ITコンサルティングの教科書

杉浦 司¥ 2,310

知っている知識も、改めて振り返って、体系的に整理することに意味がある。例えば、一連の流れの中で一部だけ知らないものがあるかもしれないし、自分の日頃の仕事を大局的に見直すきっかけにもなる。

 

技術への理解と技術力は違う

読んで思ったのは、コンサルティングを行う上では、技術に対する理解は必要になる。ただ混同しそうなのは、それは決して「=技術力」ではないということだ。技術力があっても、顧客や顧客の業務に目線を移せない場合がある。むしろ、技術力があるからこそ、こだわりなどが生まれて視野が狭くなったりする傾向になる。ITの世界ではどんどん新しい技術や概念が登場してくる。僕が社会人になったときは、SaaSがちょっと話題になり始めたばかりだったけど、もう当たり前のように使われるし、新しい利用形態、料金形態が生み出されている。

スティーブ・ジョブズはプログラマーではないけれど、技術をどう捉え、何を製品に採用するかという目利きは優れていたと言われている。このように、技術に対する理解はあくまで最終的な解決策にどう組み込んでいくかであって、技術力を磨くことだけではこの観点は養われない。

この本では、コンサルティングする上でどういう観点や考え方、アプローチが求められるかがたくさん書いてある。逆に、これといったわかりやすい「スキル」というものはほとんどない。顧客発想が欠けているんじゃないかと思う人は読んでみると良いだろう。

 

経営目標と情報システムの目標を一致させる

情報システムは、最初普及したのは業務の効率化がメインだった。目に見えてわかりやすいし。PCが導入されていったのも個人の生産性を上げるためだ。これは事務処理や会計処理などの内部業務が主体になる。

ただ、PCや個別システムについては、ある程度の規模の組織であれば導入がほとんど完了していて、今後劇的に作業効率が上がるような余地が小さくなっている。また、導入したものの「本当に作業効率が実現したのか?」ということに対して、正しく把握できていない場面も結構ある。

一方で、Webなどのユーザエクスペリエンスのレベルは上がってきていて、デザインや操作性を向上させることで、利用率を上げたり、ひいてはブランド向上につながる流れが生まれている。

つまり、今多くの場面で求められているのは、「このシステムは経営に対してどの程度貢献しているのか?」をできるだけ把握することであり、さらに経営目標が変わった場合に、システム目標も軌道修正して対応できるような柔軟性を確保することにある。

 

データ工学の重要性

技術の進歩によって、ビッグデータはとても注目されている。MtoMでデータ容量が増えるし、大容量データを分析することもできるし、Twitterのようなソーシャルメディアのデータを解析して、何かの傾向や予測を出すことも始まっている。

こういったデータ分析は、今後ももっと盛んになるんだろう。その時に必要なのはデータをどう取得し、どう活用するかを設計する点にある。システムの設計とは別で、データ工学に基づいて、データの一連の流れを設計できる人材やナレッジが、今後重要性を増していくだろう。

 

これを読んでも、すぐにコンサルタントになれるような飛び道具は書いてない。ただ、必要な知識とマインドが整理されているだけだ。そして、それを粘り強く実行する人こそが本当の意味でコンサルタントなんだろう。

インプットしない時間をつくる

今年の目標のひとつに、インプットをしない時間をつくろうと思っている。できるだけアウトプットするでもなく、インプットするでもなく、「何となく考える」時間をちょっとずつつくろうかな、と。

 

そう思ったのも、ちきりんがライフハックのインタビューに答えてたことが印象的だったからだ。

みんな細切れの時間に携帯を使っていると思うんですが、電車を待つ時間、電車に乗っている時間、私にとってはそこが考える時間なんです。1日出かけて帰ってくると、なんだかんだ移動やら待ち時間やらで1時間ぐらいあると思うんですが、その時間に考えています。家じゃなくて外にいる、圧倒的に視野が広い時間なのに、その時間に携帯の画面にかぶりつきはないなと。
突撃! 隣のライフハックvol.15:ちきりんさんに聞くライフハック : ライフハッカー[日本版]

 

何かの本か忘れてしまったけど、何事に対しても「思考量」を増やさないといけない、という主旨のタイトルがあった気がして、それだけで「ああ、そうだな」と思ったことがある。クリエイターとかコピーライターとかコンサルみたいに「考えることが仕事」と思われてる職業って、あんまり時間感覚が想像されないけど、「考える時間」というのはとても重要で、集中して思考を深めたり、考える時間を増やすことで、いろんな発想を広げたり深めたりできるようになる。だから、いろんな物事に対して「考える量」を増やすことは、クリエイティビティを発揮するためにとても重要なことだ。

ただ、これに経験や知識など、個人が持っているバックグラウンドによって答えを出せる時間に大きな個人差が生まれるから、時間感覚が信用されないんだと思うけど。

 

もちろん本を読んでいるときも、考えながら読んでるから新しいアイデアが出てくるときも結構あるけど、やっぱり「何もしていないとき」に考えると、全く新しい発想だったり、「なんでこんな簡単なこと思い浮かばなかったんだろう」みたいなことがよく訪れるんだよね。不思議と。

今年は、そういう時間を意識的にもう少し大切にしたいと思っている。

東京スカイツリー建設の目的

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東京スカイツリーって、何の目的で建てられているのか、初めて知った。知ってましたか?

 

大前研一「ニュースの視点」Blog:KON381「ソフトバンク、NHK~伝えられる情報に惑わされず、核心を見抜け」

私に言わせれば、「事実上必要ない」ということです。  東武グループには申し訳ないですが、前々から言っているように  東京スカイツリーは観光名所と割り切って、電波塔として利用するべき  ではありません。

 

新タワーに移行すると、地上デジタル放送の送信高は現在の約2倍となりますので、年々増加する超高層ビルの影響が低減できるとともに、2006年4月に開始された携帯端末向けのデジタル放送サービス「ワンセグ」のエリアの拡大も期待されているところです。

また、災害時等の防災機能のタワーとしての役割も期待されています。

地上波デジタル放送と東京スカイツリーの役割 | TOKYO SKY TREE

 

というわけで、地上デジタル放送のためというよりは、高層ビルの影響で電波が届かないところが発生しないように、高いタワーと立てると。あと、ワンセグのエリア拡大か。。。。

 

こっちも参考になる。これを読むと、必ずしも必要ではないかもなーと。

ASCII.jp:東京スカイツリーは21世紀のピラミッド|池田信夫の「サイバーリバタリアン」

ところで、このスカイツリーは何のために建てるのだろうか。電波塔というからには、これが建てば今までより電波の届く範囲が広がるはずだが、すでに地デジの関東での電波カバー率はほぼ100%。これ以上カバー率を上げることはできない。スカイツリーは東京タワーより高いので遠くまで電波が届くと思っている人がいるが、東京タワーの電波の届く範囲は関東一都六県に限られており、これ以上広げることはできない。

 

調べてみると、いろいろ疑問に思っている人もいるもんだなあ。

東京スカイツリーって必要なんですか? – 流行・カルチャー – 教えて!goo

東京スカイツリーって必要なんですか? – 流行・カルチャー – 教えて!goo

 

大きな計画ほど、関係者が多く、埋没費用も多くかけていて、軌道修正するにも大金が必要だったりいろんな人のメンツを潰すことになってしまうので、合理的でない判断がされてしまうことがある。難しいもんだ。これがそれに該当するかはよくわからんけど、事実はいろんな側面を持つものだよね。

 

あと、テレビのゴースト障害というのも初めて知ったよ。

ゴースト障害 – Wikipedia

ゴースト障害 – Wikipedia

 

アナログ放送では、こういう複数拠点から電波を発すると生じる現象らしいが、デジタル放送では発生しないそうな。冒頭の参照記事では、東京タワーと東京スカイツリーでゴースト障害が発生する、と書いているけど、どっちが本当かな。Wikiの理由を読む限りでは、「発生しない」が正しそうだけど。

アナロジー思考

細谷功¥ 1,680

何となく硬いイメージの表紙だったんだが、予想以上に面白く、一気読みしたよ。アナロジーの重要性について理解していたつもりだったけど、この本を読んだら甘いことに気づいた。ここまで分析してこそ、アナロジーの活用に道が拓けるのかもしれない。

具体的にどういう点を意識して、アナロジーを活用するかは、本を読んでもらえれば。どちらかというと、なぜそれが重要か、という点を書いておきたい。

それは、画期的な技術を開発するのと同じくらい、「コンセプト」を開発する・発見することが重要になっているから。情報化社会で、情報を伝播するコストがとても下がっている。だけど、やはり「形がない情報」というのは伝達しづらいし、限られた情報しか伝えられない。

そこで幾つかの事象を束ね、普遍性を抽出し、名前をつける行為が必要になる。Web2.0とか、オープンガバメントとか、モチベーション3.0とか。プラットフォーム思考みたいなビジネスモデルもそうだ。

端的にサービスの違いとか将来を見据える観点をひねり出すというのは、それなりにニーズがあるというわけです。「言われてみればそうだよね」と思ったりするんだけど、そういう新しい観点を切り口として提供することは、とても大切になっている。

というわけで、アナロジー思考。どういう観点で類似性や普遍性を捉えるか。そういうことに興味を持つ人であれば、存分に楽しめると思う。

最後に。

同様に、例えば会社の資料でも抽象化能力の高い人はこうした「構造レベルでの美しさ」にこだわる。例えば資料の個々のページのデザインや色彩などではなく、全体の構成の単純さや整合性といったものである。P.138

これを読んで、これまでの上司が走馬灯のように駆け巡りました。

プロフェッショナルの情報術

 

喜多あおい¥ 1,470

 

情報感度が高い人は、どういうことを意識してるのか。

久々に情報術ものを読む。こういうのが個人的に好きなんだろうな。著者はテレビ番組に必要な情報などを調べる「リサーチャー」という仕事なんだそうだ。そんな職業があることを初めて知った。リサーチャーとしての情報収集・整理が書いてあるけど、こういう仕事も結構面白そうだなあ。

ITコンサルなんて職業やってると、知らない単語がどんどん出てくる。IT業界は技術革新が激しいし、クライアントが変われば全く知らない単語のオンパレードだったりする。そういう意味では、この本のスタンスというのはとても参考になる。

わからない言葉を放置しない

なぜその理解を飛ばして報告できるのか私には不思議なのですが、とにかく私はわからない言葉があると、一歩も前に進めません。その言葉の意味をどう理解するかで、文脈も、内容も全然違ってくるからです。P.165

知らない単語を放置する、というのは内容をちゃんと理解していない、という意味で場合によっては危険な行為だと思うのだけれど、意識していないとスルーしてしまう。個人的には自分が知らない単語が出てくると、ちょっと楽しい。後でネットで調べて、また知識増やせるなーとか思ったりする。

情報化社会で知識自体は勝負ならない、と言われているけれど、情報の引き出しをどれだけ増やして、どう加工するか、という点ではとても差別化が進んでいる気がしている。そういう意味では、わからない言葉に出会ったら、自分の中で整理してストックしておく癖をつけるというのは、とても大事なことだ。

知らない単語は、ググれば大抵わかる便利な世の中。後は自分の意識次第。

固有名詞で話す

昨夜見たドラマのこと、盛り上がる人とそうでない人がいると思います。その分かれ目は、固有名詞で話しているかどうかという点です。情報レベルが高い人は、固有名詞に強い人なのです。P.169

これは分かるわぁ。ここを読んでとてもしっくりきた。曖昧でぼんやりした会話って、内容がないから続かないし面白くもないんだよね。具体的であるほど、内容が広がって面白くなる。仕事でも言葉が具体的で、数値が明確であるほど、人のリアクションが違うというのはとても感じる。意識するのは難しいけどね。やっぱりぼんやりしておく方が脳は楽だからさ。考えるってエネルギーいるし。でも、これを日々意識してると、会話が深まって楽しくなる。

結局、ちゃんとツールを知れば信頼ある情報を取得できるし、意識すれば情報はどんどん吸収できる。けれど、それには一定の努力も必要なわけだ。

関連;

情報が溢れる社会で、人と違うアイデアを生み出す「仕組み」を作る | Synapse Diary

プロフェッショナル・コンサルティング

波頭 亮¥ 1,575

なんか重い本かと思っていたら、意外に読みやすかった。対談形式だし。いろいろ気になったので、抜粋してく。

(冨山)

米国の場合は、テレビメーカーにしても本質的に日本と補完だったので、譲ってもらったようなところがあった。本当のガチンコまでは行かないで、彼らは彼らで違うところで戦おうと違うマーケットに行ってくれた。GEだって競争回避の戦略を採っていました。彼らは選択と集中の枠においては、日本のプレーヤーが得意だった領域は彼らが捨ててきた領域なんです。

しかし、韓国や中国はそうではない。補完しない近似モデルですから、完全にガチンコ。P.17

本当かどうかはわからないけど、日本が航空業界に深く入り込んでいないのも、こういう棲み分けを図ったからという話もある。だけど、今は状況も変わり、土俵も変わっている。

(波頭)

一方、東京は日本の中では情報も人材も圧倒的に集中しています。だから東京にいればわざわざ直接海外に出かけていかなくても、世界中のヒト、モノ、情報が手に入ります。その条件の良さが返ってアダとなって海外指向が先鋭化しなかったのでしょう。P.50

東京にはあらゆるものが集中しすぎていて、東京本社の日本企業は海外志向になりづらいという話。制約が大きい方がイノベーションが生まれる、というのと近いのかもね。確かに、東京にいたときはいろんな情報が豊富で近かったと実感する。人を媒体にした情報の伝達が一番大きいかな。

(波頭)

でも、今みたいにインテリジェンス・インテンシブ(知識集約的)な産業がパイを稼ぐ時代になると、やっぱり突出した人間がいかに活躍するかで生み出されるパイの大きさが左右されるわけです。だから、そこにフォーカスしたマネジメントにシフトしないと日本は企業も社会も持たない。P.71

大人げない大人になれ!」でも書いてあったけど、突出した人間に価値が集中しているんだよね。経営層がそういう価値観にシフトして、人でもアイデアでも良いものは抜擢していく仕組みがないと、なかなか難しい気がするなあ。

(冨山)

クライアントとの関係って、どっちが考え尽くしたか、喧嘩をしているわけだから。P.98

これはその通り。考えるのって一瞬と思われるけど、思考の深さにはある程度時間と比例関係にあると思うな。経験とともに短い時間で深く考えれるようにもなる気がするけど。そして、最後にはどちらが深く考えれたかの勝負な気がしている。そういう緊張感が、苦しくも刺激的でもある。

(波頭)

だから、ファクト(事実)を共有化してある目的を設定しさえすれば、あとはロジカルに議論していくことで合理的なコンセンサスに到達することは可能なわけです。仮に思考的スタンスや好き嫌いが多少あったとしても、少なくともきちんとした議論はできる。今の自民党と民主党って、議論になってないでしょ。国の政策のあるべき論ではなく、権力闘争を目的にしているから、あんなかみ合わない不毛な議論に落ちてしまう。政治家って直接話したらみんな頭いいんですよ。知識もあるし、頭の回転も速いんだけど、答弁になると変わる。政治のためにやっているのではなくて、権力のためにやっているから。P.119

政治家の議論がなんであんなに空転するのか、という話。才能の問題ではなく、インセンティブ設計の問題だよね。

(波頭)

論理的思考力、つまりロジカルシンキングの力とは、ものごとを正しく考えるための基礎的な能力です。考えるテクニックではなくて、脳みその筋力と言ってもいい。P.136

新人トレーニングのとき、先輩社員に「脳みそは筋肉と一緒。鍛えれば鍛えるほど賢くなる。」と言われて、そんな考え方したことなかったから、自分の中で鮮烈だったのを覚えている。そして、この本で同じことが書かれていたよ。確かに、ロジカルシンキングは訓練。訓練すれば、論理的に構成されていないものの違和感に気づけるようになる。

(波頭)

まとめると、ロジカルコミュニケーションは、正確にロジックを展開して伝えるという正攻法もあるけれど、聞き手の知識や思考の性質に合わせてメタファーやメッセージとして伝えるやり方も使えるようになっておく必要がある、ということです。P.151

論理的思考を鍛えることと、それをコミュニケーションに発揮するのは、似てるようで違うよ、という話。単純に論理を振りかざすのではなくて、論理構造をちゃんと理解して、どこがうまく伝わっていなかったり、感情の要素が働いているかがわかった上で伝達手段を考える必要があるってことだよね。

(冨山)

逆に年功制を守ろうとすると終身雇用は崩壊する。年功序列が残って、終身雇用が壊れる。意外にそうなってしまう場合は多いんですよ。上の世代の既得権に切り込めず、年功的要素が残ってしまい、終身雇用の方が危うくなっているところがありますよね。組織内の人たちのリアリティとしては、年功序列のほうに結構、しがみつくんです。年功序列で権力を持っている上の世代が自分たちの年功特権と終身雇用だけを守って、若い世代については、終身雇用を事実上、放棄してしまうパターンです。P.244

終身雇用と年功制の話。両方守るか両方捨てるか、みたいな感じで議論されることが多い気がするんだけど、どちらかというと組織転換に影響が大きいのは年功制だってことだよね。年齢とともに仕事の能力が向上するのは30代ぐらいまでな気がするので、そこらへんから賃金カーブを調整するように変えていかないといけないと思うんだけど、なかなか既得を崩すのは難しいよね。

それにしても、見事にカタカナ語が多い本だな。笑

議論しやすいこと、しにくいこと

今日はダラダラ書く。

世の中には、広く議論しやすいことと、しにくいことがあるんじゃなかろうか。

例えば、原発問題は何が「問題」なんでしょう。

原発の技術そのものが人類の限界を超越しているから?

原発で万が一事故が起こると、その周辺は人が住めなくなるから?

原発を止めると、他のエネルギーで賄わなければいけないけど、それが大変だから?

東電の安全管理体制や、事故後の対応がまずいから?

政府とメディアと学会と東電が、みんな結託してるから?

放射能ってよくわからないけど、人体に影響がありそうだから?

福島の事故が、チェルノブイリと同じレベル7だから?

まあ、いろいろあるんでしょう。どれも問題だと思う。だけど、それぞれベクトルが微妙に違っていて、発散してしまってる印象もあり。あと、これまでエネルギー政策そのものが理系の範囲で、理解するの面倒だし、あまり興味なかったけど、フタを開けてみたらこんな感じになっているので、いろんな情報が錯綜して、議論の量が増えているんだと思う。

あと、政治に関していえば、誰かが辞めたとか、誰かがこういったとか、相変わらず「政局」に関する話がメインになっている(というかそれがほとんど)けど、これも政局の方が政策より「議論しやすい」からなんじゃないかと思ってしまうんだよね。「誰が」というのも大切かもしれないけれど、「何を」という点も忘れちゃいけないんじゃないの?と思う毎日。

例えば復興政策ってどうなっているんだろう。大衆メディアのニュースでは本当よくわからんよね。どこかのコンサル会社が入って復興計画を建てているとか聞くけど、実際にどういう方針で、どこに問題が潜んでいる、とか、ちゃんと体系だって説明された報道をほとんど見かけない。

何が言いたいかというと、人は「自分がわかりやすいこと」を中心に議論を展開しようとする傾向があって、難しいことについては、余り触れないか専門家任せにしてしまっている感じがするんだよね。

だけど、そこで理解したり伝達するのを諦めてしまうと、本当に重大なことを見落としてしまう可能性がある。だから、分かりづらいことにぶつかったときは、噛み砕き、わかりやすい話に置き換え、人に伝達する技術が必要になる。

「わかりづらい」ことと「わかりやすい」ことの間には、優秀な翻訳者が求められるけれど、それが結構おざなりにされている気がするんだよなあ。池上さんがブームになったのは、そういう「翻訳」というあまり技術として認識されづらいところに、価値が見出されたからだと思うし。

今のメディアに求められているのは、そういう「わかりづらい」ことを「わかりやすい」ことに変換しながら、いろんな角度から検証してくことであって、横並びで同じ報道を、同じスタンスで繰り返すことではないと思うわけですよ。ネットから的確な情報を拾うのもまだ難しいし、マスメディアの影響力が未だ大きいはずなのだから。

今後は、こういう変革がもっと起こることを期待する。

大西 宏のマーケティング・エッセンス : 変革は辺境からやってくる – ライブドアブログ

大西 宏のマーケティング・エッセンス : 変革は辺境からやってくる – ライブドアブログ

課題を解決できる人間になる

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今の仕事で一番楽しいところは何か。

仕事をしていて年々思うのだが、昇進に対する欲求が余り強くないので困っている。ただ、仕事については結構面白いので続けているんだが、なんで面白いと感じているのかふと気づいたので、書いておく。

結局のところ、課題を解決するのが楽しいのだ。テストの問題を解くのと同じ感覚。ただし、回答の選択肢はほぼ無限大にあるし、問題そのものを変えてしまうこともある。そういう自由度も含め、課題について考えているときが苦しくもあり、楽しい。

「どうしたら良いか、考えて欲しい」とクライアントから言われ、事象を整理し、課題を抽出し、解決に導くアイデアを注入し、納得してもらう。このプロセスによって、課題が解消される瞬間が面白いからこの仕事をやっているんだと思える。

取り扱う課題の難易度も、自分の成長とともに上がっている気がするし、成長の実感と相まって、面白さを感じられている。ただ、社内だけに閉じこもっていてもなーという感じもするので、違い世界の課題を取り組む機会を作ろうかなあ、とも思う日々。

情報の種類や時間軸について考える

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TEDをネタに記事を書こうと思ったときに、「やっぱり動画って見返したり分析したりするのに適してないな」と思った。特定のポイントを探しづらいし。そこでふと、TEDは字幕ファイルを取得できるので、軽くそういうプログラムでも書こうと思ったら、既にやっている人がいるもんだね。

 

TED Talk Subtitle Printer

 

これを見つけてから、「情報」の形についていろいろ考えてみた。

 

情報の種類を変える

やはり動画や音声なんかは、検索しづらいし、扱いづらい。同じ時間を共有できる反面、時間に制約されてしまう。どれだけネットが進化して、リッチコンテンツが充実してきても、まだ検索の容易性という意味で、文字情報の検索に勝るものは出てきていないと思う。

YouTubeなんかは検索機能があるけれど、これもタイトルや説明文、タグなどの「メタデータ」に属する情報からヒットしているわけで、「動画そのもの」の情報ではない。そういう意味で、メタデータをつけるという手間と、メタデータそのものの情報量が、通常の文字コンテンツに比べて少ないというデメリットは否めない。

書き起こし.comが流行ったのも、そういう「扱いづらいデータから扱いやすいデータに変換された」ことがウケた理由だと思う。

 

書き起こし.com =注目の動画・音声の文字起こし/テープ起こしサイト=

 

こんな感じで、情報の性質を変換すると、新しいニーズが生まれる気がする。そういう意味では、冒頭のTEDも動画だけでなく、写真と字幕ファイルを組合せた記事形式にしたりすれば、読みたいと思うなあ。

 

情報の時間軸を変える

ネットで成功しているのは〈やめない人たち〉であるに書いてあったけれど、最初にHPが登場したときは更新時間はゆったりしたものだった。そしてブログが登場してから情報は日次で更新されるようになった。さらに、Twitterなんかのマイクロブログが登場すると、時間軸の単位は「日」ではなく「時」や」分」「秒」になった。そうやって、どんどん情報が加速している。

一方で、Twitterを束ねたTogetterが登場したり、まとめ記事やまとめブログがあったりして、早過ぎる情報を束ねて静的化する流れもある。

 

時間軸の中で情報を捉え、違った時間軸の中に情報を流したり整理すると、違ったニーズが発掘できたりするようだ。

 

情報化社会と言われて久しいけれど、爆発しそうな情報の多さに立ち向かうためにも、「情報」をいろんな角度から眺めると見えてくるものがあるのかもしれないなあ。

コンサルとエンジニアの違いについて考える

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ITコンサルタントとシステムエンジニアの違いは何だろうか。上流SEという言葉もあるし、経営戦略、事業戦略をシステム化してゆくフェーズを担うことについては、変わりがないのでは、という話を上司としていたのが面白かったので、メモに残しておこう。

 

顧客の立場にたてるかどうか

結論からいえば、コンサルタントは顧客の立場に立ち、SEは自社の立場に立つ。ここに違いがあるのだと思う。これが、言葉だけではなかなか重要さが伝わらないのだけれど、ここに違いが生まれるのだと思う。

 

エンジニアの人と仕事をすると、(もちろん全てとは言わないが)自分たちの理想を追求したり(この方がシステムは使いやすい、ソースコードがきれいになる)、自分たちの作業が楽になったり(開発工数が減る、テスト工数が減る)という話が主体になることがままある。

 

そして、それが顧客の視点からみれば望ましいことではなく、顧客の要求とシステム開発側の思想がコンフリクトすることも結構ある。顧客の要求を反映すると工数が増える、というトレードオフの関係だ。こういうときはよく議論になる。気づくと、自分が顧客側の主張を代弁している。

 

これがうまくいかないと、平然と「こういうシステムの制約があるので、それはできません」という答えを返すことになったりする。結果的に業者側の都合を押し付けている。もちろん本当に制約があったり、過大な要求は取り下げてもらうことはある。でも、可能な限り顧客の要求を実現に近づけることが重要だと思っている。

 

それでも、アメリカではコンサルタント役員がインサイダーで逮捕されたりで、コンサルタントへの信頼はいつまでも揺らいでいる。怪しい、いかがわしい、信用できない。

不祥事に揺れるマッキンゼー ビジネスモデルが情報漏洩を生んだ? JBpress(日本ビジネスプレス)

 

それでも、顧客のために尽くさなければと思う。本当の信頼を得るまで。