小売業のトレンドをEC化率などからみる

以前ネット販売の隆盛について調べていましたが、久々に小売全体とその中でのECの位置づけを確認したいと思います。

ネット販売の市場規模とEC化率の動向を調べてみました(2017年版)

 

小売業のマクロトレンド

改めて、経産省が出している小売業の統計数字を確認してみます。

これをみると、小売業全体としては2000年初頭の低迷を持ち直し、やや横這いから増加という状況です。人口減少はあるものの、インバウンド消費含め持ち直していた、というところでしょうか。コロナでまた状況は変わっていると思いますが。

そして、代表的な業態として「百貨店・スーパー」「コンビニエンスストア」「ドラッグストア」も見てみました。

売上規模でみると、ざっくりいえば、以下のような規模感です。
・百貨店・スーパーの半分強がコンビニ
・コンビニの半分ぐらいがドラッグストア

コンビニも寡占化で厳しいと言われながら、業界はまだ伸びてるんですよね。すごい。

 

ECの存在感はどの程度?

経産省がちょうど最新のEC動向について、調査レポートを発表していました。

電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました (METI/経済産業省)

全体として伸びていて、ECの市場規模は約20兆円、EC化率は6.7%です。

 

物販系だけに絞ってみると、それぞれこのようになっています。

家電・書籍などEC化率が30%を超えているジャンルもありますが、食品や化粧品などはまだ10%を切っています。ECが得意とする商材がクリアに見えてきている気がします。

逆にいえば、オフラインの店舗販売にはまだまだ可能性というか必要性があるとも言えます。

 

ニューリテール

最近、リテール関係の本を読んだのですが、前提としてあるのは「全てがECに置き換わるものではない」「逆にオフラインの割合はこのまま多く存在する」という点です。

 

Amazonが大手スーパーのホールフーズを買収したり、様々なEC系の企業がオフラインに進出しているのは、拡大にはオフラインのリーチが必要である、と判断しているからに他ありません。

アマゾンのホールフーズ買収で、米国の食料品市場はどのように変化したのか | 海外のEC事情・戦略・マーケティング情報ウォッチ | ネットショップ担当者フォーラム

デジタルの波は確実に小売業にもやってきており、オンラインーオフラインをどう掛け合わせていくか、小売り現場でのDXはどう実現していくか、など様々な領域でトライが進んでいるところです。Amazon Goなどはわかりやすい事例ですが、それ以外でも様々進んでいます。

中国の事例なども、とても面白く感じます。そういえば、最近読んだワークマンも「Click&Collect」がこれからのトレンドで、店舗を持っているのは強いと語っていました。

 

リテール、激変の中で新しいイノベーションがこれから出てくる領域ですね。

JINSの業績をみながらZoffと比較する(2020年)

JINSはこれまで何度か業績の推移などを見てきました。

JINSという企業を改めて分析してみる

久々に、最近の状況を抑えつつ、Zoffとの比較も行いたいと思います。

メガネ市場について

国内市場については、ざっくり言えば「現状維持」です。今後人口が減っていくことも考えると、劇的な成長は望みづらいでしょう。

そのため、国内企業としては海外展開が一つカギになるのではないかと思われます。

JINSの業績について

売上と営業利益率の推移を確認します。

ずっと業績が伸びています。しかも営業利益率も高くなっているので、素晴らしい。店舗数も順調に増えています。国内市場が急成長していない中でこれだけ伸びているのは、寡占化が進んでいるからと思われます。

海外売上も伸びており、売上に占める比率も2割弱まで向上しています。海外も成長ドライバーの一つですね。

コロナの影響は?

直近の既存店売上高を見てみました。昨年度対比です。

3-5月は劇的に減少しましたが、6月からは回復しているようです。店舗数も減っていないので、持ちこたえているというところでしょうか。

Zoffとの比較

よくJINSはZoffと比較されますが、今回は数字面で確認したいと思います。

まずざっくり見るために、Googleトレンドで確認します。最初はZoffが有名でしたが、2009年からはJINSが優位をキープしています。

売上高と店舗数も比較してみます。Zoffの情報元がWikipediaなので多少確からしさがないかもしれませんが、比較してみるとこのようになります。

JINSはZoffのほぼ倍の規模、というのがざっくりした捉え方でしょうか。

 

JINSの戦略

改めてJINSがどういう戦略なのかという点を考えてみたいと思います。JINS社長のインタビューに、わかりやすいポイントがありました。

オーソドックスな答えになりますが、やはり「商品戦略」と「出店戦略」が基本です。これまでにない最高の商品を生み出し続け、それをお買い上げ頂ける店舗を増やし続けること。SPA(製造小売業)として、これが柱になることは間違いありません。そして、それを支えるのは結局において人です。出店も商品も、マーケティングなどの機能についても、全部、人なのです。

ジンズ(JINS)はどこへ向かっているのか? | 日本の成長企業 – プロコミットより引用

 

ブルーライトなど商品戦略が注目されていますが、それに加えて、やはり小売りですので、やはり店舗数が増えるのは売上向上の重要な点であり、ここが実現できているのが大きいと思います。

スピード感もって国内市場シェアを高めていきつつ、海外の市場を増やしていくのが当面の流れだと思います。

 

MaaSが普及したら駐車場業界はどう変化していくのか

Beyond MaaSを読んで、今後は自家用車の所有が減り、ひいては駐車場も減っていくという話がありました。

MaaSが世の中に浸透したら社会はどう変わるか「Beyond MaaS」

そこで、今の駐車場業界がどうなっていて、主要プレイヤーがどういう戦略を取ろうとしているのか、確認していこうと思います。

駐車場の箇所数・台数の推移

駐車場の数は、全国的に増えています。自動車の保有台数が増えていること、バブル以降有効な土地活用のひとつとして駐車場が広がったことが外的要因に挙げられます。

国土交通省「駐車施策の最近の動向」(PDF)

 

一方で、国交省の認識では「都市部は量的な充足はされており、質的な整備が必要」と言われています。これからは利用者が利用したいときにスムーズに使えるようにする、利便性の向上や最適配分が求められるようになると考えられます。

この業界の筆頭であるパーク24のIRをみても、駐車場の箇所数・台数は右肩上がりになっています。

 

業界の競争環境

パーク24のサイトで掲載されている数字を見てみます。これを見ると、パーク24が圧倒的に強い状況です。

市場環境|パーク24株式会社

パーク24に対して、実際に競合としてあげられるのは、三井不動産販売(リパーク)、名鉄協商、日本駐車場開発あたりの企業かと思います。

以下の記事では、引用元の根拠となる数値が掲載されていないので、数字が曖昧ですが、おそらくは古いと思います。

駐車場業界の動向(M&Aが活発化)

 

パーク24の戦略

では、業界リーダーであるパーク24の戦略を見てみます。事業の柱が駐車場、モビリティ、海外と大きく3つになっています。

比率でみると、国内駐車場事業が半分ぐらいを占めています。しかし、モビリティ事業が年々大きくなっているのがわかります。

パーク24の企業情報 – 4666 / 東証1 / 不動産業 | バフェット・コード
(こういうとき、バフェットコードは神ですね)

利益でみても、モビリティ事業は収益化が進んでおり、収益の柱になっているわけです。

パーク24のKPIでも、駐車場開発以外に、会員数などより広い領域を狙ったKPIを設定していることがわかります。

あと、海外進出も行ってますね。

駐車場シェアリング

次に駐車場シェアリング業界についても、見てみたいと思います。

まず市場規模ですが、少し前の調査ですが、駐車場シェアリングは2030年で1000億円ぐらいまで成長するという数字があります。

「自動車関連シェアサービス国内市場調査」2030年の市場規模は2017年の187.1倍と予測 | AMP[アンプ] – ビジネスインスピレーションメディア

パーク24の国内駐車場事業が1500億円を超えるぐらいなので、それと比べてもそれなりに大きさになるのがわかります。

また駐車場シェアリングで代表的な一社であるakippaの戦略を見てみると、都市部やスタジアムの周辺に注力しているのがわかります。

需要変動が大きいところを埋めるような形で、マッチングやダイナミックプライシングで柔軟に需給調整できることが有効なので、都市部やイベント系で需給ギャップが変動しやすいところに向いているのでしょうね。

akippa、開始約5年で駐車場登録拠点数「3万拠点」を突破! – 産経ニュース

 

まとめ

日本で見ると、駐車場の開発は進んできていますが、特に都市部では飽和傾向。

今後は付加価値が求められる方向であったり、レンタカーやカーシェアなどモビリティに広げる方向に進んでいるようです。駐車場シェアリングも進んでおり、駐車場市場は転換しつつ、各社はビジネスモデルの転換を図っていきそうです。

MaaSが今後普及されていき、自家用車が減り、駐車場のニーズも変わっていく世の中がこれから進んでいくのかもしれません。いろんな業界が影響出ていきますね。

自動車産業が大変革の予感を感じさせる4つのトレンド

日本の基幹産業である自動車ですが、ここ最近は大変革が起こっていきそうな予感しかありません。いろんなところから入ってくる情報でも、確信に変わってきています。

とはいっても、以前からその予兆というか大きなうねりがあり、それがどんどん表層化していると捉えた方が良いとも思いますが。

最近こちらの本を読んだので、それを参照しながらその大きなトレンドを整理しておこうと思います。

ブックオフが赤字から黒字復活してたけど、今後はどうなる

ブックオフの業績はこれまで苦戦していました。売上と利益が落ち込み、2017年期は赤字になっていたんです。

ちなみにこちらは2015年に書いた記事です。その時点で売上は頭打ちになっていました。

ブックオフがハードオフとのFC契約を解除して家電を売る理由は?

そこで、久々に業績を確認してみたら、黒字に復活していました。

内訳をみると、売上は前年比で下がっており、利益は増えています。減収増益です。このパターンの場合、コストを削った結果です。

具体的には、販管費のうち人件費を削っています。それ以外にも減価償却費(投資の抑制)、消耗品費などコストを大きく見直しており、売上の減少でも利益を増やすことに成功しています。

画像

ブックオフの事業モデル

ブックオフは、IR資料によると4つのセグメントが定義されています。「リユース店舗」「ブックオフオンライン」「ハグール」「その他」です。

以下がセグメントごとの売上です。

凡例がなくてすみませんが、青かリユース事業です。圧倒的に「リユース店舗」が稼いでいます。

営業利益でみるとこんな感じです。

こちらでも、リユース店舗が利益の大半を創出しており、赤のブックオフオンラインが黒字ですが、それ以外は赤字です。

ここから、店舗での事業は未だ強い存在感があるものの、それ以外の成長事業が明確に見えていない印象を持ちました。

ちなみに、ブックオフオンラインとハグオールは統合されました。

ブランド買取のハグオールが消滅、ブックオフオンラインに吸収合併

この統合によって、将来的にはオンライン事業の売上を100億円規模まで拡大したい、としています。

リユース市場の成長はどこにある?

ブックオフのIRにも書いてありましたが、リユース市場は成長しています。ブックオフはどの分野を取り込めば、市場全体の成長に乗れるんでしょうか。

経産省に、リユース市場を分析したレポートがあるので確認してみました。ツイッターでも書きましたが、

成長領域は明らかにネットであり、店舗販売とネット販売は同程度の規模にまでなっています。

ネットはさらに細分化されており、大きな成長領域はフリマです。

ブックオフオンラインはB2Cの分野であり、今後もある程度の成長が見込めるとは思いますが、逆に成熟もしつつあります。競合が多数いる状況であることを考えると、今の延長線上で大きな市場の成長を取り込める、というのは少々考えづらいのではないでしょうか。

分かれる小売業の戦略

ずっと小売のEC化が注目されてきましたが、その動きも最近は変わってきている印象です。

ユニクロはECをガンガン伸ばしていますし、ヨドバシも売上の15パーセントはネットからです。

EC売上1000億円突破のヨドバシカメラなど通販売上ランキング2017【ジャンル別】 | 通販新聞ダイジェスト | ネットショップ担当者フォーラム

一方で、ツタヤは店舗開発に注力しており、ヴィレッジバンガードはECサイトがうまくいっていません。

ドンキホーテも、デジタル戦略としてECではなく店舗の魅力や利便性を高めることに注力しています。

これらの動きをみると、業態や商品ラインナップ、企業のカラーなどが相まって、とりあえずECではなく、店舗に注力した方が勝てる、というタイプの企業が出てきている気がします。

とはいえ、ブックオフはヤフーと提携して、オンライン事業を拡大する方針ですし、今後の動きが注目です。

パーク24の業績からカーシェアリングの現在を調べてみる

駐車場事業で強く、最近はカーシェアリングにも注力しているパーク24の動向を調べてみました。

主な興味は、カーシェアリング事業は現状どこまで拡大していて、今後伸びる見込みがあるか、です。

 

パーク24の売上と利益

まずは全体の売上と利益の確認です。利益率はじわじわ下がっているものの、売上は堅調な伸びを示しています。

パーク24の業績

 

事業構造

パーク24は駐車場事業、モビリティ事業の2つで構成されています。さらに、駐車場事業は国内と海外に分かれてます。モビリティ事業の中に、カーシェアリングが含まれます。以下は、それぞれの事業の売上高の推移です。

パーク24の事業別売上

売上は国内駐車場が大半。カーシェアリングは伸びているものの、パーク24の中では海外の駐車場事業が売上の伸びに大きく貢献しています。これは英国で30パーセントのシェアを持つNational Car Parksを買収したためです。

ニュースリリース | 2017年 | パーク24株式会社

駐車場事業で、海外進出にも積極的に出ていこうというのがわかります。

 

また利益率という点でみると、また違った絵が見えてきます。以下は事業ごとの利益率です。

パーク24の事業別利益率

国内の駐車場事業は当然利益率が確保できていますが、2番目に多いのは海外の駐車場事業ではなくカーシェアリング事業です。2015年は8%だった利益率が、14~15%確保できるようになっています。

海外の駐車場事業は、のれん償却が重くなっており、利益が小さくなってしまっている状況です。償却期間も長めなので、今の状況だけであれば利益を出していくのに時間がかかるかもしれません。それも含めた上での投資期間という位置づけでしょうか。

 

駐車場事業の競争環境

国内の競合企業

駐車場事業で国内の競合になりそうなのは、パラカと日本駐車場開発でしょうか。それ以外にもローカルなどを含めると様々競合がいると思いますが。

東洋経済に、三社の分析概要が記事になっていました。

パラカの場合、地方中核都市へのドミナント進出が奏功。今2016年9月期は5期連続の最高純益更新となりそうだ。5月に増配幅の拡大も発表している。また日本駐車場開発は、子会社で展開するスキー場が歴史的暖冬とスキーバス事故のあおりで苦戦し、今2016年7月期は営業減益となる見込み。ただ、主力の駐車場事業自体はいたって順調で、タイや中国で展開する海外駐車場事業も今期の黒字転換を達成しそう。スキー場の一過性要因が消える来期は、利益の急反発が期待される。

引用元:地味なパーク24が過去最高益を更新するワケ | 不動産 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

 

三社の業績を比較すると、以下のようになります。

駐車場事業系企業比較

それぞれ駐車場事業だけではないので、本当おおざっぱな比較ですみませんが、それでもこれをみるとパーク24にはすでに国内にはあまり敵がおらず、海外進出を強化していくというのが、今後の方針ですね。

 

シェアリングエコノミーの台頭

ただ、意外というか別モデルから競合がやってきています。それがシャアリングエコノミーです。国内だとakippaが最有力になります。驚いたのは、akippaの駐車場登録数は業界3位になっていることです(記事は2017年時点)。

このような革新的なビジネスモデルから、創業まもないベンチャー企業でありながら、akippaの登録駐車場数は業界3位となっている。その将来性に目を付けた企業も少なくない。たとえば2016年12月にトヨタ自動車が同社に出資し、トヨタ車に搭載されるナビサービスでakippaの駐車場が検索できるようになった。

引用:駐車場業界は「シェア」の破壊力で激変する | オリジナル | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

 

それ以外の駐車場登録数を確認できなかったのですが、駐車場を選ぶ人にとってはひとつの有力な選択肢になっていることは事実でしょう。

ただ、パーク24もB-Timesというサービスを開始しており、こちらは自社開発の駐車場ではなく、住宅や商業施設の余った駐車場を活用するシェアリングモデルです。

B-Timesとは | 駐車場予約ならB-Times

運営台数はまだ小さいですが、これがどこまで拡大していくのか、今の収益源であるTimesがどういう影響を受けていくのか、注目です。

 

カーシェアリング事業の競争環境

さて、次はカーシェアリング事業です。シェアリングエコノミーの台頭といわれていますが、どの程度事業が進んでいるのか、チェックしていこうと思います。

まずカーシェアリングの会員数でみると、国内市場全体は2017年で100万人を超えており、その中でタイムズカープラスが圧倒的です。

カーシェアリング市場動向 – 2017年総括版:主要5社 2016年主要トピックス | カーシェアリング比較360°

パーク24の直近発表によると、会員数が100万人の大台になりそうとのことなので、市場全体はまだ成長しているということでしょう。

パーク24、18年上期は2期ぶり増収増益 国内外で雪害も海外事業が大幅伸長 – ログミーファイナンス

 

前述の通り、すでにカーシェアリング事業自体はコストを十分ペイできるレベルになっており、他社と比較した会員数の多さや、市場の拡大、会員数が増えるほど収益が増えるモデルであることを考えると、今後の成長が期待される分野であると再確認しました。

ちなみに、自動車のシェアリング事業の分析については、こちらがきれいにまとめられていてわかりやすかったです。

三井住友銀行「自動車シェアリングの動向」(PDF)

そしてこちらの資料によると、2020年までにカーシェアリング事業は5倍まで成長すると予測されています(2012年比)。まだまだ市場全体では成長余力がありそうですし、パーク24はその中でリーダー的立ち位置を形成できているということですね。

 

まとめ

パーク24の事業構成からすると、駐車場事業は国内で強者の立場であり、それを活かしてさらなる開発やシェアリングサービスとの競争を繰り広げながら、海外事業を展開するという構造です。

一方のカーシェアリング事業については、市場全体が未成熟な段階から取り組み、今やこちらも国内でトップの立ち位置を形成しています。

駐車場事業とカーシェアリング事業の組み合わせがうまいのは、駐車場という「場所」はすでに確保しており、その上で自動車をレンタルするという相乗効果を築けている点でしょう。

 

駐車場事業ではシェアリングエコノミーの脅威にさらされながら、一方のカーシェアリング事業では自分がレンタカー事業を攻める立場になっていて、面白いなと思いました。

規模の経済が働くインフラモデルなので、場所・ネットワーク・データを膨大に保有している立場からすると、その地盤は簡単に崩れなさそうだなという印象でした。

 

プラットフォームビジネスの優位性については、こちらの本がおすすめです。なぜシェアリングエコノミーが強いのかが理解できますよ。

「プラットフォーム革命」を読んでAmazon、Facebook、Uberのビジネスモデルを理解する

今日はこのへんで。

マネーフォワードの業績から、フィンテックの動向を想像する

家計簿アプリのマネーフォワードをずいぶん前から使っていますか、もう便利すぎて手放せなくなっています。

フィンテックと言う言葉もすっかり浸透してきましたが、その代表格の1つであるマネーフォワードの業績を確認してみたいと思います。

マネーフォワードは、主に3つの分野で事業を展開しています。

ただ、実際はPFM(家計簿アプリ)とMFクラウド(クラウド会計)の二つで売上が成り立っている状態です。

売上と利益

全体では売上と営業利益率はこんな感じで推移しています。

売上は29億円ではあるものの、成長はすごいものがありますね。

利益もずっと赤字だったのが徐々に向上しており、広告宣伝費を除くと営業利益は黒字となっています。

これまで赤字で投資フェーズでしたが、収益化の目処は見えているという段階と思われます。ただ、まだまだ成長余地はあるので、広告宣伝費を大きく投入しているということですね。

キャッシュも潤沢にあります。

事業ごとの売上状況

事業ごとの売上の四半期推移をみると、クラウドサービスだけあって、積み上げで増えてきているのがわかりますね。PFMはちょっと動きが異なるところがありますが。

PFMはさらに3つの収益源に分かれています。

プレミアム課金は積み上がっていますが、広告収入やBtoBtoCの売上に波がありますね。BtoBtoCはこういう企業と提携して行うサービスです。

三井不動産 | 「マネーフォワード for 三井のすまいLOOP」提供開始(20171016)

PFM全体としてはストックの要素が大きいものの、多少フローによって変化する構造と言えそうです。

MFクラウド事業は、2つの収益源で構成されています。

大半はストック型になっているので、こちらも売上が積み上げになっています。安定感ありますね。

PFM事業の競争環境

もう一つの家計簿アプリとして有名なところはZaimでしょう。Zaimは公式サイトの情報によると700万ダウンロードとなっています。

日本最大級!無料の家計簿アプリ・レシート家計簿「Zaim」

マネーフォワードが600万ユーザーと言っているので、ダウンロード数とユーザー数では厳密な比較にはならないのかもしれませんが、ほぼ同程度か、Zaimがちょっと多いと言うところでしょうか。

これを見ると、Zaimとマネーフォワードでの競争は激しい状況です。ただ、このジャンル自体が今拡大していると思いますから、これからも拡大が進んでいくんでしょう。

MFクラウドの競争環境

次はMFクラウドの競争環境です。こちらの記事から調査結果をみると、MFクラウドは2016年はfreee、弥生会計オンラインに次ぐ3番手でしたが、2017年には2番手に上がってきています。

クラウド会計ソフトの市場規模・シェアを調査してみた | 法人利用数TOP4徹底機能比較会計ソフト(財務会計) | 【ボクシル】法人向けITサービスの比較・検索・資料請求サイト

freeeは個人事業主と小規模企業のどちらにも強くて、弥生会計オンラインは個人事業主、MFクラウドは小規模企業に強いという特性がありそうです。

正確さは欠けると思いますが、何となく傾向をみるためにGoogleトレンドでも確認してみます。

これをみると、クラウド会計のシェアが全体に伸びており、freeeに次いでMFクラウドが追いかけている、という構図に感じます。

新規事業への投資

それ以外にも、冒頭で紹介したように様々な新規事業を行っています。

仮想通貨の交換業への進出を発表しました。

マネーフォワード、仮想通貨交換業に参入: 日本経済新聞

また、最近MFクラウドのサービス連携が発表されていましたが、このような既存事業の拡張も積極的ですね。クラウドになるとこういうデータ連携も加速していくメリットがあります。

マネーフォワード、クラウド経営分析ソフト『Manageee』を提供するナレッジラボと業務提携|株式会社マネーフォワード

 

電子契約についても、サービス領域に取り込んできました。マネーフォワード子会社のMFケッサイと、電子契約を手掛けるリグシーのとの連携です。会計データを起点にプラットフォームの機能を強化しています。フィンテック代表格として、着々と事業領域を拡大していますね。

海外顧客と手軽に電子契約 リグシーがサービス拡大  :日本経済新聞

 

まとめ

  • 売上の成長は著しく、利益も黒字化が見えてきている
  • 事業の二本柱はどちらも有力な競合がいるが、市場自体が伸びていることもあり、今後も成長が期待できる
  • 仮想通貨など新しいフィンテック領域への投資も意欲的

ということで、家計簿アプリやクラウド会計の分野は成長していきそうだな、と思います。

一方で、株価や時価総額の面では、こういう視点があり、面白いですね。

ぐるなびの営業利益が減少していたので、グルメサイトも新しい時代に入ってるのかもしれない

ぐるなびと、食べログを運営する価格コムが決算発表を行っていました。特に、ぐるなびの業績悪化が目立ち、ネットで話題になっていました。

以前分析してみましたが、最近の状況をアップデートしておこうと思います。

グルメサイトの二強「食べログ」「ぐるなび」のビジネス戦略を比較する

ぐるなびの事業モデル

ぐるなびの業績悪化は、結構衝撃的な感じでした。

年次の業績推移をグラフ化したのがこちら。売上高は微減ではありますが、営業利益が大きく落ち込んでいるのがわかりますね。

四半期ごとの2年間の業績をみても、営業利益率の低下傾向がはっきり出ています。

売上がそれほど落ち込んでいないにも関わらず利益が減ったということは、コストが減っていないということです。

投資を増加させていたということは、売上が伸びていく想定だったはずなんですよね。それが想定外だったのは、既存顧客の契約解除が続いているからと思われます。

ストック型のビジネスモデルであるだけに、ここが崩れていくのは、相当嫌な感じがします。

ここで、食べログと比較してみましょう。

途中で食べログが大きく逆転して、そこからはその差は埋まらずにいます。最近がずっと低下しているのは、アプリ利用が増えているからでしょう。

グルメサイトとしては、いかに送客できるかがポイントになるはずなのですが、それが難しくなっているということでしょうか。

食べログの業績はどうなってる?

しかし、その一方で食べログは順調に業績を伸ばしています。

単純な業界トレンドというよりは、食べログ一強になってるのではないでしょうか。

ネットに強い食べログらしく、トラフィックが安定しているのと、ネット予約件数が増加しています。ネット予約便利ですよね。

ぐるなびはどれぐらいトラフィックを獲得しているのかはわかりませんが、送客力が低下しているのが要因のひとつと書いています。

ぐるなびと食べログはビジネスモデルが違っていて、売上はぐるなびの方が大きいのですが、利益率は食べログの方が高いのです。

マンパワーを中心にコストをかけてスケールさせるぐるなびと、ネット中心に高い利益率を実現する食べログは、今後どうなっていくんでしょう。この領域も新しいフェーズに入ってきている気がしました。

住宅リフォーム市場とDIYの盛り上がりについて調べた

最近テレビでリフォームをDIYで行うシーンを見かけるようになったと思いませんか。

人口減少に伴って、新規住宅は減り、空き家が問題になっています。その中で、リフォームやリノベーションが市場としては盛り上がりを見せており、気になったのでどのような動向になっているか、チェックしてみました。

住宅リフォーム市場の規模と推移

住宅リフォーム市場は7兆円という大きな市場を形成しており、2020年ごろまで増加し、そこからは横ばいから減少へ進んでいくようです。

住宅リフォーム市場に関する調査を実施(2017年) | ニュース・トピックス | 市場調査とマーケティングの矢野経済研究所

こちらのNRIの予測もだいたい近い数値になっています。

野村総合研究所つ<2017年版>2030年の住宅市場(PDF)

経済産業省の分析レポートをみると、リフォームビジネスのプレイヤーは多岐に渡っていますが、今は水回りが多くなっていて、市場の多くは地場工務店が占める状態です。

住宅・リフォーム業界を巡る現状と社会環境の変化(経済産業省)

今後は新しいプラットフォームが台頭するか

新しい動きとして、プラットフォーマーの出現があります。

米リフォーム業界に旋風を巻き起こす「Houzz」と「Porch | JBpress(日本ビジネスプレス)

2018年リフォームブームはさらに追い風

具体的なサービスとしては、次のものが見つかりました。

リフォームの費用相談、見積り依頼なら【O-uccino(オウチーノ)】

完全成果報酬型のリフォームマッチングプラットフォーム「HUNDY(ハンディー)」のα版をリリースしました | BRANU INC.

HOUSALL | 住生活サービスプラットフォーム

Lifestyle magazine about living – HowScope (house corp) | We will deliver renovation / renovation information!

ざっと調べただけでも複数見つかったので、これから盛り上がりを見せるかもしれません。たしかに家を修理しようと思うと、一から探すのは結構面倒なので、ニーズはあるんじゃないかと。

EC化はモノだけでなくサービスにも拡大しています。住宅リフォーム市場でも、プラットフォームを通じたサービス提供が広がるんじゃないでしょうか。

DIYの盛り上がり

DIYの動向についても見ておきましょう。まずGoogleトレンドでみると、右肩上がりになってます。

しかし、ホームセンターは過当競争で頭打ちなんですよね。

年間総売上高とホームセンター数の推移(推計値)日本DIY協会

DIYも以前のような本格的なものではなく、ライトなものが流行しているようです。それによって、間口が広がっているんでしょうね。

ホームセンター事業者各社は、これまでの本格派・正統派のDIYではなく、一般消費者が気軽に楽しめるDIYを提案し、軽量化を図った商品やカラフルな商品など、女性向け・ファミリー向けの商品ラインナップを拡充している。

引用元:ホームセンター小売市場/2017年度は3兆9980億円規模に(2017.07.31)|流通ニュースただ、ライトになるほどインターネットとの親和性も高いと考えられるので、そちらでの販売も増えてる気がします。

まとめ

  • リフォーム市場は7兆円ぐらいの巨大市場で、2020年ごろまで拡大する見込み
  • リフォーム業者をマッチングするプラットフォームが登場してきており、今後EC化が加速するか
  • DIYは流行しているがライトなものが主流

以上です。やはり建設系は市場が大きいな、というのが率直な感想です。今後どれぐらいEC化が進み、どういうプレーヤーが台頭するでしょうか。

ギブソンの経営破綻から楽器市場の動向を考える

ギターブランドで有名なギブソンが経営破綻したということで、音楽業界、楽器業界厳しいなと思った方も多いでしょう。

ギター老舗ギブソン、破産法申し立てロック音楽の低迷で市場縮小

老舗ギターメーカー、米ギブソンが経営危機債務返済に苦慮 写真3枚 国際ニュース:AFPBB News

ということで、ギブソンの経営状態と楽器市場についてざっと調べたので、簡単にまとめておきます。

そもそもギブソンの経営戦略ミスでは?

最初に元も子もない話ですが、ギブソンはギター以外に音響分野に進出するために、最近は買収を繰り返しており、これがうまくいかなかったようです。

ギター事業は黒字であり、うまくいかなかった事業は売却して経営再建する方向です。

これらの動向は、この記事が詳しいです。

ギブソンが会社更生法なのは、音楽業界うんぬん以前に自業自得と思う件 | DORIAN MODE

ギター事業は黒字であるということは、致命的なインパクトを与えるほど外部環境は衰退していないと思われます。

ロックの低迷は本当か?

ギブソンの経営再建の記事で、1つの要因に挙げられていたのは、ロックの低迷です。

たしかに世界で最大の音楽マーケットであるアメリカでは、ヒップホップがロックを売上で超えています。

米音楽業界はヒップホップが一人勝ち、ロックは衰退傾向史上初!!2017年はヒップホップ/R&Bが、ロックより売れた!コーチェラのヘッドライナーからロック枠が消えた理由か?!|音楽情報サイトrockinon.com(ロッキング・オンドットコム)

ロックの新しいスターがなかなか登場しない状況であり、ロックの現場でも高齢化問題が発生しているようでして。寂しいというかなんとも言えない状況であることを示しています。

洋楽雑誌の高齢化がちょっと笑えないレベルで深刻・・・ – BASEMENT-TIMES

なぜロックが衰退してしまったのか、ということを調べてたら、こういう考察記事を見つけました。

ロックの衰退と現代の電子音楽タイトルどうり何故ロックは衰退し電… – Yahoo!知恵袋

音楽のムーブメントはいろんな背景から生じるものだと思っていますが、音楽の民主化としてより手軽に実現できる電子音楽の存在というのは、ひとつの要素かもしれません。

楽器市場はどうなってるのか?

では、楽器市場自体はどうなってるでしょうか。

日本国内は、人口減少から言わずもがな苦戦してきます。

楽器小売事業者の経営動向調査

教室を併設し、サービス型へシフトしてなんとか維持してる状況です。

一方の世界市場は、日本ほど先行き暗くないようです。少し古い資料になりますが、ヤマハの中期経営計画だと、楽器市場は伸びるとありました。特に中国と新興国が成長市場です。P20に市場規模の推移があります。

ヤマハグループ新中期経営計画 2016-2019

さらに、楽器だけではこれからの先行きが不安なため、楽器メーカーは多角化してきています。

ヤマハ・カワイ・ローランド、世界トップ級でも求められる楽器業界の多角化戦略|ビジネス+IT

結局これは、冒頭のギブソンの話に戻ってくるわけですが、楽器市場はなくならないものの、今後の成長を考えると限界が見えており、多角化路線を目指さざるを得ない状況になっているわけです。

まとめ

  • ギブソンの破綻はギター事業の衰退ではなく音響事業の買収失敗
  • ロックの衰退は本当に起こっている
  • 楽器市場は中国や新興国を中心に伸びる
  • 楽器メーカーが大きく成長するには多角化路線

ということで、なかなか厳しい楽器市場の動向でした。