百年続く企業の条件 老舗は変化を恐れない


長く生き残っている企業というのは、戦争や災害、景気の好不況、産業発展による事業構造の変化なども乗り越えてきたわけで、存在として非常に興味深い。老舗というのがどういう要素を持っているのか、なぜ生き残っているのか、老舗でもつぶれるというのはどういうときか。

取り上げる老舗企業というのは、当然ながら事業構造の変化に「比較的」影響を受けにくい清酒製造や菓子小売りなどが多いのはどうしようもないが、それでも学ぶ点は多いはずだ。

 

会社を続けていくためには事業承継が最も大きな問題

ゴーイングコンサーンを実現するためには、事業承継が重要になる。老舗といっても中小企業だ。経営者候補はそんな簡単に見つからないし、どこの企業も20〜30年で経営者交代の時期を迎える。そのたびに、経営者交代リスクにさらされることになる。

そして、出身大学別に社長数をみると、老舗企業では慶應義塾大学がトップとなった。慶應義塾大学出身の社長は八八〇名で、二位の日本大学の七三四名を大きく引き離した。出身大学が判明した社長のうち九・六%が慶應義塾大学出身、ほぼ一〇人に一人だ。

なぜ出身大学のレベルが高めなのか、最初はすぐには理解できなかったが、やはり教育レベルを高くすることで経営者としての素質を少しでも高めようということと、人脈形成なのだろう。事業承継というのはとてもリスクが高いため、自分の子どもにこういう教育を施すことで、ずいぶん前から備えておくものなのだ。

 

財務上の特徴が面白い

長く続いている企業は、全体と比べると売上高営業利益率より売上高経常利益率が高い傾向にあるのだそうだ。それは、本業以外からの収益が多いことを示している。

歴史があるから成せるわざではあるのだけれど、本業が厳しくなっても本業以外からの収益源を設けておくことで、すぐに倒れるようなリスクを小さくしているのだと思われる。そういうバッファを設けるような財務構成は、特徴として面白い。ただ、これは資産効率が悪くなるリスクもあるので、内容や程度については十分に気をつける必要がある。実際、統計では老舗企業は資産効率が低い傾向にあるようだ。

 

老舗を再生する企業の存在

長く事業を続けていくためには、乗り越えなければならない壁はたくさんあるし、変化していく必要がある。本書の中で知った、JFLAという企業は、老舗企業が変化をしていく一つのスキームとして面白いなと思った。

JFLA - ジャパン・フード&リカー・アライアンス

日本酒の蔵元再生に関しては、JFLAは二〇〇七年一〇月に「伝統蔵」という中間持ち株会社を設立した。現在は、その傘下に全国各地の八社(二〇〇九年八月現在)の清酒蔵元を擁して、原料の調達や販売体制の整備が進められている。

これだけ読むと共同調達や販路の共有なのだが、ホームページをみるともっとコンセプトは広くて、食品メーカーや卸会社など、飲食に関する企業を束ね、事業提携やM&Aを行ったり、マーケティングや研究活動を行っている。共同調達の枠を超えているが、ホールディングカンパニーよりは各企業に主体性が残っているようにみえる。こういう形もあるんだな。

 

閉鎖的なコミュニティで信頼を重要視する

長く続いていくということは、ゲーム理論でいえば「繰り返しゲーム」になるので、自分の利益を最大化しようとしても問題が生じる場合がある。そういう場合は、おのずと双方が信用を重視する方が全体として利益を最大化することができる。

本書で出てくる企業も地域の老舗企業であるので、事業範囲はそれほど広くないし、おのずとコミュニティは狭くなる。そういう中では、信用を築き上げることがゴーイングコンサーンを行う上では最重要になる。

また、どうやら長く続く中小企業には、経営者一族以外に、親子代々入社して幹部社員になるケースもあるようだ。これも、信用を重視する企業スタンスに影響していると思う。

親子代々が入社する理由を、「いつの時代でも、会社が社員を大事にしてきたからだと思います。会社から大事にされていなかったら、家で会社の悪口を言うこともあるのではないでしょうか。父親と同じ会社に入りたい、自分の子供をこの会社に入れてもいいと感じてもらえるのは、社員本人たちが大事にされているという自覚を持っているからだと思います」と林社長は語る。会社から大事にされる親の背中を見てきた子供は、その姿を通して福田金属箔粉工業を見つめたうえで、安心して入社するのだろう。

 

企業を長く続けていくためには、成長する企業とはまた違うものが求められる。

iPhoneアプリ「Mailbox」は本当にメールゼロにできる

Mailbox – Put Email In Its Place

いろいろ噂になっていて、流行りモノみたさで登録したけど、使ってみたら非常に良かった。これまで使っていたGmailアプリをすっかり使わなくなってしまった。

まあ、使い方は別のところで検索して調べてください。なんでこのアプリを使うと受信トレイがゼロになるのか、っていう話と、今後のMailboxの可能性を考えようと思う。

本当にメールを根絶できる仕組み

画期的なのは、メールを「先送り」できることだと思う。タスクと同じで、今は読んでも仕方ないもの、後で思い出したいものがあるので、そういうものを先送りしてくれる。そして、また後でメールボックスに登場するのだ。終わったらアーカイブしてくことも必要だけど、未来にストックする仕組みはこれまでなかった。これで処理していくと、どんどんメールの数が減っていく。

そして、ちょっと使ってみたら、本当に受信トレイがゼロになった。これは気持ち良いし、一度ゼロにすれば、それを維持しようと頑張れる気になれる。使い始めて、受信トレイがゼロになってからは、基本的にずっとゼロだ。

あとは、使っていて気持ち良いUI。メールを処理するときの操作性。この辺りはどんどんユーザーの要求も上がってきているから、必須条件になっている気がする。

ユーザーの使い方を再発見する

ヘビーユーズしているiPhoneアプリが他にもいくつかあって、同じような特徴があるのが、「Sunrise」っていうカレンダーと、「Any.Do」だと思うのです。どちらもUIやデザインは優れているっていう点と、カレンダーやタスクリストという普遍的でありきたりと思われるものを対象にしている。

Gmailがアーカイブやラベルという考え方を持ちだしたときも「画期的だ!」って思ったけど、どうやって使うかによってUIの部分はまだまだイノベーションがあるんだなって思う。ただ、それと同時にとっても平等な競争社会だから、一度勝つだけじゃなくて勝ち続けていくことの方が大変だと思うけどね。

だから、その先はいかに自社固有の部分にユーザーを引き込んでいくかが重要になる。実際、Mailboxの先送りなどのラベルは、Gmailには反映されなくなっている。技術的なハードルなのかは知らないけど、Mailbox特有の部分は囲った方が良いと思うね。

Mailboxのマーケティング

アプリとかIT系サービスであれば、プロモーション動画を作るとか普通になってきてるなあ。今回Mailboxが注目されたのは、製品発表前にプロモーション動画が注目されたこと、リリースされた後も登録順に迎え入れるという「待ち行列」を作ったことだと思う。

特に後半の待ち行列に関しては、アプリの表現も秀逸で、自分の前に何人、自分の後に何人いるかが視覚的にわかるようにされていて、アプリを開くたびにその数字が変わるのが面白かった。これは、期待を高める効果と、待っている間のストレスを緩和するという意味で、有益なアプローチだと思う。

そして今後の問題は、その先どうやってマネタイズしていくのかとか、もっとユーザーを長くヘビーユーザーにしていくためのキラーコンテンツは何か、ということだと思う。

今後のキラーコンテンツは何か

Mailboxの今後は、マネタイズとかそういう問題というより、どうやってユーザーを引き止め続けるかだろうと思う。GmailをラッピングしてUI部分を革新したのは良いのだけど、ユーザーのスイッチングコストはまだまだ低い。自前でコンテンツを持っているEvernoteやDropboxに比べると、ね。

でも、今後は別のメールサービスへの対応もするつもりみたいだし、勝手な想定ではメールとタスク管理サービスをUIで統合していく形を目指しているんじゃないか、と。イメージ的には、GmailとRemember the MilkがスムーズにきれいなUIで統合されていく、みたいな感じかな。Web版などにも拡大していくのかな。

ちなみに、キャリアからのメールなど、一部文字化けする。最近はキャリアメールなんてほとんど来なくなったから、あまり不満はないけど。

個人によって使い方は違うと思うけど、僕は良いと思うよ。Mailbox。

Mailbox 1.6.2(無料)
カテゴリ: 仕事効率化, ユーティリティ
販売元: Orchestra, Inc. – Orchestra, Inc.(サイズ: 12.7 MB)
全てのバージョンの評価: (3,731件の評価)
iPhone/iPadの両方に対応

プリント・オン・デマンドの今後

Kindleをここ最近絶賛しているけど、やはり紙の媒体だって捨てがたい。今日はそういう話を書こうと思う。Kindleというのは、「電子データを読む権利」を購入しているんだけど、個人とデータの紐付けがかっちりしてしまって、気軽に売却や貸し借りがしづらい。

やはり紙の本は紙の本で魅力があるし、電子書籍に絶滅させられるなんてことはないと思う。ただ、新しい流れとして、「電子書籍で買って、あとで紙の本も欲しくなる」ということがあるんじゃないかと思った。やっぱり直接触れられるものの魅力は大きい。

そこで考えられるのは、プリント・オン・デマンド。最小1冊からでも注文を受け、印刷・製本を行う。日本でも既に事業化が行われていて、アマゾンやパブー、三省堂などが展開している。

Amazon.co.jp: プリント・オン・デマンド(POD)
50ページで700円ぐらい。

 

パブーのオンデマンド印刷 | ブクログのパブー
52ページ白黒1冊で1800円ぐらい。

 

印刷屋が三省堂書店オンデマンドを試してみた « マガジン航[kɔː]

 

これを見ると、今はどちらかというと絶版物を印刷することがメインユーズのような気がする。これまでの自費出版に比べれば、確実に費用面でハードルが低くなっているんだろう。ただ、電子書籍を購入してから紙の本も欲しくなった場合を考えると、まだ値段が高い。せめて紙の値段と同じか、やや安いぐらいでないとニーズを満たすことは難しいと思う。

フォトブックも、デジタル化された写真を手頃な金額で製本するサービスとして、ニーズを掘り起こしている。TOLOTを利用してみたけど、500円とは思えない品質でびっくりした。こういう動きを考えると、電子書籍からオンデマンドで紙媒体を入手するとか、日経新聞と同じように紙と電子のセット販売のパターンが、今後増えてくると思うけどな。

「秋元康の企画脳」で学ぶ仕事術

著者が「秋元康」と聞くだけで、何となく身構える感じが漂うが、読んでみるととてもバランスが良い内容で、良い意味で裏切られた。

企画というとどんなビジネスパーソンにも使えるスキルのように思えないかもしれないが、いろんなことを提案し、主体的に創造していく力だと思えば、どんな場面であろうと求められる。そして、それに必要な普遍的な考え方を示してくれるのがこの本だ。

嫌われてでも、エッジを持て

僕はよく講演会でも話すのだが、人の眼というものは、たとえば走る電車の窓から見える一瞬の風景と同じようなものである。  走っている電車の窓から、裸の女性が見えたとしよう。気がついた人たちは、みんな「ワーッ」と驚きの歓声をあげて見るはずだ。  だが、次の駅で降りてまたそこへ戻って見ようという人はいい。わざわざタクシーを飛ばして見に行こうという人もいないだろう。  どんなに衝撃的な光景であっても、結局は、その程度のものなのだ。

これは、ネット社会になった今は特にそうなのかもしれない。誰かの何かをひとつひとつ気にしていると、自分の精神がもたなくなる。それはネットなどのマスに対してだけではない。

嫌われてもいいのだ。嫌われるということは、個性が何らかの形で放出されているということである。  その個性を嫌いな人がいるということは、反対に好きだと言ってくれる人が必ずいるということである。  恋愛も仕事も、どれだけ自分というものを持ちながら、嫌われる勇気を持っているかということだ。  そこから、人間関係も恋愛も、新しい扉が開くのである。

上司に対しても顧客に対しても、好かれようと思う気持ちが前面に出過ぎると、平均的でありきたりなアイデアしか出なくなる。相手の期待を超えようと思うと、時に相手が反射的に嫌悪感を示す可能性があるものも出す必要がある。わかっていても、なかなか人に嫌われるのは辛い。ただ、それを知っていれば、思い切った発想や行動に結び付けられることもあるだろう。

 

情報を発見し、取捨選択し、構成する

マスメディアを通じて流される情報や、インターネットで公開されている情報よりも、みんなが情報だと思っていないことに気づくことのほうが、じつは情報としての価値は高いということがある。他の人は情報だと思わずに通り過ごしたり、見過ごしたりしていることを、 「そうなのか」と気づくこと。それが本当の情報なのだ。

本を読んでいると、情報に対する捉え方がいろんな面から書かれている。普段の生活の中から、どうやって気づきを得ていくか。その気づきを一歩深めて、自分の情報に変換していくか。そうやって日々蓄積した情報を、どうやって取捨選択していくか。

こうやって行っている日々の蓄積が、新しい企画に結びついていく。逆にいえば、土壇場で急に出てくるものではなくて、こうやって日々蓄積していくことが、良い発想や研ぎ澄まされたアイデアに結実するのだ。

 

さらに、勇気を持って情報を捨てることも重要だという。これは、自分という個性を研ぎ澄ます。

となると、人間は大人になればなるほど、 「何を捨てていくか」 「何をしなくていいか」  それを考え実行するのが、テーマになってくる。  それができない人間が、個性のない「幕の内弁当人間」になってしまうし、「帯に短し、たすきに長し」というタイプになってしまうのである。  あれもやりたい、これもできるではなく、そのなかで、 「自分は何を捨てていくか」  ということを考えるべきなのだ。

どうやって情報を捨てていくのか、真剣に考えないといけないんじゃないかと思ってしまった。

 

 

あとは、この一文も好きです。本当にビジネスには正解はないと思うし、正解は作るものだと日々思って仕事してます。

どんな発想にも企画にも、正解はない。  したがって、それをいかに「正解」に見せるかどうかが、プレゼンが成功するかしないかの境界線と言えるだろう。

というわけで、仕事に対して新しい風を取り入れたい人は読んでみると良い。

 

参考:
秋元康さんが語るマーケティングと総選挙(Think with google) – NAVER まとめ

一層KindleをヘビーユーズするChrome拡張機能

もう、Kindle本にいくら使ったのだろう。Kindleは快適になるかもなーぐらいの軽い気持ちで使い始めたけど、予想以上すぎてびっくりした。ってことを以前書いた。
Kindleが変える読書生活が楽しい | Synapse Diary

 

Kindleは本当に素晴らしいサービスモデルになっている。デバイスとコンテンツを切り離しコンテンツに流動性を持たせるとともに、同期などの一元管理を行うことで、顧客に快適な読書サービスを提供している。Kindleは単に書籍を電子版にしただけでもなければ、電子書籍端末を販売しているわけでもない。電子書籍というコンテンツを快適に提供するためのエコシステム全体を提供しているのだ。

と、Kindleを褒めちぎったところで、最近みつけたChrome拡張機能を紹介しようと思う。これらを使うことで、ますますKindleへの依存度が増している。

 

WebページをKindleで読む

パーソナルドキュメントのサービスも提供されていて、最近はこれを使い始めたら、一層Kindleを利用する機会が増えてしまった。WebページとかPDFでも、落ち着いた状況で読みたいときはKindleのパーソナルドキュメントに送っておくのだ。そうすると、あとでゆっくり読める。特に英語。英和辞書が使いやすいので。

Amazon公式の「Send To Kindle」がまだ日本アカウントに対応していないので、「Push to Kindle」のChrome拡張機能を使っている。Kindleに送りたいページでボタンを押せば良いだけなので簡単。

さちテク: みつテク:Web記事を本にしてKindleで持ち出そう!

さちテク: みつテク:Web記事を本にしてKindleで持ち出そう!

ほしい物リストからKindle版を表示する

Amazonのほしい物リストをよく使うのだけれど、今のAmazonのほしい物リストでは、紙媒体の本を登録してもそれがKindleに対応しているかはリストから直接はわからない。

しかし、この拡張機能を使えば、リストから一目でKindle版があるかどうかがわかるようになるので、ストレスが劇的に小さくなった。これで過去に登録した本がKindle化されてもすぐにチェックすることができる。

人を幸せにするサービスを提供する capybala.com-カピバラドットコム- » 【Chrome拡張機能】「Find eBook Edition」

人を幸せにするサービスを提供する capybala.com-カピバラドットコム- » 【Chrome拡張機能】「Find eBook Edition」

恐らく、今は電子書籍が増えている過渡期なので、こういう機能が必要になるのだろう。今後、出版と同時に電子書籍も販売されることが普通になったり、Amazonがほしい物リストの改善を行えば、不要になると思われる。

 

こんな感じでKindleにどんどんはまってしまう自分が怖い。とりあえず、本を読む時間が足りないと思っている人はKindle試してみればいいのにな、と思う。

 

オープンデータが普及するためには何が必要か

政府や地方公共団体におけるオープンデータの動きが活発化している。知事が集まりオープンデータの協議会を開催したり、全国でもオープンデータをテーマにしたハッカソンなどが開催されている。

オープンデータは、政府が持っている統計情報やその他行政に関する情報を公開することで、民間に広く利用してもらうことを指しており、オバマ政権が成立してオープンガバメントが打ち出されたあたりから、世界としても広く注目されている。政府が持っている「情報」という資産を、利用しやすい形で提供し、広く社会に還元できる可能性があるということで、あまりお金がかからず行える取り組み、という意味でも注目されている気がする。

 

さて、オープンデータの取り組みという点では、アメリカはやはり進んでおり、事例がたくさん生まれている。今回はこの記事の内容を参考に、今後の日本で必要なオープンデータの方向性を考えてみる。
Open Data Success Requires Streamlining and Standardization

 

オープンデータの標準を作る

サンフランシスコでは、レストランの衛生状況などを評価する「LIVES」という仕組みがある。これは、行政が持っている衛生検査などの情報を公開しているのだが、それを地域のレストラン情報を提供する「Yelp」と連携させている。

Yelp

 

このスコアをクリックすると、詳細な内容が表示される。

Yelp

 

実際これは、Health Dataの内容やフォーマットを定義する取り組みを行っている。

Health Data

 

こういう枠組みが出来上がることで、後から参画する人もわかりやすく、取り組みが広がりやすい。

オープンデータの欠点は、データは公開するのだが利用目的はそれぞれ使う人に任せられており、ある意味カオスな状況が生まれやすいということだ。なので、こういう「LIVES」などの目的が定まった時点で、早めに標準を定める流れが必要になるだろう。それは、新興企業が作ってデファクトスタンダードにしても良いだろうし、業界関係者が協議して標準を定める動きの方が適切なのかもしれない。

 

ハッカソンなどで、地域のコミュニティを育てる

オープンデータの最初のハードルは、いわゆる「ダーウィンの海」と言われるような、アイデアは豊富にあるが実用に耐えうるか、という点だ。それを解消するひとつの手段として、ハッカソンがよく行われている。ハッカソンは、24時間とか限定された時間でプログラムを作成し、アプリを公開することを目的としたイベントで、アイデアを集め、実用化につなげるきっかけを期待される。

データセットは、使われなければ意味がない。しかし、公開したからといってすぐに何かに利用されるかといえば、なかなか難しい。日本で進んでいると言われている鯖江市であっても、ほとんどが特定開発者のアプリであることが現状だ。
福井県鯖江市>アプリケーション(オープンデータによる)

ただ、アプリコンテストなどを開催することで、間口を広げ、コミュニティを育てる取り組みを行っている。
福井県鯖江市>WEBアプリコンテスト 結果

つまり、忍耐強くコミュニティを育てる発想が必要になる。何回もハッカソンなどのイベントを開催し、公共データを利用し、ビジネスインパクトを与えるようなアイデアを生み出し、かつ関係者間で意見を交わせるようなコミュニティを形成していくことに注力していくべきだろう。これを誰が行うのか、という点は今後の課題かもしれない。

 

そもそも大都市圏以外は不利なのではないか

BtoCのWebサービスは、サーバやアプリケーションを投資し、多くの人に利用してもらうことで収益化する「資本集約型」を目指す場合が多い。つまり、一定規模のパイが必要になる。ここでひとつの疑問が生じる。オープンデータでアプリケーションやサービスを作って、どの程度の市場が見込めるのか、ということだ。各ユーザーから課金するにしても広告モデルにしても、そう簡単に収益化が見込めるわけではない。

利用する人が多くないと、ペイすることが難しい。都市部の方が人口が多いという点では、オープンデータが普及しやすい環境であると思う。アメリカでも事例が多いのはニューヨークやサンフランシスコなど大都市だ。つまり、データはおそらく自治体単位で公開されていくんだろうけど、その単位でビジネスモデルを考えても、マネタイズに苦労するんじゃないか、ということだ。

オープンデータのビジネスモデルの考え方としては、この記事にあるようなパターンになるだろう。こういう軸をベースにして、広がりを持たせるモデルを考えることが重要になるだろう。
Open data economy: Eight business models for open data and insight from Deloitte UK – O’Reilly Radar

 

 

それ以外にも、たくさんハードルがある。一方で、海外にはオープンデータを利用した新しいビジネスモデルの成功事例も登場している。それだけ期待も大きい。今後もっと本格化したときに、日本社会はどういう変化が訪れるだろう。

Yahooがテレワークをやめることについて

Yahooがテレワークを廃止するらしい。顔を合わせて、コミュニケーションを増やすことで、新しいアイデアや緊密な連携を生み出すことが目的だそうだ。一方で、テレワークは働き方の多様性を認める面から個人の満足度を上げ、妨害が少ないことから生産性が上がるという研究がある。

Yahoo!が在宅勤務者に出社勤務にするかもしくは退職するよう通達 | IRORIO(イロリオ) – 海外ニュース・国内ニュースで井戸端会議

Yahoo!が在宅勤務者に出社勤務にするかもしくは退職するよう通達 | IRORIO(イロリオ) – 海外ニュース・国内ニュースで井戸端会議

さらに、それを批判する人も現れたりして、このYahooの決定は、それなりに議論を生んでいる。

【続報】Yahoo!の在宅勤務者への通達に対し英実業家がTwitterで反撃 | IRORIO(イロリオ) – 海外ニュース・国内ニュースで井戸端会議

【続報】Yahoo!の在宅勤務者への通達に対し英実業家がTwitterで反撃 | IRORIO(イロリオ) – 海外ニュース・国内ニュースで井戸端会議

 

HBR.orgのブログ記事でも、賛否両方登場している。

New Research: What Yahoo Should Know About Good Managers and Remote Workers – E. Glenn Dutcher – Harvard Business Review
Marissa Mayer Is No Fool – Michael Schrage – Harvard Business Review

 

テレワーカーの生産性は高いのだし、良いマネージャーがそれらを指揮・管理すれば良いのだという考えと、やはり対面のコミュニケーションは効果的だろう、という両面から語られている。CEOの前職であるGoogleのバックグラウンドが影響しているのでは、とか。

日本でもヤフーニュースになったりしているし、それなりに興味深いネタだ。ちなみに、この記事によると、Yahooの社員は11,500人いて、テレワークはそのうち数百人程度らしい。組織の1〜5%程度がテレワークという感じだろうか。
Why Won’t Yahoo! Let Employees Work From Home? – Businessweek

 

さて、テレワークに対してどう向き合うべきなのだろうか。

雇用する側から考える

まず、企業側からみた場合のスピードとコラボレーションの問題を書こうと思う。 テレワークは個人作業の範囲でみれば、生産性は高い可能性があると思う。それは、僕は確認していないが研究結果があるのだろうし、自分を律して集中することで生産性は高まる気がする。しかし、これには前提が必要になる。具体的には、「協業」の部分が少ないことと、テレワーク分のタスクをきっちり割り当てることだ。

協業を前提とした進め方の場合、テレワークだとコミュニケーションのやり方や頻度によって双方非効率であったりストレスを感じる可能性がある。IT技術によっていろいろ効率的なコミュニケーション方法が採れるようにはなっているが、やはり対面でのコミュニケーションと比べてしまうと、非効率な面を感じる人が多いのかもしれない。すると、スピードの点でデメリットを感じると判断するのかもしれない。

もう一つは、テレワークを実現するためには、分業するためにタスクを明確に分解して与える、という作業が必要になること。そのためには、管理者が予め計画的に分配したり、はじめから定型作業が多い場合が考えられる。不確定要素が多い業務、クリエティビティを重視する業務、スピードを求められる業務などの特徴があると、テレワークという存在は邪魔な存在と思われるのかもしれない。

 

テレワークに対する過剰な期待

テレワークが注目されてきたのは、マクロ的には雇用問題を解消できるかもしれない、企業的には結婚や引越しなどのイベントで去っていく従業員を引き止められることとテレワークの生産性が高いこと、従業員は柔軟に働く手段を持てること、という三方が良いことであり、IT技術の進歩によってテクニカルな問題も解消されつつある、ということだった。

重要なのは、賛成するのも反対するのもどういう立場から見ているのか、ということで、いくつか記事を読んだ感じだと、批判するのはマクロ的というか社会的な観点から見てる論調が多そうだ。社会的には雇用問題や従業員の自由獲得などテレワークは良い方法なのに、それを否定するなんて、という感じ。あとは、テレワークを現実的にしてきたのがIT技術であっただけに、テクノロジー企業であるYahooがそれを排除するのがどうなのか、という感情というか観点もあるようだ。

 

 

僕が思うのは、テレワークは確かに企業・従業員双方にとってメリットがある手段ではあるものの、それも働き方の一形態であるにすぎないし、ビジネスモデルや経営環境によって適・不適はあるのではないかということだ。そして、時代に逆行しているみたいな批判はあるけど、企業として決断することはあくまで営利でありゴーイング・コンサーンなわけだから、テレワークを否定することが企業の否定にはつながらないと考える。Yahooが今後どう変わっていくのかは注目だろう。

宇宙に外側はあるか

最近、映画の宇宙兄弟をDVDで観たこともあって、自分の中での宇宙熱が高まってこの本を読んだ。

内容自体は、ものすごく新しい何かがあるわけではないけれど、宇宙論の進歩と現在主に抱えている謎が整理されている一冊だと思う。

これを読んでいると、自分がいる世界が何なのかよくわからなくなるし、直感的には理解しづらいことのオンパレードだ。ただ、世界がどういうもので構成され、その根源は何なのか、という壮大な謎に人類は未だ挑戦し続けていることがよくわかる。

 

それにしても、世界には未知なことがまだまだたくさんあり、調べればまた新しい謎にぶつかる。それをこの本では「球」として表現していたのが印象的だった。自分たちが知っていることは「球」の中であり、調べていることがその外縁、そしてその先には未知なことがたくさんあるのだ。そして、知れば知るほど外縁も大きくなり、謎が多くなっていく。ただ振り返ってみると、自分たちが知っている範囲は広がっているのだ。

 

いろいろ頭をリフレッシュしたい場合には、こういう本を読むと良いよ。宇宙や自分の存在が曖昧な感じがして、日頃の悩みなどがどうでも良くなる。

あと、これを読む前に、「エレガントな宇宙」の動画を見た方が理解が深まると思う。

コンパクトシティを実現するためには何が必要か

人口減少時代で町並みはどう変わっていくか、という話。これまでは日本はどんどん土地を拡大していて、郊外にショッピングセンターができて、商店街が機能を失っている、というのは良く聞くことで、それに対するカウンターがコンパクトシティという考え方。

簡単にいえば、人が活動する場所を狭い場所に集積させて、利便性や効率性を高めようということ。間延びした公共交通機関や公共インフラのメンテナンス費用も低減できるし、徒歩などの近い距離圏で生活を済ませることができる。

 

北海道伊達市の例

北海道の伊達市は、コンパクトシティを実現した快適な居住環境が実現されており、移住が多いそうだ。その理由が市のホームページに書いてある。

(伊達市ホームページ あなたの憧れを実現するまち 伊達に住もうより)

 

小冊子も作られているし、これほどマーケティングが明確な都市もそんなに多くないんじゃないかな。実際、人口は15年ぐらいで徐々に増加している。

(伊達市ホームページ 人口の推移(平成7年~)より作成)

 

コンパクトシティを実現するためには何が必要か

伊達市の場合は、コンパクトシティを実現するにあたって、病院を街の中心に移動させている。考え方としては、「まちなか集積医療」というのがあって、詳細な以下で読むことができる。

www.nira.or.jp/pdf/0907report.pdf

 

病院は、人が距離を理由に選ぶ要因が強く、人が集まりやすい。また、病院はサービス業であり、集積することで、情報や人の移動が密になり、分業も促進されるため、サービス品質も効率も向上することが期待される。人が集積することで、都市全体の効率が向上することは、TEDの動画でも紹介されている。

都市および組織の意外な数学的法則 | Synapse Diary

 

また、この「とれいん工房の汽車旅12ヶ月」というブログでは、コンパクトシティという発想は悪くないものの、街の中心を成すためにはたくさんの「機能」を中心地へ戻す必要がある、ということを述べている。

「市役所や警察署、病院、中学や高校などの公共施設も、旧来の市街地にあった施設が手狭になったこともあり、郊外への移転が次々と行われてきた」ことで、街の中心性は失われた。中心市街地活性化もコンパクトシティも理屈としては分からないわけではないが、現実問題、都市の”核”としての機能が失われたところに人々が帰ってくる保証はない。そこまで思い入れのある人は少ない。魅力あるコンパクトシティにするには、巨額の財政出動が必要だ。それを支持する市民はあまり多くないだろう。

“中心”が存在しない日本の都市にコンパクトシティは似合わない。 – とれいん工房の汽車旅12ヵ月

 

これは、「商店街を活性化させよう」とか「郊外のショッピングセンターを規制しよう」というのではなく、人が住む上で必要なたくさんの機能、特に公共機関などの社会インフラを街の中心部に設けることが、改めて都市部に人を寄せることになるんじゃないかと思う。公共機関もそうだし、既に郊外に広がってしまった建物や人々をどうするかは、コンパクトシティを考える上ではとても重要な課題になるだろう。

採用基準 - 地頭より論理的思考力より大切なもの

タイトルから得られるイメージとは異なって、内容の多くはリーダーシップの本。捉え方がとても構造的で、新しい観点をたくさんいただいた。感心した考え方を2つ書いておこうと思う。

 

思考力は「思考スキル・思考意欲・思考体力」で構成される

最初の外資コンサルの採用に対するイメージについて、もやっとしていた部分が晴れた気がした。

なによりも面接担当者が知りたいのは、「その候補者がどれほど考えることが好きか」、そして「どんな考え方をする人なのか」という点です。考えることが好きな人なら、どんな課題についても熱心に考えようとするでしょう。「考えることが楽しくて楽しくて」という人でないと、毎日何時間も考える仕事に就くのは不可能です。

考える力を、思考スキル・思考意欲・思考体力に分けていたのも、目からウロコだった。巷では思考スキルだけがフォーカスされることがあるが、どちらかというと重要なのは思考意欲や思考体力の方だ、と。確かにそう思う。思考スキルは身に付けることが難しくないけど、思考意欲や思考体力は、パーソナリティに依存する部分が大きいからだろう。

これらは確かにバランス良く備える必要があるが、これまで見てきた人を思い出しても、どれかが高かったり低かったりして、それぞれ「思考のクセ」みたいなものがあった。自分はどれもまだまだだと思うけど、今の自分を振り返る良いきっかけをもらった。

 

「リーダーシップ・キャパシティ」という考え方

多様性に溢れ、不確実性が高い今の時代に必要なのは、中央集権的で一部のリーダーが全体を引っ張るのではなく、いろんな場所・いろんなレベルで各自が主体的に考え、行動して、物事を動かしていくことである。そのためには、ひとりの優秀なリーダーのみでなく、各自がリーダーとなる必要がある。そのように、組織や社会をマクロで俯瞰した場合に、必要なリーダーシップを「リーダーシップ・キャパシティ」と表現している。

そして、本書の中ではリーダーの定義、必要な要素についても言及されている。例えば、リーダーシップが必要とされる状況とは、以下のようなことだ。

このように、高い成果目標がチームに課された時、初めてリーダーシップは必要とされます。そして、成果が厳しく求められない状況が多いからこそ、日本ではリーダーシップが問われることが少ないのです。成果が達成されてもされなくてもよいのであれば、あえて摩擦を起こし、他部署の意見に強く反対する必要性は誰にも見つけられないでしょう。

日本社会が今後活性化していくためには、リーダーシップを持つ人を育て、ひとりでも多く社会に輩出することだ、という主張には、心から賛同する。

 

それ以外にも、京都大学の採用が難しくなっている現状や、アメリカのMBAが日本人留学生を減らしインド人などの留学生を増やしている理由などが語られており、グローバルレベルで見た場合の人材事情が知ることができたので、自分がどう働いていくか、どのようなスキルを身につけていくべきか、ということをずっと考えながら読んでいた。


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