これからの日本は、より一層人口の高齢化が進み、「超高齢化社会」に突入しています。改めて定義を確認しておくと、65歳以上の人口が21%を超えると「超高齢化社会」となります。
総人口に対して65歳以上の高齢者人口が占める割合を高齢化率という。世界保健機構(WHO)や国連の定義によると、高齢化率が7%を超えた社会を「高齢化社会」、14%を超えた社会を「高齢社会」、21%を超えた社会を「超高齢社会」という。日本は1970年に高齢化社会になり、1994年に高齢社会になった。2007年には21.5%となり、超高齢社会に入った。
高齢化は今後も進んでいき、全体的な人口減少と相まって、メインな労働力である生産年齢人口が大きく減少していくことになります。
超高齢化社会における中小企業の経営課題は?
そんな人口動態になる日本社会で、中小企業の経営課題として何がフォーカスされるのでしょうか。それを、中小企業経営者に対してアンケート調査した結果がありました。今回この記事を書こうと思ったのは、この調査結果を見つけたからです。
生命保険会社がインターネットによって調査した結果なので、その点は考慮して結果を解釈する必要があるでしょう。とはいえ、非常に興味深い内容になっていました。
詳しくは、PDFで公開されているのでぜひ読んでいただきたいのですが、アンケート結果では従業員の高齢化が最も懸念に上がっていました。てっきり人口減少によってビジネスのパイが減っていく事の方が懸念が大きいのかなと想像していましたが、どうやら違うようです。
高齢化によって、従業員の技術継承や組織のリフレッシュが進まない現状があるということです。裏を返せば、うまく人の採用ができないのではないかということです。
人材の確保が困難になっている中小企業
そこで、中小企業の採用状況を確認してみましょう。平成27年度の中小企業白書に、中小企業や小規模事業者の採用状況を示す統計がいくつかありました。
その中でわかりやすいのは、「従業員過不足DI」です。従業員が「過剰」と答えた人の数と「不足」と答えた人の差を示した値になります。
これを見ると、2009年からどんどん人不足の傾向が進んでおり、今でも続いています。特に、建設業とサービス業が顕著になっていますね。
そして、企業規模で見た統計として「高校卒業者の充足率」という統計があります。
企業規模が小さいほど、高卒者を獲得できていないのがわかります。従業員規模が29人以下の場合、充足率は4割を下回っています。
つまり、全体の傾向として人材獲得が難しくなっており、さらに企業規模が小さいほど人材が不足しているということです。
中小企業の採用手段
人材確保が厳しい状況であることはわかりましたが、実際に中小企業がどのような採用活動を行なっているのかを見てみたいと思います。同じく、中小企業白書にその実態を調査した結果がありました。
興味深いのは、採用に成功する企業とそうでない企業の特徴を分析した結果です。調査結果から分析した箇所を引用すると、
「人材が確保できている企業」と「人材が確保できていない企業」の違いとして、一般に言われている労働条件や賃金に加えて、企業としての採用力ともいうべき、人材確保の手段・ノウハウにおいて強みを持っていることが考えられる。中小企業、特に、小規模事業者においては定期的に人材採用を行うとは限らないため、どのような手段を用いてどのような人材を確保すればよいのかといった採用の基本的なノウハウの蓄積が十分ではない可能性が高いと考えられ、人材確保に課題を抱える企業では、まずは基本的な採用のノウハウを身に付けることが求められていると言える。
というように、定期的に採用活動を行うわけではないので、ノウハウが蓄積されづらいことも影響しているのだと思います。逆にいえば、ノウハウを蓄積できれば差別化の要因になるともいえます。
また、採用手段ごとの実績も調査結果がありました。
未だにハローワークや知人・友人の紹介が多くを占めており、あまり採用手段が変わっていないのがわかります。自社ウェブサイトでの採用はあまり効果的でない、という調査結果にもなっていますね。
一方で、情報発信の観点で以下のように分析されています。
このように、企業の規模によって就業時における情報の明確性が大きく異なることが分かり、中小企業、特に、小規模事業者において企業の就労条件や仕事内容が不明確で、就職希望者が求める情報提示が必ずしも十分とは受け止められていない。こうした採用に関する情報発信の実態に鑑みると、就職を希望する者が入社を決断する上での判断基準となる情報が不足することが、中小企業・小規模事業者の人材確保におけるマイナス要因となっている可能性がある。さらに、就職時に十分な情報がないことで、就職後に就労条件や仕事内容に関するミスマッチが生じ、人材の定着率の低下にも寄与している可能性が高い。
これを読むと、単純に手段の問題ではなく、情報発信を十分にできていないのが問題とも言えるのではないでしょうか。いろんな場面で、企業のウェブサイトを見て情報収集する人は多くなっており、企業のウェブサイトに正しい情報を掲載していくことは重要になっています。
まとめ
- 中小企業の経営課題は人材の確保と育成
- 確保に関しては小さい企業ほど十分に人材を確保できていない
- 情報発信を十分にできていないのが原因ではないか
ということで、中小企業の経営課題は人材になっています。新しい採用手段として、ウェブサイトでの情報発信はますます重要になってくると再認識しました。