イノベーションも重要だけど、模倣することはもっと重要だ

イノベーションが重要だ、と叫ばれ、ビジネススクール界隈でも「Bスクールは時代遅れ。これからはDスクールだ」ということでデザインなどの面が重要視されるようなことが随分前から言われていたりするわけですが、一方で模倣してうまく事業を展開している企業もたくさんいるわけです。でも、イノベーションの方が優れていて、模倣はオリジナリティがない「いけてない企業」という印象がある。

そして、この本ではイノベーションと模倣は対になるものではなく、密接に関係していることを示している。この本を読めば、ちゃんと節度ある模倣は、非常に高度で誇らしいビジネス戦略だと思えてくる。

 

模倣するのは恥ずかしいことじゃない

この本が言いたいのは、要はそういうことだと思う。模倣というのは、安易な行為というわけではなく、たくさんの複雑な技術が内包されており、それらを駆使することで、初めて模倣をして結果が出せるようになる。さらに、イノベーションを起こす企業だけがたくさん稼げるわけじゃない。

しかし、一九四八年から二〇〇一年に生み出されたイノベーションを対象にした大規模な調査から、イノベーターたちは自分が起こしたイノベーションの現在価値の二・二%しか獲得していないことが明らかになっている。残りは模倣者たちが手に入れたものと考えられる。

そして、イノベーションと模倣の境界線は非常に曖昧なものであることが示されている。アップルは革新的な企業というイメージがあるが、実態は本書中にある以下の表現の方が適切だろう。

 

アセンブリーイミテーションの達人であるアップルは、既存の技術を斬新な発想で再結合することに創造性を使っている。

アップルのような幅広いスキルがない会社はどうしたかというと、自社のスキルと外部のパートナーのスキルを結合しようとした。組立て─再結合戦略の変種である。この戦略は、提携することで複雑さが増し、取引コストが膨らむという欠点がある。マイクロソフトとサムスンは、それぞれ他のベンダーと提携して、iTunesに対抗する音楽配信サービスを本格的に開始したが、このアプローチは失敗に終わった。両社は、成功している企業であるがゆえに、提携能力が高くなかったことがその一因である。

つまり、アップルもたくさん模倣しているし、そこにオリジナリティあるデザインやビジネスモデルを構築しているということになる。となると、模倣が悪で、イノベーションが善というような単純な図式ではビジネスは構成されていないことがわかる。

 

「正しく」模倣するには背景や構造を深く捉える必要がある

この本では、模倣の失敗例がたくさん登場する。成功企業を真似すればうまくいく、というわけではないのはみんな知っている。ではどうすれば良いのかといえば、表層的なところだけ捉えるのではなく、成功企業はどういう背景や構造によって、成功者たる結果を残せているのかを考える必要がある。安易に部分的な模倣をすると、自社と相矛盾するような考え方やリソースを取り入れることになり、中途半端な結果だけが残ることも往々にしてある。

本の中ではいろいろうまく模倣するためのアプローチが書かれているが、僕はそれに追加してビジネスモデルキャンバスを提案したい。ビジネスモデルキャンバスは、ビジネスモデルジェネレーションという本で紹介されていて、一度にビジネスモデルを構造的に捉えるという点においては、非常に有用なフレームワークだと思う。

 

話題のビジネスモデル・ジェネレーション(設計書)を徹底解説!

 

 

世の中は情報化によって形式知化されるのも、それが伝達されるのも圧倒的に早くなっている。模倣することはイノベーションにもつながるし、どんどん良いと思うものは取り入れて良いと思うのです。そういう点で、とても勇気をくれる本。

コピーキャット: 模倣者こそがイノベーションを起こす

「起業家」は経営の良いケーススタディ

この本は、経営を考える上での、とても良いケーススタディだと思う。

サイバーエージェント藤田社長の新作。社長の体験談と思って軽い気持ちで読んだし、前半はドットコムバブル後の業界動向やライブドア事件などが時系列に綴られていた。前半だけでも、どうやって外部環境を捉え、組織作りを行っていったのかという点で非情に有意義な内容になっている。しかし、この本の見所は後半にある。赤字を垂れ流していたアメーバ事業をどう成功させていくのか、という信念に基づいた行動の経緯が率直に語られている。

 

企業文化の育成が強い組織を作る。ただし、それを作り変えることは大変なこと。

前半は特に、サイバーエージェントの企業文化が徐々に形成されていく過程がわかる。新卒を獲得して育成していくこと、買収に頼らず新規事業を生み出していくこと、長期雇用を前提とすることなど、今のサイバーエージェントの特徴といえる部分が生み出され、それを強化するような制度が企業にビルトインされていく。これによって、戦略・企業文化・リソースなどが整合性のある状態で事業が拡大していく。こういう点は、経営のセオリーとしていることだが、実際にやるのはとても難しい。

そして、この企業文化が後半の赤字を垂れ流すアメーバ事業との戦いにおいて、非常に大きな障壁にもなったりする。企業文化は、良い部分だけでなく、知らないうちに副産物も生み出す。技術者軽視のカルチャー、広告事業とメディア事業の評価ベクトルの違いなど、事業の特性や企業文化から作られた人の思考や感情は、簡単には変えられない。

ついに、社長は現場に直接乗り込み、細かいところまで指示・命令を出すようになる。これは一見管理者として良くないように感じるし、社長自身もこれまでの「現場に任せる」スタンスから大きく変えている。それでもメディア事業を成功させる、という信念と、現場に任せてもうまくいかなかったことから、そうせざるを得ない状況だったとも言える。結果は、知っての通り大きなアクセス数を獲得して収益化に成功している。

 

企業をスケールアップするために収穫逓増型を目指す。

本の中に何回も登場してくるのが「収穫逓増型」という言葉。特に、企業をスケールアップさせていくには、とても重要な考え方になる。特にネット企業との親和性が高い。簡単にいえば、「仕組み」で儲ける固定資産型のビジネスモデルだ。

最初にサイバーエージェントが始めた広告事業は、人が動かないと収益には結びつきにくい。それでは、事業を大きくするために人をたくさん採用する必要が出てくる。こうなると、事業拡大にも時間がかかる。

労働集約型が悪いというわけではないが、スケールアップするためにはレバレッジがかかるような儲かる仕組み作りが必要になる。
労働集約型から脱却するには | Synapse Diary

 

ちなみに、Facebookは2011年時点で売上2,856億円に対して、社員数3,200人。
Facebook IPO申請で売り上げ、利益、ユーザー数などの実数が判明

サイバーエージェントは、2012年時点で売上高1,411億円に対して、社員数2,527人。
【株式会社サイバーエージェント 新卒採用】|就活・求人情報はリクナビ2014

 

社長は孤独である。

最近はいろんな企業の社長とお話する機会もあるが、みんな揃って言うのは、社長というのはとても孤独、ということだ。この本でも、まさにその点が非常によくわかる。

組織を作り上げていくものの、思う通りに進まない事業と社員。「任せる」という方針を覆して、現場の細かいところまで口だす方針転換。買収劇を繰り広げるライブドアを始めとする企業を横目に、積極的な買収は行わないことを決めたものの、買収を積極的に進める企業が業績を高めていく焦り。上場企業として投資家のプレッシャーを受けながら、無理に黒字化することへの誘惑と失敗。

 

経営者は様々な状況で、利益が相反する状況が訪れ、その度に考え、迷い、判断しなければならない。一方で少し安心するのは、こういう優れた経営者といわれる人であっても、当然のように迷い、確信と自信喪失を繰り返し、行動しているということ。それでも、そういう孤独な戦いは狂気にも似た信念があるからこそ。

 

僕はアメーバのサービスとかあまり使ったことはないけど、この本にある社長の考えは好きです。後半は、読みながら気持ちが昂ぶり、一気に読み終えました。経営者にはおすすめです。

起業家

中小企業でEvernoteを利用するのはアリか

AJEL / Pixabay

Evernoteは本当便利だ。いろんな情報をクリップできるし、自由にメモ書きできるし、同期もするし、検索も簡単だ。Eveernoteに情報を集めることで、ファイルやそれ以外の知識や情報を集中的に管理するツールとして使うことができる。

そして、これをビジネスで組織的に使うことはできるのだろうか、というのが今回のテーマ。

 

Evernote Businessというプラン

ファイルやメモをEvernoteに登録しておくと、内容を認識して簡単にキーワード検索できるようになるし、タグやノートで整理すれば簡単にアプローチできるようになる。また、関連ノート機能で、類似の情報にもリーチしやすくなるので、データの利活用の面で利便性が向上する。

ただし、PDFやOfficeファイルの検索については、プレミアムアカウントやビジネスプランでないと無理。
プレミアムにする10の理由 | Evernote

また、Evernote Businessとしてビジネス向けプランで実現することもできる。従来のEvernoteは個人に紐づいているが、ビジネス用に設定することで情報を組織で共有することができる。当然、個人で使っている場合はうまく共存できるように設計されている。
Evernote Business | Evernote

価格が1ユーザ900円/月になっているので、小規模な事業者であればメリットを創出しやすいんじゃないかと思う。

 

ファイルサーバとの共存も可能

Evernoteには「インポートフォルダ機能」というのが存在し、予め指定したフォルダにファイルが追加された場合に、それを取り込む機能がある。しかも、サブディレクトリも対象に含めることができるし、複数のフォルダを指定することも可能だ。

これはつまり、ファイルサーバ等の通常管理とEvernoteが共存可能、ということだ。

 

セキュリティ面での考慮

ただ、Evernoteのクラウドサービスにデータを預けることになる。Evernote自体でもセキュリティ対策は行っていると思うが、以前セキュリティアタックを受けて、パスワードリセットすることが起きた。それだけ不安がある。

テキスト暗号化機能はあるので、機密情報は個別でロックすることも可能。
機密情報をEvernoteで安全に保管する方法 | セキュリティ・プライバシー – エクストリームオフライン

利便性とセキュリティは一部バーターの関係にもあり、利便性だけを取得する万能な方法はない。なので、セキュリティ面でどこまで考慮しておくかは、個別の事情に合わせて検討する必要があるだろう。個人的には、ホワイトペーパーなどの公開資料や技術情報など、万が一に漏洩した場合にも被害が生じない情報に限定するところから始めても良いのではないかと思う。

 

その他の手段はあるのか

Googleデスクトップがある。Googleデスクトップは既に開発が中止されてしまったけれど、PC端末だけでなくネットワーク上に接続された共有フォルダ等も検索対象に含めることが可能。
ファイルサーバをGoogleデスクトップで検索する方法 | Synapse Diary

 

 

というわけで、Evernoteをビジネスに利用することは可能だし、やはり知識が一元的に集約されて、利用しやすい状態になるのは魅力的。あとは、どう利用するかを自社に合わせて設計する必要があるだろう。

ブログを早く書きたければMarkdownで書こう

FirmBee / Pixabay

この記事を読んで、急にMarkdownに目覚めた。
Markdownで文章を書こう! – ゆーすけべー日記

 

Markdownで書くメリット

Markdownとは何か、ということはいろんな記事に書かれているけれど、簡単に言ってしまうと、HTMLなどのタグで構成されるMarkup言語を簡単なルールにしたもの。例えば、Hタグは「#」で構成されて、H1は#が1個、H2タグは#が2個というようになっている。

Markdownをやってみようと思ったのは、最初から構造的に文章を書く、という行為は自分の頭の整理を加速してくれる気がしたから。そして、Markdownは簡単な表式をいくつか覚えれば、すぐに構造化文書を作成することができるので、構造的に整理されて記憶にも残りやすい点がメリットだと思う。

 

ブログへのアップが速くなる

個人でもビジネスでも、ブログを書く人はそれなりにいるだろうし、こういうのは継続的に書くものなので、日々書く作業を効率化することは非常に重要になってくる。

Markdownでブログ記事を書くと、そのままコピペでアップできるようになるので便利です。上記で作成した文書のHTMLをコピペしても良い。

WordPressの場合は、プラグインを導入すれば、Markdownのまま反映することも可能。
WordPress で Markdown 記法を使う | blog.remora.cx

これまでは、Evernoteでネタを書きためて、ある程度アップできる状態になったら、Wordpress上のエディタでタグとか書き足してた。けど、Markdownで書くとそのままコピペできるから、その点は本当楽。画像とかある場合が課題だなー。

 

エディタは何を使うか

個人的には、WindowsもMacも使うので、両方で便利に使えるような環境にしたいのです。というわけで、両方で便利そうなエディタを探して検討した結果が以下。

Windows用Markdownエディタ

Windows版で採用したのはこれ。軽くて使いやすかった。特に細かい機能は求めていなくて、エディタが軽くてライブプレビューしてくれるのが良かったので。

MarkdownPad – The Markdown Editor for Windows
[scshot url=”http://markdownpad.com/”]

MarkDown#Editorは、もっさり感があったり、エディターの反応が悪かったのでちょっと使うのは難しいかな、と。
窓の杜 – 【REVIEW】リアルタイムプレビュー対応の国産“Markdown”エディター「MarkDown#Editor」

Mac用Markdownエディタ

Mac版は冒頭紹介した記事にかかれていた、MarkdownNote。かと思ったけど、有償なのね。
MarkdownNote

少し探したら、無償でプレビュー機能付きのエディタがあった。ひとまず使うレベルであれば、十分な感じです。

Mou – Markdown editor for web developers, on Mac OS X
[scshot url=”http://mouapp.com/”]

 

本当はEvernoteと直接連携したいけど・・・

これまでEvernoteでブログネタを書き溜めてきたので、本当はEvernoteで直接Markdownを使えるのが良いんだけど、いろいろ探してもあまりしっくり来るものがなかった。一応、以下のようにあるにはある。
決定版!EvernoteにMarkdown記法で構造化されたデザイン文書を作るやつ! – 三等兵

他にも、Chromeの拡張機能で、Webアプリ上で実現する方法もあった。これはこれでちょっと使い勝手が個人的にはしっくりこなかったので却下。
【レビュー】“Gmail”や“Evernote”で“Markdown”記法を利用可能にする「Markdown Here」 – 窓の杜

 

というわけで、Markdownでいろんな文章をしばらく書いてみることにしようと思う。

あとで後悔する人生を送らないためにはこの本を読もう

頭が良くて、良い学歴をつくり、良い企業に就職したり起業しても、離婚したり逮捕されたり、幸せとはいえない人生を歩んでしまう人がいるのはなぜだろうか。

本書はこのような素朴な疑問に応えようとする。「イノベーションのジレンマ」で有名な教授が説く、人生で必要な考え方である。読みながら、とてもおだやかな気持ちで、語りかけられる問いや考え方について思考を巡らすことができる。

 

キャリアはどう選択すべきか

本の最初は、自分のキャリアをどう築いていくかについて述べられている。理論としては目新しいものがないけれど、改めてどのようにキャリアを選んでいけば良いのか考えさせられる。基本的には、創発的(偶然)と計画的な両方が人生にはあるから、それを理解した上で、自分の正しい判断基準を持ち、キャリアを築いていくということだ。間違っても、金銭だけを理由にしてはいけない。こうなりたくなければ。

だがわたしたちの多くは、年を重ねるごとに、夢を一つ、また一つと失っていく。間違った理由から仕事を選び、そのまま妥協する。心から愛することを仕事にするなどしょせん無理な話と、やがてあきらめるようになる。

日頃から水をあげないと花は咲かない

同級生たちは昇進や昇給、ボーナスなどの見返りがいますぐ得られるものを優先し、立派な子どもを育てるといった、長い間手をかける必要があるもの、何十年も経たないと見返りが得られないものをおろそかにした。

わたしの経験から言って、達成動機の高い人たちは、仕事でこうなりたいと思う自分になることに没頭して、家庭でなりたい自分になることをおろそかにしがちだ。立派な子どもを育て、伴侶との愛を深めることに時間と労力をかけても、成功したという確証が得られるのは、何年も先のことだ。その結果、キャリアに投資するあまり、家族には十分な投資をしなくなる。そうして人生の大切な部分から、花開くために必要な資源機会を奪っているのだ。

端的に言えば、長期的にしか結果が出ないものは、日頃からしっかり投資をしておかないと最終的に残念な結果になるということ。子どもと接する時間を確保し、家族としての価値観を養うことで、子どもが大人になってからも心配することなく見守ることができる。つまり、子どもに対する教育は、結果が出るまでにとても時間がかかる。だから、家庭を築き、維持するためにはポリシーを決めて、時間を確保し、文化を作り上げるための労力が必要になる。この本では、具体的な考え方が書かれているので、心当たりがある人は読んでみると良いだろう。

 

 

人生では、何度も失敗することができるけれど、時と場合によってはそんなに失敗の回数が許されないこともある。

経験や情報から多くを学べることもあるが、実際の話、人生には経験をとおして学ぶことが許されない状況が多々ある。よい伴侶になるために何度も結婚しようという人はいないし、子育てをマスターするのに、末の子が大きくなるまで待とうという人もいない。そんなとき、理論がとても役に立つ。何かを経験する前に、これから起きることを説明してくれるのだから。

この本を読んで、今後の自分の人生が、充実したものになりますように。

イノベーション・オブ・ライフ ハーバード・ビジネススクールを巣立つ君たちへ

良いものを作ってもビジネスモデルが優れていないとお金にならない話

久々に、東京事変の曲を購入した。最後に発表されたコンプリートアルバム「Hard Disk」の未発表曲をiTunesで購入したのだ。それはいいとして、今回書きたいのは「数字は意外な事実を教えてくれる」ということと、「ビジネスモデルは重要ですよ」ということです。

 

東京事変のCD売上

気になったので、東京事変のCD売上を調べてみた。ここの数字がどれだけ正確かは裏付けができなかったが、まあ本当だと信じてみようと思う。信じるかどうかは自己責任で。

【アルバム】
04.11.25 2位 205,012枚 390,665枚 35週 教育
06.01.25 1位 169,551枚 293,604枚 17週 大人(アダルト)
07.09.26 2位 101,475枚 175,418枚 20週 娯楽(バラエティ)
10.02.24 1位 106,831枚 176,780枚 19週 スポーツ
11.06.29 1位  82,396枚 139,699枚 31週 大発見
12.01.18 2位  78,318枚 108,256枚  9週 color bars
12.02.15 1位  36,404枚  61,898枚 15週 東京コレクション
12.08.29 3位  36,272枚  44,126枚  2週 *深夜枠

東京事変 – みんなのCD売上データ辞典 – livedoor Wiki(ウィキ)

 

これ、結構衝撃的です。個人的には。時間が経つにつれてCDが売れなくなっている。自分としては、アルバムが発表されるたびにどんどんサウンドは変化して、魅力が増していったと思っているのに、そういう自分の感覚には反して売上は落ちているという不思議。

まあ、考えてみればなんてことなくて、全体としてCDの売上は落ちているからだと思う。統計データでみると、アルバム売上は著しく落ちているし、東京事変が活動していた7年間も全体として落ち続けていた。

CD売上枚数の推移

一般社団法人 日本レコード協会|各種統計を元に作成)

というわけで、自分の感覚というのは信じてよいときと悪いときがあって、数字があるときはちゃんと確認すると、自分の感覚も修正されて、できるだけ真実に近いところにたどり着ける、という話。

 

何を作るかも重要だけど、どうお金に変えるかも同じぐらい重要

先ほどみたとおり、CDを売るというビジネスモデルには限界がきてるんじゃないかと思われる。

須藤元気がやっているWORLD ORDERのインタビューを少し前に読んだことがあったけど、どれだけすごいダンサーでもお金を稼ぐことは難しい状況があり、須藤元気がお金に変えるパフォーマンスに仕立て上げることで食べられるようになったと言っていた。

野口量 そうです。自分で言うのもなんですけど、僕はダンスを10数年やってきて、ダンス界では結構名前が売れたり海外の人と仕事したりしてたんです。でも、ダンスってすごく厳しい世界で、収入も少ないし賞味期限も短い。それで、WORLD ORDERに誘われたときに「やるんだったらものすごく気合を入れて取り組んで、絶対に成功してやろう」と覚悟したんです。

ナタリー – [Power Push] WORLD ORDER「2012」インタビュー (1/2)

つまり、一流の腕を磨いても、それをお金に変える行為というのはとても難しくて、それを作り上げられる人がいてこそ、良いコンテンツは市場に届けられ、継続されるということだ。最近特に強く思うのは、どれだけ良いコンテンツや技術であっても、市場でお金に変えられなければ、継続していくことは難しい、ということ。須藤元気のインタビューはまさにそういう点を指している。

東京事変が商業的に実際どう判断されていたかは知らないけれど、ツアーも行っていたし、それをDVDで販売していたし、iTunesのようなデジタルプラットフォームにも広げていたし、積極的にお金に変えるアプローチを取っていたように思う。握手券とかには敵わないだろうけどね。

 

当然のことながら、ずっと継続できているアーティストには、こういう経営面での思考も必要だろうし、考えて取り組んでいるんだろうな、と思った次第です。

労働集約型から脱却するには

未だに、このブログでアクセスが多いのが、IT産業が労働集約型から知識集約型に転換するために必要なこと。これは、特にIT業界の労働集約的な現状を考える人がアクセスしているんじゃないだろうかと推測する。

 

東進ハイスクールとセコム

そしてふと、テレビで東進ハイスクールを見て、「ああ、これこそ労働集約型から資本集約型へ移行したパターンだな」と思った。

東進ハイスクールは、最初は直接教える予備校塾から始まったが、今は塾講師が行う講義を録画し、それを全国で配信するという、いわゆるオンデマンド型のビジネスに転換している。学生は、自分の近くで優れた塾講師の講義を好きな時間に好きなだけ受けることができる。
東進ハイスクール – Wikipedia

 

あとは、セキュリティ会社のセコムもそう。セコムは、最初は人が警備員として配備されるビジネスモデルだったが、途中から転換して、ネットワークと監視装置をベースにしたセキュリティシステムを提供する会社になった。
セコム – Wikipedia

 

「仕組み」をつくることが重要だ

両社に共通しているのは、「仕組み」を構築することで労働集約型から資本集約型へ転換したことだ。当然、大きな資本を投資することになるので、簡単ではない。ただ、そうやって強固な基盤を構築することで、競合に対する優位性を築くことにつながる。

そして、発想としてはいろんなものが同じだと思うんだよね。個人レベルでみても、自分が日々やっている作業を仕組み化することで、同じ作業結果を少ない時間で行うことができるようになる。つまり、仕組みをどんどん導入していくことで、人が手を動かさなくても成果を出せる形を作っていくことになる。

 

というわけで、仕組みを作るということが、労働集約型から脱却するための答え。あとはその仕組みをどう発想して、実行していくかという問題。

知ってるようで知らない総合商社の過去と未来

総合商社の本を読んだ。総合商社ってなんとなく知っていたけど、実際どういう業務で収益を上げているのか、なんで大規模な活躍ができるのかを知りたかった。

貿易商社の規模は、世界でみても日本企業がダントツで、「総合商社」という業態は世界でも少ないんだそうだ。

これら10大総合商社は、単に複数分野の商品を複数地域で取り扱うだけでなく、オーガナイズ機能・金融機能・投資機能・調査情報機能を持った複雑な経営体である。そこに「総合」の意味があり、この点は海外の商社と呼べる経営体にはない、独自のものである。

総合商社が生まれた背景から辿り、高度成長における製造業や小売業への進出、そして現在までの変遷が纏められていて、「とりあえず総合商社というものを理解したい」というレベルであれば、この一冊で十分だと思う。

 

近年は事業投資へシフト

総合商社の最近の特徴は、事業投資にシフトしていることだろう。トレーディングや事業オペレーションは子会社・関連会社に移行しており、本社ではそれを管理し、事業投資を行うようになっている。それは、総合商社が新規分野への進出を拡大させたことに起因している。

新規分野、新規事業への進出は、1節〈2〉新規分野への進出・既存分野での新事業開拓で概観したように、必ずしも全部がトレード以外の業務だったわけではないが、これまでにない新たなリスクを抱えるものが多かった。その過程で、分社化や関係会社・合弁会社を使っての業務展開、そして事業投資が増えていたから、子会社・関連会社を含むグループ全体の財務やリスクを管理する方法が求められた。さらに、売上高より収益を重視する経営も、新しい財務管理を必要としていた。

そうなると、総合商社本体にとって重要になるのは、企業を見極めるための事業評価とリスク管理になる。カントリーリスクから企業個別の財務リスクまで大小あるが、これらを見極め、投資をコントロールしていく必要がある。オプションや先物取引などのリスク管理手法を駆使することもさることながら、全社でリスク管理する組織運営が求められている。

 

オペレーションと投資の両方を行えるのは強い

読みながら思ったのは、一部ソフトバンクと似ているんじゃないか、ということ。ソフトバンクは、情報インフラを自社で手がけるとともに、そのインフラ上で活躍できる企業を買収・投資している。総合商社でも、バリューチェーンの至るところで取引や事業を行うことで収益機会を獲得しようとする。

その場合、こういうたくみな戦略も必要になるのだ。
ソフトバンク、スプリント買収断念でも利益40億ドル – WSJ.com

単なる投資会社にように、売却を狙ったものではなく、育成し事業を継続することで利益を創出しようとする。また、親会社の規模の大きさが、投資・育成にかかるリスクを許容することもできる。つまり、インキュベーションの役割も果たすことができる。

こうやって、両方のアプローチを駆使できるスキルやノウハウを構築するのはそんな簡単なことじゃない。だからこそ、実現できると強い企業になる。

 

総合商社の強さの理由と、今後どうなっていくのかがわかった。

総合商社の研究

ミッション・クリティカルシステムがクラウドに乗る時代

驚いた。ミッション・クリティカルなシステムがクラウド(AWS)に搭載されたというニュースがあった。

クラウドサービスが脚光を浴びる中、ミッション・クリティカルなシステムについては難しいだろうという意見は結構あった。僕もそう思っていた。

ノーチラス・ テクノロジーズは、西鉄ストアの本部基幹システムを Asakusa Framework/Hadoopにて開発、ミッションクリティカルなシステムを アマゾン ウェブ サ―ビス上で本稼働開始 | NAUTILUS

「オンプレミス・システムの終わり」の始まり~AWSでのミッションクリティカルシステムの稼働 – 急がば回れ、選ぶなら近道

こういう「止まったら業務に大きな影響が出る」利用頻度が高いシステムは、自前で保持することが主流だ。それは今もそうだと思う。クラウドは、技術的には進歩しているしコストも安い反面、自由度は制限されるので使いづらかったり、万一止まった場合のバックアップの仕組みをどうやって構築するのか、という検討の問題もあったりで、重要なシステムに対しては躊躇されている。

ただ、今回のケースをみるといろいろ重要な示唆が含まれていると思う。

 

優秀なエンジニアによるレバレッジを効かせた収益構造

これは環境がクラウドだからできた、というのは確かにあります。クラウドは腕のよいエンジニアをとんでもない勢いでレバレッジさせるという好例だと思いました。エンタープライズ(社会インフラ系)経験の豊富なウィザード級のインフラ・エンジニアを2年もAWSに専属で突っ込んでおけば、十分化け物にはなります。そんな感じかと。・・・これが普通になるとインフラの指示待ち人材は完全に仕事がなくなりますね・・・

「オンプレミス・システムの終わり」の始まり~AWSでのミッションクリティカルシステムの稼働 – 急がば回れ、選ぶなら近道

エンジニアの生産性は結構差が生じているのは昔から言われていることだ。やはり人がやることなので。それを吸収するためにマニュアル化したり開発標準ツールを使ったりしてるんだけど、どういう部分だけじゃなくてこういうレバレッジの考えを持つべきだと思うんだよね。

 

ビジネスモデルの差が技術力に表れる

受託開発が人月単価で計算されて、「コスト」としてみなされるのに対して、AWSのようにエンジニアがインフラ基盤を構築して高い技術力を提供することは、収益を増やすことに直結する。「SIer」というビジネスモデルは米国では少ないとか、内製化に向かっているとか、受託開発は人をコストとして定めて金額要求するので生産性向上につながらない、とかいろいろ言われてきた。

こういう業界構造として存在する部分が、技術力の差として表れているんじゃないかという気がしました。つまり、技術力はそういう「結果」であり、どういうビジネスモデルで市場で勝負しているかが先にあるんじゃなかと。AWSはインフラを「サービス化」して、パイを広げながら自社コストを抑制するモデルを創りだしたし。

 

ミッション・クリティカルなシステムがバンバン今後も移行されていく、とは思えないけど、事例は増えていくんじゃなかろうか。クラウドサービスで大規模障害でも発生しない限りは。

ああ、相手に上手に伝えるにはこういう方法があるのか

人への伝え方だけで、自分が期待する以上の結果を受け取ることもできるし、自分が思った以上の損をすることもある。

コンサル会社に勤めてから、同じ事実を説明するにしても表現の仕方によってポジティブに捉えることもできれば、ネガティブに捉えることもできることを知った。説明する順番や言葉の選び方によって、相手の受け止め方も大きく異なる。だから、説明するときはいかに相手が受け入れられやすい内容になっているかを考えるようになった。

そして、この本はそういう「同じ事実をいかに上手に伝えるか」に重点を置かれた、言葉の選び方が書かれている。単なる事例集ではなく、「サプライズ法」「ギャップ法」「赤裸裸法」「リピート法」「クライマックス法」として体系づけられている点が目新しい。

コンサルという業種は、基本的には調査・分析を行い、顧客に伝える。最終的に実行するのは顧客なので、そこに「納得感」が生まれないと、物事は進まないし、コンサルタントの存在はないに等しい。そういう意味では、相手の考えていることや望んでいることを考えた上で、伝え方を組み立てる必要がある。だから、ロジックやファクトなども重要になるが、それと同じくらい伝え方・ストーリーが重要になってくるのだ。

昔、上司に「できるだけ飛距離の遠いメッセージをつくれ」と言われたことがある。それは、直接の相手だけでなく、相手の奥にいるはずの上司や関連部署を指している。それぐらい、メッセージの作り方を意識することで、また内容も変わってくるし、そういう強いメッセージが相手の組織を動かしていくんだと教えてくれた。そのためには、感動など心を動かせるようにならないといけない。

私は政治について、知見があるわけではありません。ですがコトバの専門家として、日本の政治に圧倒的に足りないのは、「政策」ではなく「感動」だと思っています。人は規則では、動きません。人を動かすのは「感動」です。

これは正しい。政治もそうだけど、それ以外の仕事でも同じだ。いろいろ仕事してきても、感情という面を無視することは難しい。それどころか、感情の方が問題解決に向けた大きな要因になっている場合も多い。そういうときこそ、「伝え方」の出番なのだ。

 

伝え方によって、人生は少しずつ変わり、最終的には大きな違いが生まれてくる。この本を読んで「伝え方」を学ぼう。