手芸用品やハンドメイドの市場規模や動向

最近、ハンドメイド市場が拡大してますね。

急成長のハンドメード市場 リアル充実で次ステージへ|エンタメ!|NIKKEI STYLE

海外だとEtsyが人気でナスダックにも上場しています。国内でもminneCreemaiichiなどがあります。

これらがどのような状況にあるのか、市場規模や動向などを調べてみます。

手芸分野の定義

ハンドメイドのことを調べようと思ったのですが、もっと広い概念として手芸という言葉が当てはまるようです。

手芸というのは、何を指すんでしょうか。Wikipediaをみると、服飾系、宝飾系、人形、ガラス、工芸系、手芸・クラフト系と様々なジャンルが存在することがわかります。

手芸 – Wikipedia

ホビー白書では別の分類で、大きくクラフト、ドゥ、コレクトの3つになっています。

国内ホビー市場規模は約2兆円 | 繊研新聞

市場規模の数字としてあったのがホビー白書なので、この分類を意識して数字を見ていきます。

市場規模の推計

少し古いデータですが、2015年時点では国内クラフト市場は8,900億円程度となっています。

一般社団法人日本ホビー協会発行の『ホビー白書2015年版』によると、2014年の手芸などの国内クラフト市場規模は約8,906億円、またハンドメイドサイトの市場規模(流通総額)は2014年の35億円から2015年には78億円(推計)に拡大している。
www.tdb-di.com/column/1607/index2.htmlから引用

もう少し細かい、歴史から考察した市場規模のレポートもありましたので、こちらも見て見ましょう。

ホビークラフト市場規模株式会社U.P.n.P.

販売チャネルごとの規模が推計されているのが興味深いですね。

ホビー業界の販売チャネルごとの売上シェア

圧倒的に専業専門店が多くなっています。今はもっとネット割合が増えているだろうとは思うのですが、事業構造を考える上では大いに参考になるでしょう。

ちなみに、最近はCtoC取引の増加がハンドメイド市場の盛り上がりを後押ししているようです。

経済産業省が2017年に発表した「電子商取引に関する市場調査」では、2016年における個人間取引における市場規模は3,458億円にのぼる結果になりました。これはヤフオク!などのネットオークションの規模全体が10,849億円ということを考えると、その三分の一以上にあたりCtoC市場は大きいといえます。

引用元:CtoC(個人間取引)とは何か? 基本のビジネスモデルから市場規模まで

こういう新しいマーケットも登場しています。ステッチステッチという、裁縫レシピを販売するマーケットです。

手芸ビジネス、なぜ密かにブーム?ゲーム市場に匹敵~レシピ紹介サイト、カフェ… | ビジネスジャーナル

ちなみにこの記事では、唐突に手芸市場は4,000億円という数字が出てきます。

正直定義によってこのあたりの数字は変わってしまうのですが、大きく捉えれば8,900億円、小さく捉えればそれ以下になるというざっくりした規模感はわかりました。

企業の戦略

今度は個別の企業戦略を調べることで、業界動向を考察したいと思います。

手芸関係の上場企業は、株探によるとフジックス、セメダイン、藤久の三社ですが、一番参考になりそうなのは、手芸用品を販売している藤久でしょうか。

藤久の業績と戦略

クラフトハートトーカイという手芸店を展開する藤久の業績はこちらです。

藤久

売上がじりじりと減少し続けており、それにも増して利益が減少しています。直近期では営業利益ベースで赤字です。

藤久、営業利益で初の赤字に 今後はニーズを捉えた品揃え・値ごろ感で挽回を図るログミーファイナンス

店舗の売り上げは厳しくなってきており、競争激化で価格競争と品揃えが求められる一方で、教室などを積極的に展開して、サービスを提供する付加価値型へシフトしています。

また、この決算発表でも市場規模の話が出てきており、1800億円程度という数字が出てきます。これは店舗で手芸中心だと思いますが、この10年で少しずつ減少しているとありますね。藤久はその中で200億円程度のシェアです。

トーカイは苦戦していますが、その中でも新たなニーズも出てきています。例えばレジン。

藤久<9966>のフィスコ二期業績予想 | 財経新聞

レジンは以前から注目されているもので、Googleトレンドでみても盛り上がっているのがわかります。

小売店としてはなかなか厳しい業界状況であることがわかりました。

まとめ

市場規模は9,000億円弱。市場が伸びているかは正直ちょっとよくわかりませんでしたが、小売店は売上が厳しくなっており、ネットを中心に伸びている傾向はみられることから、移り変わりが起こっていると推測します。

今後もネットの成長が続くのでしょう。

テスラモーターズはEV市場で今後成長していくのか?

イーロン・マスクのテスラが、いろいろ話題になっていますね。大衆向けの「モデル3」の生産が発表されたものの、生産が遅れていて不安感が漂っています。

投資家がテスラの今後を危ぶむ4つの理由

さらにリコールも発表されました。

テスラが同社として最大のリコールを行い、約12万3,000台の電気自動車(EV)セダン「モデルS」の部品を交換する。しかし、リコール自体は深刻な問題ではない。テスラが直面する真の課題は、「モデル3」の量産が遅れていること、その品質の低さに対する指摘、「モデルX」が起こした衝突死亡事故の調査といった問題への対応にある。
テスラ史上最大のリコールの陰にある「本当の難関」|WIRED.jpから引用

EV社はこれから増えていくと言われていますし、テスラはその筆頭だというイメージがありますが、そのテスラも苦戦しているようです。

そこで、もう少しEV業界を理解するため、テスラを中心に動向を整理したいと思います。

EV車のトレンド

今後の車は、ガソリン車やハイブリッド車からEVに移っていくと予想されています。


経済産業省「自動車産業を巡る構造変化とその対応について」(PDF

このグラフをみる限り、2016年時点でEVとPHVを合わせて全体の0.2%程度の販売台数と、割合は決して多くないです。しかし、今後ガソリン車は少しずつ減っていき、伸びている部分はPHV、EVの領域です。

さらに、イギリス・フランスや中国では、ガソリン・ディーゼル車の販売を禁止するなど、各国もEV車を後押しする政策が注目されています。

「EVシフト」へ大きくハンドルを切ったのは英仏である。2040年までに、ガソリン・ディーゼル車の販売を禁止する方針を打ち出した。これはガソリン・ディーゼル車の市場を席巻する日米独の自動車産業に挑戦する狙いも込められている。  この英仏の戦略に中国など新興国も連動する。中国は英仏の新方針を受けて、40年までにガソリン車などの販売・製造を禁じることを検討し始めた。インドは30年までに新車販売をEV車に限定する目標を掲げる。
車は「EVシフト」、世界は「EUシフト」:日経ビジネスオンラインから引用

つまり、政治の後押しもあり、自動車業界全体でEV車は増えていくと予想できます。

テスラのビジネスモデル

さて、そのような追い風の中、EV車のメーカーとしてテスラモーターズは注目されています。

テスラは電気自動車メーカーであり、これまでに複数車種を市場に投入してきました。今は大衆車であるモデル3が注目されており、今後はピックアップトラックなどの車種も発表されています。

テスラはEV関係の特許をたくさん持っており、EV車を製造・販売するのがメインのビジネスモデルです。

テスラ、15分未満で済むEV用バッテリ交換技術バッテリステーションの公開特許 – CNET Japan

EVの重要なコンポーネントである蓄電池については、リチウムイオン電池のトップシェアを誇るパナソニックと提携して、ギガファクトリーという蓄電池製造工事を建設しています。2020年に稼働予定です。

さらにテスラモーターズは、EV車だけではなく蓄電装置メーカーでもあります。このように、家庭用蓄電池も販売しています。

Powerwall | テスラホームバッテリー

テスラはエネルギー企業になる、というイーロンマスクの発言もあるように、自動車メーカーだけではない側面があります。

テスラの業績

テスラの業績も見てみましょう。売上はずっと伸びています。

テスラモーターズ業績

が、ずっと赤字です。売上が伸びているとはいえ、まだ設備投資を回収できるほどスケールしていないということでしょう。

テスラの生産状況

テスラは初めて一般消費者向けのモデル3を市場に投入しようとしています。非常に期待度が高いですが、生産ラインに問題を抱えており、遅延が生じています。

自動車生産の手作業部分に問題が生じているとのことですが、自動車メーカーは製造ラインの精度を何十年もかけて向上させてきており、まだ新参のテスラには難しいのでは、という観測もあります。

【電子版】マスク氏は工場で寝泊まり テスラ「モデル3」の生産「地獄」続く | 自動車・輸送機ニュース | 日刊工業新聞電子版

テスラのEV車には需要があるものの、生産が追いついておらず、赤字を垂れ流している状態です。ここの生産量を増やして、利益を上げていけるかがポイントです。

テスラのシェア

テスラは電気自動車のリーダーとして、早い段階から本格的なモデルを投与してきました。それによって、アメリカで圧倒的なシェアを獲得しています。

EV市場のシェア1位はテスラ、日産「リーフ」が4 | Forbes JAPAN(フォーブスジャパン)

一方で、EUや中国では出遅れているんですよね。

世界のEV販売台数、トップはルノー・日産 テスラは欧州・中国で出遅れ | Forbes JAPAN(フォーブスジャパン)

EVの主戦場は、環境規制が強いEUですが、そこにはテスラは出遅れている状況のようです。

世界各国の道路を走る電気自動車(EV)のおよそ半数は、ルノー・日産アライアンスのモデルであることが分かった。テスラに違いないと思っていた多くの人たちにとっては、驚きといえるかもしれない。
世界のEV販売台数、トップはルノー・日産 テスラは欧州・中国で出遅れ | Forbes JAPAN(フォーブスジャパン)から引用

テスラモーターズはアメリカでは強いですが、欧州では出遅れています。また、市場が大きい中国でも厳しい競争が始まっています。

テスラと中国のバッテリー戦争” – NPO法人国際環境経済研究所|International Environment and Economy Institute

テスラがアメリカ市場で苦戦している中、世界市場では他社がポジションをどんどん拡大しています。これからテスラは世界でどういうポジションで攻めていくんでしょうか。

パワートレインとして電気自動車は今後増えていくのだと思いますが、テスラはそれほど前途洋々というわけでもないようです。

実際、テスラの株価は最近急落しています。以下はテスラの5年間の推移をみると、何度か大きく下がっていますが、直近でも大きく落ち込みました。


TSLA:NASDAQ GS 株価テスラ – Bloomberg Markets

今後の成長にはやや疑問を持たれているということでしょう。財務的にもやばそう。

テスラのキャッシュフロー計算書を眺めると、17年12月期にフリーキャッシュフローが約41億ドル流出していることがわかります。これはテスラの現金および現金同等物が34億ドルしかないことを踏まえると、このペースで資金が流出すればテスラは倒産することを意味します。 そのため、近いうちに大規模な増資を実施する必要があるわけですが、増資すれば一株当たりの価値が薄まるので、株価にマイナスの影響を与えます。
TSLA】テスラが倒産するかもしれない理由 : バフェット太郎の秘密のポートフォリオ(米国株配当再投資戦略)から引用

どこかの自動車メーカーに買収されるんじゃないか、という話も出てきたりしていて、今後も話題は尽きなそうです。

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アイウェア業界の雄であるJINSとOWNDAYSはどう違うのか

JINSは低価格商品や、JINS PCなどの機能性商品によって瞬く間にメガネ業界で躍進しました。しかし、最近は他の企業も低価格路線であったり、逆に高付加価値な製品が支持されたりして、また風向きが変わっている気がします。

2016年に書いたJINSの記事がありましたが、ここで書いた内容から市場環境もまた変わっているでしょう。

[kanren postid=”4375″]

ご相談

就活生からご相談いただきました。

来年就活を考えています。
そこで、アイウェア業界について質問です。

先に言うと、私の質問は
『JINSとOWNDAYS、将来性と海外発展が進んでいるのはどちらなのか』
です。

JINSとOWNDAYSとzoff、
この三社は価格帯やサービスなどすごく似ていると思います。
特に、JINSとOWNDAYSは薄型追加料金なしや会計後30分ほどでお渡し可能な点、働く年齢層、使用している機械など非常に近いです。

2社とも海外発展にも力入れており、
海外(特にアジア)で将来活躍したい私からしたら、この2社が気になります。

海外発展が著しいのはOWNDAYSではありますが、
安定感や業績はJINSの方が高い印象です。

海外へ行きたいからOWNDAYS。
だけでは将来性が不安であり、安定感の出てきたJINS。となっても働いた未来にシンガポールやタイなど中華圏以外のアジアには進出をしていないJINSだと…。

長くなりましたが、私の気になる点は、
『JINSとOWNDAYS、将来性と海外発展が進んでいるのはどちらなのか』
です。

OWNDAYSとは

メガネ通販のオンデーズオンラインストア (眼鏡・めがね)

OWNDAYSというメガネショップは、私も見たことがあります。Wikipediaによると、

株式会社オンデーズ(英文表記:OWNDAYS CO.,LTD.)とは東京都品川区に本社を置くメガネ、サングラスなどの販売を行う全国チェーン店の会社である。 日本、シンガポール・台湾・タイ・フィリピン・マレーシア・カンボジア・オーストラリア・ベトナム・オランダで店舗展開しており、2017年10月末現在、10ヶ国200店舗以上を展開している。 【従業員数1,900名 / 150億円(2016年)】
オンデーズ – Wikipediaから引用

ということで、200店舗以上展開している企業です。

2002年にビックカメラに買収されていますが、2008年に債務超過に陥り、今の経営者が第三者割当増資によって株式を取得し、経営再建して今に至ります。

JINSとOWNDAYSの比較

JINSは上場企業なので数値が取りやすいのですが、OWNDAYSは非上場なので、あまり実態がわかりません。ただ、売上などの数字はWikipediaを信じるのであれば、このような比較になります。

JINSOWNDAYS
従業員数37491900
売上高(億円)504160
店舗数470200

いつ時点の数字かが少しあいまいな感じなのと、JINSは最新の数字をとってきているので、正確性は怪しいです。目安としてみるぐらいの数値です。

非常にざっくりした言い方をすれば、規模としてはJINSはOWNDAYSの2~2.5倍ぐらいという感じです。

意外なのは、海外展開の部分です。それぞれの海外店舗の数はこちらです。それぞれIR資料やホームページから取得しました。

JINSOWNDAYS
中国103
アメリカ4
シンガポール26
台湾36
オーストラリア2
オランダ1
タイ11
フィリピン22
マレーシア3
ベトナム2
カンボジア2

まず海外店舗数が、ほぼ同じです。店舗数全体ではJINSの方が倍ぐらいあるので、その中で海外店舗数が同じということは、OWNDAYSの方が海外比率は高いと言えそうです。

もうひとつ目をひくのは、展開する国の種類と数です。JINSは中国がほとんどでそこに集中しているように見えます。OWNDAYSは東南アジアを中心に多くの国に出店しており、これから伸びる国が多く含まれているように感じます。

シンガポールではシェア1位になっているようです。

OWNDAYS(オンデーズ)がシンガポールでメガネ販売シェア1位にメガネ店最新情報 | GLAFAS(グラファス)メガネ・サングラス総合情報サイト~メガネのことなら!グラファス

OWNDAYSの海外戦略

いろいろ調べていたら、面白い記事を見つけました。オンデーズ社長のインタビューです。ここに海外展開の状況や戦略について示されていました。

世界10ヵ国に進出した「株式会社オンデーズ」が掲げる海外300店舗体制 | 企業インタビュー | Digima〜出島〜

ポイントを列挙しておきますね。

  • メガネのSPAモデルでは、オンデーズは後発
  • 「ある競合」は中国に進出していて、ファーストペンギンになれないと断念
  • メガネのSPAモデルは東南アジアには存在しない
  • 競合に勝つためにも、競合が進出していない海外に積極的に展開

すごい戦略がはっきりしています。海外展開を積極的に進めたのは、競合とのポジショニングとスピードによる優位性確保があるようですね。

JINSの業績

一方で、JINSの業績もみておきましょう。売上高と営業利益率をみると、ここ数年でも成長しており、好調です。

他の上場企業と比較してみると、三城ホールディングスの売上をついに抜いています。

利益率も相変わらず高いですね。

海外展開として中国の店舗は増加しており、こちらも積極的と言えるでしょう。

まとめ

いろいろ調べてきましたが、質問者様も同じようなことを調べられたのでしょう。前置きが長くなってしまいましたが、このメガネ市場や企業戦略をどう捉えれば良いかと考えてみたいと思います。

SPAというモデルで、日本のメガネ市場はまだ伸びています。

国内アイウエア小売市場に関する調査を実施(2017年)市場調査とマーケティングの矢野経済研究所

その中でJINSは強力なポジションを築いており、中国にも進出しています。後発のオンデーズは店舗数を伸ばすと同時に、東南アジアを中心に積極的に海外展開を進めています。

現時点で規模が大きいのはJINSですし、国内や中国では優位性があると言えるでしょう。しかしだからといって、JINSの方が安定性がある、かというのはわかりません。

今の国内メガネ市場は、高付加価値にシフトしていますし、JINS MEMEのような新しい画期的商品が市場を変える可能性もあります。JINSの躍進の裏で、これまでの強者が衰退してきたように、数年でプレイヤーが交代する可能性は十分あります。

つまり重要なのは、今後の国内や海外のメガネに対するニーズがどう変化するか、そしてそれに応じて企業がどういう戦略を取ろうとしているか、です。実際、ここ数年でみてもこの市場の動向は大きく変化しています。数年間の安定性は、どこかで消し飛んでしまうかもしれません。

私であれば、企業がどういう戦略をもっているか、それが有望そうか、そしてその中に自分がやりたい仕事があるか、で考えてみると思います。あるいは、数年働いた後、自分にどういうスキルや経験が残るのかも、長いキャリアの中で重要になると思いますね。

それ以外にも企業を選ぶ判断材料はたくさんあると思いますが、この分析か考えを深めるキッカケになれば嬉しいです。

他にも何か企業や業績を分析して欲しい、就職の参考にしたいという方がいれば、問い合わせフォームやTwitterでご連絡くださいませ。

今日はこのへんで。

オイシックスと大地を守る会とらでぃっしゅぼーやが経営統合することで、今後食事宅配市場はどうなる?

先日、オイシックスでミールキットを頼んでみたら、すごい簡単に調理できた上に、野菜の味がやはりおいしくて感心してしまいました。

Kit Oisix(ミールキット)の通販・宅配サービス|オイシックス公式

あーオイシックスいいなあって思っていろいろ調べていたら、「オイシックス」という会社は、大地を守る会と経営統合して「オイシックスドット大地」という名前になっていました。

さらに、らでぃっしゅぼーやと経営統合するという話じゃありませんか。今、どういう動向になっているんだろう?と思って、簡単に整理してみることに。

業績確認

売上高

オイシックスの2017年3月期決算をみると、売上高は230億円になっており、これまで右肩上がりで成長してきています。営業利益も多少の凸凹はあるものの、堅調な推移です。

会員数

会員数も順調に増加しています。

ミールキット事業を拡充したことで、順調に数が増加したようですね。

事業構成

オイシックスは、Oisix.comによる宅配事業と、コンサルティング、地方での食品配送業務などを手がけています。

流通総額や売上高でみると、Oisix.com宅配事業が一番比率が多くなっています。

大地を守る会との経営統合

冒頭でも触れたように、オイシックスは大地を守る会と経営統合し、オイシックスドット大地となりました。

大地を守る会は、40年前に生産者と消費者を直接結ぶことを目的に始まった事業で、今は「有機食材などの配送サービス」「レストラン・デリカショップ」「スーパー・飲食店への食材販売」の3つの事業で構成されています。

サービス紹介・店舗情報|大地を守る会企業情報[ソーシャルビジネス(社会的企業)]

オイシックスのIR資料によると、大地を守る会の売上高は年間で100億円程度と予想されており、オイシックスの半分より少し低い感じです。宅配事業などの固定費削減によって利益改善を図るとなっています。

ラディッシュぼーやとの経営統合

そしてさらに、ドコモとオイシックスドット大地が業務資本提携を行い、それに伴ってらでぃっしゅぼーやの全株式をオイシックスドット大地が買い取ると発表されました。

報道発表資料 : オイシックスドット大地株式会社との業務資本提携について | お知らせ | NTTドコモ

ドコモは、携帯電話を起点にする会員ビジネスとして、今後のコンテンツを拡充するためにらでぃっしゅぼーやを買収したはずです。しかし、らでぃっしゅぼーやは最近業績が低迷しており、営業赤字でした。ドコモは今後の扱いを模索していたのかも。

「らでぃっしゅぼーや」の2018年2月期第3四半期の売上高は141億円、営業損失は5億3300万円だった。一方、2017年2月期の売上高は197億8600万円、営業利益1500万円。
オイシックスドット大地、らでぃっしゅぼーやを子会社化 ドコモとも提携 | 財経新聞から引用

 拡大するミールキット市場

これらの動きの背景には、拡大するミールキット市場があります。ミールキットとは、料理しやすくするために食材とレシピがセットになったものです。ここの市場が拡大しており、いろんな企業が参入しています。

「ミールキット」市場が活発/シャープ、スタフェスが新規参入 | EC | 日本ネット経済新聞 | 日流ウェブ

アメリカでは、Amazonも参入を検討しているようです。

【アマゾン】、ミールキット商標登録!ホールフーズではアレクサ調理デモにエコー販売?(後藤文俊) – BLOGOS(ブロゴス)から引用

ドコモはこれらのミールキットをECコンテンツとして取り込みたい、オイシックスをはじめとする食材宅配企業は、レシピなどを開発してミールキット市場を拡大させたい、ということですね。

これで、オイシックス・大地を守る会・らでぃっしゅぼーやが、それぞれのブランドは維持されつつも、同じ企業に統一されます。リーダー企業として、今後この市場を引っ張っていくことでしょう。

ということで、ここ最近で激変が生じていたようでした。ミールキットは非常に手軽ですし、魅力的なコンテンツであることもわかります。今後、この市場が広がっていくことを期待しましょう。

理美容業界の状況を調べてみた

理容院や美容院の業界について、ふと興味を持ったので調べてみました。あまり需要がないかもしれませんし、専門的な人はもう知ってることだと思いますので、アップしようか悩みましたが、まぁ自分の思考の整理と思って書いておきます。

理容院・美容院の数の推移

まずは理容院・美容院の業界全体を見てみたいと思います。それがこちらです。

理容所・美容所の数

これを調べるまでは、人口も減少傾向にあるので、理容院や美容院の数も減少しているだろうと思っていました。しかしこれを見ると、理容所は減少し、美容院は増加しています。

男性の「床屋離れ」が進んでおり、理容業界は減少傾向が続いているようです。

男性客の理容店利用回数 減少が続く | 理美容ニュース

市場規模の推移

では、次は理美容業界の市場規模を見てみましょう。

施術別理容市場規模推移と予測

施術別美容市場規模推移と予測

まずそもそも、美容業界は理容業界より2.5倍あります。単価や回数の高さが影響しているものと思われます。

また理容・美容両方で市場規模が縮小しています。理容業界は、市場が縮小して店舗数も減っているので、まあそんな感じかなと思いますが、美容業界は市場が縮小しているのに店舗数は増えています。これは、美容業界がオーバーストア状態であると思われます。

美容師の数

色々厳しい数字が並んでいますが、美容師の数はどうなっているんでしょうか。こちらの記事にまとめた内容があったので引用させていただきます。

では、美容師の数はどうでしょうか。 美容師の数は平成25年度は48万7636人に比べて、平成26年度は49万6697人で9061人増加しています。この数字だけを見ると増えているように感じられるかもしれませんが、美容学校を卒業し、平成26年に新規美容師免許を交付を受けている数は1万8428人います(公益財団法人理容師美容師試験研修センターのデータより)。しかしながら、約9000人しか増えていないということは、1年間で約9000人の美容師が辞めてしまっていると推測することもできます。

美容室・美容師の数から読み解く現状|美容師/美容室の求人・転職【ビューティーキャリア】

実態がどうなっているのかは、ちょっと数字が見つからなかったので確かな事は言えないです。

美容師の給料

統計の数字だけ見れば、給与が低いです。

平成27年度のデータでは10~99人規模に勤める美容師・理容師の平均年収は287万円、100~999人規模は281万円、1000人以上規模は288万円、10人以上規模平均286万円となっています。

美容師の給料、年収 | 美容師の仕事、なるには、給料、資格 | 職業情報サイトCareer Garden

さらに、年齢が上がっても年収が上がらないようです。そのため、一定の年齢になると独立してオーナーになるか、転職を選ぶのかもしれないですね。

なぜ美容院はオーナー一人勝ちなのか? | プレジデントオンライン | PRESIDENT Online

ここまで見てくると、市場として厳しい状況のなかで、若手を雇い、年齢が来たら独立して行くというこれまでの業界モデルが崩れて来ているのでしょう。様々な付加価値をつけたり、多店舗展開して人材育成するなど、新しい業界構造が求められて行くんだなと思いました。

ちなみに、マーケティングの観点で見ると、この業界はホットペッパービューティーが大きな力を持っている状態です。検索をすると、やはりホットペッパービューティーに対するいろいろなコメントが見つかります。

高すぎ!?ホットペッパービューティー依存症の仕組みとデメリット | 横浜市・品川区周辺の美容室開業なら萩原健志税理士事務所

美容業界に限らず、特定のプラットフォーマーにに集客を握られてしまうと、その中に広告を投じて集客することに依存せざるをえず、抜け出すのは難しくなります。

とは言え、地理的な近さや口コミも働きやすい部分もあるので、自社メディアを作ったり、いろんな宣伝に力を入れるのは重要じゃないでしょうか。

今日はこの辺で。楽しんでいきましょう。

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ERP市場の現状と今後の展開を調べてみた

少し前に、SAPの記事を書きました。

[kanren postid=”4871″]

久々に今のERP市場がどうなっているのか、調べてみました。

ERP市場は伸びているのか?

まず大きなところで、ERP市場が伸びているのかどうかを確認してみましょう。

こちらの矢野総研のデータでは、市場規模の成長率はやや鈍化しているものの、一応成長はしているようです。

ERP市場動向に関する調査を実施(2017年) – 市場調査とマーケティングの矢野経済研究所

このレポートでのポイントは3つです。

  • 成長は鈍化
  • 業者の業績は二極化
  • クラウド化が進展

これを見る限り、ERP市場はほぼ成熟してきていると言えそうです。このまま飽和していき、淘汰する業者も出てくるでしょう。

冒頭で紹介したSAPのアプローチも、飽和していく市場において、新しい付加価値をもたらすために取り組んでいるとも考えられます。

クラウド化が増加していく?

違うレポートも見てみましょう。

ITR Market ViewERP市場2017 | ITR

こちらのITRのレポートを見ると、デジタルマーケティングやセキュリティへの投資が増えていて、基幹システムへの投資が低調だったと述べられています。

一方で、クラウド化が今後も増加していくとともに、市場全体も伸びていくとも予想されています。2020年までに、クラウドがオンプレミスを上回るとのことです。

クラウドサービスが普及することによって、中小企業なども含め、新しいパイを広げる効果をもたらすのでしょうか。

中小企業向けERPパッケージのシェアは?

今後業者間の競争が激しくなるとして、今はどういう競争環境になっているんでしょうか。

こちらに、中小企業向けERPパッケージのシェアを調べた結果があります。

中小企業のERPシェア、トップは富士通 – DATADATAITpro Active

トップが富士通。それに、SAP、大塚商会、オービックが続きます。

上記は2017年の調査でしたが、同じ調査の2015年の結果を見てみます。

ニュース[データは語る]国内ERP市場、2015年までの累積導入ではSAPがトップシェアノークリサーチ:ITpro

トップからSAP、大塚商会、オービックになっています。これを見ると、プレイヤーは少しずつ入れ替わっているようです。

まとめ

さらっと調査してわかったことは次です。

  • ERP市場の成長は鈍化しており、今後は成熟期を迎えていく
  • しかし、クラウド化が進むことで市場はまだ成長余地もある
  • 業者間の競争は今後厳しくなり、二極化が進んでいく

以上です。今日はこのへんで。

LINEの営業利益率はネット企業としては低くないですか?

LINEの四半期決算が発表されました。

LINE79月期の営業利益18.8%増 パフォーマンス型広告の伸びが成長けん引ログミーファイナンス

これを読んだ感想としては、「営業利益率が低いな」ということです。10%程度しかありません。さらに、その前は営業利益率がマイナスでした。

ネット系の企業は営業利益率が高いのが一般的なイメージとしてあります。ほとんど原価がかからないのが特徴だからです。例えばYahoo!はアスクルを買収して下がってきていますが、それでも20%あります。

クックパッドも少し落ちてきていますが、それでも30%です。

それと比べると、LINEの営業利益率は低いんですよね。なぜでしょう。

それを理解するには、LINEの事業モデルを理解しておく必要があります。LINEの営業費用の構造を見てみましょう。決算発表資料から抜粋します。

人件費が多いのはわかるのですが、目につくのは「決済手数料及びライセンス料」というのもそれなりの比率を占めています。

201712月期第3四半期決算説明会(PDF

これはなんだろうと調べていると、上場時の報告資料にその記載がありました。抜粋します。

スマーフォトンデバイス上での課金による決済手数料やIP保有者に対するロイヤルティが増加し、また、事業規模拡大に伴う従業員数の増加及び株式報酬費用により人件費が増加したほか、

新規上場申請のための有価証券報告書(PDF

LINEスタンプなど、LINE上のマーケットで売買されるコンテンツの決済やライセンスの費用が結構な比率を占めている、ということですね。

3番目に多い費用が「認証及びその他のサービス費用」です。昨年度から大きく増えています。こちらについては、決算発表でコメントがありました。

認証及びその他のサービス費用は前年同期比で81.7パーセント、前四半期比で13.1パーセント増加しました。認証及びその他のサービス費用のうち、LINEモバイルの契約者数増加に伴うインフラ関連コストがおよそ20パーセントを占めています。 またLINE NEWSサービス拡大に伴うコンテンツ関連費用も増加しました。その他の営業外費用は前年同期比で34.9パーセント。前四半期比で5.8パーセント増加しました。

LINE79月期の営業利益18.8%増 パフォーマンス型広告の伸びが成長けん引ログミーファイナンス

LINEモバイルやLINEニュースで費用が増加しているようです。

LINEはプラットフォームとして利益を上げていくので、スタンプなどの事業は利益より集客・利用向上のために必要になってるということですね。逆に言えば、それ以外の売上・利益拡大が重要ですね。

ちなみに、LINE Payを使っています。ポイント還元率も高くて、銀行オートチャージも使えるので便利です。銀行に預けるより良いと思いますね。

LINE Pay

楽天とヤフーショッピングの流通総額を比較してみた

ECサイトが今後どうなっていくのかを把握するために、主要なECサイトがどの程度の規模になっているのかを調べてみました。

ECサイトの規模を見るなら、「流通総額」を見ます。そのプラットフォームでどれぐらい取引額が発生したかをみる数字です。

ECサイトとして大きなメジャーはやはり楽天、Amazon . Yahoo!ショッピングの3つでしょう。

この中でアマゾンは日本だけの流通総額を正式には発表しておらず、楽天やYahoo!とモデルが違う(楽天・ヤフーショッピングは店舗型)なので、今回は除外しました。そのため迎えは楽天とYahoo!ショッピングの2つを比較したいと思います。IR資料で公開されている数字から作成しました。その結果がこちら。


(両社IR資料から作成。単位は兆円。)

ヤフーショッピングについては、ヤフオクとアスクルは除いた数字です。

結果を見ると、楽天の方が流通総額が大きいのがわかりますね。直近の2016年の数字を見ると、ヤフーショッピングの流通総額は、楽天の約4分の1です。

ただ、「eコマース革命」を掲げたヤフーは、ここ3年で大きく伸びてきています。2012年〜2014年はあまり大きくは伸びていませんでしたが、2015年、2016年と明らかに伸びが生じています。さらに、IR資料を見るとヤフーショッピングを今後も投資すると明言しています。

ということで、現時点では流通総額で見ると楽天が圧勝です。しかし、まだ大きな差はあるもののヤフーショッピングも大きく成長しており、今後もその伸びは期待できるでしょう。

さらに言えば、EC市場の流通総額自体が全体で向上しているので、ECサイト全体が伸びていくことも十分期待できます。

今日は以上です。今後の石サイトの展開を考えている方に参考になれば幸いです。

楽天やヤフーショッピングなどのECサイトについては、こちらの本でも分析されているので、興味ある方はぜひ一読してください。

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「いきなり!ステーキ」を展開するPFSが絶好調。その要因と今後を考える

「いきなり!ステーキ」のニュースを見かけたので、情報をアップデートしておこうと思いました。

今年8月に東証1部に2部からわずか3カ月でスピード昇格したペッパーフードサービス(PFS)が展開するステーキ店チェーン「いきなり!ステーキ」の勢いが止まらない。1号店を銀座4丁目にオープンした平成25年12月以来、牛肉の塊を客の目の前で切り分ける注文方法や、グラム単位の手頃な価格設定が受け、客足を伸ばし続けている。

引用:「いきなり!ステーキ」来年、いきなり店舗倍増計画 社長の強気戦略の成否は? (産経新聞) – Yahoo!ニュース 

内容を読む限り、非常に好調な内容になっています。

以前書いた記事はこちら。約2年前に書いていますね。

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ペッパーフードサービスの業績を確認

2年前に書いた記事では、都市部の出店が落ち着いてきており、郊外型にシフトしつつある状況でした。売上の伸びも少しずつ鈍化していくんじゃないかと予測していましたが・・・

すごい伸びてました!

四半期で見てみても非常に好調です。

利益率が低いのは飲食業の特徴ですね。

ペッパーフードサービスの事業セグメント

ペッパーフードサービスは、4つの事業で構成されています。しかし、主に「ペッパーフード」と「いきなり!ステーキ」の2つが柱になっています。以下が各セグメントの売上高です。

PFS_セグメント別売上高

2016年上期では、「いきなり!ステーキ」は60%超になっていましたが、2017年上期は70%を超えています。「ペッパーフード」も伸びていますが、やはり「いきなり!ステーキ」の成長の伸びがすごいですね。

営業利益も見てみると、

PFS_セグメント別営業利益

こちらの方が発見があります。2016年上期では「ペッパーフード」の方が営業利益の割合は大きかったのが、2017年上期では「いきなり!ステーキ」が伸びて、60%を超えています。つまり、売上も伸びているんですが、同時に営業利益も大きくなっているんですよね。

売上高については、客数×単価の数字をみると、単価はほぼ横ばいで、客数が高い数値になっています。

利益率も上昇しているということは、オペレーションも改善しているということでしょう。

今後の展開

これだけ勢いがあるので、出店攻勢をかけていきます。ペッパーランチをみると、直営店よりFC店の方が多いのですが、いきなり!ステーキは比率が逆転しています。

今後は、FC店を活用しながら店舗数を拡大していくのだと思われます。最近、幸楽苑がいきなり!ステーキのFC店になるというニュースもありましたからね。

幸楽苑が「いきなり!ステーキ」…FC業態転換 : 経済 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)

出店数が伸びているものの、飲食業界にまだ規模が大きい企業はたくさんいます。こちらのランキングを見る限りでは、ペッパーフードサービスは上位50社にも入っていないようです。

飲食業界売上高ランキング一覧業界動向サーチ

ただ、売上高としてはこのランキングの下の方に追いつくぐらいになってきていますので、市場としては成長余力があるんじゃないかと思います。(ちなみに、先ほどの幸楽苑の方が売上高としては上です。)

野村総合研究所(NRI)の業績を10年以上分析した

昔分析した野村総研の記事が、今でも結構アクセスされるんですよね。ただ最後に書いたのが2015年と古くなってきたので、久々に情報アップデートしようと思います。

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各セグメントごとの業績推移

2001年から2017年までのセグメント別売上高を確認しました。

NRI セグメント別売上高

まず全体として。多少の波はあるものの、順調に成長していますね。売上の伸びが一度止まっているのが2008年です。リーマンショックがあった年ですね。後述しますが、野村総研は金融と製造に対して強い企業なので、特に金融などの影響を受けたと思われます。

次に、セグメントごとの傾向も見ていきます。もう一度グラフを見てください。

NRI セグメント別売上高

注意していただきたいのは2009年と2010年でセグメントの分類が変わってきていることです。2009年以前に関しては、最新のセグメントに合わせてプロットし直しているので、分類が異なるかもしれません。参考程度に見てください。

これを俯瞰して見えるのは、売上高として1番稼いでるのは金融ITソリューションであると言うことです。野村総研は金融系に強いというのがよくわかります。もともとは野村証券のITシステムを対象にビジネスとして始まったので、成り立ちから考えると、当然とも思います。

それ以外でも、全体からの比率では小さいですが、コンサルティングが着実に増えていますね。IR資料でもコンサルティングが先頭に書いてありますので、このあたりを注力分野と位置付けて、投資家にもアピールしてる意図かもしれません。

こうやって見ると、セグメントごとには大きなトレンドや変化があると言う感じではなく、それぞれのセグメントで少しずつ成長を積み重ねて今があるという状況でしょうか。

ITビジネスは、一件あたりの規模が比較的大きく、期間も長いです。なので獲得できれば安定的にビジネスを回ることができますが、失注するとダメージも大きくなります。最新の決算説明会も動画で確認しましたが、大型の失注なども発生しているようです。

他のSIerとの比較

比較しやすいSIerの業績数字を見てみます。こちらが売上高の比較です。

SIer売上高

NTTデータの数字が突出しており、野村総研はNTTデータ以外では上のあたりです。

続いて営業利益率。

SIer営業利益率

こちらだと、野村総研は高い営業利益率を確保しています。

他社との比較や、野村総研自体の堅調な成長を考えると、参入障壁が築けており、コンペティターに行けない独自性を確立していると言えるのではないでしょうか。

最近のITを取り巻くトレンドがよくわかるIR資料

ということで、数字だけを見てもあまり今後の状況は予測しづらかったのでIR資料も少し読んでみました。そのIR資料が、今後のITトレンドを把握するのにとても理解しやすかったので、いくつかポイントをピックアップしたいと思います。

コーポレートITからビジネスITへ

既存の業務をIT化して生産性を上げると時代は既に終わっており、あまり広がらないビジネスになっています。野村総研ではそれをコーポレートITと呼んでおり、ビジネスを拡大するITをビジネスITと呼んでいました。

2017年3月期決算および2018年3月期業績見通し
(IR資料より)

コーポレートITはいわゆるコストセンターとして捉えられ、いかにコストを削減し投資対効果を高めるかが重要になります。一方のビジネスITはプロフィットセンターになります。今後はビジネスITへのシフトが重要と認識されているのです。

これとCIOとCTOの機能分化が説明されており、個人的にはこの関係図が非常に頭をスッキリさせてくれました。


(IR資料より)

システムを最適化させるCIOではなく、ビジネス変革を行うCTOという役割の方が注目されている、というわけですね。

コーポレートITはアウトソーシング拡大

じゃあコーポレートITの部分については今後は見込めないかというとちょっと違っていて、ここについては企業としてもあまり抱えていても仕方がないので、積極的にアウトソースする領域になっています。そのためアウトソースの範囲が拡大しているんですね。

野村総研の場合は、包括的なITパートナーとしてグループまるごとのITインフラを共通化したり様々な取り組みを一緒に行っていく関係を築くことでビジネス領域を広げる期待があるようです。


(IR資料より)

ということで、経営環境としては追い風のようです。移り変わりが早いのはITビジネスであり、気づくとすぐに既存のビジネスモデルは陳腐化しています。「自社の競争優位性を高めて、参入障壁を確保する」というこれまでの路線を踏襲しつつ、トレンドを読み、新しい領域に投資しながら、売り上げを拡大させていくという方向性はしっかり持っているのだと確認できました。