最近DX推進室の設立などをよく聞く。デジタルトランスフォーメーションとは何で、どう推進すべきなのかを理解したくて、調査レポートや書籍をあたってみました。
なぜデジタルトランスフォーメーションに取り組む必要はあるのか?
デジタルトランスフォーメーションはなぜ様々な企業に求められているのでしょうか。それは、この本を読むとわかりやすく書いてあります。
特にスピーディーにどう取り組むか、という問題意識は、本書の最初のあたりが非常に有益でした。
例えば、こういう記述です。
技術が生まれてから多くの人がそれを利用するまでの時間が急速に短くなっているということです。たとえば、新しい技術が生まれてから 50%以上の人々が使うようになるまでの年数では、自動車は 80 年以上かかりましたが、テレビは 30 年、インターネットは 20 年未満となり、携帯電話は 10 年ほどと言われています。アップルの初代iPhoneが日本で発売されたのは2008年春ですが、スマートフォンの世帯保有率が 50%になるまでには5年しかかかっていません。
つまり、デジタルというのはスピードを高めるため、事業の変化やディスラプターの脅威が急速に高まるリスクがある、ということです。そして、スピードを高めるということは、内製に限界があるため、他社との連携や買収など、外部にも目を向ける必要があるということにもつながります。
新しい領域に投資を増やせるか?
無料で充実した内容になっているのは、経産省のDXレポートです。
DXレポート 〜IT システム「2025 年の崖」の克服と DX の本格的な展開~
DXの必要性や問題点などがきれいにまとめられています。50ページを超えるボリュームなので、まず手始めに読むなら、このレポートが良いのではないでしょうか。
特に前半で語られている「既存システムのレガシー化」の問題は、日本企業においては根強く、その運用コストに比重が多く割かれ、チャレンジングな戦略的投資の割合が少ないというのは、デジタルトランスフォームを進めづらい一因になっていると感じます。
つまり、デジタルトランスフォーメーションというのは、既存システムの改革も必要になってくるんですね。コストを下げ、柔軟性のあるシステム環境を作り、新しい領域に投資する必要があるからです。
面白かったのは、組織的な構造やカルチャーにも踏み込んで記載されているところでした。例えばユーザー企業(発注 側)の役割・責任やスタンスについて、アメリカとの対比でこう表現されています。
それに対して、我が国の CIO は有名なベンダー企業に頼んだから大丈夫という考えに陥 りがちである。しかも、ユーザ企業側の選定責任は不明確で、ベンダー企業側の責任となり がちである。要求仕様や指示に抜け漏れや曖昧さがあっても、トラブルが起きると我が国で はベンダー企業の責任とされることが多い。開発を主導するのが CIO の責務であることか ら CIO 責任という考え方が定着している米国とは異なっている。
このあたりは、日本市場特有の、昔からある構造的な問題だと思います。
DXは結局、組織改革の問題
デジタルトランスフォーメーションの本をもう一冊読んだのですが、いずれもデジタルトランスフォーメーションを組織改革の問題ととらえ、その組織改革をどう実現するのか、という点が語られています。
デジタルトランスフォーメーションは各業界や企業によって実施する内容は変わりますが、全般的に言えるのは、組織のマインドや仕組みを変えていく必要がある、ということです。しかも、大掛かりに。
一般的に言われる「業務改革」とデジタルトランスフォーメーションの違いについても本書では書かれており、大きく変えていくためには、その重要性や大変さを経営層が理解し、その環境を全社的に構築していく重要性が述べられています。
デジタルトランスフォーメーションというのは、組織改革なのです。
ちなみに、日本版解説でリクルートの事例が出てきていたのが印象的でした。リクルートのデジタルトランスフォーメーションが、どのように行われているのかは本書が参考になると思います。
「すべての企業はテクノロジー企業になる」という言葉もあります。テクノロジーの活用がいろんな企業で進みますように。
今日はこのへんで。