DeNAのキュレーション問題報告書はビジネスケースとして大作

ちょっとタイミングを逸した感はありますが、DeNAのキュレーション問題に関する第三者委員会の報告書を読みました。

第三者委員会調査報告書の受領及び今後の対応方針について | 株式会社ディー・エヌ・エー【DeNA】

報告書自体は300ページと膨大なものですが、概要を理解するのであれば「要約版」もあります。全文でも257ページから始まる「第10章 本問題の原因・背景分析」だけでも読み応えがあります。

この第三者委員会の報告書を読んで、DeNAのキュレーション問題は、経営マインド、組織カルチャー、事業の方向性の明確化、KPI偏重のオペレーションなど、様々な経営問題を孕んでいることがわかりました。

この問題をどう捉えば良いかと言う論点をいくつか挙げておきましょう。

 

メディアとプラットフォームの境界線

この問題の1つとして、著作権侵害がありました。画像を無断で利用したり、他のサイトの記載されてる文章をコピペや改変を行うことによって、1つの記事を構成しており、それがGoogleのSEO対策上有効な方法として検索順位が上位になったのでした。

報告書を読むと、本事業が「メディアなのか、プラットフォームなのか」がひとつの論点になっています。

プラットフォームとしてとらえることができれば、プロバイダ責任法の名の下で、キュレーターがコンテンツを作成し、著作権侵害を行ったとしても、プロバイダーは責任を問われません。

この法律では、権利侵害の被害が発生した場合であっても、その事実を知らなければ、プロバイダは被害者に対して賠償責任を負わなくてもよいとしている。

引用:プロバイダ責任法とは|プロバイダ責任制限法 : 意味/定義 – IT用語辞典

 

DeNAはそういう建て付けを考えていたようですが、実態としては多くの記事はクラウドソーシングやインター学生によって作成されており、その点に関してはプロバイダー責任法の対象外になると書かれています。

一方で、キュレーションメディアを運営する観点で考えると、雑誌などと同じように、メディア全体の統一感や狙ったキーワードでのSEO対策を実現する必要があり、自ら記事を作成したり監修する対応が必要だったと思われます。

 

組織カルチャーやガバナンスのあり方

報告書では様々な観点から組織の風土やKPIの管理の仕方、法務部門の役割、取締役会や監査役の対応などを取り上げています。

DeNA内で法的リスクが挙げられた部分もありましたが、事業が拡大していく中で十分なガバナンスが行き届かなくなり、経営層と現場での考え方のギャップなども多く見られていたようです。

また前段の部分とも重なりますが、メディアなのかプラットフォームなのかというところも曖昧な状況であったためでしょうか、SEOによる検査エンジンからの流入をKPIとして重要視し、さらに記事数を増大させていくことに強いフォーカスを置いていったことも、最終的にクラウドソーシングで安い記事を多く生成させていった原因と考えられます。

 

そもそもの事業コンセプトの曖昧さ

しかし個人的には、報告書の最後のあたりにある事業コンセプトの曖昧さこそが根本の問題であると言う指摘に唸ってしまいました。

iemoやMERYを買収した当時は、ターゲットユーザやコンセプトガバナンスを聞いた記事の管理などはある程度行われていたのだと思われますが、キュレーションプラットフォームとしてDeNAが事業を買収し拡大していく過程の中で、各メディアの本質的な事業価値や、それをどう育成していくのかなどの観点が欠けていたのだと言う重大な指摘をされています。

さらにいえば、もともとのスローガンとして掲げている「永久ベンチャー」のとらえ方、ゲーム事業の業績低迷の中でベンチャー買収を急いだ背景にまで遡って言及されていることにも注目です。

 

この報告書は、ビジネスケースとして様々な要因を含んでいるので、自分がどういう立場だったら、どう判断するのかを想像しながら、ぜひ読んでいただきたいですね。

ということを書いていたら、MERYに新代表就任のニュースが発表されました。今後どうなるのかも、注目ですね。

公開停止中のDeNA「MERY」に新代表が就任——再開の可能性を模索 | TechCrunch Japan

 

こちらも時間ができたら読んでみようかな。

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