ITコンサルティングの教科書

杉浦 司¥ 2,310

知っている知識も、改めて振り返って、体系的に整理することに意味がある。例えば、一連の流れの中で一部だけ知らないものがあるかもしれないし、自分の日頃の仕事を大局的に見直すきっかけにもなる。

 

技術への理解と技術力は違う

読んで思ったのは、コンサルティングを行う上では、技術に対する理解は必要になる。ただ混同しそうなのは、それは決して「=技術力」ではないということだ。技術力があっても、顧客や顧客の業務に目線を移せない場合がある。むしろ、技術力があるからこそ、こだわりなどが生まれて視野が狭くなったりする傾向になる。ITの世界ではどんどん新しい技術や概念が登場してくる。僕が社会人になったときは、SaaSがちょっと話題になり始めたばかりだったけど、もう当たり前のように使われるし、新しい利用形態、料金形態が生み出されている。

スティーブ・ジョブズはプログラマーではないけれど、技術をどう捉え、何を製品に採用するかという目利きは優れていたと言われている。このように、技術に対する理解はあくまで最終的な解決策にどう組み込んでいくかであって、技術力を磨くことだけではこの観点は養われない。

この本では、コンサルティングする上でどういう観点や考え方、アプローチが求められるかがたくさん書いてある。逆に、これといったわかりやすい「スキル」というものはほとんどない。顧客発想が欠けているんじゃないかと思う人は読んでみると良いだろう。

 

経営目標と情報システムの目標を一致させる

情報システムは、最初普及したのは業務の効率化がメインだった。目に見えてわかりやすいし。PCが導入されていったのも個人の生産性を上げるためだ。これは事務処理や会計処理などの内部業務が主体になる。

ただ、PCや個別システムについては、ある程度の規模の組織であれば導入がほとんど完了していて、今後劇的に作業効率が上がるような余地が小さくなっている。また、導入したものの「本当に作業効率が実現したのか?」ということに対して、正しく把握できていない場面も結構ある。

一方で、Webなどのユーザエクスペリエンスのレベルは上がってきていて、デザインや操作性を向上させることで、利用率を上げたり、ひいてはブランド向上につながる流れが生まれている。

つまり、今多くの場面で求められているのは、「このシステムは経営に対してどの程度貢献しているのか?」をできるだけ把握することであり、さらに経営目標が変わった場合に、システム目標も軌道修正して対応できるような柔軟性を確保することにある。

 

データ工学の重要性

技術の進歩によって、ビッグデータはとても注目されている。MtoMでデータ容量が増えるし、大容量データを分析することもできるし、Twitterのようなソーシャルメディアのデータを解析して、何かの傾向や予測を出すことも始まっている。

こういったデータ分析は、今後ももっと盛んになるんだろう。その時に必要なのはデータをどう取得し、どう活用するかを設計する点にある。システムの設計とは別で、データ工学に基づいて、データの一連の流れを設計できる人材やナレッジが、今後重要性を増していくだろう。

 

これを読んでも、すぐにコンサルタントになれるような飛び道具は書いてない。ただ、必要な知識とマインドが整理されているだけだ。そして、それを粘り強く実行する人こそが本当の意味でコンサルタントなんだろう。