日本代表のブルガリア戦が迫ってきた今日この頃、いかがお過ごしですか。
今日はサッカー戦略の話です。以前から興味があったサッカーの戦略について、本を読んで勉強しました。
いやーこれ読むと、本当サッカーの奥深さを感じます。本の内容としては、トータルフットボールという言葉を軸に、サッカーの戦略・戦術がどう変化してきたのかを、歴代のチームをとりあげて追いかけていくもの。
サッカーは守備に有利なスポーツ
ちゃんと認識したことがなかったですが、サッカーは基本的には守備側に有利なスポーツなのだそうです。それは、バスケットやハンドボールなどと比べると動く点数が少ないことからも言えるかもしれません。そして、サッカーは守備が中心となってフォーメーションが進化していきます。
サッカーの戦術は、基本的に守備の発達とほぼイコールである。フォーメーションだけみても、初期には2人だったDFがオフサイドルールの改正にともなって3人になり(WMシステム)、さらに4人になる。MFも3人から4人、5人と増加傾向。当然、FWの数は減っていく。
「プレッシング」という発明から始まるサッカーの進化
本は、60年代のオランダ代表から始まります。ヨハン・クライフが現役だった頃で、トータルフットボールの始まりと言われているそうです。何が「トータルフットボール」なのかといえば、全員攻撃・全員守備がテーマであり、そのひとつとして、攻撃するFWが守備として相手チームにプレッシングを行うことにあります。
プレッシングとディフェンスラインの押上によって、全体をコンパクトにすることで相手の攻撃スペースを奪ってしまうわけです。
ボール狩り、つまりプレッシングは、ボールへのプレッシャーと後方からの押し上げがセットになっている。これは今日でも変わらない原則だ。ボールにプレッシャーがかからない状態でディフェンスラインを押し上げてしまえば、敵の2列目が飛び出すだけでオフサイドトラップは破られてしまう。
ひとつのスタイルが流行ると、それを破る戦術が生み出されるのは将棋などどんな競技でも同じ。このオランダのスタイルは、より守備が強固になるようマイナーチェンジが行われていったが、それをFCバルセロナのボールポゼッションが打ち破ることになります。
プレッシングはボールに絶え間なくプレッシャーをかけ、同時に陣形を縦横に圧縮して、攻撃側からスペースと時間を奪い取る守備戦法である。ところが、バルセロナはトライアングルで素早くパスを回してプレッシングの網からボールを逃がしてしまった。プレッシャーをかけ、陣形をコンパクトにしてボール奪取しようとしてもとれず、たちまち広い逆サイドに展開されたら、もう一度そちらへ移動して圧縮をかけなければならない。
こうやって、欧州や南米を中心としていろんなチームを通してフォーメーションがどんどん変わっていき、サッカーという競技そのものが成熟していく過程を知ることができるのは、非常に貴重な本だと思います。
フォーメーションは戦略のうちのひとつのパーツに過ぎない
企業経営と同じで、フォーメーションは組織設計と同じようなもので、戦略のひとつに過ぎないわけです。本の中でもたくさん語られているのは、チームにおける個人の役割が決め手になるという点です。レアル・マドリードで鉄壁を誇ったマケレレや、チェルシーのドログバや、ASローマのトッティなど、いろんな選手と戦術との関連が語られています。
このように、組織を構成する人員の特性はフォーメーションの成立要否に大きく関わります。「戦略は組織に従う」「組織は戦略に従う」という両方の言葉があるように、チームにおけるプレイヤー個人とフォーメーションは、とても関連性が高く、その組み合わせを見極めることがチームとして機能させる上で非常に重要になるわけです。
また、監督もたくさん登場します。特にマンチェスターユナイテッドのファーガソン監督がなぜ優れているのか、というのは印象に残りました。
「クライフと同等の技術を持つ選手はいるが、クライフと同等の戦術意識を持った選手は誰もいない」 その点で、荒削りな天才たちにトータルフットボールの意識を植え付けるファーガソンの手腕は傑出している。ベンゲル監督も若手の発掘と育成では定評があるが、癖のある荒馬を乗りこなしてしまうファーガソンの管理能力は独特だ。
ファーガソンは、有能な若手を抜擢するとともに、戦術意識とハードワークを浸透させる能力が高かったと評されています。
こう考えると、やはりソフト面での能力というのもやはり重要なわけです。
というわけで、こういう理解が深まると、もっとサッカーを観るのが楽しくなるものです。ちなみに、この記事を書く途中でWikipediaでこんなカテゴリーがあるのを見つけました。いろんな項目を読んでいくと、それだけで楽しい感じです。
Category:サッカーの戦術と技術 – Wikipedia