e-ガバメント論-従来型電子政府・電子自治体はなぜ進まないのか-

こういう、電子政府・電子自治体に関する内容がきれいに整理された本ってなかったな。大学講義の教科書なんだそう。

電子政府・電子自治体に関するこれまでの流れがよくわかる。内容や現時点での課題についても、主要なトピックはほとんど網羅されている印象。逆に、これほど幅広いトピックを体系的に整理された本は、このジャンルではないだろう。

 

電子政府・電子自治体の潮流としては、効率化やコストカットの役割はほぼ終わり、本当の意味で利便性とコストのバランスをとって費用対効果を高めていくフェーズに入っている感じがする。情報公開やモバイル利用の実現、申請主義からプッシュ型行政への転換など、利便性や民主化を進める流れというのが、今後本格的になっていくのだろうか。

そして、人材不足については未だにちゃんと解決する方向性が見えない。どこもICTの実績や経験を積んだ人材が不足していて、どんどん変化していく技術動向についていけず、民間をコントロールするのが難しくなているんじゃないんだろうか。これは、行政機関内でICT人材に対するキャリアパスがうまく描けていない部分もあるだろうし、そもそも行政機関の人材はそれを目的に職場に入ってきていないという問題もある。さらにいえば、行政機関の人材をうまく集められないのであれば、県や市町村からICT部門を独立して、外部機関として、周辺自治体のシステムを一手に担うという考えもあるのかもしれない。
(そもそも、IT業界が知識集約型ではなく労働集約型のビジネスモデルになっていることや、大学などの教育機関が高度なIT人材を育成できていない、というもっと根本の問題も存在するけど。)

 

それにしても、これほど行政業務に直結していながら、電子政府・電子自治体については情報が少ない。とりあえず、基本的な知識についてはこの本でカバーできそうだ。