岐阜県の景気動向指数(平成24年7月分)

最初の経済指標を見始めてからはや1ヶ月。最初に記事を書いたのが景気動向指数だった。今回は7月分。

サマリは以下。

7月のCI(平成17年=100)は、先行指数:92.9、一致指数:99.6、遅行指数:91.3となった。  先行指数は、前月と比較して2.7ポイント上昇した。3か月後方移動平均は1.03ポイント下降し、 4か月連続の下降、7か月後方移動平均は0.03ポイント下降し、4か月ぶりの下降となった。  一致指数は、前月と比較して1.5ポイント上昇した。3か月後方移動平均は0.90ポイント下降し、 3か月連続の下降、7か月後方移動平均は0.04ポイント下降し、10か月ぶりの下降となった。   遅行指数は、前月と比較して4.8ポイント下降した。3か月後方移動平均は0.93ポイント下降し、 6か月ぶりの下降、7か月後方移動平均は0.40ポイント上昇し、5か月連続の上昇となった。

岐阜県 : 景気動向指数 月報201207

6月から先行・一致ともに指数が上昇する結果となった。消費者物価指数鉱工業生産指数大型小売店販売額などの指標をみる限り、横ばいから上昇傾向になることが読み取れたので、予想通りという感じか。

7月までの岐阜県の一致指数は、以下の通り。


www.pref.gifu.lg.jp/kensei-unei/tokeijoho/kohyoshiryo/keizai/keiki/2012/keiki201207.data/keiki_2012_07_syou.pdfから抜粋)

 

実際、一致指数の寄与度をみると、機械工業生産指数、鉱工業出荷指数、手形交換金額が6月から大きく改善することで、全体の値を上げている。(大型小売店販売額は若干改善しているものの、寄与度は小さい。)

東海三県の消費者物価指数を比較する

岐阜市の消費者物価指数に加えて、地域によってどれぐらい違いが出るのか調べてみた。以下のグラフは、各地域のコアCPIを並べたもの。対象は東海三県と東京都にした。

 

岐阜市以外のソースは以下。

名古屋市:名古屋市消費者物価指数(平成24年8月分) | 愛知県
三重県:三重県消費者物価指数の公表(平成24年7月)
静岡県:統計センターしずおか/静岡県消費者物価指数 平成24年9月報(平成22年=100)
東京都:東京の物価 平成24年8月分 統計表

 

やはりというか、地域によって違うもんだな。

全体的に高いのは三重。低いのは東京都。トレンドはどこもほぼ同じような形を描いているけれど、起伏の幅が結構違う。

 

名古屋市と岐阜市は距離もそんな遠くないはずなんだけど、平成24年4月ぐらいから指数が乖離してきてる。

怒涛逆巻くも

久しぶりに読んだ歴史小説について書こうと思う。歴史小説というのは、その時代の空気を感じたり、誰かの人生をトレースできるのが良い。

 

幕末の時代。海軍の基礎をつくった小野友五郎と小栗忠順の話。卓越した頭脳によって数学や航海術を学び、幕府の中で活躍の場を増やしていく小野友五郎。技術や海外事情に明るく、時代の先を読んだ近代化政策を打っていく小栗忠順。この二人が、明治以降の近代化の礎を築いていく様子が、この小説では描かれている。

幕府側の目線から描かれているので、ちょうど外交を開始した諸外国との交渉と、各藩の攘夷などの運動の間で、板挟みになっているような状況が描かれていて面白い。攘夷によって外国人が襲撃される事件が起こるのだけれど、その賠償が幕府に要求されていたりして、統治機構がうまく機能していないとか。

勝海舟と坂本龍馬で有名な神戸海軍操練所も、長崎、品川と操練所が作られていた後にできたものであり、いろんな人達の駆け引きの中でできた、中途半端な産物であるとか。そういうちょっとした発見が面白かった。

 

時代の転換期には、大きなビジョンを描き、実行していく人が必要になる。小栗忠順という人は、まさにそのような人物だったようで、司馬遼太郎にも「明治の父」と評されているようだ。これを読むまでは、そんな魅力的な人だって知らなくて、徳川埋蔵金で名前を聞いただけだったよ。

小栗忠順 – Wikipedia

 

軍艦や造船などに対する緻密な描写、それに関わる多くの登場人物が描かれていることは、時代の礎を築く人たちというのはたくさん存在していて、何らかの役割を担っている、という当然のことに気付かされる。どちらかというと理系の好む小説なのかも。テクノクラートが活躍する様子が描かれているのは、理系出身としては心躍るというか、嬉しい気持ちになるもんだ。

岐阜市の消費者物価指数(平成24年8月分)

岐阜市の8月の消費者物価指数が発表されていた。

 

消費者物価指数(CPI)とコアCPIとコアコアCPI

消費者物価指数は、現在の物価の状況や今後の物価の推移を考える際に用いる。なお、総務省の定義では以下の通りとなっている。

消費者物価指数は、全国の世帯が購入する家計に係る財及びサービスの価格等を総合した物価の変動を時系列的に測定するものです。 すなわち家計の消費構造を一定のものに固定し、これに要する費用が物価の変動によって、どう変化するかを指数値で示したもので、毎月作成しています。 指数計算に採用している各品目のウエイトは総務省統計局実施の家計調査の結果等に基づいています。 品目の価格は総務省統計局実施の小売物価統計調査によって調査された小売価格を用いています。 結果は各種経済施策や年金の改定などに利用されています。

統計局ホームページ/消費者物価指数(CPI)

一言で消費者物価指数といっても、総合指数と呼ばれるCPIの他に、生鮮食品を除いた「コアCPI」と、食料(酒類を除く)及びエネルギーを除いた「コアコアCPI」と呼ばれるものがある。

消費者物価指数 – Wikipedia

 

できるだけ物価の変動を正しく捉えるために、コアCPIやコアコアCPIという指標が設けられている。

また、最近ではエネルギーに関する注目が大きいが、コアCPIよりコアコアCPIの方が小さいということは、エネルギー価格が向上していることを指すと思われる。政策判断に用いられるのは、コアCPIやコアコアCPIで、日銀はコアCPIの数値を金融政策の基準にしているといわれている。

 

岐阜市の消費者物価指数の結果

平成24年8月の岐阜市の総合指数は、平成22年を100として99.5となり、前月比で0.4%上昇、前年同月比で0.2%下落となった。  生鮮食品を除く総合指数は99.5となり、前月比で0.3%上昇、前年同月比で0.3%下落となった。  食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数は98.2となり、前月比で0.3%上昇、前年同月比で0.6%下落となった。

岐阜県 : 岐阜市消費者物価指数 月報201208

というわけで、グラフにしたものが以下。


岐阜県 : 岐阜市消費者物価指数 月報201208元に作成)

 

多少上下しながら、コアコアCPIが長期的には下落していることから、デフレ傾向は未だに続いているのがわかる。

 

消費者物価指数から何を読み解くか

デフレの原因についてはいろいろ語られているので特にここでは書かないけれど、この記事が端的でわかりやすいのではないかと。

統計局ホームページ/統計Today No.36

統計局ホームページ/統計Today No.36

あとは、この記事では消費者物価指数と食料価格上昇率の関係を整理した上で、日本の農業が世界の市場から取り残されているのではないかという論旨を組み立てている。こういう発見をすることもできるのか。面白いなあ。

デフレの続く消費者物価から農業保護を考える (1/2)(官庁エコノミスト) – BLOGOS(ブロゴス)

デフレの続く消費者物価から農業保護を考える (1/2)(官庁エコノミスト) – BLOGOS(ブロゴス)

踊る大捜査線に学ぶ組織論入門

これまで、いくつか組織論に関する記事を書いてきたので、これは読まずにはいられなかった。

ドラマや映画のセリフを引用しているものの、内容自体は至って真面目な組織論。テイラーやマックス・ウェーバーはもちろんのこと、様々な組織の理論と踊る大捜査線の状況が結びついているので、組織論を学ぶ入口としては良いのではないかと思う。

 

組織論が取り扱う範囲は広く、この本一冊からたくさんの示唆が得られると思うが、ここではひとつ取り上げようと思う。それは、「無力感を人が学習する」ということだ。

どれだけ崇高な使命感を抱いても、どこかで自分の力だけではどうにもならないことを知る。あるいは、組織の中での自分の能力不足を知る。そうすることで、人は「無力感を学習する」のだ。踊る大捜査線のスリーアミーゴスのように。

 

しかし、そういう無力感の漂った上司がいるからこそ、部下が自立し、現場への権限委譲が進む場合もある。そういう皮肉というか、マイナスだと思った点がプラスに作用する場合もある。それが組織なのだ。組織全体でどう作用するかが難しいから、優秀で強い組織を作るのは大変な作業になるのだろう。

組織のことを考えるのは面白い。日々の仕事の中に、たくさん発見がある。

中小企業月次景況調査(平成24年8月)

中小企業月次景況調査が発表されていたので、簡単に確認。
8月の中小企業月次景況調査(平成24年8月末現在)

 

中小企業月次景況調査は、DI値で示される。内閣府の説明によると、景況把握にはDI(ディフュージョン・インデックス)とCI(コンポジット・インデックス)の2通りがあり、最近では量的把握を行うためDIよりCIにシフトしているとのこと。

景気動向指数には、コンポジット・インデックス(CI)とディフュージョン・インデックス(DI)がある。 CIは構成する指標の動きを合成することで景気変動の大きさやテンポ(量感)を、DIは構成する指標のうち、 改善している指標の割合を算出することで景気の各経済部門への波及の度合い(波及度)を測定することを主な目的とする。
従来、景気動向指数はDIを中心とした公表形態であったが、近年、景気変動の大きさや量感を把握することがより重要になっていることから、 2008年4月値以降、CIを中心の公表形態に移行した。 しかし、DIも景気の波及度を把握するための重要な指標であることから、参考指標として引き続き、作成・公表している。

景気動向指数の利用の手引 – 内閣府

実際発表された調査結果をみると、4月頃をピークに全体的に低下のトレンドになっている。

 

原油価格の高騰や気価格値上げなどエネルギー面からのコスト圧迫、円高による輸出産業の収益低下、消費税増税による消費傾向の変化に対する懸念などが挙げられている。

 

原油価格・電気代・円高の状況

気になったので原油価格の近年の推移をみてみると、10年ぐらい前から2倍以上に跳ね上がっている。

原油価格(WTI)の推移(1980~2012年) - 世界経済のネタ帳

 

 

電気代については、事業所向けはおよそ17%程度上昇しているようだ。

今回の値上げによって、1kWh(キロワット時)あたりの単価が夏季で18.2%、その他季で16.5%も高くなる。明らかに家庭向けの「電灯」よりも値上げ率が大きく設定されている。4月に実施された「高圧」の値上げ率17%と変わらない水準だ。

電力供給サービス:家庭よりも中小企業に重荷、東電の値上げ率は夏季18.2%にも – スマートジャパン

例えば、電気を多く用いる電炉メーカーでは、製造コストの25%が電気代に占められており、電気代の値上げインパクトはとても大きい。(25%の17%増は、29.25%になる。)

電炉はスクラップを電気で溶かして鋼材を作るため、製造コストの25%が電気代といわれるほど依存度が高い。電力料金の値上げは、最大手の東京製鉄で年間8億円程度のコスト増になるという。

電炉全15社、東電値上げ受託 「死活問題」中小企業は悲鳴 – SankeiBiz(サンケイビズ)

 

最後に円高。直近だと2010年4月頃から一段と下落している。

為替レートの推移(2007年1月~2012年8月) - 世界経済のネタ帳

円高によって輸出産業は価格競争力が低下するので、その影響から需要低下や価格低下のプレッシャーが生じることになる。

 

中小企業の海外進出

原油も電気も円高も、すぐに解消するような事象ではないので、長期的に考えれば、海外進出とか事業多角化とか施策を増やしておかないといけないとは思うんだが、実際に平成20年時点の中小企業白書をみると、海外進出する中小企業は確実に増えている。ただ、非製造業の方が割合は多い。また、比較的規模が大きく、労働生産性が高い企業が海外進出しているのも特徴。

第3節 中小企業の海外展開と生産性

 

 

日本国内では中小企業の減少が進んでおり、一方で大企業の数が増えている。これは、国内市場が寡占化のトレンドであることを示しており、中小企業が生き残る環境は今後も厳しいものだろう。

ビール15年戦争

アサヒのスーパードライは、とても売れているし、宣伝も大々的に行われているので知らない人は少ないだろう。この本は、アサヒのスーパードライが発売されてから勃発したと言われる「ドライ戦争」あるいは「ビール戦争」を描いたものだ。

スーパードライの発売当時、アサヒはシェアが低落しており、キリンが独禁法に抵触しそうなぐらい一人勝ちだったが、スーパードライをきっかけに売上げが増加し、ついにはキリンを追い越す。

 

このビール戦争は、マーケティングの題材としてはうってつけだ。日本人の食生活の変化によるビール嗜好の変化、ドライビール・発泡酒という新しい市場の開拓、既存製品のカニバリゼーション、これまでの製品ブランドへのこだわりによる戦略ミス、冷蔵庫の普及による個人消費の増加、酒屋から量販店への販売チャネルの変化。マーケティング戦略で考えなければいけない材料が、このストーリーにはあらゆるところに含まれている。

大きな企業であってもマーケティングで失敗することもある。それは、王者であったキリンでも、キリンを追い越したアサヒでも。そういう戦いがあるから、ビジネスは面白い。そして、こういう事例から、新しいことを学んでいくのだ。

 

以前、キリンを始めとするビール会社4社のことを書いたが、そのときは震災などの影響で売上が低迷している、という話だった。しかし、もっと大きな目線でみると国内市場はもう飽和状態に近く、中国など世界市場に目を向けている。それは、サントリーが上海の進出に苦労しながらも、徐々に事業基盤を構築して今では圧倒的なシェアを築いていることからもわかる。

 

今でもチューハイ、ハイボール、ノンアルコールなど、酒類の進化は続いている。激しいマーケティング戦争は続いていくだろう。

岐阜県の鉱工業生産指数(平成24年7月分)

岐阜県の7月分の鉱工業生産指数が発表されていた。概況は以下の通り。

平成24年7月の県内鉱工業の動向を季節調整済指数でみると、一般機械工業、電気機械工業等が上昇したものの、化学工業、輸送機械工業等が低下したため、前月に比べ生産指数は0.4%減と前月に引き続き低下した。また、出荷指数は3.9%増と上昇に転じ、在庫指数は0.5%減と低下に転じた。

なお、原指数で前年同月比をみると、生産指数は2.8%減となり、前月に引き続き前年を下回った。

生産指数自体は前月から低下しているが、出荷指数は増加し在庫指数は減少しているため、景気回復の兆しも見られる。

 

6月時点では出荷が落ち込み、在庫も低下していたので、今後は回復傾向がみられるようになるのではないか。

業種でみると、回復傾向にあるものと下落傾向になるものが存在するのがわかる。回復傾向にあるのは、鉄鋼、機械、パルプ・紙・紙加工品、食料品。下落傾向にある化学工業は、ものすごい変動が発生しているが、そういう業種なのだろうか。

 

なお、同時期に発表された消費者物価指数(平成24年8月)は、ほぼ横ばいぐらいの状況になっている。

http://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/zenkoku.pdf

岐阜県の大型小売店販売額(平成24年7月)

岐阜県の大型小売店販売額が発表されていたので、確認。

まず小売店販売額というのは、経済指標としてよく取り扱われる。個人消費の傾向を把握することができるのがその理由なのだが、そもそも個人消費を図るのがなぜ重要か。

それは個人商品というのはGDPの構成要素だから。岐阜県のGDPに類する県内総生産のうち56.9%は個人消費である(参照)。

 

というわけで、平成24年7月の大型小売店販売額。

岐阜県 : 岐阜県の大型小売店販売額 月報201207
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● 大型小売店販売額:238億円
前月比は2.3%増
前年同月比は、全店ベースで3.0%減、既存店ベースで2.8%減となった。

● 商品販売額別の動向
・ 衣料品の前年同月比は、全店ベースで8.0%減、既存店ベースで8.0%減
・ 飲食料品の前年同月比は、全店ベースで1.4%減、既存店ベースで0.5%減

というわけで、前月比は全体として下がっている。

 

1年間の推移は以下の通り。

大型小売店販売額(平成24年7月)

こう見ると、ある程度起伏が生じて繰り返しているように見える。景気動向指数で書いたように、今は少し低調気味になっているのかな。

コンシューマライゼーションで企業アプリは変わってきている

ICTの分野では、先に消費者向けに広まった機器やサービスが、ビジネス向けに普及する「コンシューマライゼーション」が度々起こる。ブログやSNSもそうだし、スマートフォンもBYODの波が訪れている。

 

この調査結果は、そういう消費者向けの無償クラウドサービスが、どの程度利用されているかを示したもの。

第10回:個人向け無償クラウドサービスの業務活用は可能か – ノーク岩上の調査データに見る賢いIT選び:ITpro Active

この結果を見る限り、ファイル共有系が大半を占めるようだ。あとはグループウェアかな。気になるのは、Google+が結構高いんだよね。どうやって利用してるんだろ。有用なコミュニケーションツールとして普及してるんだろうか。

 

一個人として普段使っているアプリの使いやすさに比べると、企業が使っているツールが古くて使いづらいという話は聞く。そういう消費者側からのプレッシャーで、企業のアプリケーション利用も変わってきている。こういう流れをうまく掴んで利用できる柔軟な企業は、生産性でも違いが生まれるんじゃないか。

僕が知ってる中小企業でも、ファイル共有にDropboxを使い始めている。複数端末でのファイル共有や、外出先でのファイル参照に使っていて、作業効率にも寄与しているようだ。ただ、問題はそういうサービスを使いこなせる人がそんなに多くなくて、特に年齢が高い人ほど追いついていくことを諦めたりしている。企業など集団でツールを使いこなそうと思うと、こういう教育というかユーザスキルの向上はどうしても課題になってくるなあ。

 

そういえば、Evernoteも少し前にビジネス版のサービス開始を発表したね。(提供開始は2012年12月)

特徴・機能 | Evernote Business | Evernote

この分野の今後は楽しみだ。