少し前に、岐阜駅がリニューアルされたときに、成城石井がテナントに入ってきたんですよ。「成城石井がついに岐阜まで来たかー」と、やや驚いたのを覚えています。「都市型の高級スーパー」という印象がありましたから。
ただ、買収騒動があったりでいろいろ賑やかでしたし、出店も着実に伸ばしています。
この本を書いている二〇一四年三月の時点で店舗数は一一二店。一〇年前の二〇〇四年、成城石井は三〇数店舗だった。もっといえば、一九九四年には四店舗しかなかった。これが、わずか二〇年で一〇〇店を超えるスケールになっているのである。
実際に成城石井のHPを見ると、以下の通り出店数が伸びています。
(引用:出店戦略 | 事業戦略 | スーパーマーケット成城石井)
こんな勢いのある成城石井は、どういうビジネスモデルなのか興味が湧いて、一冊読んでみました。
成城石井の強さの秘密はなにか
企業が強さを発揮する理由はひとつで説明することは難しいのですが、もともと強い要素として調達・製造から小売までの一貫体制がありました。また、最近出店を伸ばしているのは、外部環境として食生活に対する成熟と、出店業態の多様化が挙げられると思います。
調達・製造から小売までの一貫体制
成城石井の品揃えって、独特ですよね。あまり他のスーパーでは見かけない商品が置いてあったりします。これは、自ら商品を選定し、調達・製造する能力が高いことの表れです。
直輸入品の多さは、成城石井が貿易会社を持っていることが大きい。まだ一店舗だった時代から、第三者に任せず、バイヤーが直に世界の商品を探し出し、買い付けてきた。輸入商材にオリジナル商品も加わり、全体の三割が、他ではまず買えない商品になっている。
成城石井は、東京ヨーロッパ貿易という子会社があります。それで、直接調達してるんですね。
また、セントラルキッチンも持っていて、プロのシェフが惣菜を企画したり、手間暇かけて調理しているそうです。ポテトサラダに使うジャガイモでもそう。
「ジャガイモは、皮の真下が一番おいしいんですよ。機械を使うと、そこまで削ってしまうことになります。これでは、味がまるで変わります」
さらに、現場店舗でのオペレーションも優れています。こういう、現場でのオペレーションの工夫・努力が行われています。
「昔から行っていることですが、各店舗には肉の知識を持つ担当者がいまして、お肉は店や仕入元などで熟成させて、一番の食べ頃の状態のときに、お客様に提供します。しっかりしたものを選んでくるだけではなく、食べ頃も見計らっています。それができるだけの目を持っている職人が、成城石井にはいるんです」
他にもあるんですが、要は高い品質と低コストのバランスを維持するために、一貫したオペレーション体制が構築されているってことです。これが成城石井の元来持つ強みですね。
食生活の成熟
最近特に追い風になっている理由として、日本の食生活が成熟してきている点があるんじゃないかと思っています。成城石井にもよく置いてあるワインの消費量を調べてみると、明らかに増大していることがわかります。
(参考:www.kirin.co.jp/company/data/marketdata/pdf/marketwine2013.pdfから、国税庁のワイン消費量の推移を引用)
本書の中でも「時代が追いついた」という表現がありましたが、当初から高級志向だった成城石井の品揃えやコストパフォーマンスの高さがわかる人が増えた、という要因はあるんじゃないかと思います。
出店業態の多様化
3点目は、出店業態の多様化です。特にエキナカのフォーマットですね。路面店にある、ある程度の広さを必要とするスーパーの業態だけでなく、エキナカでも出店するようになりました。
本書の一部を抜粋すると、こう書いてあります。これはエキナカ店に初めて出店したときのコメントです。
「自分の考え方が大きく変わりました。路面店のスーパーマーケットとは、売れるものがまったく違ったんです。その一方で、それまで成城店をはじめとして、お客様のニーズに応えようと一生懸命に取り組んできたワインやシャンパン、チーズ、総菜といった成城石井独自の品揃えが大きく活きたんです」
路面店とエキナカでは、売れる商品などが異なるし、面積も断然小さいので、オペレーションや陳列方法も変えなければいけません。それらに適用していったことで、出店攻勢をかけられるようになったというわけです。今では、オフィスビルやコンビニ跡地などにも出店できるようになっています。
ローソン買収の狙いはどこにあるか
さてさて、成城石井は最近ローソンに買収されることになりました。この会社は、いくつかの企業に買収されてきており、その過程は本書の中に書かれています。ここでは、本書には触れられていませんが、ローソン買収による効果を考えてみたいと思います。
成城石井のウィークポイントはどこか
ローソンの社長は、成城石井の売り場は維持すると言っていて、調達などのバックヤード側でシナジー効果を出したいと述べています。
まずは、僕らが成城石井を150%理解したうえで、支援するのが大事。『ローソンのスイーツはおいしいから置いて』なんて押し付けるのはよくない。それはダイヤモンドの原石である成城石井の価値を損なう行為だ。(逆に)われわれが学ぶことはたくさんあり、うちのエース級の商品担当を出して勉強させる。
一方でお客様の目に触れない部分で、物流や原材料調達、出店開発などでは貢献できる。成城石井の出店開発部隊は3人ほどだが、ローソンは250人くらいいる。
ローソン、成城石井を買収した真意とは? | 週刊東洋経済(ビジネス) | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト
これが、今の成城石井のウィークポイントが出ていると思うんですね。その前に、今の成城石井の出店エリアを見てみたいと思います。
これを見てわかる通り、都市部を中心に限定されています。ここから出店を拡大させていくためには、物流を中心にバックエンド側にスケールメリットが必要になります。インフラも人材も、スケーラビリティが求められるところであり、その点をローソンと集約していくことで、成城石井の出店攻勢を実現できるんじゃないかと思います。
ローソンのメリットはどこになるか
ローソンの狙いがどこにあるのか、という点は、ネットで検索したらすぐにわかりました。なるほどーと思ったのは、ナチュラルローソンの苦戦ぶりです。
同社は女性客層獲得を狙って「ナチュラルローソン」を展開中だが、実質的には失敗している。最初こそ好調だったが、今では当初の勢いを失い、まだ約100店舗で、13年に掲げた「5年間で3000店舗」の目標に遠く及ばない事実がそれを証明している。失敗の理由としては、女性客層向け商品開発力の欠如が指摘されている。今回の買収により、品揃えの豊富さで女性客層から断トツの人気を誇る成城石井の惣菜をローソンやナチュラルローソンにも展開することで、念願の女性客層を呼び込むことも可能になる。
ローソンの出店数は、公開されています。
ごめんなさい、グラフにしてもわかりづらい見た目になりました。ざっくりいえば、ローソンは10000店、ローソンストア100が1000店、ナチュラルローソンが100店ぐらいです。一桁ずつ違います。しかも、ナチュラルローソンは2002年の100店から10年以上かけて110店という増加です。さすがに伸び悩みという印象です。
他にも、これを読めば端的にわかると思います。
成城石井を買収するローソンの3つの本音 [マーケティング] All About
いずれにしても、小売のPB比率は上がっていますし、成城石井の商品開発力をプラスに作用させたいと思っているんだと思います。
いやーそれにしても、本を読んで、いろいろ成城石井の商品を買いたくなったわー。
最後に、この記事書くために整理したビジネスモデルキャンパスをのっけておきます。