ユニクロとしまむらとの戦略の違いは販管費の比率から生まれている

少し前に、「ユニクロとしまむらで、業績に明暗が分かれてるよ」っていう記事がありました。

ユニクロとしまむら、なぜ明暗が分かれたか | 企業戦略 | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト

記事の中でいくつか気になることがあったので、調べてみました。結論からいえば、ビジネスモデルから来る財務構造が、両社のスタンスの違いを生み出しているんだと思います。

売上高と営業利益率の違い

ファーストリテイリングとしまむらの売上高、営業利益の違いをみてみます。業界第3位の青山商事も含めています。

まず売上高。これは、ファーストリテイリングが規模も伸び率もすごいことになっています。しまむらや青山商事と比べるとすごい成長しているのがわかります。

売上高(FR・しまむら・青山商事)

次に営業利益率。こちらは、SPAで展開するファーストリテイリングが強みがあるのだと思っていましたが、ここ数年はどんどん低下してきています。

営業利益率(FR・しまむら・青山商事)

というわけで、規模で考えれば、ファーストリテイリングがダントツの1位に向かって突き進んでいるのがわかります。で、ファーストリテイリングの決算発表をみると、海外売上比率がすごい伸びていて、35%まで達しているのがわかります。

fr

(出所:決算説明会 | FAST RETAILING CO., LTD.のプレゼンテーション資料から抜粋)

一方、しまむらでは台湾と中国に進出していますが、売上高でみると合計で1%にも達しません。

参考に、ファーストリテイリングとしまむらの決算概要のリンクを貼っておきます。
www.fastretailing.com/jp/ir/library/pdf/20150108_results.pdf
www.shimamura.gr.jp/finance/file/6104gaiyou.pdf

コスト構造の違い

両社のコスト構造を見てみました。これを見ると、両社の違いがよくわかります。

cost

昔からよく言われていることではありますが、ファーストリテイリングはSPAモデルなので製造原価が低いです。一方しまむらは、パート社員の活用など、販管費が低いと言われています。

冒頭の東洋経済の記事では、ユニクロの方がブランディングがうまいんじゃないかと書かれています。

それぞれ見る側の好みはありますが、近年のユニクロはテニスの錦織圭選手やジョコビッチ選手、ゴルフのアダム・スコット選手を起用。世界的デザイナージル・サンダー氏の起用やファッションアイコンのイネス・ド・ラ・フレサンジュ氏とのコラボなど、世界の一流といわれる人と組むことによって認知度を上げ、商品力を上げ、洗練度を上げてきています。特にジル・サンダー氏とのコラボ企画などは、それまでの氏の活躍を知っている業界人からすれば、あり得ないとしか言いようのないほど衝撃的な出来事でした。

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これは、SPAによって製造原価を落とし、販管費にお金を投入できるビジネスモデルを構築してる、と見ることができるでしょう。逆に、同じぐらいの販管費率をしまむらは投入することが難しい、ということが言えると思います。

ちなみに、ファーストリテイリングの利益率が近年下がっているのも、販管費の低下が要因といえます。売上高に対する製造原価の割合はほとんど変わっていないですが、販管費の割合は少しずつ増加しています。ここも攻めの姿勢で展開している結果かもしれません。

まとめ

  • ファーストリテイリングは海外展開で売上を伸ばしている
  • ブランディングにお金をかけられるのは、ユニクロがSPAモデルで製造費用が低いから

ファーストリテイリングは、「グローバルとローカルの両立」を最近は掲げていますが、業績にもそれは現れてる感じですかね。海外売上を伸ばしつつ、メインとなる日本市場ではローカル志向として、各地域のニーズを細かく拾う形でサービスを展開しようとしています。これが、国内市場でも力強さを発揮してるんじゃないでしょうか。