Google Photosはスマホ写真の保存先として大本命になる

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先日のGoogle I/Oで、Google Photosが発表されました。

無料で容量無制限に写真&動画を保存しまくれる「Google Photos」、本日から利用可能 – GIGAZINE

これが破壊力抜群です。一気に、写真サービスの本命になってしまう可能性があるんじゃないかと思います。

これまでGoogleは、PicasaやGoogle+フォトなど、いくつか写真サービスを展開してきました。しかし、いずれも本命になりきることができずにいました。

一方で、FlickrやDropboxなど競合の写真サービスも存在していますが、これらもなかなかブレークスルーしきれず、撮った写真をどこにストックし、どうやってシェアするかというのは、結構ユーザーを悩ませています。

ちなみに、僕は2009年からFlickrの有料ユーザーです。

FlickrのProアカウントを購入した

 

Google Photosを使っておけば、とりあえずバックアップは心配ない

Google Photosのサービス内容として一番注目されるのは、容量が無制限だってことです。もちろん、写真は1600万画素、ビデオの解像度は1080Pという制限があります。それを超える写真や動画を保存したい場合には、容量が無制限ではなくなります。

ちなみに、iPhone6のカメラは800万画素です。一眼レフなどもっと解像度が高い写真を普段から撮っている人でもなければ、普段の携帯写真はGoogle Photosで十分でしょう。

[iPhone]カメラの画素数はどのくらいですか? | ソフトバンクモバイル

 

実際に、Google PhotosのアプリがiOS/Androidの両方で提供されているので、使ってみました。

 

Googleフォト 1.0.1(無料)
カテゴリ: 写真/ビデオ
販売元: Google, Inc. – Google, Inc.(サイズ: 53 MB)
全てのバージョンの評価: (178件の評価)
+ iPhone/iPadの両方に対応

 

アップロードも早いですし、撮影年月ごとに並んでみれたり(カメラロールと同じ感じ)、花や空など、写真を解析してそれぞれにまとめて閲覧することもできます。

さらに、連続写真と認識されるものは、自動でアニメーションも作成してくれるようです。気に入れば、自分のライブラリに保存することもできます。

 

Googleの狙いは膨大な写真情報

なんでこんなサービスを無料で提供するのか、という点についてですが、いくつか目的は考えられます。まず、写真に関するプラットフォームになること。先述した通り、いまいち写真を保存・共有するデファクトスタンダードとなるような強力なサービスが存在しない「空白地」になっています。

そこで、無料での保存、画像認識等による閲覧・検索しやすさを追求したサービスを提供することで、プラットフォームの覇権奪取を狙ってる。これは、Google+フォトを提供していた頃から、路線としてはあまり変わってないと思いますが。

 

あとは、ディープラーニングなどの画像解析を使うことで、高度なサービス実現をできる見通しがたったから。Picasaでは顔認識もやっていますし、Google+フォトでは画像を自動でコレクションして動画を作るなど、いろんなサービス提供を試みています。これらを活用して、いろんな楽しみ方を提供できることで、競合にも勝てると考えたんじゃないでしょうかね。

特に解析技術に関しては、情報が多いほど精度が向上します。サービスを無料で提供することで、一気に膨大な写真を集める。それによって、一層解析の精度が向上を図り、他社を寄せ付けない戦略じゃないでしょうか。

Flickrが先日「Magic View」という、画像認識技術を使った検索サービスを提供開始しましたが、Google Photosの登場でややかすんでしまいました。完全に同質化されてしまった印象があります。

Flickr、Dropboxのような自動バックアップや画像認識検索などの大規模アップデート – ITmedia ニュース

 

また写真は、個人の嗜好や特性などを解析するのに膨大な情報が含まれています。それによって、広告サービスにも活用するんじゃないかとみられています。

 

Googleには、ある。同社の持つコンピュータービジョン、機械学習、人工知能を始めとする高度な技術を活用すれば、写真に写っている人々、場所、物等を認識し、そのデータをユーザーの個人情報と結び付けることができる。お気に入りの炭酸飲料やオートバイと一緒に写っている写真から、そのユーザーに見せるべき広告がわかる。ランドマークから識別された位置から、何を探しているかを推測できる。

Google Photosの「無料無限ストレージ」は、Appleの高価なiCloudを打ちのめすかもしれない | TechCrunch Japan

 

写真サービスという市場の状況などを踏まえると、タイミングやサービス内容はよく考えられてると思います。メインの収益事業である検索広告があるので、こうやって別サービスで思いっきり無料にするという戦略は、競合にとってはたまったものではありませんね。

 

 

ーーー

 

個人的には、FlickrとGoogle Photosの併用で様子を見ようと思っていますが、どこかのタイミングでGoogle Photosに乗り換えることもありえそうだと思っています。特に写真を保存してこなかった人は、Google Photosを使ってみることをおすすめします。

映画「最強のふたり」は実話を基にした感動ストーリーでおすすめ

「最強のふたり」という映画を観たのですが、久しぶりに「ああ、良い映画を観たなー」というものでした。

実話を基にしたストーリーで、フランス国民の3人に1人が観たとか、フランスの歴代動員観客数で3位を記録するほど大ヒットした映画です。あと、ハリウッドでリメイクも決まってます。

公式サイトからストーリーを引用すると、こんな感じです。

ひとりは、スラム街出身で無職の黒人青年ドリス。もうひとりは、パリの邸に住む大富豪フィリップ。何もかもが正反対のふたりが、事故で首から下が麻痺したフィリップの介護者選びの面接で出会った。他人の同情にウンザリしていたフィリップは、不採用の証明書でもらえる失業手当が目当てというフザケたドリスを採用する。その日から相入れないふたつの世界の衝突が始まった。

ストーリー|映画『最強のふたり』公式サイト

 

バックグラウンドが大きく違うふたりが、それぞれに刺激を受けながら変わっていく姿が素敵。

フランス映画ってあまりポップじゃないというか、小難しい印象がありましたが、この映画はとてもポップであり、かつハリウッドのようなジェットコースター並みの起伏があるわけでもない。その微妙なバランスが個人的に絶妙でした。笑いがあり、しっとりする瞬間もあり、様々な感情の要素が綺麗に盛り込まれてます。

あと、主演の二人もすごい良いですね。絶賛されてるようですが、それも納得な感じでした。

週末の楽しみにどうぞ。

 

Jリーグは2ステージ制じゃなくてもいいけど、プレーオフが必要

Old School Football
photo credit: Oddgeir Hvidsten via photopin cc

Jリーグ2部制+プレーオフ導入を決定して、いろいろ議論を呼びました。少し前に、なぜ2ステージ制にするのか、という記事をこのブログでも書いています。

Jリーグはなぜ2ステージ制に移行するのか? | Synapse Diary

Jリーグでは、プレーオフ制度の欠陥が指摘されていましたが、いよいよ2部制+プレーオフの内容が固まってきたようです。

年間13位が優勝することも。これでいいのかJリーグの新ポストシーズン | フットボールチャンネル

「わかりづらい」「シンプルじゃない」「ヨーロッパなど主要リーグは1リーグ制」などいろいろ議論がありますが、プレーオフを導入するシンプルな理由として、「プレーオフは儲かる」という点があると思います。

 

ヨーロッパのチャンピオンズリーグはとても儲かる

ヨーロッパでは「チャンピオンズリーグ」という存在が大きいです。それは、この本を読んで強く思いました。

この本では、チャンピオンズリーグの発展の歴史が描かれているのですが、サッカー最高峰と言われる通り、有名クラブ・有名選手が一同に会して戦う場になっており、興行的にも出場するだけで非常に大きな収益を得られます。

Wikipediaによると、優勝クラブは賞金合計で3600万ユーロぐらいもらえるそうです。さらに、国の広告やテレビ放映権料の分配が加わります。

UEFAチャンピオンズリーグ – Wikipedia

各サッカークラブの収益金額をみてみると、一番稼いでいるレアル・マドリーで6.5億ドル。10位のリヴァプールで約3億ドルです。

スポーツチームの資産価値順リスト – Wikipedia

つまり、1位のレアル・マドリーですらCLで1位になれば年間収益の5%ぐらいを稼ぐことができるし、10位のリバプールになると10%以上です。それ以下のチームはいかほどクラブにお金をもたらすことができるんでしょう、ということです。

なので、ヨーロッパの主要リーグは事実上、自国で1リーグ制+チャンピオンズリーグによるプレーオフ、を行っているということです。

ちなみになんですが、今年の夏に本田圭佑の移籍話が出て見送りになりましたが、これにもCLの時期を控えていたからではないか、という話もあります。まあ、ここらへんは憶測の域を出ないわけですが。

CSKAモスクワが本田圭佑を移籍させないのも当然だと思えてしまうUEFAチャンピオンズリーグの賞金額事情 | サッカーコラム速報でろブロ

 

JリーグにおけるACLの位置づけ

ヨーロッパのチャンピオンズリーグと同じような位置にあるのが、ACL(AFCチャンピオンズリーグ)です。アジア版ですね。いろいろ理由はあると言われていますが、ACLは儲からないし、過密日程で選手が疲弊する、というのでJリーグからみればメリットがほとんどない気がします。

今年出場するのはリーグ優勝したサンフレッチェ広島、2位ベガルタ仙台、3位浦和レッズ、そして天皇杯を制した柏レイソル。この4クラブに対し、JFAとJリーグはまず財政面でアウェー遠征の渡航費に対する支援を決定した。昨年までの財政支援(渡航費の全額負担)は準々決勝以降にとどまっていたが、今年はグループリーグ(以下GL)から決勝トーナメント1回戦までJリーグがその80%を負担することになった。準々決勝以降は50%となるが、それとは別枠でJFAが強化費として勝ち上がるたびにボーナスを支払うという。クラブ側にかかる財政面の負担を軽減することで、資金を別の部分に回せるようにしたのだ。さらに言えば、賞金を含めて勝てば獲得できる収益を増やすことでクラブのモチベーションを上げる狙いもあるようだ。

二宮寿朗「ACLを奪還せよ!」 | FOOTBALL STANDARD | 現代スポーツ | 現代ビジネス [講談社]

これを読む限り、資金面でメリットになりうるほど大きくはない。ACLの賞金に関するソースがこれぐらいしか見当たらなかったのですが、優勝賞金が1.2億円ぐらいのようです。

ACLの賞金が安すぎwww こりゃやる気も出ないわなwww – サカ豚ニュース

ちなみに、Jリーグは2012年でみると浦和レッズの営業収益が53億円ぐらいです。だいたいJ1常連チームは30~40億円ぐらい。1.2億円ぐらいだとすると、営業収益の3%ぐらいでしょうか。

ただ、Jリーグも手をこまねいているわけではなくて、遠征費用などを補助することで、結果的に賞金総額を上げてJリーグクラブのモチベーションを上げようとしているようです。

【ACL奪還へ!総額最大1,2億円ボーナス・でも気になる大気汚染(ACLグループマッチスケジュール詳細)】 | GO’S Heaven’s Doorsoccer | スポーツナビ+

 

というわけで、ACLがドル箱であれば良いのですが、欧州CLと同じとはいかないようです。そうなると、結局「自分たちで国内でプレーオフを作るしかないのでは?」というのが今日の結論です。

なので、2ステージ制が良いかと言われると確かに気持ち悪いのですが、野球もセ・パ分かれていてプレーオフをやっているので、同じフォーマットならどうか、とか、ひとまずプレーオフを国内で行う必要がある、ということですね。

今日はこのへんで。

アビスパ福岡の経営難から、Jリーグのチーム数を考える

少しタイムリーではなくなってしまいましたが、J2クラブのアビスパ福岡が債務超過という報道が流れました。

一部報道についてのお知らせ|アビスパ福岡 公式サイト
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内容としては、以下の通りです。

アビスパがJリーグ退会の危機に陥った。クラブ関係者によると、運営資金約5000万円が不足。資金調達のめどが立たず、12月にも社員や選手の給与の遅配が起きる恐れがある。  今季は営業収入約9億6000万円で予算を組んだが、9月末現在で約8億2000万円にとどまっているという。

アビスパ危機 経営難 資金5000万円不足 Jリーグ退会も – 西日本新聞

ということで、今日はアビスパの経営難と今後のJリーグについて、です。

アビスパ福岡のこれまでの収益状況

アビスパの過去の収入状況はこんな感じでした。

全体として右肩下がりになっています。2006年と2011年が上がっているのは、J1に昇格したからだと思います。J1になるとなぜ収入が増えるかといえば、対戦相手が変わることと、Jリーグからの協賛金が増えるからです。J1だと有名選手が来て来場者が増えたり、相手がアウェイでもサポーターが来てくれるからですね。

そして、収入の低下に伴ってコスト削減もしていましたが、それに追いつかず赤字になることも発生していました。観客動員数も、こんな感じで減少してきています。

というわけで、観客が減る、スポンサーからのお金が減る、コスト削減でも間に合わない、というスパイラルで、資金繰りに困ったという状況です。

ただ、今回の問題は一時的な資金繰りに困りそうで、給料などの支払いが遅れる、ということだと思われます。なので、経常的な債務超過や破綻、というわけではないので、Jリーグ自体も今は静観ということのようです。

クラブライセンス制度からアビスパ福岡経営危機を読み解く | 新:アビスパ福岡ファンブログ (非公式) #avispa

Jリーグのチーム数は妥当かどうか

今回のアビスパの件で考えてしまったのは、最近話題になっている2ステージ制と根は同じで、Jリーグそのものの関心が薄れ、スポーツ産業として流れるお金が少なくなっているということです。

九州でいえば、福岡・鳥栖・北九州・大分・熊本と、J1・J2合わせて5チームあります。これだけチーム数があると、サポーターもスポンサーも分散します。ホームタウンが近いほど親近感も増しますし、いろんな地域にあればそれだけファン層を掘り起こせる、という考え方もあると思いますが、一クラブあたりが小さくなってしまい、選手年俸への投入やスタジアムの整備など、クラブ運営や戦力増強に必要な資金が、ひとつひとつ小さくなって確保できなくなってしまうリスクもあるんじゃないでしょうか。

JリーグがJ3を創設してチーム数を増やすのが悪いとは思わないですが、市場から引き寄せられる金額のパイとの関係から、チーム数など「プロサッカー」というスポーツ産業の規模は決まってくると思うわけです。そうなると、数を増やし続けること、今のチーム数が本当に良いのだろうか、という疑問は感じます。

プレミアリーグやブンデスリーガなど、世界のトップリーグに比べると1/3程度です。しかしそれぞれの一部リーグのチーム数は、ブンデスリーガは18チーム、プレミアリーグは20チームで、Jリーグとほとんど変わりません。

各国サッカーリーグの売上高合計推移

なかなか愛着があるとチーム数を減らすことは難しくなりそうですが、既にJリーグでもJ1の上に新しいリーグを作る、というプレミアリーグ構想も議論には出ているそうなので、経営が困難なチームが続出すれば、2ステージ制+ポストシーズン以外にも、制度変更を導入する可能性が上がってくるんじゃないでしょうか。

Jリーグ改革の切り札、日本版プレミアリーグ構想とは?|集英社のスポーツ総合雑誌 スポルティーバ 公式サイト web Sportiva|集英社雑誌記事

 

チャンピオンズリーグは、いくつかのフォーマット変更を経て、今の盛り上がりを実現しています。お金やチーム数、対戦方式などを含め、リーグを盛り上げていくための制度設計は、非常に重要なポイントです。

サッカー日本代表が強くなるための条件

そろそろサッカー日本代表のヨーロッパ遠征が始まりますね。ブラジルワールドカップも1年切っていますし。

欧州遠征の日本代表メンバーが発表! | フットボールチャンネル

で、今日はサッカーの日本代表がどうやったらもっと強くなれるか、という話です。

日本のFIFAランキングは?

そもそもFIFAランキングは算出方法が決まっていて、試合の勝ち点、試合の重要度、対戦相手の強さなどに基づきポイントが算出される方式です。

FIFAランキング – Wikipedia

そして、日本の現在のFIFAランキングは42位で、AFC(アジアサッカー連盟)では1番です。アジアでは敵なし、というのはここでもわかります。

The FIFA/Coca-Cola World Ranking – Ranking Table – FIFA.com

ただ、世界でみれば上位が40チーム以上あるわけです。顔ぶれをみると、ほとんどヨーロッパと南米で占められています。それが、今の日本代表が置かれている現状です。

サッカー日本代表が強くなる要素

「ジャパンはなぜ負けるのか」という、サッカーを経済学の目線から紐解いた本の中で、代表チームが強くなる要因は3つで説明できると書かれています。それは「人口・所得・経験」です。

ひとつつけ加えると、私たちの予測は統計学的にみて非常に信頼できる。この3要素が重要だということにほとんど疑いはなく、3要素がもたらす効果にもほとんど疑いはない。この3要素があれば、ワールドカップのグループリーグの結果はたいてい予測がつく。

これを順番に見ていきましょう。

人口

人口が多ければ、有望な選手が見つかり、層が厚くなるということでしょう。

日本の人口は、世界でみれば10位です。好条件です。

国の人口順リスト – Wikipedia

そして、サッカーの競技人口は90万人ぐらいだそうです。

日本のサッカー人口(JFA登録数)はどのくらい?|お問い合わせ|日本サッカー協会

ただ、この競技人口の定義は結構微妙だったりするので、あくまで参考で。750万人というデータもあるようです。

スポーツの競技人口ってどんなのが多いの? | マイナビニュース

所得

所得についても、多いと設備投資などにお金をかけられるようになりますので、サッカーの振興に有利になります。

日本は、GDPでみれば世界第3位です。そして、一人あたりGDPでみると世界で13位になっています。こちらも好条件だといえるでしょう。

[世] 世界の一人当たりの名目GDP(USドル)ランキング

経験

結局、一番の問題はここです。Jリーグが創設されて20周年ですが、世界的にみればとても若いリーグです。スペインのリーガエスパニューラは、プロリーグの創設が1928年だから、85年ぐらいの歴史があります。

リーガ・エスパニョーラ – Wikipedia

これまでの国際マッチの数も少ないですし、強豪国とも戦いも、他の代表チームに比べれば経験値として低いわけです。ここが、日本代表が欠けているところでもあり、伸びしろとも言えます。

日本はサッカーの中心地から遠いのが不利

サッカーの中心地は、昔も今もヨーロッパです。ヨーロッパの中でも今はブンデスリーガが一番勢いがありそうですが、とにかくヨーロッパに人は集まり、情報も集まります。これは、都市に人・資本・情報が集積するのと同じです。

戦略クロニクル」を読むとわかりますが、サッカーの歴史はヨーロッパが中心で、そこに南米が加わる形で発展してきています。

そう考えると、日本は物理的に距離があるという点が不利になります。そういう意味では、たくさんの選手がヨーロッパに移籍するのは、代表サッカーへの還元という意味では非常に良いのです。ただ、それはこの間書いた通り、Jリーグにとっては選手流出で人気が低迷する、というジレンマなわけですが。

Jリーグはなぜ2ステージ制に移行するのか? | Synapse Diary

Jリーグの打開策としては、先進的なサッカー国から外国人を招聘して、経験や知識を吸収するとともに、著名で客を呼べる選手であれば観客も増える、という効果を狙うと良いと思うのですが、なにぶん収益が低迷しており、「卵が先か、鶏が先か」という状況になっているように思います。

まとめ

日本代表に不足しているのは、海外経験、競合チームとの対戦経験です。今回ヨーロッパ遠征などもそうですし、個人レベルでもヨーロッパで競合選手と混じってプレイすることで、日本代表のレベルは上昇していくのだと思います。

というわけで、個人的にはセレッソの柿谷がヨーロッパに移籍することを願っていたりします。

Jリーグはなぜ2ステージ制に移行するのか?

Jリーグが2ステージ制に移行することが発表されました。最初内容を見たときは、意味がわからないものだったのですが、いろいろ事情はあるようです。

 

収入の低下と、その背景にあるJリーグの関心低下

Jリーグ戦略会議の旗振り役である、中西大介競技・事業統括本部長のインタビューが要点がまとまっていてわかりやすいと思います。そこから引用すると、Jリーグが認識している問題点は3つあったと述べられています。

その前提として、戦略会議が認識している現状の問題点について、お話したいと思います。大きく3つありました。1つ目は、日本代表とJリーグのサイクルがアンバランスになり、パラドックス化しているということ。2つ目は、一般の人々の視線がなかなかJリーグに向かっていかないこと。3つ目は、未来への投資原資が枯渇しつつあるということ。

謎に包まれていた2ステージ制復活の意図|コラム|サッカー|スポーツナビ

これらの問題から、2ステージ制・ポストシーズンマッチという案が出てきた、ということです。

 

日本人選手のレベルアップと、リーグの空洞化

日本のJリーグは、立ち上がりは非常にうまかったと言えます。それは「サッカービジネスの基礎知識」を読むとよくわかります。

一方で、育成がうまく行きだすと、有望な海外リーグに移籍する人が増え、スター選手となる人がJリーグから出ていってしまいます。これが今のJリーグの矛盾を生み出しているのです。

この点に関しては、ゼロ円移籍などの問題も言われていますし、Jリーグそのものが成熟してきているので、誰もかれもが海外リーグを目指さなくてもいいじゃないか、という論点もあります。が、現状としては海外リーグで活躍する選手がみれる日本代表は人気があって、Jリーグは注目されない、というジレンマを抱えているのです。

最近、セレッソの柿谷が注目されていますが、それがJリーグに観客を呼び込む効果を与えていることからも、日本代表→人気上昇、というマーケティングルートは未だに顕在していることがわかります。

 

テレビ放映権の拡大によって、潜在ファンを掘り起こす

プロ野球もそうですが、テレビ放映の機会が減ってきているように思います。Jリーグでは、主にスカパーが放映権を獲得しているのですが、視聴者の減少に伴い放映権料が減少してきています。

以下は、Jリーグの収益状況から引っ張ってきた放映権料収入の推移です。確かに減少傾向にあります。これは、Jリーグ全体の半分弱を占めているので、ここが減ってくると結構大きく響いてくるわけです。

jleague-tv

ちなみに、この放映権料は、各クラブへの配当金にもなっていて、これが減ることになります。「Jリーグ・各クラブ放映権料収入は1試合当たりJ1約3.7%、J2約1.5%」という数字があります。

Jリーグ・各クラブ放映権料収入は1試合当たりJ1約3.7%、J2約1.5% – コンサBizラボ | コンサドーレ札幌オフィシャルブログ

2ステージ制にする目的は、ポストシーズンにすることでテレビの露出機会を作り、放映権料を嵩上げする、という狙いがあります。また、Jリーグの観客数も確実に減少してきており、潜在顧客を増やすためにテレビの露出機会を増やし、Jリーグをもっと広く認知してもらおう、という狙いも含まれています。

 

まとめ

2ステージ制は、財政が弱くなってきたこと、その根底にあるJリーグ離れへの対策です。ポストシーズンの仕組みがわかりづらいな、とは思いますが、2ステージ制・ポストシーズンへ舵を切った理由はわかります。

プロ野球もクライマックスシリーズを導入したり、レスリングもルール改訂によって、スポーツそのものの魅力を向上させようと努力しています。Jリーグも同じように、新しく魅力あるスポーツになれるのかは、今後次第ということで。

ドラマ「半沢直樹」を見終わったら「ロスジェネの逆襲」を読もう

半沢直樹が最終回を迎えました。正直最初は観ていませんでしたが、周りから「面白い」という話を聞いたので、途中(第2部あたりからかな?)から観るようになりました。

著者の作品としては、過去に直木賞を受賞した「下町ロケット」を読んでいましたが、ドラマもその特徴が出ているなーと思いました。

ビジネス上のディテールもあるのですが、勧善懲悪でわかりやすいストーリーで、感情的に揺さぶられるエンターテイメントという印象でした。ビジネス小説となると、リアリティを追求する路線もあると思いますが、どちらかというとエンタメ色が強く、読みやすい感じです。

で、ドラマ「半沢直樹」は、役者も演技力高いし、面白いエンターテイメントでした。僕は銀行出身じゃないので、どこまでがリアリティなのかはわかりませんが。

最後の終わり方からすると、続編である「ロスジェネの逆襲」は映像化されるのでしょう。この「ロスジェネの逆襲」は、先に原作で読んでしまいました。こちらも面白かったです。簡単にいうとIT企業の買収劇なのですが、いろいろ劇的な展開が続いてくるので、一気読みしてしまいました。

エンターテイメントとして楽しいし、熱い気持ちで仕事しようという気持ちにさせてくれるので、個人的には好きですよ。倍返しはしないけど。

長谷部誠がヴォルフスブルグからニュルンベルクへ移籍したけど

今日は自分のメモ程度です。すみません。

長谷部誠がヴォルフスブルグからニュルンベルクへ移籍しました。3年契約で、移籍金は250万ユーロ(約3億円)とのことです。

ニュルンベルクが長谷部獲得合意を発表 (GOAL) – Yahoo!ニュース

 

ヴォルフスブルグ的には成功なディールでは

長谷部は、元々浦和から移籍金ゼロで獲得しています。このサイトで、海外へ移籍した日本人選手の移籍金を確認することができます。

海外日本人選手の移籍金・年俸一覧 – 移籍金・年俸ランキング | サムライサッカーMAGAZINE.com – 海外で活躍する日本人選手情報満載!

それが今回は3億円の移籍金を獲得できたので、まさに安く買って高く売れたんだと思います。

「ジャパンはなぜ負けるのか」にも書いてありますが、こういう移籍市場の戦いというのは、チームの結果とお金の関係を読み解く上で非常に重要です。この本では、20代の初めで買い、30歳になる前に売れ、と書いてあります。それが最も選手の実力をチームに取り入れ、かつ衰えが他のチームからも目に見える前に高く売れるからです。

そういう観点でみると、長谷部は29歳。ヴォルフスブルグから見ると良いタイミングと見られても不思議ではありません。

 

ニュルンベルクは投資効果を出せるのか

長谷部が所属していたヴォルフスブルグとニュルンベルクでは、クラブの規模が結構違います。選手人件費のデータがありましたので、リンク貼っておきます。

清武がニュルンベルクに移籍した理由とは・・・?

また「ジャパンは負けるのか」の話になってしまいますが、選手人件費と勝ち点は非常に相関関係があると言われています。つまり、選手人件費が多いチームほど勝てるチームになる、ということです。そういう意味では、今回長谷部は出場機会を求めて、選手人件費があまり多くないチームに移籍した、というのは個人としては正解な気がします。

一方で、ニュルンベルクは清武に始まり日本人を積極的に引き入れていますが、どういう戦略で進もうとしてるんでしょうかね。今回の移籍金の金額を見ても、ニュルンベルクの規模からすると結構大きな取引だったんじゃないでしょうか。(とはいえ、相場観からするとちょっと値切ったかもしれません。)

まあ、今後長谷部が出場機会を増やし、チームが勝てるようになればクラブとしては良いんじゃないでしょうかね。あと、清武は早めに結果を残し、ニュルンベルクに移籍金というお土産を残すべきだと思います。

 

なんとなく今回の報道で、長谷部も選手としてはピークを過ぎたのかもしれないなーと改めて思ってしまいました。とはいえまだまだやれる年齢だと思いますので、ブンデスで頑張って欲しいものです。ブンデスリーガはプレミアリーグに次いで大きなリーグですし、観客動員数などリーグ全体で非常に勢いがあるところでもあります。そういうところで日本人選手が多く活躍する、というのは日本サッカーにとっても意味があると思いますし。

infographicで見る欧州トップリーグのマーケットバリュー

 

クラブライセンス制度が導入されたJリーグは、今後どう変わるか?

Jリーグではクラブライセンス制度が導入されています。3年間赤字が続くとJFLに降格になってしまいます。赤字クラブがいるのは今に始まったことではないですが、なんで今導入なんでしょうか。

ひとつ参考になる数字を出してみました。以下のグラフがそれです。これは、2005~2012年の8年間で、各クラブの営業利益(損失)を並べてみたものです。左が黒字で右にいくにつれて赤字になっていきます。

Jクラブの営業利益(損失)(2005-2012)
Jクラブの営業利益(損失)(2005-2012)

眺めてもらえばわかりますが、黒字に比べて赤字の方が絶対額も大きいですし、数も多いです。実際、サンプル数275のうち、黒字は145。赤字は130です。

また、黒字の総額は11,303百万円。赤字の総額は-20,810百万円。総額としては、-9,507百万円の負け越しになっています。

というわけで、Jリーグは全体として赤字です。

 

UEFAで始まっているファイナンシャル・フェアプレー

UEFAでもファイナンシャル・フェアプレーという、同様の財務規律を求める制度が開始されています。導入の目的は、この記事に書かれています。

ファイナンシャル・フェアプレーの主要目標は、クラブサッカーの財務に規律と合理性を植え付けること、俸給や移籍金にかかる上昇圧力を和らげてインフレ効果を制限すること、クラブに支出を収入の範囲内に抑えることを奨励すること、クラブが確実に債務を期日までに返済できるようにすること、そして欧州クラブサッカーの長期的持続性を守ることにある。

UEFAチャンピオンズリーグ – ニュース – UEFA.com

これまでは、テレビ放映権の高騰や、特定オーナーによってサッカークラブに資金が流れ込み、選手の年俸もインフレ傾向にありました。そうなると抑制がきかなくなるので、クラブの実力にも格差が生じて、リーグ全体がバランスを崩していくことになります。それを抑制するのが、ファイナンシャル・フェアプレーというわけです。

これを破ると、UEFAチャンピオンズリーグなどの出場できなくなるなど、それなりに大きな制裁が与えられます。

 

財政規律を高める影響

影響はいくつか考えられますが、この記事に列挙されていてわかりやすいです。

ファイナンシャル・フェアプレーを理解する4つのポイントと欧州サッカーの今後 – 22番の蹴球ファカルティ

「移籍マーケットの縮小」「オフの期間の海外遠征の増加」なんかは、まさにそうだと思います。マンUもアーセナルも日本に来ていましたね。

 

また育成の活性化です。最近では、セレッソ大阪で何人か芽が出てきており育成型クラブが注目されていますが、財政的な理由も存在します。

育成への投資は別会計であるので、バルセロナのように育成を通じた選手の確保や選手の売却資金は有効な手立てであり、さらにこの流れが加速していく。また、日本でもバルセロナやチェルシー、ミランなどが子供向けのサッカースクールを展開しているが、このような動きもコマーシャルとクラブのブランド強化のために広がっていくと予想される。

ファイナンシャル・フェアプレーを理解する4つのポイントと欧州サッカーの今後 – 22番の蹴球ファカルティ

 

必要なのはマーケティング能力

サッカービジネスの基礎知識」でも書いてありましたが、最終的にクラブの収益基盤を高めるのはマーケティング能力です。

浦和、鹿島、磐田など収支の黒字転換を果たしたクラブと、そうでないクラブの差を一言で言えば「継続したマーケティング実践能力」である。チーム戦力の実力と魅力がその上に乗って初めて「ブランド価値」が生まれ、クラブ法人は資産を持てる。

いかに目玉となる選手を育成したり、獲得するかという点も重要です。カズが未だに現役であることは素晴らしいですが、クラブとしては選手としての能力以外にも、経済効果も加味しているはずです。

カズの経済効果とは? サッカー選手・三浦知良のリアルな商品価値 | フットボールチャンネル

 

まとめ

  • 財務規律の強化は日本も欧州も同じ
  • 目的は、選手年俸のインフレ抑制を含めた、安定的な財務状況の確立
  • マーケティングを含めたクラブ経営能力が一層必要になる

という感じです。Jリーグは選手年俸が高騰しているという数字は見えませんが、赤字のままでは持続的に発展はできません。どうお金を稼いでいくか、という財務基盤が確立してこそ、選手年俸も健全に上昇できる、ということでしょう。

今日はこのへんで。

サッカービジネスの基礎知識

Jリーグが20周年を迎え、J3を立ち上げたり、プレミアリーグ構想や2部制の検討を行っています。なぜこのタイミングで、そういう変革を行おうとしているのか、というのはこの「サッカービジネスの基礎知識」を読むと、理解が深まると思います。

 

 

Jリーグの創設前からの歴史を、経営面から紐解いていく一冊なのですが、スポーツビジネスの面白さがとてもよくわかる本だと思います。

 

Jリーグ創設時の成功要因は、マーケティングと体制

Jリーグというのは、立ち上がりが決して順風満帆というわけではありませんでしたが、マーケティング的要素が非常に上手だったことがわかります。初期から博報堂が企画に参加し、「Jリーグ」という用語も含め、ブランディングを図っていきます。

本書の中でも、用語については意図的に新しい言葉を用いていったことがわかります。

また、創設メンバーは用語選択にもこだわった。川淵・小倉は当時を述懐し、「プロ野球とのイメージ差別化を明確にするため、全般にわたって言葉、用語をそれまであまり用いられていなかった新鮮なもの、独自なものにした」と語る。たとえば、フランチャイズとファンではなく「ホームタウン」と「サポーター」、プレジデントではなく「チェアマン」(この用語は岡野俊一郎の発案によるもの)、優勝決定戦は「チャンピオンシップ」といった具合である。

また、川淵チェアマンをある種のマスコットとして、メディアを通じて地域貢献をキーにしたメッセージを発信していきます。

 

さらに、体制面でも違いが挙げられます。Jリーグは日本のプロ野球と異なり、JFAが主導権を握っていて、各クラブオーナーによる発言権はあまりありません。日本野球機構では、コミッショナーにより強い権限を与えた方が良い、という意見もあるようです。

コミッショナー (日本プロ野球) – Wikipedia

もちろん日本のプロ野球も発展してますし、選手年俸などサッカーよりも市場パイが大きくなっていますし、どちらが良い/悪いの問題ではないと思います。ただ、Jリーグの初期に関して言えば、中央集権的な体制を築くことによって、テレビ放映権や商品化権の販売で得た収益を各チームに分配する制度を作るなど、リーグ全体がどう栄えていくか、という観点でより強く進めていくことができたのでしょう。また、テレビ放映権についても排他的独占権で価格をコントロールし、安売りにならないようにするなどの効果もありました。

 

スポーツビジネスのバブルとその後

ヨーロッパサッカーがまさにそうでしたら、メディアによってスポーツが優良なコンテンツとして認められることで、大量のメディアマネーが流れこむようになりました。しかし、それも長くは続かず、金銭的には綱渡りな状況です。ブンデスリーガの記事から引用しますと、

UEFAのミシェル・プラティニ会長は、今シーズンから「ファイナンシャル・フェアプレー」の導入を実施している。これはクラブの経営を健全化させるための制度で、簡単に言えば「収入を上回る支出をしてはいけない」。すなわち、身の丈に合った経営を求めるものだ。規定に違反すればCLやELへの出場権が剥奪され、クラブ経営を根本から揺るがす事態に発展する。現在、イングランド、スペイン、イタリアにおいて、ファイナンシャル・フェアプレーのルールをクリアしているクラブは1つもない。逆にドイツでは、多くのクラブが既に条件を満たしている。中でもバイエルンは欧州で最も健全な経営をしているクラブとして知られており、他のクラブのお手本にもなっている。

健全な競争と経営がドイツに繁栄をもたらす(1/2) – OCNスポーツ サッカーコラム

こんな状況なわけです。Jリーグも赤字が続いているクラブがありますし、他人事ではありません。世界的に、どうやって健全なリーグを作っていくのか、というのがサッカー共通のテーマになっていると思います。

そう考えると、冒頭に述べた通り、Jリーグがいろいろ施策を講じている現状もよくわかるのです。Jリーグを含めたサッカービジネス全体の歴史と現状を一冊でよく分かる良書です。