システム運用における減点評価からの脱却

経営思考の「補助線」は、経営を考えるにあたって、そのヒントとなる観点を取り上げていく一冊。比喩的な表現も多く含まれているので、好みが分かれると思う。個人的にはやや読みづらい。ただ、読んだことから気づいた点があったので、考えてみる。
 
 
システムは複雑に相互作用してしまう状態にある

 
本の中で、現在社会はシステムが多く形成され、それが複雑に入り組んでいる、かつそれを利用する人はシステムが安全であるという意識が強い、という言葉があった。どうやら、失敗学の畑村さんの言葉らしい。
 
これは、システム運用こそ真剣に考えるべき。ITシステムだけで考えても、ひとつの会社で複数のシステムが同居しており、それぞれがデータを連携したりする。自分たちが運用しているシステムで起こした障害が、想像もしないところから影響が出たりすることだってある。当然のことだが、システムからのアウトプットが、どこにどう使われるかを把握しておかないと、ユーザに重大な影響を与える事態となる。
 
 
「システムは完璧」であるという幻想
 
自分はIT系の仕事に従事しているので、ITシステムは全くもって完璧ではないことを身にしみてわかっているが、ITシステムがどう作られてどう運用されているかに馴染みがない人は、「こうすれば、こう動く」という正常な挙動を当たり前だと思う。そして、当たり前だと思うが故に、何かうまく使えない状態になると、不満が募ったりする。
こういう心理的な要因が、システム運用においてユーザの満足度を下げる結果に結びついてしまう。やれて当たり前、失敗すれば説教。そういう減点評価しかされないような状況を作り出してしまう傾向にある。
 
現在はSLA締結により、システム運用の妥当性について、相互に納得した上で評価しましょう、ということが当たり前のように導入されてきている。そのSLAでも、オンライン稼働率99.9%とかで定められており、決して100%にはならない。こういう積み重ねから、システムは完璧でないことへの理解をユーザに深めていくことが重要になる。
 
 
 
ユーザを巻き込んでPDCAサイクルを回す
 
システムが完璧でない、という事実を受け入れると、より良くしようという前向きな動きも出てくる。システムは、広義の意味ではベンダだけが運用しているのではなく、ユーザとベンダが一体となって運用されるものである。ベンダは、その中のITに直接的な作業を担っているにすぎない。
 
なので、常に問題点や改善点を管理し、システムの目的を整理した上で、どういう風に改善されるべきか、を話し合う機会が必要になる。お金をもらった仕事をしているので、ユーザに押し付けるわけではないが、システムに関する全ての問題を弁だが抱える必要もないはずだし、それではちゃんとした運用は不可能だ。
 
継続的な維持・向上が評価されるような仕組みづくりや、ユーザとの関係構築が、減点評価の世界から脱却につながるはずだ。

 

経営思考の「補助線」
御立 尚資
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「システム運用における減点評価からの脱却」への1件のフィードバック

  1. 運用の仕事を考えてみる。

    現在の仕事は俗にいう運用と言う仕事をしている。
    運用の仕事とは、今動いているシステムが正常に動くようにチェックしたり、
    トラブルが発生したときに、適切な方法で正常に動作するように適切な処置をする…

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