中小企業がDropboxをファイルサーバとして使うのはアリか

最近何回か、企業でDropboxを使うのはアリなのか、という質問を受けたので書いてみる。これは、大企業の場合はこういうのがそもそもテーマにならないので、中小企業が対象。というわけで、今回はDropboxを中心として、中小企業のファイルサーバ事情を考えようかと。

 

容量から考える

まず、どの程度のディスク容量をDropboxに求めるかによって判断が分かれる。Dropboxは、無料で利用できるのは1アカウントに対して2GB。これは、あまりデータを利用しない企業であっても、複数人で作業していればすぐに容量オーバーになります。メインサーバとして使えない、というのはこの点が最も大きい。メインサーバではなく、共有ツールとしてならアリだと思うけど。

有料の場合、例えば100GBで年間8000円程度です。あと、Packratというオプションで、ファイルの削除や変更の履歴を無制限で保管してくれる(年間39ドル)。

個人的には、あまり利便性を気にしなければ、LinkStationなどのNASでいいじゃないか、という感じです。安いし、その気になれば「Web Access」機能で外部からアクセスできます。

最近であれば、自宅のハードディスクをクラウド化するPogoplugという手段もあり。
Pogoplug PCソフトウェア:いつでもどこからでもリモートアクセスして共有できます

 

セキュリティから考える

クラウド系サービスの利用で必ず話題になるのがセキュリティ。クラウドを利用していてセキュリティ事故が生じた場合に、対外的な説明が難しい。ちなみに、Dropboxの場合は、何か問題等あった場合はユーザーのファイルはDropbox側で閲覧できるように規約で定められているので、本当に重要な情報に関しては、自分で暗号化してDropboxに同期させる必要がある。

自前でやる方法もあるし、こういうツールも存在する。
無料でDropbox・SkyDriveなどを国家レベルの暗号化で自動的に保護する「Cloudfogger」 – GIGAZINE

 

でないと、「うちの会社は全部Dropboxでやってますから」と言う人がいると、「セキュリティ考えてないと思うから、怖くてデータ渡せない」みたいな展開になってしまわないか心配になる。

もしくは、チーム向けDropboxに加入するか。これだとファイルそのものの暗号化も行われるので、同じ効果を得られる。(と思う。規約とかまでは確認していない。)ただ、チーム向けDropboxのプランは年間795ドルするので、それなりに費用が発生する。あとは、サポートは英語のみっていうのも日本人からすると難かと。
Dropbox – 機能 – チーム向け Dropbox

 

さらに、細かいことだけどDropbox上でのフォルダ権限とか細かい設定はできないんだよね。なので、部分的に閲覧させたいファイルとか存在する場合に、本来は共有する必要がない人にまで共有してしまうなど、情報の細かいコントロールはDropboxでは難しい。まあこれも、少ない人数であれば特に気にすることはないと思うけど。このあたりは、Pogoplug Teamだと実現できそうだね。試してないけど。

 

バックアップから考える

HDDの故障率は、ちゃんとした統計は乏しいものの、結構壊れる。その点、Dropboxであれば勝手に履歴もとってくれるし、間違って削除したファイルも復元できるので、バックアップ機構そのものを自前で用意する必要がない。この点はDropboxの優位点といえる。正直、HDDの故障発生確率を考えると、このバックアップの優位性だけ考えても費用面としては侮れないとは思う。(HDDを1~2年に1個買い換えることを考えれば、Dropboxの有料プランに加入しても費用面では勝負できるラインかと。)

ただ、個人的にはいくつか難点がある。まず、同期タイミングを作るのが難しい。各個別ファイルに対して勝手に履歴をつけていくので、ファイルサーバ全体で「○月○日断面」というのを作るのは難しい。まあ、このあたりは本当にそうしたければ、個別で断面つくってコピーすれば良いとは思うんだけど。

あと、ファイルが変更されるたびに履歴をつくるので、大量に履歴ファイルができる。僕は結構まめにファイルの上書き保存をしてしまうので、数分のファイル作業でもとんでもなく多い履歴ファイルの数が生成されて、後から探すのが至難になる。

 

 

というわけで、個人的にはメインのファイルサーバではなく、外出先で作業する用の共有ツールとして使うか、有料プランに入るのと合わせて、定期的に自分でもローカルバックアップを取得しておくのが無難な使い方かな、と思います。重要なファイルに関しては暗号化対策することも前提で。

 

おまけとして、Salesforce.comが企業向けDropboxなる「Chatterbox」を2013年からパイロット検証する想定らしい。こういう利便性が高いBtoC向けのサービスがBtoBに入り込んでくるのは、ここ最近のトレンドなわけで。このあたりは、小さめな企業であればうまく使えば、安く生産性を上げられるポイントになるんじゃないかとは思ってます。

 

「中小企業がDropboxをファイルサーバとして使うのはアリか」への1件のフィードバック

  1. ピンバック: 2013/01/13 « 変人窟(お試し版)

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