「起業家」と呼ばれる人は、どういう考え方をしているのでしょう?
あるいは、「起業家」と呼ばれる人たちは、なぜあんなにリスクテイクして行動することができるのでしょう?本書は、世の起業家の考え方、行動アプローチを「方法論」として述べたものです。
起業家というと大層な感じがしてしまいますが、ビジネスの革新スピードが速くなっており、不確実性が高い時代においては、どんな組織に属していても、企業内で起業家的な行動を求められる場面が多くなるでしょうし、いつかは退職して独立するかもしれません。起業家の考え方というのは、いろんな人に共通して知っておくと良いものなのです。
「起業家」にはメソッドがある
本書は、起業家教育に特化したバブソン大学の起業家理論をまとめたものであり、バブソン大学の卒業生には、トヨタ自動車の豊田章男氏や、イオンの岡田元也氏がいます。
本書は冒頭でこう述べています。
私たちは、起業家が予測できない世界を一般人とは違う視点で見ることだけでなく、問題に対する起業家特有のアプローチ法はきちんと順を追って説明できる、ということにも気づいた。つまり、起業家のメソッドは誰もが実行できるのだ。
リスクを取る勇気がないといけない、膨大な資産がないといけない、突飛なアイデアを思いつく独創力がないといけない、など、起業家が持たれるイメージが本書では否定されています。実際には、リスクを許容範囲内に抑え、新しい領域に前進していくための方法論が述べられているのです。
「予測すること」が愚かな場合は行動しよう
仕事では、ちゃんと事前に調べ、計画を立て、それがうまく進むように行動することを求められます。これはとても重要なことで、ちゃんと事前に計画することが、ミスを防ぎ、考慮漏れを防ぎ、計画通りの実施に結びつくからです。
しかし一方で、予想通りにいかないことも世の中にはたくさんあります。どれだけ事前に計画しても、そのとおりにいかない場合もあるのです。それは、計画の対象がどの程度「予測できるか」によって、計画の立て方も変わるのです。ほぼ高い確率で予測できる領域であれば、計画を立てる方が望ましいです。しかし、ほとんど予測が難しいところは、計画を立てても無駄に終わります。
起業というのは、そういう「予測がしづらい」領域に活路を見出すことがほとんどであり、計画的に調べて実行に移すということが極めて難しいのです。その場合には、損害を許容される範囲に抑えながら、情報や経験を集めていきながら、サービスを確立していくことが求められます。これを解決するのが「行動」であり、起業家に求められる特性なのです。
そして、積極的に行動していく特性は、誰しも備わっていると本書では述べられています。
子どもの頃は、何をするにも知らないことばかりで、誰もが行動から状況を学んだはずだ。たとえば、音を立てたら何かが起きた。母親が振り向いたかもしれない。あるいは猫の尻尾を引っ張ったら引っかかれた、という具合だ。つまり、私たちが提唱しているのは、遠い昔に持っていたスキルを取り戻すことにすぎないーーまずは行動を起こし、さらに深く状況を理解する能力のことである。
行動しながら改善していくという考え方は、「リーン・スタートアップ」と共通するものがあります。
これからの時代を生き抜くためには、いろんな不確実で複雑な出来事にぶつかっていくでしょう。インターネットは膨大な情報を無料で入手しやすくしましたが、それでも変化は常に起こっています。これまでに教わってきた、「予測し、計画してから行動する」やり方では、通用しない場面が増え、やり方を変えなければいけません。
本書を読んで、自らが行動し、新しい時代を勝ち抜くための考え方を手に入れましょう。