理不尽な給料

こんな本を、就活する前に読みたかったな。

どこも完璧な社会というのはないのだろうけど、いろんなところに格差というか理不尽さが含まれていることは、知っておいて損はない。この本を読めば、世の中にはいろんな部分で所得格差があることがわかる。

正社員と非正規雇用とか。
男性と女性とか。
学歴によるヒエラルキーとか。
大企業と中小企業とか。

 

地方に住む場合、どのように所得を高くするか

地理的な制約がないのであれば、大学でいわゆる名門と言われる大学(六大学とか旧帝大)に入って、大企業に入社するのが、未だに合理的な選択になる。すると、今の場合は大学も企業もほとんどが東京に集中している。

では、地方に住む場合はどうするか。地方で所得を高めていくには戦略が必要になるんじゃないか。

一方で沖縄をはじめとする地方都市には、大企業はあまりなく、地元の小規模な商店やサービス業がメインです。イオンやイトーヨーカドーなどの大型ショッピングセンターがあったとしても、地元で雇用されている人は、地域の時給相場で採用されたパートタイマーが中心です。 もちろん地方にも優良企業は存在するものの、周りの賃金相場が低い中で、高い賃金を出すにはかなり勇気が要ります。P.40

地方の場合、都市部と違い大企業の本社機能はなく、子会社や支社、工場がある場合が多い。だから大企業のメイン部分の仕事は存在しない。そして、大企業と中小企業には統計上明確に所得格差が存在している。

だから、地方に住んだまま大企業の高給な仕事に就くのは難しい。すると、医師や税理士など、地方でも企業に属さず稼げそうな資格取得を目指すのもひとつの手段かもしれない。ただ、最近では弁護士や会計士も取得者を政策によって増やしすぎて、あぶれているという笑えない現実もあるのだけれど。

 

実は地方に住んだ方が豊かになれるかもしれない

実は地方の方が豊かに暮らせるかもしれない、という数字もある。

総務省「平成22年家計調査年報」によると、1世帯当たりの実収入トップは福井市。東京都区部の10%以上も高い水準です。P.34

これは、実家が近く、子育てしながらでも共働きが成立しやすかったり、地価が安いため持ち家が入手しやすいという要因が関係している。都市部では実家が近くにないし、子供を育てながら仕事も両立するのはやっぱりとても難しいのだろう。何を優先するか、ということにも拠るけど、世帯の所得という点でみれば、地方が豊かになる可能性もあるのだなあ。

 

それに、こういう調査結果もある。

転職情報サービス「DODA(デューダ)」が2011年3月に発表した調査によると、社員の仕事満足度と企業規模には、ほとんど相関関係が見られませんでした。P.59

大企業だからやりがいのある仕事ができる、というのはあまり信じない方が良いということかね。大企業の方が給料が良いとか、仕事で関わる人が多いので面白いとか、大企業の方がゆくゆくの転職で有利という面はあるのだろうけど。

なので、地方の中小企業でも仕事として満足できるところはあるのかもしれない。有効求人倍率も大企業と中小企業では大きな開きがあるのだし、中小企業で楽しそうな仕事ができそうだと思えれば、それはとても運が良いのかもしれない。

 

今の社会で厄介なのは、一度社会人になってしまうと、このような格差を解消するのが難しい点にあると思っている。最初の就職で失敗すると這い上がれない。だから必死になるのだろうけど、実は入った大学によって勝負の多くは決まっていたりもする。遡っていくと、教育機会とコストの問題になるんだよね。そういう意味で、高校の学費無償は賛成。

とにかく、子供を持つ親も、就職を考える学生も、この本を読んで日本社会の現実は知っておいた方が良いと思う。大学によって就職のハードルは大きく違うし、有利な大学に入ろうと思うと高校から進学校を選択する方が確率は高くなる。地方で暮らしていると、高校ぐらいまでは地元の進学校に行って、そこから上京して大企業に就職というパターンが望ましくなるのかな。地方は高学歴になる人材をどんどん都市部に吸収されているけど、それはそれで個人レベルでは合理的な選択だったりする。地方はそうやって疲弊していくんだろうか。これまでの公共事業による還元はもう意味がないし。優秀な人材が地元にとどまる仕組みがもっと必要な気がしてるんだけど。