昔本屋でアルバイトしてたので、内情を想像しながら読んだ。結構楽しめたので、そういう点をメモ。
「若者の活字離れ」は幻想
なぜか、「最近の若者は本を読まない」というイメージが埋め込まれているが、統計上の数値を見れば、これが誤りだということがわかる。むしろ、40代や60代の読書率が低いそうだ。(そういえば、60を超えた自分の父親も、ほとんど本を読まない。)
本の中でも取り上げられていたが、青少年の犯罪率と同じで、完全にメディアによるイメージ醸成の結果だろう。青少年の犯罪率も、戦後から比べると著しく低下しているのは有名な話。
やはり昔から、本のターゲットは若者であり、その若者が少子化によって減っていることが、出版業界にダメージを与えているらしい。
面白い本屋が少ない理由
本屋でアルバイトを始めたときに再販制度というものを知り、出版業界は儲けるのが難しそうだな、と思った記憶がある。「書店の品揃えは金太郎飴」という言葉が本書の中に出てくるが、それには理由がある。
書店に本が並ぶまでには、出版社が発行して、取次ぎが各書店への分配数を決めて、書店は取次ぎから受け取った本を並べる、という段階が踏まれる。つまり、本をどこにどの程度配分するかは、取次ぎが大きな権限を握っており、書店の自由度はとても小さい。一応書店も注文を出すが、売れ行きがよくなかったり、規模が小さい書店は、売れる本が回ってこないのが現状だ。
「自分たちでやればいいじゃないですか」と、アルバイトしていた当時に店長に進言してみたが、「簡単に言うけれど、それはそれで大変なのさ」と説明された。自分たちでやろうと思うと、洪水のように出版される雑誌・書籍(毎日数十点)の内容やタイミングを把握して、自分の書店の売上がどの程度だとか、どういう傾向の顧客が来るとかを加味して、発注部数を決めて・・・・なんてことを、毎日毎日やる必要がある。
再販制度で書店の取り分は大方決まっており、年々の出版業界の売上減少から、書店は年々人件費を切り詰めている。書店内の常駐人数を減らしたり、人件費自体を下げてみたり。什器やオーダー機器などの設備投資を見送ってみたり。そんな中で、取次ぎの力を借りずに発注をやり切れるのは、不可能に近い。書店の金太郎飴現象は、結構根が深いのだ。
それでも「尖った本屋」を目指すには
ビレッジ・バンガードという本屋がある。本屋というか雑貨屋というか。名古屋が発祥地だが、今や全国展開している。本を置いているが、その隣に雑貨屋もある。これは、ビジネスモデル的には、行き詰っている書店は見習うべきヒントがある。それは、本だけを取り扱うのをやめる、ということだ。
本だけでは高い利益率を出せない。ならば、他のものを混ぜて売るのが有効だ。ビジネス戦略上でいえば、ポートフォリオを組み合わせて、安定的な利益を生み出す、ということになる。
本を読みながら考えたのは、いろんな細かいところに本を置いてもらう、という取次ぎの取次ぎ、みたいな業者をやってみても面白いかも、と思った。レストランやカフェなどに、その店のコンセプトに合った本を置いてもらい、店に訪れた客に買ってもらう。1店1店で置く本の量は小さいが、それを束ねる業者がいれば、一定量の売上を見込める規模になるかもしれない。そうしたら、大手取次ぎにだって相手にしてもらえる可能性も出てくるかもしれない。完全に妄想だけど。そういう業者が出てきたら、いろんなところで、場所に合った本を見ることができて、面白いなーと思うんだけど。
あとは、完全な委託販売をやめよう、という動きが出てきている。書店への利益率を増やす代わりに、返品を制限する制度らしい。こういう流れは、取次ぎに依存する書店のスタンスの変革を求められることになるだろう。書店への圧迫となるのか、それとも機会となるのかは、もう少し時間が必要だ。
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