頭が良くて、良い学歴をつくり、良い企業に就職したり起業しても、離婚したり逮捕されたり、幸せとはいえない人生を歩んでしまう人がいるのはなぜだろうか。
本書はこのような素朴な疑問に応えようとする。「イノベーションのジレンマ」で有名な教授が説く、人生で必要な考え方である。読みながら、とてもおだやかな気持ちで、語りかけられる問いや考え方について思考を巡らすことができる。
キャリアはどう選択すべきか
本の最初は、自分のキャリアをどう築いていくかについて述べられている。理論としては目新しいものがないけれど、改めてどのようにキャリアを選んでいけば良いのか考えさせられる。基本的には、創発的(偶然)と計画的な両方が人生にはあるから、それを理解した上で、自分の正しい判断基準を持ち、キャリアを築いていくということだ。間違っても、金銭だけを理由にしてはいけない。こうなりたくなければ。
だがわたしたちの多くは、年を重ねるごとに、夢を一つ、また一つと失っていく。間違った理由から仕事を選び、そのまま妥協する。心から愛することを仕事にするなどしょせん無理な話と、やがてあきらめるようになる。
日頃から水をあげないと花は咲かない
同級生たちは昇進や昇給、ボーナスなどの見返りがいますぐ得られるものを優先し、立派な子どもを育てるといった、長い間手をかける必要があるもの、何十年も経たないと見返りが得られないものをおろそかにした。
わたしの経験から言って、達成動機の高い人たちは、仕事でこうなりたいと思う自分になることに没頭して、家庭でなりたい自分になることをおろそかにしがちだ。立派な子どもを育て、伴侶との愛を深めることに時間と労力をかけても、成功したという確証が得られるのは、何年も先のことだ。その結果、キャリアに投資するあまり、家族には十分な投資をしなくなる。そうして人生の大切な部分から、花開くために必要な資源機会を奪っているのだ。
端的に言えば、長期的にしか結果が出ないものは、日頃からしっかり投資をしておかないと最終的に残念な結果になるということ。子どもと接する時間を確保し、家族としての価値観を養うことで、子どもが大人になってからも心配することなく見守ることができる。つまり、子どもに対する教育は、結果が出るまでにとても時間がかかる。だから、家庭を築き、維持するためにはポリシーを決めて、時間を確保し、文化を作り上げるための労力が必要になる。この本では、具体的な考え方が書かれているので、心当たりがある人は読んでみると良いだろう。
人生では、何度も失敗することができるけれど、時と場合によってはそんなに失敗の回数が許されないこともある。
経験や情報から多くを学べることもあるが、実際の話、人生には経験をとおして学ぶことが許されない状況が多々ある。よい伴侶になるために何度も結婚しようという人はいないし、子育てをマスターするのに、末の子が大きくなるまで待とうという人もいない。そんなとき、理論がとても役に立つ。何かを経験する前に、これから起きることを説明してくれるのだから。
この本を読んで、今後の自分の人生が、充実したものになりますように。