成功はすべてコンセプトから始まる

起業家や経営者に求められる資質というものを考えたときに、そのひとつにビジョンを構築できることが挙げられる。長期的な視野で将来像を具体的に描き、そこに至るまでの行動を示すことである。いろんな経営者がビジョンの重要性を挙げていることからもわかる通り、大きなことを成し遂げる、組織を率いていく場合にはビジョンが非常に重要になってくる。

さて、この本はコンセプトの立案力を述べたものであり、ビジョンにつながるものである。本書の中でもコンセプト立案力はこう説明されている。

コンセプト立案力の基本にある、「あるべき将来の姿を描き切り、それに向かって意思の力を集中させる」生き方、「境界を越えて発想する」クリエイティブな生き方は、日本人が得意とするところです。

自分のフィールドで、「実現したい将来像」を発見し、「かなり難しい」チャレンジをする。その能力が身につけば、一段高みに上ることができ、視界がパッと開けます。おそらく、いま抱えている悩みやストレスは吹き飛んでしまうはず。そして、ぞくぞくするような知的快感を覚えれば、ますますチャレンジが楽しいものとなります。それが「コンセプト立案力」を磨くことの醍醐味です。

ビジョンやコンセプトと呼ばれるもののどこが良いかといえば、わかりやすく将来像を描くことで、組織が方向性を持って動けること、周囲の協力を得やすいことにある。つまり、実現性が高まるのだ。

 

コンセプトの良い例と悪い例

コンセプトに関する例がたくさん登場するのだが、面白かった例を挙げておこう。

地に足の着いた方法、まずは現状の問題解決から始めるというと、「カイゼン」を思い浮かべる人は多いかと思います。カイゼンの典型として引き合いに出されるのが、トヨタの仕事の進め方です。しかし、トヨタのやり方は、一見、実現可能性ドリブンに思えるかもしれませんが、まったく違うものです。というのも、トヨタ生産方式の元祖、大野耐一氏が最初に掲げたのは、「在庫ゼロ」という、誰もが実現不可能と思っていたインパクトの大きなコンセプトだったからです。

トヨタ生産方式が、カイゼンというボトルアップ的な積み上げでできたイメージがあるが、そうではなく最初はコンセプトから始まった。つまり、最初に大きな目標を掲げること、その先に得られる結果を示すことで、組織的に良い状況を作り出していく。

もうひとつ。

役所の世界で言えば、「ふれあい広場」「ふれあいセンター」など、ありとあらゆるハコモノが「ふれあい」と称されています。予算が取りやすいのか、横並びで書類が通りやすいのかわかりませんが、いずれにせよ、確たる考えもなく名づけられたに違いありません。

確かにいろんなところに「ふれあい○○」ってあるなーと思ってしまった。実体がどうなっているのかは知らないけど、抽象的すぎて名前からはあまり伝わってくるものが少ないとは思うよね。これも、コンセプトがもっと先鋭化されていれば、こういう抽象的な名前は並ばないんじゃないか、ということだ。

 

ロジカルシンキングとは違う思考力

もうロジカルシンキングだけでビジネスが通用すると思っている人は少ないと思うが、コンセプトを立案する力というのは、ロジカルシンキングだけでは足らない部分を埋めるピースのひとつである。

このように、既存のMBA的手法は「細部を詰めていく」ためのものであり、ゼロからあるべき姿をイメージするためのものではないことを知っておく必要があります。そのせいか、最近ではハーバード・ビジネススクールでもカリキュラムが大幅に見直されつつあり、以前に比べて随分とイノベーションや創造性寄りに変わってきているようです。

以前からロジカルシンキングなどの知識やMBA的管理手法では限界があると言われていたが、それを本気で打開しようとしているのがビジネス教育のトレンドだろう。それは組織論でも同じで、指示命令をベースにする管理型ではなく、組織の創造的ビジョンを作り出し、人々のモチベーションや自発的な創造を生み出していくリーダーが求められているし、教育機関はそういうリーダーを育成する試みを始めている。

 

自分や人の感情を揺さぶるコンセプトの力

過去読んだ本で、スポーツ観戦はなぜか泣けるほど感動する、ということがすごい記憶に残っていて、なぜ仕事ではスポーツ選手のように感動するほど泣く機会が少ないのだろう、と考えたことがある。それは、達成したいけど簡単には達成できない障壁があり、それに向かって努力をするからこそ、うまくいかなければ悔しいし、成功すれば泣くほど嬉しいのだと思う。そして、この本でも似たようなことが、別の表現で書いてある。

大組織の中で長年暮らすと、妙な「におい」が身についてしまいます。何かを徹底的にほめることをしない、リスクヘッジをする癖が抜け切れない、といった加齢臭のような独特のにおいです。そのままでは、本気でないと思われます。自覚症状のある人は、意識してそれを落とす努力が必要です。

つまり、コンセプトを作るということは、ハードルは高いが達成すべき将来を描くことであり、それを実現するためには「本気度合い」が必要になる、ということだ。本気になるということは、おのずと自分が仕事に真剣に取り組むことであり、その本気が周囲に伝染していく。そうやって感情を揺さぶる力がコンセプトにはある。

 

そして、この本ではコンセプトを立案する力というのを解明し、それを実現するための方法を描いている。確かに最初からできる天才もいるかもしれないが、訓練によって身につけられるスキルでもあると述べる。それが希望だ。

 

そういえば、このブログのコンセプトも曖昧だな。。。。単純にその時に興味があることを書き殴っているだけだからなあ。