本書はユニクロやアスクルの監査役を務めた会計士の方が書いた、会社が会計に強くなるための具体的な指南書です。
理論的な教科書と言うよりは、管理会計のエッセンスを、ユニクロなど自分が関わった事例を交えながら述べた本というテイストです。
たくさん会社の会計に求められる要素が述べられており、大変勉強になりました。
月次決算+予実管理でPDCAサイクルを回す
本書で書かれている中で1つのポイントになるのは、月次決算をいかに早く作るかです。
月次決算をいかに正確にスピーディに作成できるか、予算と実績を比較分析し、経営課題を発見すると同時にいかに早く手を打てるかが、上場できる会社の要件の1つだと考えます。
企業によって、これができてる・できてない、という違いがあると思います。あるいはできていても、すごい遅くてすぐに翌月やってしまうという状態もあるでしょう。
しかし、この月次決算ができていると、毎月会計の数字をベースに、以下のようにPDCAサイクルを回すことができるようになります。
予算と実績(月次決算)を部門ごと、勘定科目ごとに毎月比較し、その差異を算出し、 予算比で5%以上(会社によっては3%以上というケースもあります) 差異のあるものについて「どのような理由で差異が発生したのか」を分析します。
こうして毎月の経営状態を会計の数字で把握し、的確に改善点を見出して対策を打っていきます。
判断基準(アラート基準)は、たとえば月次で 5%以上計画と異なっていたら、すぐに原因を分析し、対策を検討し実行します。それもできるだけ早く警報を発するために、月末近くなったら実績を予測できるようにすべきです。
その繰り返しによって、企業は成長を続けられる状況を作り出すのです。
優秀な会計担当がいるとなぜ会社強くなるのか
会計は企業を支える重要な仕組みであり、これまで成長してきた企業には、優秀な経理や財務の担当がいたという話を聞きます。本書でも松下電器やアップルの例が出てきます。
会計が十分に整備されていないと、どんぶり勘定が続きます。そうなると、自社がどれくらい儲かっているのかわからず、そうこうしている間に売上や利益が減っていってしまいます。
しかし、減収減益の原因がはっきりとはわからないから、打ち手も明確ではなくなります。例えば売上が多い取引先には値引きしても儲かるだろうと思ってたら、実際はちゃんとコストを計算すると、赤字だったということもあり得るわけです。
普段からしっかりと数字を整理し、事業の状態を正しく反映できるようにしておくことが、強い会社の会計制度であり、それを担える人材を自社に抱えておくことが、経営には重要だということです。
それ以外にもたくさんの会計管理に関するポイントが、事例を交えて豊富で語られています。教科書と言うよりは実務における。会計のポイントを学びたい人にオススメです。