらに、将来のメジャーバージョンアップまでは無償で機能追加等が行われることになったという。
最近はセキュリティ対策やサービス化の流れから、ソフトウェアは無料化が主流です。AppleはOSを無料アップデートしていますし、AndroidなどGoogle関連サービスはずっと無料です。
この流れを追うように、Microsoftもこれまでのようにソフトウェアのバージョンアップでお金を取るのではなく、Windowsをプラットフォームとして捉え、サービス化(利用料金の形で課金)しようとしているのです。
既に売上高としても、MicrosoftはWindowsに依存しなくなっています。以下の記事によると、Microsoftの売上高におけるWindowsの割合は、25%程度だそうです。Officeやクラウドサービスでの売上を伸ばしています。
2002年、デスクトッププラットフォーム部門はMicrosoftの総売上高の33%を占めていた。その割合は縮小し続けており、2013会計年度には、該当する部門(Microsoftの「Surface」ハードウェアも含まれるようになった)が同社の着実に増え続ける総売上高に占める割合は、わずか25%になった。その間、サーバ製品、「Microsoft Office」などのデスクトップアプリケーション、クラウドサービスは着実に売り上げを伸ばした。
Windowsでの収益拡大を狙うよりも、Windowsをいろんなデバイスからオフィスやクラウドサービスへアクセスするための「プラットフォーム」に育てることで、オフィスやクラウドサービスの収益を拡大させようという狙いなのだと思います。
まとめ
- Microsoftはモバイルの普及に対して出遅れた
- モバイルシェアの高いiOSやAndroidから、Windows向けにアプリを移植してもらって、Windows Phoneの価値を高めたい
- 一人でPCやモバイルなど複数のデバイスを使い分けるようになっており、デバイス間の統合が必要
- Windows 10では、PC・タブレット・モバイルが同じOSとして提供されることになっている
- Windowsは稼ぎ頭というよりは、オフィスやクラウドサービスの「入口」的な役割を担う
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Windows Phoneを調べてみたら、結構安くありました。しかもAmazonのレビュー評価も結構良いんだけど。Officeも使いやすいみたいだし、試してみるのもいいんじゃないの?