SNSとマーケティングの関係を理解したい人は必読。「ウェブはグループで進化する」

新年最初の読書は、「ウェブはグループで進化する」でした。読んでみて思ったことは、「マーケティングを考える上では必読だな」ということでした。

2012年と少しタイムリーではない本でしたが、当時話題になっただけあって、SNSの潮流をどう捉えるかがよくわかる内容です。

著者はGoogle+をてがけ、GoogleからFacebookへ移籍した人で、一旦書いた本がGoogleから出版差止めになったという、曰くつきです。

マーケティングで考えた場合に、いろいろ目新しいエッセンスが満載でした。

 

インフルエンサーではなく、ネットワークの構造に注目する

よくネットマーケティングでは「インフルエンサー」を見つけて、そこに情報を流してもらうというアプローチが言われます。僕はこれ自体は間違っているとは思いませんが、それよりも重視すべきは「ネットワーク構造」だとこの本では述べられています。

理屈はシンプルで、以下のようなことです。

  • 元々、人は強い絆(親しい人)から強い影響を受ける
  • 人は小さいグループを複数形成する

つまり、幅広く強大な影響を与えるインフルエンサーというのは実際は少ないので、たくさんの「普通の人」が形成している小さなグループやグループ間に、どうやって情報を流すかに着目しようということです。

そうすることで、親しい人から受け取った情報は、信頼され、購買などの判断に強い影響を与えるというわけです。だから、自分が流す情報に関心を持ってくれる人たちを見つけて、そこに情報が流れるよう、メッセージを発信することが、マーケティングにとって重要になります。

 

SNSを有効なマーケティングツールにするためには、プランの作成と実行後のフィードバックが重要

TwitterやFacebookがマーケティングに有効だ、などと言われ、取り組んでいる企業もたくさんいますが、どれほど有効に働いているかよくわからないケースを見かけます。

この本では、グループと情報の流れに着目し、トライ&エラーでどれだけ反応が得られるかを検証することが重要と書かれています。同じようなことは「USERS」という本にも書かれていましたが、それだけSNSを運用するというのは、非常に手間がかかるものだということです。

これからの企業に必要なフィードバックループのやり方 | Synapse Diary

SNSは実社会の人間関係をオンラインへ投影したものであり、SNSの隆盛はあったとしても、SNSというサービス自体は今後も継続的に使われるし、もっと発展していくでしょう。それを考えると、現時点でSNSをマーケティングツールとして使いこなすことができれば、今後の企業の優位性を築くことができます。

この本には、どのように取り組んだら良いかのアプローチも丁寧に書かれているので、もう一度読み返して、実践してみようと思います。

 

それ以外にも、認知心理学やパーミッション・マーケティングとのつながりも述べられていて、いろいろな知識がつながっていくようで、楽しく読める一冊でした。

参考:心理と行動の関係が理解できる「ファスト&スロー」 | Synapse Diary

これからの企業に必要なフィードバックループのやり方

「USERS」という本を読みました。原著のタイトルは「USERS, NOT CUSTOMERS」です。「顧客」にフォーカスする時代は古い、ということです。

この本では「ユーザー」を以下のように定義しています。

この本におけるユーザーとは、顧客、従業員、求職者、見込み客、パートナー、ブランドのファン、メディアのメンバー、その他影響力を持った人々(インフルエンサー)のことである。要するに、デジタル・メディアとテクノロジーを通して企業と交流する人々を指す。

これらユーザーと企業の関わり方について、ネットを中心とした取り組みと、それを実現するための内部組織の作り方など、幅広く説明されています。端的に言って、これからのネット活用を考える人には必読です。ホームページを看板代わりに掲げるだけなんてのはとっくに終わっていますし、TwitterやFacebookが登場してきても、コミュニティ運営をうまく行える企業は限定的です。

 

いろいろこの本から気付きがありましたが、今日書きたいのは「フィードバックループの重要性」です。

フィードバックループとは、何か実行した結果を測定し、評価・学習することで、次の行動に活かすことを指します。

この「USERS」では、アクセス解析やSNSなどのコミュニティ運営の重要さが述べられています。なぜこれらが重要なのかといえば、企業が市場やユーザーからフィードバックを得られる貴重な情報源だからです。

 

例えば、アクセス解析の重要性に関しては、以下のように書かれています。

トップ企業は、どのように人々が自社のデジタル・フットプリントを利用するのかを探るため、定期的にデータを解析し、それに応じて繰り返しユーザビリティを改善し、ユーザー・データの変化を見て、また最初からやり直す。これを「フィードバック・ループ」と呼ぶ。彼らは、自社のデジタル・フットプリントのユーザビリティを継続的に強化するためにフィードバック・ループを用い、究極的には組織全体のパフォーマンスを改善する。

インターネットやスマートフォンなどの発展によって、コミュニケーションに関するコストはどんどん低下しており、企業に対してもスムーズなコミュニケーションを求めています。なので、ユーザビリティというのが非常に重要になってきているわけです。

企業は、ユーザーのニーズやユーザビリティの問題点を、アクセス解析から得て、改善を続ける必要があります。

 

コミュニティ運営について言えば、Facebookページなどが注目されています。確かに新しいコミュニケーション方法であり、ブランドの形成ツールだと思います。企業にとっても、旧来のマーケティングとは違うアプローチで、フィードバックのための情報源を獲得できるようになっているわけです。

 

これらの情報を収集し、企業へのフィードバックに活かす必要があるわけです。これらの情報蓄積が、企業の資産になります。難しいな、と思うのは、これらのアクセス解析やコミュニティ運営について、外注が難しい点です。アクセス解析自体は外注しても良いかもしれませんが、それを組織へのフィードバックに組み込むためには、組織の実状を深く理解しておかないと、なかなか深い効果は出づらいかもしれません。逆に、そうじゃない有効なアプローチを設計できれば、ひとつの有用なビジネスになる気もします。

コミュニティ運営もそうですね。ノウハウと呼ばれるものがあるようでなく、外注やコンサルが活躍しづらいフィールドになっていると思います。あと、金銭価値で評価しづらいという点もネックでしょうか。となると、本来は自社で内製する必要があるのですが、大企業ならともかく、中小企業になると限界もありそうです。

 

いかにネットの各種ツールから情報を取得し、企業のフィードバックに取り込んでいくか、というのは今後の企業にとって重要だと思うのですが、それをどう実現するかについては、まだまだ課題がありそうだな、と思う今日このごろです。

これからの企業に求められるのは、透明性の高い情報とコミュニケーションです。

今日はこのへんで。

Googleが新しいモバイル用広告フォーマットを発表

Googleが新しいモバイル用の広告フォーマットを発表したそうです。

AdSense がスマホ用追尾広告「モバイル アンカー広告」の提供を開始

内容自体は、モバイル画面の下部に広告を表示して、スクロールしても追尾してくるものです。少しだけ驚きなのは、Googleはこれまで追尾型の広告を否定していたはずで、自らそれを発表してきたことでした。

ただ、モバイル広告はまだまだ成長市場で、費用対効果を含めて手探りの状態です。Googleは今後も様々なフォーマットを試して、データを分析して効果を図ろうとしているに違いありません。

米広告市場でモバイル広告と動画が成長 – モバイルは倍以上の成長に | マイナビニュース

 

ちなみに、Googleは全インターネット広告市場の1/3のシェアを占めています。モバイル広告だけでみれば50%以上です。本当に、インターネット広告業界の巨人ですね。

世界モバイル広告市場シェア過半を占めるGoogle、2位はFacebook

なので、出稿する側も出稿される側も、こういう広告サイズ等のフォーマットについては、把握しておく必要があるでしょう。

広報担当者が様々なコミュニケーションツールを使いこなせなければいけない理由

communication
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現在「USERS」という本を読んでいるのですが、これを読んで、コミュニケーションの在り方というものがまた大きく変わっているんだなーと思いました。この記事では、いかに変化していて、企業はどういう対応が必要かという点を考えたいと思います。

コミュニケーションツールの発展

コミュニケーションという観点でいえば、昔は伝令などを通じた手紙から始まり、1876年に電話が開発されました。その後、IT革命が起こってメールがコミュニケーションの主要な手段になりました。

IT革命では、音声も含めて全ての情報はIT機器上のアプリケーションとして取り扱われることになりました。これによって、コミュニケーションツールは機器などの物理的な制約から解放されて、多様化していきます。メール以外にもチャットやSNSなど、新しいコミュニケーションの形が登場し、普及していきました。

 

Facebookの存在

SNSでみると、勃興期にはいくつかのSNSが注目されては消えていきました。世界的に広く普及したのは後発組のFacebookでした。Facebookは、ユーザーが書き込みや写真のアップロードなどを行いやすく、かつ友人の状況を効果的に確認できるものとして、汎用的なコミュニケーションツールの存在を獲得していきます。進化の過程で、メッセージ機能やタイムラインなど様々なコミュニケーション方法を吸収・統合していきました。

ちなみに、Facebookは2004年にサービスが開始され、2013年8月時点のFacebookのアクティブユーザー数は、全世界で11.1億人、日本では2200万人です。

ニュース – アジア各国のFacebook推定ユーザー数を発表、日本は2000万人を突破し5位:ITpro

Facebookは、劇的に人々のコミュニケーションコストを低下させた、という意味で非常に大きな存在だと思います。

 

新しいコミュニケーションの台頭

Facebookの普及から後を追うように、日本では2011年にLINEが登場しました。そして、日本をはじめアジアで急速に拡大しています。つい最近登録ユーザーが3億人を超えました。

【LINE】LINE、登録ユーザー数が世界3億人を突破

LINEの普及には目を見張るものがあります。Facebookとの関係にも興味がありますが、共存できるものなのでしょうか。

最近、元TechWave編集長・湯川鶴章氏のメルマガで、興味深い考察を読みました。一部引用させていただくと、

もし本当に10代のFacebook離れが進んでいるのであれば、世界の10代は今、どのようなサービスを利用し始めたのだろうか。globalwebindexによると、1-3月期から7-9月期までで中国を除く世界各地で最も10代のアクティブユーザーが増えたのはWeChatだった。同期間中に1021%も伸びている。中国以外の地域のユーザーに対する質問にもかかわらず、中国のメッセージングアプリWeChatが伸びていることろが興味深い。 あとは、Twitter社の写真アプリVineが639%の伸び、Flickr、Skype、Facebookメッセンジャーなどのモバイルアプリもユーザー数を伸ばしている。

ついに若者がFacebook離れ?時代が再び動き始めたか – 湯川鶴章メルマガ ITの次に見える未来 – BLOGOS(ブロゴス)メルマガ

というように、様々なコミュニケーションに関するサービスが登場してきています。全てがFacebookに置き換わるもの、というわけではありませんが、Facebookという巨大で汎用的な存在以外にも、コミュニケーションに多様性が生まれ続けているということです。

 

企業と顧客のコミュニケーションの変化

これまで、企業と顧客(あるいは顧客見込み)とのコミュニケーションは、広告などほとんどが一方的でした。しかし、上記でみてきたように、IT革命によって様々なコミュニケーション方法が生まれ、そして広く普及してきています。企業からみれば、これらの手段を駆使して、もっと顧客とコミュニケーションをとりたいと思うでしょうし、ユーザー側も便利なツールによって企業に言うことを聞いて欲しいとか、企業から効果的に情報を引き出したいと思うようになっています。

企業によるFacebookページなどが流行っているのは、そういう流れから来ているんですね。ただ、うまく運用できるとは限りませんが。

 

これからの企業と顧客のコミュニケーションの在り方

「USERS」のメインテーマでもありますが、顧客だけでなく、その周辺にいる「ユーザー」とコミュニケーションを円滑にとることが必要になってきています。

「USERS」で書かれているのは、「デジタル・コア」という考え方です。これは、コミュニケーションプラットフォームを社内に構築することで、例えば社員がユーザーとコミュニケーションを簡単に取れるようにするためのものです。企業のFacebookページのように、企業と一般ユーザーと広くコミュニケーションできるものが該当します。

そして、今も昔も変わらない原始的なルールとして「顧客の問題を解決する」という点が重要です。つまり、ユーザーは問題を抱えていて、新しいコミュニケーション方法によって企業に解決を求めてきます。それを、情報提供やユーザーの手間削減など、いくつかのアプローチから、ユーザーの問題を解決する必要がある、ということです。

 

まとめ

  • コミュニケーションコストは一層低下しているし、コミュニケーション方法は多様化している
  • ユーザーは新しく登場するコミュニケーションツールを使いこなしている
  • 企業は、ユーザーが利用しているコミュニケーション方法を駆使して、ユーザーの問題を解決する必要がある
  • 企業は、複数のコミュニケーションツールを統合して、統一したコミュニケーションを行う必要がある

今であれば、学生にアプローチしたければLINEは必須でしょうし、少し年齢が高ければFacebook、Twitterなど、いろんなツールに合わせてコミュニケーションを図ったり、ブログなどで積極的にユーザーが役立つ情報を提供することが重要です。

 

書いてみると至極当たり前な結論になってしまいました。ただ、こういうツールが流行るばかりで、企業はうまく使いこなせていないと言われています。その理由は結構シンプルだと思っていて、「ユーザーの問題を解決していない」からだと思います。なので、こういう話になるんじゃないか、と。

発信するのがソーシャルと思ってるダメダメ運用が多すぎる | More Access! More Fun!

想定したユーザーがいないのであれば、無理して流行りのサービスを使う必要もないと思うんですが。

いくつかのアプローチと事例が「USERS」には書いてありますので、興味があればぜひ手に取って読んでみてください。

【MBA書評】キャズム

だーくろと共同テーマで書いている、MBAに関する書評ですが、時間がないのを言い訳にしてしばらく書いていませんでした。そんなこんなしている間に、だーくろはブログを移転してWordpressになり、このブログとそっくりの外観になっていました。悔しいので、少しデザイン変更をしようか真剣に考えています。

これまでの二人の書評は以下からご覧いただけます。

MBA書評 | だーくろ
Mba | Synapse Diary

 

今日の本は、ハイテクマーケティングで有名な「キャズム」

昔から「キャズム」という言葉は知っていましたが、あまり深く考えてこなかったというか、プロダクト・ライフサイクルでマジョリティに至るまでには「溝」があるという浅い理解しかありませんでした。

しかし、この本はシリコンバレーを中心にしたハイテクマーケティングでバイブルと言われている理由も、読めばよくわかりました。

本の概要

ITなどのハイテク系は、技術の動向が早く、主導権争いや技術の盛衰が激しくなっています。その中でベンチャー企業が成功するためには、いち早くマジョリティと呼ばれる多くのユーザーに広めて使ってもらうかが重要になります。

しかし、プロダクト・ライフサイクルによって段階が存在し、段階によって対象となるユーザーが異なるので、当然マーケティング戦略もそれぞれ異なる、ということをこの本では示しています。そして、ユーザーによって関心を持つポイントが異なったり、技術に対するスタンスが保守的であるかどうかなど、プロダクト・ライフサイクルによって異なることと、それを攻略するためにはどのようなアプローチが必要であるかが書かれているのです。実際、「キャズム」はその中の一部でしかないわけです。

 

本のみどころ

先行事例が全てのユーザーにとって有用なわけではない

売る対象を広げるにあたって、先行事例というのは非常に重要です。しかし、マーケットを開拓するにつれて、保守的なユーザーも対象にする必要が出てきます。保守的なユーザーは、先行事例が有用とは限りません。以下のような場合です。

要するに、ハイテク製品がアーリー・アドプターからアーリー・マジョリティーへ市場を拡大しようとするときには、「先行事例と手厚いサポートを必要とする顧客を、有効な先行事例と協力なサポートなしで攻略しようとしている」という事実を肝に銘じなければならないということだ。

アーリー・アドプターという比較的新しもの好きなユーザーが取り入れた事例は、保守的なユーザーにとって有用なわけではありません。ユーザーによって求めていること・気にしていることが違うので、それに合致した先行事例が必要になるのですが、フェーズが変わった直後はそういう先行事例が乏しいため、そこに「溝」があるというわけです。

 

プロダクト・ライフサイクルが移るにつれて関心事項が変わる

プロダクト・ライフサイクルが進んで、技術が普及してくると、対象ユーザーと関心事項が変わってきます。例えば、一番最初に先進技術に関心を持つ人(テクノロジーマニア)と、技術がある程度実用的になってきたら関心を持つ人(ビジョナリー)では関心対象が違います。テクノロジーマニアは技術そのものに関心を持ちますが、ビジョナリーは技術がもたらすビジネス上の変革に関心を持つのです。

同じように、後ろに進むほど市場(周囲のいろんな人が使っている)や企業(ブランドや愛着)など、技術や製品から関心の対象が移っていくのです。本書から引用すると、以下の通りです。

ハイテク・マーケティングの世界には、テクノロジー、製品、市場、企業の4つの価値領域が存在する。そして、すべての製品に対して言えることだが、テクノロジー・ライフサイクルが進展するにつれて、顧客が価値を見出す対象がしだいに変化してくる。

マーケティング戦略としては、これらを考慮して組み立てる必要が出てきます。

例えば、Appleはあまり先進的な技術には関心を示さず、実用的になってきた技術を製品化し、独自のデザインを付与してマジョリティへ攻めることを戦略としてきました。なので、最初はビジョナリーに対して売り込み、その後マスマーケティングによってマジョリティでのシェアを獲得していくのです。

 

 

それ以外にも、ユーザーの特性や企業に求められる対応が細かく書かれていて、「キャズム」という言葉が有名になったのもわかる納得の一冊でした。マーケティング、特にIT系のマーケティングを知るには必読です。

 

【書評】100円のコーラを1000円で売る方法

マーケティングだ!とか顧客志向だ!と言っても、なかなか実践するのは難しいものです。というわけで、マーケティングに関する本として、最近タイトルが気になっていたこの本を読みました。

もしドラや「ディズニー魔法の会計」など、ストーリー仕立てになっていて、さくっと読めた。

好評だったらしく、続編やマンガ版も出ているようです。

ストーリー仕立てながら、バリュー・プロポジション、カスタマーマイオピア、キャズムなど様々なマーケティング理論が実例と当てはめて語られており、非常にわかりやすく、内容の密度も濃いな、というのが読んだ印象です。MBAでもマーケティング理論を学習しますが、これらを一体的に理解する、というのは意外に難しいので、改めてこうやってストーリーの中でマーケティング理論が当てはまる様子を把握する、というのは良い学習だな、と思いました。

これからの企業経営にはマーケティング戦略が欠かせない

個人的には、マーケティングの重要性はとても上がっていると思っています。

日本市場全体が、成長期が終わり、成熟期になっていることで、各自が考えて市場を切り開く必要がある、というのは今の経営環境だと思っています。そうなると、横並びで製品やサービスを売るのではなく、ターゲットを決めて、顧客に合った販売方法を構築していくマーケティング戦略が必要になります。

日本政策金融公庫の論文でも、同様のことが書かれていました。

小企業の新たな顧客層開拓の取り組み(PDF)|日本政策金融公庫

一部引用させていただくと、

もっとも、いまや市場が成熟・停滞している業界は多く、小企業の経営者にしてみれば、そう簡単に売上は増やせないというのが本音だろう。現に、「全国中小企業動向調査(小企業編)」(2012年7-9期)の結果では、経営上の問題点として「売上(受注)の不振」をあげる小企業は55.4%に上り、半数を超えている。

おまけに、現在はデフレの状態にあり、商品やサービスの価格をぎりぎりまで下げて設定している小企業は多い。そうした状態で、売上を増やすためにやみくもに手を打てば、獲得できる粗利よりも費やした諸経費の方が多く、むしろ利益が減ってしまったということにもなりかねない。

ということで、今の経営環境の問題はコスト削減ではなく売上の増加であり、新規顧客の獲得です。これを実現するために、厳しい外部環境の中でやみくもに経営をしていると、コストだけが積み上がってしまう、という懸念が大きいわけです。

話を本に戻すと、マーケティングは顧客を中心に考えることであり、それは以下のように書かれています。

本書のテーマは顧客中心主義への回帰。そしてお伝えしたかったことは、顧客中心主義とは、「顧客が言うことは何でも引き受ける」ということではなく、「顧客の課題に対して、自社ならではの価値を徹底的に考え、提供する」ということです。

本書の後書きで、マーケティングに関する本がたくさん紹介されていましたので、それらを読むとさらに理解が深まるんじゃないかと思います。マーケティングを勉強しよう。

リピーターになる時期は予想できる

ビッグデータとか、データアナリティクスという言葉がバズっていますが、個人的にはデータ分析にはビッグもスモールもなく、重要だと思っています。それは企業経営、特に中小企業でも同じです。それはこの本を読んで、改めて確信した次第です。

久々に目から鱗でした。詳しいアプローチや考え方は本を読んでいただくとして、確かにこの方法を駆使すれば、リピーターの時期や予測できるようになるでしょう。有名な「やずや」で編み出された手法とのことです。

 

データ分析に必要な設備投資

データ件数が少ないうちは良いですが、最もオフィスで馴染みがあるExcelでも数千件レベルになってくると、だんだんファイル操作が重くなってきます。やはりAccessや他のソフトやサービスなど、データベースを整備する必要が出てきます。

中小企業は日報管理や取引管理などのデータが存在しないか、あるいは存在していてもパッケージ製品などでフォーマットが固定されており、互換性などの処理も技術的にできない、あるいは人的にそういうリテラシーがない、という壁に当たり気味です。

なので、こういうデータ分析を行うためのデータ蓄積の業務アプローチと、それを実現するためのデータベースを含めた技術サポートが必要だと思っています。

 

中小企業を支えるクラウドサービスの台頭

一方で、中小企業や個人事業主が利用するハードルが低くなったクラウドサービスは、いろいろ台頭してきています。

無料の見積・請求書管理サービス misoca(みそか)|テンプレートで簡単作成
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全自動のクラウド型会計ソフト「freee (フリー)」
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クラウド日報とはどんなもの? | クラウド日報
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他にも海外では、いろんなサービスが登場してきているようです。

今年は中小企業もビッグデータとSaaSを有効利用できる | TechCrunch Japan

 

タイムマシン経営ではありませんが、日本も今後このようなサービスを受け入れる土壌ができて、たくさんのサービスが登場してくると思うと、非常に楽しみです。

というわけで、今後の企業経営のトレンドは、データ分析とクラウド利用だと思ってます。

住所データから簡単に地図を作成できる「BatchGeo」の使い方

マーケティング調査などで使えそうなツールを見つけました。住所を含んだExcelデータをコピペすると、Googleマップ上にデータをプロットしてくれるWebサービスです。

マップを作成 | BatchGeo
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試しに、以下のデータを使って作成してみました。

[株]全上場企業の本社住所一覧(1000~4000番台) | アマシィ

たまに住所を認識できないものもあるようですが、精度はそこそこ良いです。

BatchGeoのテスト

無料版はデータ件数300件まで、広告表示、など制約はありますが、それでも使えます。それ以上に使い倒したい方は、月額99ドルです。

BatchGeo Pro | BatchGeo

マーケティング調査でも使えそうだし、ビッグデータで地図情報は増えているはずなので、こういうニーズはあると思うんだよね。作成した地図情報はすぐに他の人と共有できますし。GoogleMapなので、拡大・縮小も簡単です。

TwitterとFacebookの拡散力は違う。どちらが拡散するのか?

今日、ややこの記事がアクセス増大しました。

 

それのおかげで、ブログ全体のアクセス数はいつになく増えています。(そのわりにアドセンスはほとんど増えませんでしたが。。。)

最初、Twitterで拡散されていることに気づいたのですが、よくよくアクセス解析をみると違いました。Facebookからの流入がほとんどだったのです。今日の上記記事へのアクセス流入元の9割ぐらいはFacebookでした。(余談ですが、PCとモバイルが半々ぐらいでした。)

これまで正直、Twitterの方が拡散力は高いだろ、と思っていたのですが、今回の動きは個人的に驚きました。このときほど、OGPをちゃんと設定しておいて良かったと思った日はありません。

FacebookのOGP設定がいつの間にかエラーになっていた | Synapse Diary

 

TwitterとFacebookではどちらが拡散するのか?

で、TwitterとFacebookの拡散性の違いですが、気になったのでそれっぽい記事をいくつか読みました。代表的なものを貼っておきます。

ツイッターとfacebook、なぜ情報の拡散力が違うのか:日経ビジネスオンライン

企業がFacebookを使う10個のメリット、まとめ

どちらも一長一短ある、と言ってしまえばそうなのですが、恐らくTwitterの方がツールとしては拡散性が高いと思うのですが、それが故に「緊急性がある」「関心を覚える人が多い」ときに拡散していくんじゃないかと思います。Twitterの場合、タイムラインの流れが早いので、流れ去るのも早いです。というわけで、関心が高い人が多く、たくさんの人が雪崩れ込むように拡散していかないと、どこかで簡単に途切れる、ということなんじゃないかと思います。

一方でFacebookの方が、ソーシャルグラフで形成されているので親和性は高く、またTwitterほどタイムラインの流れが早くないので、目につく確率は高くなります。なので、一定のクラスタにはまれば、Facebook上で拡散されていくのではないかと推測します。

 

まとめ

  • 関心を抱くクラスタがそんなに多くない場合は、Facebookの方が拡散する
  • いつバズってもいいように、OGP設定はちゃんとしておけ

 

今日はこのへんで。

スーパーホテルのマーケティング戦略

スーパーホテルに宿泊してきました。以前から名前は知っていたんですが、実際に宿泊してみてそのすごさがわかりました。実際にマーケティング戦略の観点から紐解いてみたいと思います。宿泊前にこの本を読んでいったのですが、一層滞在を楽しむことができました。

 

 

「寝る」ことにフォーカスする

マーケティングの基本は、ターゲットとポジショニングを決めることです。スーパーホテルはビジネスホテルなので、ターゲットは出張するビジネスマンが大半になります。そこで注目したのが「寝る」という行為でした。ビジネスホテルの場合、基本的には滞在時間のほとんどが睡眠時間に充てられることから、「快眠」を提供することにフォーカスしたのです。

「ぐっすり」最優先

このフォーカスが、いろんなアイデアとなってビジネスを形成していきます。まず、広いベッドにして、快眠を促すパジャマやスリッパ、選べる枕を提供する。また、睡眠に入りやすいよう全体を暗い照明にする。さらに環境に優しい珪藻土の天井にするなどのこだわりも見せます。さらに、天然を設置しているホテルもあるようです。

確かに、実際宿泊してみた感想としては、寝心地は良かったと思います。比較的深い眠りを得られたんじゃないでしょうか。

 

一方で、大胆にコストも削減します。ラグジュアリーホテルを目指すわけではないので、コストを成立させなければいけません。宿泊してみるとわかりますが、冷蔵庫には飲み物は入っていませんし、入室したときは空調も入っていません。お風呂には節約のためのお風呂の目安線が入っています。

この高さまでお湯を入れて下さい。
この高さまでお湯を入れて下さい。

また、人件費もできるだけかからない工夫があります。ベッドは足がありません。確かに低いベッドでした。別にそれで困るわけではありませんし、清掃の効率はこれで非常に上がるそうです。さらに、ホテルのフロント業務でもチェックアウトがありませんでした。

ホテルのフロント業務がもっとも忙しいのは、お客さまがバラバラにいらっしゃるチェックインの時間帯ではありません。いっせいにチェックアウトされる朝8時です。

というわけで、快眠を提供するというコンセプトで、見事に差別化に成功したわけです。

 

健康と安心でターゲットを拡張する

スーパーホテルでは、無料の朝食も売りになっています。実際食事してみましたが、無料とは思えない充実度でした。朝ご飯をしっかり食べる、という行為が健康的な感じがしますし、とても良いサービスだなと思いました。

そこで驚いたのは、女性や子どもが結構いたことです。今が夏休みで休日だったこともあるかもしれませんが、それでもビジネスホテルにこんなに女性や子どもが宿泊するものだろうか、という新鮮な光景でした。

本の中でも、健康的な食事やサービスを提供すること、オートロックを整えることで、健康と安心を求める女性や家族をターゲットに広げています。確かに、宿泊分は安く済みますし、悪いことではない気がします。

 

これらのサービスを成立させるのは従業員のオペレーション力

こうやって、マーケティング上成功しているスーパーホテルですが、それだけでずっと勝てるわけではありません。サービス業は人が関わる要素が大きく、ビジネスモデルだけで成功するのは難しいと言われています。「俺のイタリアン、俺のフレンチ」でも書かれていましたが、「仕組みで勝って人で圧勝する」です。

本の後半では、いかに理念を浸透させ、各自が考えてサービスを提供する人になってもらえるか、ということが書かれていました。やはりサービスは最後は人。目標管理制度が導入されていますし、常にサービス改善について議論されているようです。名物の「おかえりなさいませ」の挨拶も、従業員の発想から取り入れられたものだそうです(本当にそう挨拶されました)。

 

また、「先義後利」という言葉も本の中に登場しました。ヤマト運輸でも「サービスが先、利益は後」という考え方がありましたが、それと通じるものです。スーパーホテルも、社会的に意義のあるサービスにしよう、という思いが見られます。

こういうのをみると、オペレーション力を高めるためには、人を育てる仕組み作りと、自社のサービスが社会的に意義がある、というメッセージを発することが重要なんだな、と改めて感じます。