【書評】新・観光立国論

訪日観光客がどんどん増えている、というニュースが流れていて、政府や自治体も観光戦略に力を入れています。人口が減少し、 GDPを増やして経済的に成長していくことが難しいと言われている日本で、観光によって外貨を稼ぐことができる点で、有力な産業として期待されています。

実際に訪日観光客数は、近年大きく伸びています。

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(出所:日本政府観光局「訪日外客数(2003年〜2015年)」)

そして、この本を読むと、まさに観光は日本のGDPに大きく貢献できる可能性があることが理解できるでしょう。

 

著者は、イギリス人アナリストで、今は日本の国宝・重要文化財の修復を手がける小西美術工藝社の社長を務めるデービッド・アトキンソン氏。アナリストだけあって、単なる「外国人の目」で見た感想などではなく、統計的なデータを論理的に積み上げ、そこに自分の着眼を加えていくという、まさにプロの仕事でした。ありがとうございました。

ということで、GDPへの効果も以下のように試算されています。

もしも私が提言するように、2030年に外国人観光客8200万人、平均支出金額20万円という目標が達成されれば、波及効果込みで、年間の経済効果は32兆円になってもおかしくはありません。外国人観光客のために観光インフラを整備することで、国内の観光市場も活性化されますので、より大きな効果が見込まれます。

アトキンソン氏、「新・所得倍増計画」を提言 | レジャー・観光・ホテル | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

 

日本のGDPが500兆円程度なので、非常にインパクト高い成長分野であることがわかります。

一方で、日本の置かれている現状として、厳しい面もたくさん指摘されています。

詳しくは本書を読んでほしいのですが、いろいろと刺激的です。冒頭は、日本の経済状況がうまく整理されていて、人口減少による影響や、生産性向上・移民政策・女性活用などが経済的にどのようにインパクトを与えうそうか、端的で分かりやすい内容になっています。

 

今後の経済状況を理解する上で、観光分野というのは間違い無く大きくなります。それを理解するなら、ぜひ読んでおくと良いでしょう。