スーパーホテルのマーケティング戦略

スーパーホテルに宿泊してきました。以前から名前は知っていたんですが、実際に宿泊してみてそのすごさがわかりました。実際にマーケティング戦略の観点から紐解いてみたいと思います。宿泊前にこの本を読んでいったのですが、一層滞在を楽しむことができました。

 

 

「寝る」ことにフォーカスする

マーケティングの基本は、ターゲットとポジショニングを決めることです。スーパーホテルはビジネスホテルなので、ターゲットは出張するビジネスマンが大半になります。そこで注目したのが「寝る」という行為でした。ビジネスホテルの場合、基本的には滞在時間のほとんどが睡眠時間に充てられることから、「快眠」を提供することにフォーカスしたのです。

「ぐっすり」最優先

このフォーカスが、いろんなアイデアとなってビジネスを形成していきます。まず、広いベッドにして、快眠を促すパジャマやスリッパ、選べる枕を提供する。また、睡眠に入りやすいよう全体を暗い照明にする。さらに環境に優しい珪藻土の天井にするなどのこだわりも見せます。さらに、天然を設置しているホテルもあるようです。

確かに、実際宿泊してみた感想としては、寝心地は良かったと思います。比較的深い眠りを得られたんじゃないでしょうか。

 

一方で、大胆にコストも削減します。ラグジュアリーホテルを目指すわけではないので、コストを成立させなければいけません。宿泊してみるとわかりますが、冷蔵庫には飲み物は入っていませんし、入室したときは空調も入っていません。お風呂には節約のためのお風呂の目安線が入っています。

この高さまでお湯を入れて下さい。
この高さまでお湯を入れて下さい。

また、人件費もできるだけかからない工夫があります。ベッドは足がありません。確かに低いベッドでした。別にそれで困るわけではありませんし、清掃の効率はこれで非常に上がるそうです。さらに、ホテルのフロント業務でもチェックアウトがありませんでした。

ホテルのフロント業務がもっとも忙しいのは、お客さまがバラバラにいらっしゃるチェックインの時間帯ではありません。いっせいにチェックアウトされる朝8時です。

というわけで、快眠を提供するというコンセプトで、見事に差別化に成功したわけです。

 

健康と安心でターゲットを拡張する

スーパーホテルでは、無料の朝食も売りになっています。実際食事してみましたが、無料とは思えない充実度でした。朝ご飯をしっかり食べる、という行為が健康的な感じがしますし、とても良いサービスだなと思いました。

そこで驚いたのは、女性や子どもが結構いたことです。今が夏休みで休日だったこともあるかもしれませんが、それでもビジネスホテルにこんなに女性や子どもが宿泊するものだろうか、という新鮮な光景でした。

本の中でも、健康的な食事やサービスを提供すること、オートロックを整えることで、健康と安心を求める女性や家族をターゲットに広げています。確かに、宿泊分は安く済みますし、悪いことではない気がします。

 

これらのサービスを成立させるのは従業員のオペレーション力

こうやって、マーケティング上成功しているスーパーホテルですが、それだけでずっと勝てるわけではありません。サービス業は人が関わる要素が大きく、ビジネスモデルだけで成功するのは難しいと言われています。「俺のイタリアン、俺のフレンチ」でも書かれていましたが、「仕組みで勝って人で圧勝する」です。

本の後半では、いかに理念を浸透させ、各自が考えてサービスを提供する人になってもらえるか、ということが書かれていました。やはりサービスは最後は人。目標管理制度が導入されていますし、常にサービス改善について議論されているようです。名物の「おかえりなさいませ」の挨拶も、従業員の発想から取り入れられたものだそうです(本当にそう挨拶されました)。

 

また、「先義後利」という言葉も本の中に登場しました。ヤマト運輸でも「サービスが先、利益は後」という考え方がありましたが、それと通じるものです。スーパーホテルも、社会的に意義のあるサービスにしよう、という思いが見られます。

こういうのをみると、オペレーション力を高めるためには、人を育てる仕組み作りと、自社のサービスが社会的に意義がある、というメッセージを発することが重要なんだな、と改めて感じます。