日本通信はもっと評価されて良いと思う。今後の経営戦略を分析する

日本通信は、2015年3月期の決算発表がありました。

さっと決算発表の内容を知るためには、この記事をどうぞ。

VAIO Phone」効果は? – 日本通信、営業利益43.5%減

ちゃんと知るなら、動画を見るのが良いと思います。

今回の業績をどうみるか

結論からすると、決算発表によって日本通信は株価が低落しました。売上・利益が業績予想を下回ったためです。まあ、以前からVAIO Phoneの問題で予想を下げていたわけですが。

5年間の売上・利益率の推移は以下のグラフです。

日本通信

今回注目したのは、売上セグメントです。決算発表資料をみると、「MSP事業」というのが大幅に伸びています。

日本通信のセグメント別売上高 日本通信のセグメント別売上高

(出所:20153月期決算発表資料より)

この急速に伸びている「MSP事業」は何だろうか?というのが、今回の記事のテーマです。

MSP事業とは?

MSPというのは、モバイルソリューションプラットフォームの略です。これがちょっとピンと来なかったので、もう少し調べてみました。以下は、日本通信が考える「SIMサービス」と「MSPサービス」の違いです。

日本通信のSIMサービスとMSPサービス 日本通信のSIMサービスとMSPサービス

(出所:日本通信が考えるMVNOより)

「MSPサービス」には3つ書いてありますね。

ATM向け無線専用線

日本通信のアメリカ子会社は、アメリカでATM向けの専用ネットワークを構築してサービスを提供しています。セキュアな専用線を持っている、ということですね。それを日本にも展開しています。決算説明会の話を聞くと、信用金庫のタブレット需要において、セキュアなネットワークが必要であり、このサービスを提供していると説明しています。

デュアルネットワーク

これは、ドコモだけでなく、KDDIやソフトバンクなど他のキャリアも利用しながら、適宜切り替えて利用できるようにするというものです。

FMCフォン

FMCフォンは、携帯電話と固定電話とつなげて、携帯電話から固定電話と同じように使えるようにするものです。

企業で内線電話の接続などに使うPBX(構内交換機)とスマートフォンを接続して利用できるIP電話ソリューションで、会社にかかってきた電話を外出先でも受けられるというもの。着信だけでなく発信も可能で、スマートフォン側からも会社の固定電話の番号で電話をかけられる上、通常の携帯電話と比べ通話料も安くできるという。 スマートフォンとPBXの接続にはNTTドコモのネットワークを使用し、インターネットではなく日本通信の設備を経由することから、導入が簡単で、かつ高いセキュリティを実現できるのが最大の特徴になるという。

日本通信・三田社長に聞いた! 「MVNO」が次に目指すべき姿とは? – 会社の内線をスマホで受けられる仕組みを開発日経トレンディネット

日本通信はB2Cなの?B2Bなの?

なんとなく「日本通信=MVNO=SIM」というイメージがあったので、なんとなくB2Cがメインだと思い込んでました。ただ、今回のMSP事業やVAIO Phoneの戦略をみてみると、B2Bをターゲットにした戦略なのではないか、と思えてきます。実際、上記のMSPサービスの内容をみると、B2CというよりはB2Bの方に強いニーズがありますよね。

SIMの方は、価格競争になっていて、体力勝負になっています。日本通信はMVNOのシェアはNo.3で、決して体力があるわけではありません。そこで、そこに競争性をある程度維持しつつ、特許技術を持っているセキュリティネットワークをサービスに組み込んで、差別化を図っていくというのが基本的な戦略です。

VAIO Phoneの出荷時にリモート・インストール・セッティング機能を搭載することで、固定電話とひもづける設定を、リモートで簡単に行うことができるようになる。そういう意味で、端末と通信をセットで提供することに意味があるのですな。

また、IoTのビジネスチャンスも取り込める可能性があります。アメリカではこういう事例が出てますしね。

日本通信、特許技術セキュアM2Mが米国で採用決定 - 全米規模の保健センター・キオスクにて -|日本通信株式会社

というわけで、SIM事業は価格競争しているので、その競争に疲弊しきってしまう前に別事業で差別化を図ろうというのが日本通信の現状です。

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日本通信は、以前から事業構造が少しわかりづらかったのですが、いろいろ調べるにつれて理解できてきました。既存事業はどこかで競争が激化して衰退していきます。日本通信は、ネットワーク技術を起点として新しいニーズを掘り出している段階だと思います。

日本通信は、いずれはSIMを提供する会社でもない。そして、B2Bがメインの会社だと思われるときが来る気がします。