JINSが平均年収を10%も上げなければいけない理由

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この記事の一年後に、改めてJINSを分析した記事を書きました。よろしければ、そちらもお読みください。 →JINSという企業を改めて分析してみる | Synapse Diary [/aside]

少し前になりますが、メガネで有名なJINSが社員の給与を上げるとして、発表していました。

ジェイアイエヌが、店舗勤務する正社員を対象に11月から年間平均給与を10.2%引き上げる。優秀な人材確保と優れた顧客サービスの提供が狙い。来年度の新卒入社者の初任給は、これまでの20万円から17.5%増の23.5万円に改める。

JINSが店舗社員の平均年収10.2%引き上げへ | Fashionsnap.com

すごいな、業績良いから給料も上げるのかな、と思いきや、そうではありません。

以下のグラフを見てもらえばわかりますが、決して業績が良いわけではありません。逆に、売上の伸びは停滞し、利益率は低下しています。

JINS

端的にいって、苦戦している状況です。今回は、JINSがなぜ業績が優れないのに賃上げする理由を考えたいと思います。

JINSが現在置かれている状況

JINSが躍進してきた理由

JINSが躍進してきた理由は、前述の記事やJINS創業者の著書「振り切る勇気」を読むとよくわかります。簡単に言えば、「価格・提供スピードなどの改革によるユーザー利便性の向上」「機能性を重視した新しいメガネの提案」です。

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そういう中で、SPAによって新しい顧客ニーズをつかむとともに、低価格と新しい機能性あるメガネを提案したことで、これまでメガネを持たなかった人、メガネを複数は買わなかった人を開拓していったのです。

一方で、メガネ市場は縮小してきており、他社も模倣してきます。均一価格、機能性のアピール、低価格など。そうなると、差別優位性が失われていくわけですね。

メガネ業界の状況

メガネ市場はすごい勢いで縮小してきています。10年ちょっとで2/3ぐらいに縮小しています。

90年代後半からメガネ市場の市場規模は非常に早いスピードで縮小している。1996年に約6,000億円あった市場は09年には4,000億円を割り込んだ。

戦略ケース 眼鏡業界の4Pを刷新したJINS2013年) – J-marketing.net produced by JMR生活総合研究所

そして、JINSはすごいスピードで成長しましたが、メガネ市場のシェア1位はメガネトップ、三城ホールディングスであり、売上的にはまだ差があります。

megane

メガネトップが上場廃止してしまったので、少し比較タイミングが古いのですが、まあそんなにずれていないと思います。

つまり、こういうことです。

  • JINSの売上は停滞気味
  • JINSが築き上げた差別化優位性は失われつつある
  • メガネ市場は縮小しており、他にリーダー企業が存在する

縮小する市場では、有力企業による寡占化が起こります。新しいユーザー層を開拓したJINSではありましたが、競争優位の源泉が変わり、JINSにとって新しいフェーズに突入しているということです。

人材獲得が競争優位性につながる

人件費増大の影響

2014年の決算情報をみると、人件費は71億円になっています。仮にこれが10%増えると、78億円です。プラス7億円ですね。営業利益が29.7億円なので、22億円になってしまいます。26%も下がりますね。

短期で考えると、ただでさえ利益が落ちているので、利益確保したくなります。そこで利益を下げてでも、人件費を上げるというのは、攻めの気持ちが伝わってくるようです。

参考:JINS20148月期決算資料(PDF

急激な出店増に人材が追いつかない

決算資料に書いてありますが、JINS PCでブレークしたものの、出店を急拡大させた影響で、商品開発や店舗オペレーションが追いつかなくなったようです。

この問題を解消しなければ、良い歯車は回りません。寡占化する業界で生き残っていくためには、機能性やファッション性など、新たな購買や買い替え需要を起こすことと、店舗数を拡大していくことが求められます。寡占化によって、これらの競争は激化していくでしょう。

ユニクロやスタバなど、いろんな小売企業が人材獲得競争を繰り広げています。人材をしっかり獲得していくことは、企業の生命線です。

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決算資料でも、来期も業績は微減で予想されています。現状は、企業体制を固める期間という判断なのだと思います。

個人的には、JINS MEMEなど革新的なアイウェアが登場することを期待しています。


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