経営学を勉強するモノとしては、ホンダ創業者の一人である藤沢武夫を知らなくてはいけないだろうと思い、本を読みました。ビジネススクールでもホンダのケースは何回か取り上げられたのですが、藤沢武夫の目線でホンダを読み解くのは初めてです。
まさに優れた経営者像のひとつ
本の中で、理論的で淡々と語られる感じが、僕の中ではイメージ通りでした。自分を律する力、全体を俯瞰する先見性、組織を構成するバランス感覚など、いろんな点で非常に刺激を受けます。例えば、これ。
本田技研において、国家の軍事力に相当するものが技術力だとすれば、外交にあたるものは営業力です。この技術と営業とのバランスがとれていなければならない。ところが、往々にして、技術はその力を過大に思いがちになる。
まさにホンダが技術力が高い企業でありながら成功したのは、藤沢武夫という人がこういう考えのもとで、ビジネスを構築していたからだと思います。
先進的にビジネスを切り開いていくのに大事なこと
ひとつ気になったことがありました。先日読んだ「ITプロフェッショナルは社会価値イノベーションを巻き起こせ」では、IT業界は相手からの発注を待つ「受託」から、先に課題を考えて提案するモデルに変わらなければいけない、という提言はありました。それに類することが本書にも書かれていました。それは、製造業が受注生産から見込生産へと移り変わる必要性を述べているところです。
このように、物をつくるにしても、買う方に変化がないときにつくる企業と、刻々と情勢が変化するときに、物をつくっていく企業──常に先手を打っていかねばならん企業──と、どちらが進歩するか、これははっきりしている。
つまり、相手が早く変わっていくのであれば、注文を待っているのではなく先手を打っていなかければ置いていかれる、ということです。シンプルに物事を捉えれば、今も昔も変わらないということも再発見でした。
最後、創業25周年で本田宗一郎と一緒に引退するわけですが、あっさりと語られていながら、読んでいて感慨深いものがありました。ビジネス書としても読み物としても良い一冊だと思います。