最近目にする機会が多い、クラウド・コンピューティング。
もう少し体系的に知ろうと思って読んでみた。比較的よくまとまっていると思う。
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「クラウド・コンピューティング」は何かの技術などを指した言葉ではなくて、いろんな技術やサービスの特徴を統合した、「現象を表した言葉」だと書いてあったが、なるほどな、と思った。
企業のシステムでSaasなどを導入するときによく問題になるのが、「セキュリティ」の問題。確かにサービス提供業者は、高いセキュリティ基準をクリアしたデータセンタを装備して、そこに複数の顧客に関するデータを取り扱っている。しかし、データセンターが海外だったりするので、物理的にデータが物理的に国境を越えてしまうことに、心理的な抵抗や、万が一の場合を想定するとせめて国内であって欲しい、というクライアントも少なくないだろう。
この本では、その懸念すらもクリアできる可能性を提示している。つまり、「データの保持」と「サービスの提供」が分業されることも、可能性としてある、と。(著書の中では「銀行のような」と表現していたが)データを預かる専門的な機関と、Googleのような利便性の高いサービスを提供する企業を分けて利用し、「データは自分たちが安心できるところに」「サービスは利便性が高いところに」という、おいしいところを組み合わせて「ネットの向こう側」を利用することがあるというわけだ。
これは、結構興味深い。
現在多くの企業では、所謂基幹系システムが自前で保持しているところが多い。これは、(自前主義が当たり前だったレガシーの名残である場合も多いが)セキュリティ上自分たちでデータを保持しないと難しいという事情でやむを得ず、基幹系システムを残している、というケースもある。
本当に信頼できるセキュリティを確保する機関が表れて、そこと連携して高度なサービスを提供できるようになれば、企業システムを取り巻く流れも、一段と「ネットの向こう側」に向かうのかもしれない。
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