「都構想」について考える

大阪ダブル選挙もあるので、大阪都を含めた「都構想」について考えてみる。都構想では何が論点になってるんだろ、という話です。

 

地方行政における都道府県と大都市の関係

昔から東京、横浜、名古屋、大阪、神戸あたりの大都市は、府県から独立を主張してた。大都市は人口規模が大きく、問題も複雑化されるため、広域行政との分担 を行うと効率が悪く、問題解決につながりにくい、という主張がされている。一度は独立を主張したものの、都市と府県の両方のせめぎあいの結果として、現在は都市が府県の中に含まれる代わりに、指定都市として広域自治体の事務の一部を市側に移譲している。

一方で東京は、戦中に東京府と東京市を統合して都にして、二重行政を排除するとともに、都の方に権限を多く移譲して、首都機能を一体的に管理する形になった。

つまり、東京都のように広域行政である都が一元的に都市を管理する東京都の形と、「指定都市」として広域行政下で一部事務事業を担っている、という二つの形がある。

 

広域自治体と指定都市の二重行政

広域自治体と指定都市は、二重行政があって非効率だ、という主張が多い。実際に、二重行政というのはどういう内容なんだろうか。その具体的な内容が書かれたものがほとんどない。それを理解するために、関西4都市市長会議の資料が参考になった。

www.city.osaka.lg.jp/seisakukikakushitsu/cmsfiles/contents/0000025/25071/4toshi_210126_01.pdf

 

代表的なものとして、商店街振興や地域活動支援、消費者に対する施策などがあるそうだ。あとは、事務手続きも結構冗長になって責任が曖昧になったり、事務権限の一部だけが移譲されていて中途半端、ということらしい。

 

また、大阪府自治制度研究会が発表している「大阪にふさわしい新たな大都市制度を目指して(最終とりまとめ)」を読むと、大阪府と大阪市がほとんど一体的な政策が実現できていない、ということがうかがえる。(愛知県・名古屋市の関係と対比させてるのは、ちょっと面白いなあ。)

www.pref.osaka.jp/attach/9799/00000000/02HP_jichi_saisyu.pdf

 

課題を解決する手段として考えられた「大阪都構想」

では、大阪都構想で何が変わるんだろうか。大阪都の内容自体は、大阪市と堺市を特別区に再編成して「大阪都」が一体的に経済施策などを行うとされている。大阪市(人口260万人)は8から9の特別区に再編するのだが、これは恐らく30万人ぐらいの都市単位が、規模的に最も効率が良いという調査結果に基づいたものだろうと思われる。

http://www.pref.osaka.jp/attach/8180/00044525/kuninokatati.ppt

 

東京都の特別区は、一応基礎自治体と言われているものの、通常の基礎自治体より一部事務作業が制限されている。固定資産税や法人税などは都の財源とされ、水道・消防など大規模事業は都が行う形になっている。大阪都は東京23区よりは特別区に対して権限を付与する、と言われているが、どういう制度設計になるんだろ。

ちなみに、大阪都構想を実現するためには、大阪市議会・大阪市市長の同意、大阪府議会・大阪府知事の同意、関係市町村の申請、国会での衆議院・参議院の議決(地方自治法及び関係法案の改正)が必要となるため、それなりにハードルがある。

 

いろんな角度から政策議論を

僕は大阪府民でも大阪市民でもないし、それぞれの意思で選択すれば良いと思う。正直いえば、都構想を実現するにはいろいろハードルが高いと思っているし、変わったからドラスティックに変化できるのかという疑問も残る。ただ、大阪は変化を求めているのだろうし、どういう都市行政の制度が良いのか、という観点で議論が活発に交わされるのは良いことだと思っている。特定のバッシングや何となくのムードで押されて決定するのは、自治政策の今後を考えてもとても良くないし、いろんな観点での政策議論があって、冷静に判断される状況が作られて欲しいと願いのみだ。

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