時代の変化を捉えた本というのはたくさん出ていますが、この一冊もそれに分類されます。新しいエリート像がどのようなものかを述べた本です。
この本のタイトルと表紙から、てっきりシリコンバレー的なだれかの本で、それを翻訳されたものだと思ってましたが、著者は日本歴が長く在住で、日本向けに書かれた本なのですね。
著者の経歴はこのようになっています。
ポーランド生まれ。ドイツ、オランダ、アメリカで暮らした後、2000年 に来日。2002年よりベルリッツにてグローバルビジネスソリューション 部門アジアパシフィック責任者を経て、2006年よりモルガン・スタン レーにてラーニング&ディベロップメントヴァイスプレジデント、2011 年よりグーグルにて、アジアパシフィックでのピープルディベロップメ ト、さらに2014年からは、グローバルでのラーニング・ストラテジーに 携わり、人材育成と組織開発、リーダーシップ開発などの分野で活躍。現在は、独立して2社を経営。日本在住7年。ダイビングと合気道を行う。
モルガン・スタンレー→Googleという華麗な経歴の中で、旧エリートの代表とも言えそうなモルガン・スタンレーと、新エリートである Googleの両方の経験から、新しいトレンドが整理されていました。
これからのエリートは何が求められるか
これまでのエリートというと、高学歴で大企業や官僚に勤める人たちを指しているイメージでした。
これは、大きな組織で従順な形で集団の力を発揮しやすい人材が求められていたと考えることができます。しかし、企業の大小に関わらず、違う力を求められているのが現代です。
これからの働き方のステージは、クリエイティブエコノミーです。そして この時代に生き残る人材や企業は、ゼロから新しい価値を生み出す人々であ り、彼らに求められるのは、情熱、創造性、率先です。 デジタル化によって民主化が進むと、個人の軸をちゃんと持たないと大変 です。平凡な人は会社保障と社会保障を求めていますが、これからは個人の 力で動いていくことが必要です。
このブログでも散々書いています。今は個人の力が増している時代なのです。
具体的に求められる人材像として、本書では次の4つが挙げられています。
「大きな問題を解決できる人」 「コミュニティを作れる人」 「社会貢献をしている人」 「フォロワーが多い人」
自己実現できる自由をどう獲得するか
各個人のエネルギーは、内部の自己実現の欲求から生まれるというのは、最近いろんなところで聞く話です。やりたいことをやろう、と。
しかし、多くの人は経済的な理由で働いている部分はあるでしょう。このジレンマをどう捉えれば良いでしょうか。これも本書から引用してみます。
では、富裕層=成功と言っていいのか。
僕の認識は違います。今の時代の成功とは、持続的に成長していることに 加えて、「選択肢があるかどうか」です。
今のところ選択肢の多さは、時間とお金に比例しています。お金を豊富に持って、そのお金で時間を作る。結果として、選択肢を増やすことができ、やりたいことに注力できます。 「でも、この先ずっとこの状態が続くとは思えない。なぜかというと、時間とお金の必要度が大きく変わり始めているからです。新しい事業を起こすとき、ちゃんとしたビジョンやパッションがあれば、仲間も技術も、資源すら集まってくることが起きています。
やりたいことがあり、それに社会的な意義があると思ってもらえるなら、情報・スキル・資金・人脈等どんなリソースでも瞬時に調達することができてしまう時代って改めて凄いな。リソースは世界中に有り余っていて、逆にやりたい事や意義や覚悟のようなことのほうが希少になってきてる不思議。
— Katsuaki Sato (佐藤 航陽)🌎 (@ka2aki86) June 4, 2018
誰もが経済的に完全に自由になる時代はもう少し先かもしれませんが、クラウドファンディングのように、ビジョンや目的が明確になれば、資源は集めやすくなっていると思います。
資源よりも意義やビジョンの方が貴重になっている、というのは重要な示唆ですね。
本書では、社会に様々な自分のやりがいを見出し、世の中に新しい仕事や新しい価値を生み出していく事例が多く登場します。
これからは企業の中だけではなく、社会全体を捉えて新しい価値を見出していける人が、まさにニューエリートだということでしょう。エリート像も明確に変わってきてますね。