国民ID制度が日本を救う

 

前田 陽二¥ 714

 

 

新書なので、平たく要点が纏められている。読みやすいのは確か。個人的には、あまり技術や論点に目新しいものはなかったけど、事例は豊富で面白かった。

 

国民IDがあるとこんな良いことがある、という例

 

(エストニアの例)
日本では、X線画像の管理権は医師にあるので、患者がいくつかの病院に入院を繰り返したりすると、患者はそのたびにX線画像を様々な医師の所へ持っていったりしますが、エストニアではそうした手間はありません。P.36

 

X線の管理権が医師側にある、というのは「診療するために病院が撮影したのであって、渡すところまでは料金に含まれていない」という境界があるかららしいのだが、患者からみれば全然優しくないよね。エストニアでは、こういうデータはシステムに登録されて、どの病院でも引き出せるらしい。

 

(韓国の例)
官民連携の典型的な例として、納税申告の電子化と言える「記入済み申告制度」があります。記入済み申告制度とは、勤務先企業や保険会社、証券会社などが、あらかじめ税務当局や本人が委託した機関に源泉徴収票や支払い調書などの各種情報申告書を提出し、その提出された情報を元に税務当局側で所得金額や扶養などの各種控除金額と税額を記入し、納税者に提示するものです。納税者は手間いらずで、まさに「納税申告の電子化」です。納税者は内容の確認を行い、必要に応じて修正作業をして税務当局へ返送すれば、申告が終了してしまいます。P.54

 

これ読んだときに、ああ便利だなあと思ったよ。これが達成できたらどれだけ民間の事務コストが削減されるんだろ。

 

国民IDがないとこんな残念なことが起こる、という例

 

日本で薬害肝炎訴訟が起こったとき、原因となった血液製剤の投与が書かれたカルテが保管されていた患者は補償されましたが、保管されていなかった患者は「証拠なし」として補償されませんでした。P.43

 

恥ずかしながら初めて知ったが、本当にこういう事態になってるようだ。確かに証拠がないと「支払う根拠がない」ということになってしまう。

薬害C型肝炎訴訟:カルテのない患者救済求め、北九州のグループ提訴へ /福岡 – 毎日jp(毎日新聞)

 

「宙に浮いた年金記録」の照合処理のため、厚生労働省は2011年度も1344億円の税金を予算要求しています。 消えた年金記録問題は2007年に発覚しましたが、いまだにすべての国民の年金記録が確認されていないばかりか、膨大な確認作業が残されたままの状態になっています。信頼できない「基礎年金番号」の元に構築された我が国の年金制度は国民の信頼を失い、国民年金保険料未納率も4割に達しています。 皆さんのところには「ねんきん定期便」が届いているでしょうか。この定期便発行だけで数百億の税金が投入されています。

 

定期便そのものは直接国民IDとは関係ないかもしれないけど、発端は年金記録に不信を抱かれたからだと考えると、不信を抱かれてそれを回復するためにもコストがかかるなんて皮肉。

 

 

今のところ、セクトラルモデルにして、かつ連携基盤については第三者機関が管理することでセキュリティ上の懸念だったり、国による個人情報の一元管理を防ごうとしているし、セキュリティに配慮された設計で進んでいるようだ。

行政機関の「信用」というのはとても重要だ。番号制度の議論になると生理的な嫌悪感が登場してくるのは、行政機関が信用されていない、という点にもあるのかも。情報公開を日頃から十分に行うとか、継続してはっきり見える取り組みが重要だ。そういえば、これを読んで、地方自治体の内部統制が一時期話題になったけど、あまり進んでないなーと思った。

 

民間企業では、このように試行錯誤をしながら内部統制を構築しつつありますが、国民が個人情報を安心して預けられる情報セキュリティの仕組みを創るには、行政機関においても内部統制を徹底することが重要でしょう。P.167

 

内部統制なんかも、信用される組織を実現するために編み出された制度なので、こういう取り組みもひとつの信用をうけるアプローチかもなあ。どうやったら、番号制度に対する心配や懸念は消えるのだろう。

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