プレジデントの調査によると、職場のモチベーションの半分程度を金銭的対価が占めており、ダニエル・ピンクが提唱するような「モチベーション3.0」が根付いていない、という記事があった。
この結果は、私が参加して、本誌が、2010年の5月3日号で行った「働きがいのある会社」アンケートの結果であり、「あなたが働くモチベーションは何ですか」という問いに対して、全体で54%が、「給料」だと答えているのである。
日本に「モチベーション3.0」が根づかない理由 : プレジデント(プレジデント社) |
そこで、「環境退化説」というのが述べられていて、少し面白かった。
そろそろ、「人材退化説」に対して、「環境退化説」へと思考のパターンを移すときではないか。私が最も恐れるのは、今回お見せしたようなデータの背後に、仕事環境の退化が起こっており、その結果として、3.0レベルのモチベータなどはとても望めないと考える人がモチベーション2.0へと回帰している可能性である。
で、その中で環境が退化している、というと自分としてはわかりにくかったんだけど、結局職場自体が保守的になっていて、挑戦するような仕事もないし、そういう雰囲気でもない、という状況が多くの職場で見られている、ということだろうか。
そもそも、なぜ多くの理由を給料に求めるのだろう。単純に金銭に余裕がないから、ということも考えられる。実際、平均給与は年々下がっている。
(単位:千円。国税庁 民間給与実態統計調査結果のデータを元に作成)
たしか、ダニエル・ピンクも「モチベーション3.0」へ移行するには、「ある程度の所得水準以上が必要」というような言い方をしていたはずだ。先進国はモチベーション3.0へ移行していく、というイメージがあるのかもしれないけど、物事はそんなに単純ではなくて、経済成長がなく、給与が下がり、生活水準が少しずつ落ちていき、この先の将来に希望を感じない日本で、「成長機会を求めるんだ!」という考えを強く抱くのは難しいのかもしれない。
会社がお金を稼げないのだから、金銭的に満足のいく待遇を得られる確率も減ってくる。少しずつ年収が減っていけば「この先どうなるんだろうなあ」と思う。そう考えるとやっぱり、企業の成長と個人の成長は近い関係にあるのかもしれない。経済が停滞している国で「モチベーション3.0」を唱えられても、僕は違和感だよ。何となく論点をずらされている気がしてしまう。都会の生活に疲れたから、田舎でゆっくり生活しませんか、みたいな。
だから、モチベーション3.0が正しいのだとすれば、単純に日本はモチベーション2.0から脱却できないぐらい金銭的には困窮というか、マズローのいう「安全の欲求」とか「所属と愛の欲求」とか、そういう自己実現に至る前の欲求が十分に満たされていないんじゃないか、と考える方が個人的には納得感がある。
ただ、この円高で日本円はとても高くなっているので、成長著しい国で通用するスキルを持って移住すれば、「モチベーション3.0」は発揮できるのかもしれない。あるいは、日本でもソーシャルゲームの領域とか、市場の伸びが著しいところについては、こういうモチベーション論が有効に働くのかもしれない。
今日はこのへんで。