ソフトバンクがTポイントへ出資、というニュースがありました。
ソフトバンク、Tポイントに出資 ヤフーも追加出資:朝日新聞デジタル
また、同じタイミングでファミリーマートも出資しているようです。
「Tポイント」に200億円出資 ソフトバンクとファミマ :日本経済新聞
最初は、「Tポイントへ出資」の意味がわかりませんでした。「ポイントに出資する、ってどういう意味だろ?」と思ったのですが、「株式会社Tポイント・ジャパン」というCCCとは別会社がいるんですね。さらに、「株式会社Tポイント」という別会社もあります。
これまでのTポイントと個人情報保護の関係
今回の出資の意図を考えるには、Tポイントのこれまでの経緯を理解しておく必要があります。
Tポイントというのは、自社だけでなく複数の企業が付与・利用できるようにする仕組みになっています。ポイントは、複数の企業にまたがるデータを集めて、分析することで、マーケティングに活用しよう、という取組みであった点です。
その何が問題なのか?といえば、「共同利用する」という範囲がユーザーから見て非常にわかりづらい点です。それが個人情報保護法にも抵触しているのでは?という話があったわけです。要は、「取得した個人情報を共同利用するからには、その範囲を事前に明確にしておく」という点が、ポイント参加企業がどんどん増えていくことで、明確にできなかったというわけです。なので、ユーザーが個人情報を提供した時点では意図しない形でいろんな企業に情報が共有される状況だったわけです。
個人情報保護法とTポイントの関係は、この記事を読むとわかりやすいと思います。
Tカードは個人情報保護法違反に該当するのか?──津田大介の「メディアの現場」vol.44より:津田大介の「メディアの現場」:津田大介チャンネル(津田大介) – ニ(コニコ)ちゃんねる:社会・言論
そのような指摘もあり、Tポイントは規約が改訂されて、複数企業による「共同利用」から、「第三者提供」という位置付けに変えました。同時に、「自分の情報は第三者に提供したくない」という意思表示をできるオプトアウト手続きが提供されています。
ニュース – 「共同利用」から「第三者提供」に、CCCがT会員規約を大幅改訂へ:ITpro
ソフトバンクやファミマがTポイントに出資することの狙いは?
簡単にいえば、データの共有を促進させたい、ということでしょう。単なる参加企業の場合、「第三者提供」という形になりますので、オプトアウトなども含めて個人の購買履歴などがうまく利用できない可能性が今後高まっていくと予想されます。
しかし出資関係を構築することで、「グループ企業」という事実関係を作れることから、より深くいろんな企業で取得した購買履歴などの情報を共有することが可能になると思われます。それは、先ほど挙げた記事を読むと書いてあります。
鈴木:はい。今回のTカード問題でまず論点になるのが、(3)共同利用者の範囲です。T会員規約には、共同利用者の範囲は「当社の連結対象会社及び持分法適用会社」と「ポイントプログラム参加企業(TSUTAYA加盟店を含みます)」と示しています。 経済産業分野ガイドライン45頁をみると「本人からみてその範囲が明確であることを要するが、範囲が明確である限りは、必ずしも個別列挙が必要ない場合もある」というように示されています。 持って回った言い方をしていますが、ここの趣旨は、共同利用者の範囲は、第一に個別列挙方式を原則とすること。すなわち、A社、B社、C社とすべて限定列挙することが望ましいということを示しています。第二に、本人から見て共同利用者の範囲の明確性があれば例外的に個別列挙原則を緩和するということが書いてあります。
Tカードは個人情報保護法違反に該当するのか?──津田大介の「メディアの現場」vol.44より:津田大介の「メディアの現場」:津田大介チャンネル(津田大介) – ニ(コニコ)ちゃんねる:社会・言論
つまり、「ポイントプログラム参加企業」だけでは、その他大勢の企業と同様の扱いになり、「第三者提供」の枠を抜けだせません。それを出資関係になることで「共同利用」方式をとって、情報を共有する形を採りたいのだと思われます。あるいは、匿名化などのデータ提供ルールを調整する際の主導権を握っておきたい、というところかもしれません。日経新聞の記事でもこう書いてありますしね。
加盟店はポイントを顧客の囲い込みに使う。だが現在、得られる購買履歴のデータは、自社の店舗での利用に関するものに限られる。出資を機に多様な店舗での購買データを活用。ソフトバンクはスマートフォン(スマホ)で年齢や性別などの属性に応じた食品や日用品の割引やポイントを使った決済を手掛ける考えだ。ファミリーマートは独自商品の開発や品ぞろえの改善につなげる。
それぐらい、購買履歴というデータには宝がたくさん埋まっている、と考えているのでしょう。データ活用が今後はもっと広がっていくと思いますし、そのときに強いのは「データを握っている企業」です。そういう戦略を今後強化していく上で、ソフトバンクやファミリーマートはしっかりとデータを利用したりコントロールしやすい状況にしておこう、という狙いなのだと思います。
企業が提供するこういうポイントプログラムをどう信用し、利用していくかは利用者側にも理解というかリテラシーが求められます。こういう情報を提供する、利用するのが嫌だ、ということであればオプトアウトするなり、ポイントの付与を受けない代わりに購買情報の提供を拒否するという考え方もあります。
ポイントプログラムによる囲い込みは、一時期様々な企業が提供していましたが、ある程度絞られた感があります。ソフトバンクやファミリーマートなどの大企業がが自分たちでポイントプログラムを提供をしていないのは、その証拠ではないか、と。
今だと楽天とTポイントが優勢ですかね。
楽天スーパーポイント VS T-POINT &ヤフー 会員数と提携店舗数 比較
楽天はネットに強く、Tポイントはリアルに強いというそれぞれの特徴があります。それぞれの戦略は見ていて面白いですね。
個人情報保護については、個人情報保護法の改正やパーソナルデータ活用など、いろんな動きが生まれています。この本を読むと、主要なポイントや流れを抑えることができて良いんじゃないか、と。